- 出版社:早川書房
- サイズ:16cm/459p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-15-041054-2
タイムライン 上 (ハヤカワ文庫 NV)
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- 税込価格:882円(25pt)
- 発行年月:2003.12
- 発送可能日:1~3日
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ユーザーレビュー- 「タイムライン 上」
7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2008/07/03 15:31
中世のフランスという舞台設定がカギ
投稿者:塩津計(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
クライトンの小説の多くはテクノロジーを題材としている。キーワードは「技術の暴走」で、遺伝子組み換えやナノテクノロジーの安易な開発が技術者の暴走や技術の錯誤を生み、やがてそれが人類に巨大な災厄をもたらすと、まあ、こういう設定のものが多い。本書も、まあ、基本的にはその類だが、比重はむしろ舞台として選ばれた中世のフランスの描写にある。本書を読むまであまり認識していなかったが、欧州では中世の昔から盛んに「相互侵略」が繰り返され、血で血を洗うがごとき凄惨な侵略と殺戮が延々と繰り広げられていたことがわかる。お隣の韓国や中国は、先の大戦でさも日本が「とても悪いこと」をしたかのごとき悪口雑言を日本に浴びせる。歪んだ歴史教育が中国人や韓国人の心を如何に蝕んでいるかがうかがい知れる訳だが、客観的に見れば、欧州人が繰り広げてきた戦争の歴史の前には、日本が昭和に行った大陸支配など児戯に等しいことが分かる。だって英国は約100年に渡り、フランス領の約半分を支配している。それだけでない。フランス国王をひっとらえて処刑したりしている。その逆もあって、フランス軍が英国に上陸して占領し、英国王にフランス人が成りおおせたりもしている。日帝35年の支配なんて韓国人は騒ぐが、あんなことちょろいちょろい。
しかも当時の戦争は相手を全滅させるのが基本の持久戦である。そのために築かれた城塞都市がフランス南部には今でもいくつか残っている。カルカソンヌなどのように観光地化しているところも多い。そのうち是非、訪れてみたいものである。かつてそこで繰り広げられた血みどろの激戦に思いを馳せながら。
ちなみにフランス人が自慢するワインだが、これも19世紀にはやった病気で葡萄の木がほとんど全滅し、アメリカのカリフォルニアから葡萄の苗を輸入して再生したりしているそうだ。
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2004/02/17 18:56
映画が先か原作が先か
投稿者:モール(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
クライトンの著作を始めて読みました。今までは映画で満足していたので、特に原作を読もうとは思わなかったのですが(所詮映画界にアイデアを提供する作家にこれ以上儲けさせてどうする。とひがんでいたので、手に取りませんでした)、やっぱり読ませ方がうまいですね。さすがベストセラー作家今回も映画を観て満足しようと思ったのですが、いまいち消化不良の感じがして原作読んじゃいました。
結論から言うと映画と原作は別ものですね。他の作品は原作を読んでないので分からないですが、この作品に関しては別物ですね。
アウトラインは同じですが、登場人物の設定も違っていたりして、まあ確かに映画は約2時間の間で完結させて感動させるので、おいしい所摂りでしょうが、それでいいと思います。
やはり文章は説明を意識させないで説明しますので、登場人物の心の動きが楽しいです。何故タイムトラベルが可能なのかも、丁寧に解説しています。
量子論や平行宇宙などいろいろ解説がありますが、あまり意識しないでも楽しく読めます。とにかく彼らが中世フランスに行き(正確には平行宇宙の中世フランス)そこで生きるか死ぬかの経験をしてる間に、こちらの世界でも転送装置にトラブルが起こり、果たして彼らは無事に帰ってこられるのか?というあらすじです。
中世ではすぐに仲間とはぐれます。出会ったと思えばはぐれ、また出会いまたはぐれ、といった感じで物語が進んでいきます。
現代ではいかに彼らを呼び戻すかを考えながら物語が進みます。
ランス、ケン、騎馬による戦いが好きな人、タイムトラベルが好きな人、は読んで見てください。
ただ騎士道精神を持った騎士や現代の最先端の武器は出てきません。
逆に現代から行った彼らが死に怯えながらもだんだん騎士道精神を発揮していきます。
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2004/01/04 22:53
クライトンの真骨頂、流行の科学理論で読者をSFの世界へ
投稿者:ドン・キホーテ(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
文庫化されたので、手に取ってみた。上下2冊に分かれている上にどちらも大分厚いが、文字が大きく読みやすそうであった。要約によればタイム・トラベルのSF物であることが分かる。映画化されて今月には日本でも公開とある。
この種のタイム・マシンに関してはやや食傷気味であったので、正直あまり期待していなかった。あの『猿の惑星』だって枠組みはタイム・トラベルである。大昔、NHKで放映されていた『タイム・トンネル』が印象に残っている。アリゾナ辺りの砂漠の地下に政府の機密プロジェクトとしてタイムトンネル計画があり、二人の若い科学者がタイム・トラベルに出かけて未来、過去の時代をさまようSFドラマであった。
本書もニューメキシコの砂漠の地下にその施設があるという設定である。ただし、政府が運営するものではなく、民間会社ITCが主役である。中世欧州(フランス)を専門とする考古学者ジョンストン教授が遺跡発掘現場であるフランスの片田舎からスポンサーであるITCに呼び出されたが、行方不明になったとの知らせが助手たちにもたらされる。
ジョンストン教授はその時代へタイム・トラベルしてしまったといわれ、助手たちもそこへ向かうことになった。中世のフランスでは、領主同士の争いの真っ只中であった。助手たちは森や城や修道院を舞台にして右往左往の繰返し、加えて実際に騎士同士の果し合いまでも演じてしまうというおまけまで付いた。
一方で、護衛として一緒に行ったボディガード二人のうち一人は早々に殺されてしまうが、禁止されている武器(手榴弾)を持ち込んでしまった一人が慌てて現代に戻ってきたまでは良かったが、そこで手榴弾が爆発し、タイムマシンを破壊してしまう。果たして助手たちは戻れるのであろうか。
『タイム・トンネル』でもそうであったが、現代へ戻れることがタイム・トラベルの前提である。そうでなければ、行った先の時代に取り残されてしまう。読者のそういう興味も惹きながら、中世の騎士同士の争いに引き込む腕前はさすがクライトンといえるであろう。時代に興味が湧かなくとも、息をもつかせぬ展開は読者を退屈させることはない。しかし、この時代を知らない場合は映画の方がイメージが明確になるかもしれない。
悪役として描かれているITCの社長の結末は、やや尻切れトンボの気味がないでもない。タイム・マシンの科学的な根拠を量子テレポーテーション技術で煙に巻くあたりは、『ジュラシック・パーク』とも共通するところがある。その真偽については物理学者の菊地誠氏が巻末で解説してくれている。作品全体としては一級の娯楽作品に仕上がっており、上下とも一気に読み進んでしまった。
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2010/05/06 19:15
時間旅行学、または中世にひょっこり出現した現代人の冒険。
投稿者:風紋(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
卓抜な歴史小説『大列車強盗』を書いた鬼才、マイクル・クライトンの一風かわった歴史小説である。
クライトンは、一作ごとに新しい題材に挑戦した。本書で挑戦したのは、時間旅行である。
いや、時間旅行ではない。作中の一登場人物はほぼ次のようにいう。「そもそも、時間旅行という概念自体、ナンセンスだ。時間は流れているわけじゃない。時間そのものは不変なのだよ。過去は現在から隔たっているわけじゃないから、そこへ移動することはできない」
にもかかわらず、主人公たちは現代の合衆国から中世のフランスへ旅立つ。
これがどうして可能なのか。解は「量子テクノロジー」と「多宇宙」の二語にある・・・・。
マイクル・クライトンには科学啓蒙家としての稟質があるらしく、時間旅行学について前書きでも小説の中でも噛んで含めるがごとく解説しているのだが、申し訳ないことに、このあたりは駆け足で通りすぎてしまった。ゆえに、論理的帰結として、時間旅行の理屈は評者には依然としてナゾである。
冒険小説の読者としては、現代人が中世を旅するという根拠がどこかで説明してあれば、それで十分なのだ。むろん、SFの読者は別の読み方をするにちがいない。
冒険譚はイェール大学歴史学科教授の失踪に始まる。
この報を受けた主人公、同学のアンドレ・マルク助教授ほか3名の大学院生は、ニューメキシコ州のITC社へ飛ぶ。ここで驚くべき企業秘密を明かされる。並行宇宙への一種の空間移動を実現する転送装置である。教授は1357年へ転送されたまま、帰還しなかった。そこで、この時代に詳しいマルクたちに救出の白羽が立ったのだ。
一行は、ドルドーニュ川沿いのカステルガールに到着した。当時、残虐で知られるサー・オリバー・ド・ヴァンヌが支配していた地域である。対抗勢力アルノー・ド・セルヴォルの軍勢との間に、まさに戦端が開かれようとしていた。
一行は両者の争いに巻き込まれ、息をつがせぬ展開となる。
一方、ITC社でも問題が生じていた。装置に大幅な修理が必要になり、一定の時間は帰還できない状態になったのである。しかも、システム上、37時間を過ぎると現代に戻れなくなる。
章ごとに残り時間が表示され、緊迫感を増す。
時間切れ寸前に、マルクは誰も思いもよらぬ決断をする・・・・。
クライトンは、娯楽小説のツボを心得た作家である。医学部出身で、人気TVドラマ「ER」の原案者であり、『大列車強盗』ほかの映画監督もつとめた。ゲームの会社も興している。こうした多芸多才ぶりが本書にも反映している。すなわち、映像になりやすい情景描写、波瀾万丈のストーリー、盛り沢山のアクション場面、である。
脇役にもそれぞれ活躍の場が与えられ、これら小さな挿話が全体の厚みを増している。
ところで、本書には歴史的なナゾが少なくともひとつある。中世の騎士が概して膂力にすぐれる、とされている点だ。スポーツマンで中世の武器の練習をおさおさ怠らなかったアンドレ・マルクさえ圧倒されるほどの怪力の持ち主が、わんさといたのだ。このアイデア、マイクル・クライトンはどこから得たのだろうか。マルク自身が意外に感じたところからして、中世史の常識ではないらしい。恐山の巫女の力をかりて泉下のクライトンを呼び出し、尋ねてみたい気がする。







