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逆システム学 市場と生命のしくみを解き明かす(岩波新書 新赤版)

  • 発行年月:2004.1
  • 出版社:岩波書店
  • レーベル:岩波新書 新赤版
  • サイズ:18cm/243p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-00-430875-5

新書

  • 国内送料無料

逆システム学 市場と生命のしくみを解き明かす (岩波新書 新赤版)

金子 勝 (著), 児玉 竜彦 (著)

紙書籍

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電子書籍

670(6pt) 逆システム学―市場と生命のしくみを解き明かす

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著者/著名人のレビュー

経済学と生命科学の分...

ジュンク堂

経済学と生命科学の分野の二人が、市場や生命という複雑な仕組を解明する新たなパラダイムを提唱する。もう一つの世界観となるか?

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ユーザーレビュー

全体の評価 3.8
3.8
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「障害をもった遺伝子が未来を作る」

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2004/12/15 13:33

評価5 投稿者:植田那美 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 還元主義的パラダイムにおける学問領域相互のコミュニケーション不全を克服すべく生まれた本書は、従来の知の「科学性」あるいは「客観性」という虚構にオルタナティブを提示することで既存の学問にパラダイム転換を迫る秀逸な一冊だ。経済学者と生物学者である著者らは、セーフティーネットという価値を根底に据え、個/還元主義と全体/システム論という二元対立の陥穽を排し、個と全体のコミュニケーションを「多重フィードバック」によって読み解くことで、生物学と経済学に共通の方法論を模索している。本来人間のために存在する生物学と経済学が、競争淘汰による適者生存というネオダーウィニズムおよびネオリベラリズムをあたかも人間の本質であるかのように錯覚させ、私たちを遺伝子と金銭の奴隷に貶めてしまった現代において、そうした科学の「原理主義」的暴走に一貫した異議申し立てをし、共存という多様性を育むセーフティーネットこそが進化の源泉であると主張する本書は、生物学と経済学を私たちの手に再び取り戻そうという試みでもある。

 セーフティーネットが進化に不可欠だとする著者らの結論は単なるセンチメンタリズムではない。なぜなら「自然淘汰によって個体数が増えればいいと考えると、適応度という概念に依存する集団進化論は、いわば無制限に増殖する癌細胞が進化の理想型と考えるのと同じ」であり、競争淘汰の行き着く先は有限な自然環境を食い潰した上での自滅にほかならないからだ。本書は「個と全体を結ぶ中間領域にある制度、調節制御のしくみ」を「セーフティーネットを起点とする多重フィードバック」から説明し、生命や経済を支えるためにはフィードバックの壊れやすいもっとも弱い部分を守ることが必要だと指摘する。

 「逆説的だが、市場経済でもっとも弱い史上が、市場経済を成り立たせていくうえでもっとも重要な市場となる」

 「セーフティーネットは、リスクを共有することによってこそ思いきった競争が可能になるという意味で、競争と協力、あるいは自己決定権と社会的共同が相補関係にあることを示している」

 「電話機を発明したベルは聴覚障害者の家族の中で育ったことから音に深い関心を抱くようになった。視覚障害者は、聴覚と触覚に鋭い感性を育てる。「障害」から生まれた新たな文化は、新たな価値を人類にもたらす。競争淘汰はたしかにある。だが、多様性をもった多重制御系は、生物の生み出した淘汰で生き残る最大のしくみである。多様性を生み出し、支えながら、競争を可能にする多重的なしくみこそが求められるのである。」

 狂牛病の原因となったヤコブ病の抗体を持っていた羊は、効率性の名のもとに絶滅寸前に追いやられていた種であったという。「障害をもった遺伝子が未来を作る」という本書の大胆な肯定には思わず身震いがする。

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真摯な対話が生み出したもの

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2004/04/20 15:08

評価5 投稿者:後藤和智 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 経済学と生命科学。社会科学と自然科学。確かにこの二つの科学が専門的に扱うものは違っているし、世間的にはこの二つの科学自体がまったく別系統のものとして見られている。しかし本書は、この二つの科学の違いを超えて、共通の理念を割り出しつつ、且つそこから何を見出すか、という試みである。
 著者達によれば、経済学と生命科学は似たような道をたどってきたという。例えば生命科学の場合、遺伝子学を基とした要素還元論が生まれ、それが暴走して差別すら肯定しかねない論理さえも生み出された。一方経済学では、新古典派経済学の隆盛により、世界中がデフレの圧力に苦しめられる長期停滞の時代が生み出された。
 生命科学におけるネオ・ダーウィニズムや経済学における市場原理主義は、現在になってさまざまの問題を抱えている。そこで著者達が提唱するものこそ、本書のタイトルになっている「逆システム学」である。
 「逆システム学」とは何か。従来の考え方が、一部分の差異から全体を割り出すという方法論であるのに対し、「逆システム学」とは、全体を複雑な体系の集まりとして捉え、その体系のネットワークから全体を見出すという考え方である。
 生物を「逆システム学的」に捉えると、生物は遺伝子を重複させることによって、遺伝子が変異しても重複させた遺伝子をセーフティーネットにすることができる。また、生命は、多数のクラスター(フィードバック)から成り立っており、それらのクラスター全体の制御によって、生命は維持される、という考えができる。また、新古典派経済学が複雑な制度を排した「制御モデル」で経済を捉えるのに対し、「逆システム学的」に見れば、経済は多数の制度の束で成り立っており、その一部分が壊れると経済危機が起こる。また、市場原理主義が様々なフィードバックを壊してしまうと、経済全体が機能しなくなり、急激なパニックに陥る。
 著者である児玉龍彦氏の著書を読むのは初めてだが、金子勝氏の著書はこれまでに何冊か読んだことがあり、書評も書いたことがある(『経済大転換』ちくま新書)。金子氏の主張は、確かに論理は整然としているが、中には非現実的な主張も見られなくもない。だが、本書を読んで、なるほどそういう意味があったのか、と腑に落ちた。
 生命であれ経済であれ、物事を単一の概念で捉えるのではなく、多層的に捉えることによって本質が見えてくる。本書は、既存のパラダイムを破壊しようとする著者達が、それぞれの専門分野の差異を超えつつ真摯に対話した結果、生まれた宝石といえる。
 本書の議論が、これからどう飛翔していくのか楽しみだ。

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人間のなりたちを考える

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2004/02/07 21:59

評価5 投稿者:10匹のカエル - この投稿者のレビュー一覧を見る

 人間が形成されていくときに連鎖反応が重要と思われます。一つのことが次のことにかかわっていき、人間が形成されます。人間の社会も同じです。
 しかし今日の多くの科学、たとえば生物学における分子遺伝学や、経済学における市場原理主義は、さまざまなことがらのかかわりを考えません。一方、東洋医学や社会主義経済は、1つ1つの遺伝子や、個々の人々のことを考えません。
 本書はこうした従来の「個」と「全体」の分裂を超える試みとして、個々の要素を考えながら、お互いの相互作用、調節制御の重なりを具体的に見て行くことから全体をとらえる方法に取り組んでいます。
 人間がいかに形成されるかについても大きな示唆になると思われます。

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有用な結果がひきだせない理論 ?!

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2010/11/02 23:04

評価2 投稿者:Kana - この投稿者のレビュー一覧を見る

フィードバックやら複雑系やら要素還元論の話がでてきて 「逆システム論」 などということばがでてくると,かなり精密な議論をしようとしているのかと誤解してしまう. しかし,著者がつかっている 「多重フィードバック」 をもつような複雑なシステムは,著者もそれらしいことを書いているように,帰納的にその構造を推定することはもちろん,システムのパラメタをきめることも困難だ. だから,「逆システム論」 ではあいまいな定性的な議論しかできない. 著者も書いているように定性的な議論は重要だが,すべてがあいまいなまま議論しても,有用な結果をだすことはむずかしいだろう.

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評価2 投稿元:ブクログ

2009/03/15 15:29

市場や生命という複雑なしくみを解明する方法を著者たちは「逆システム学」と呼ぶ.それは,新古典派経済学や遺伝子決定論などの主流の学問研究を批判し,市場や生命の本質を多重フィードバックのしくみに見出すというものだ.経済学と生命科学の対話から浮かび上がる,まったく新しい科学の方法論

評価3 投稿元:ブクログ

2014/05/06 11:03

世の中、単一の因果関係だけではなく、多重フィードバック機構があって安定しているということを前提に、諸々の処理系を理解しなければならないというのが、「逆システム学」の立場である(らしい)。
市場経済と生命の仕組みの両面から、こうした多重フィードバックの事例を分析する。経済学と生物学を行き交う巧妙なコンテキスト・スイッチが読んでいて面白い。生物は多重フィードバックで恒常性を維持している典型的な成功例ではなかろうか。一方の市場経済活動い対しては、人為的なフィードバックの不足が深く批判されている。

評価4 投稿元:ブクログ

2011/04/25 23:10

[ 内容 ]
市場や生命という複雑なしくみを解明する新たな方法を、著者たちは「逆システム学」と呼ぶ。
それは、新古典派経済学や遺伝子決定論などの主流の学問研究を批判し、市場や生命の本質を多重フィードバックのしくみに見出すというものだ。
経済学と生命科学の対話から浮かび上がる、まったく新しい科学の方法論。

[ 目次 ]
序章 逆システム学とは何か
第1章 セントラルドグマの暴走
第2章 制度の束と多重フィードバック
第3章 フィードフォーワードの罠?医学と経済学の逆システム学
第4章 変化と進化における多様性と適応
終章 どのようにしてパラダイムは転換してきたか

[ POP ]


[ おすすめ度 ]

☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

評価5 投稿元:ブクログ

2011/11/06 03:55

要素還元論でも、構造論でもなく、演繹的に説明するのではなく、現象を説明するという感じに読めました。
それなら、現象論ではないのだろうか。
医学を引用しているので、生命だけに限定して解明してもらえるとうれしい。

評価0 投稿元:ブクログ

2014/12/31 15:45

2007-08-13

間違いなく野心的な書であることは言えるでしょう.

東大文化?

そこまで重くない気持ちで読み始めましたが,かなりのタフさでした.

日本にとどまらないマクロ経済の話を歴史的なレベルで政策の話などをしつつ,5ページくらいに一度,
生命科学のトピックと切り替わるという,

経済学と生命科学が行ったり来たりのコンフュージョン.

これを,総合的に読みこなせる読者は殆ど居ないでしょう.(部分的にはクリアですが)

僕は,経済学に詳しい生命科学の学生も,生命科学に詳しい経済学の学生も殆ど知りません.(海外ではダブルメジャーがあるんで,
そこそこ居るでしょうが)

経済学と生命科学が5ページに一度切り替わる進行パターンで,

徐々に何言ってるのかわからなくなっていくという,恐ろしい本です.

まあ,
システム論好きとしてはこの二つの領域に積極的にアナロジーを成立させてシステムを読み解こうとする立場には感銘を受けます.


ゲノムの調整機能と経済のセーフティーネットにアナロジーを結びつけていくのは,なにかひらめきがあったんだろうなあとは伝わってきました.

オリジナルなキーワードとしては逆システム学以外に,<多重フィードバック>と<制度の束>という言葉が出てきましたが,
共に

 たくさんのフィードバック

 いろんな制度

以上の意味がよみとれませんでした.・・・・
僕の理解不足でしょうが.

僕が不勉強なせいで,「逆システム学」自体も,よく理解できませんでした.
また,後々に読んでみたいです.

まあ,久しぶりに骨が在りそうで,わからん本だったので,ディスカッションの題材にはナカナカいいかもしれませんね.
positive!!

本の内容としては批判や批評的な部分が多く,
「結局,[逆システム学]でどんな研究が成立するの?」
が,不在な感じがしました.

次は是非,数式や体系化を込みにした横書きの本で読んでみたい.

評価4 投稿元:ブクログ

2013/08/04 22:51

生命と経済学における市場の概念に、深い相関があるとする。
あくまで概論だが、興味深い話ではある。いつか続きが読めるといいなという一冊。

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