紙の本
本格ミステリの香り漂う本格警察小説
2004/02/25 22:58
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:カルバドス - この投稿者のレビュー一覧を見る
多くの捜査員達の地道な捜査によって、徐々に犯人を追い詰めていく、というのが警察小説の常道だとしたら、本書は全く別の道を歩んでいる。目新しいもしくは大掛かりなトリックもなく、一人の警察官の捜査の様子を描いているという点では警察小説といえるが、その捜査手法は探偵の推理に近く、本格ミステリを読んでいるかのような錯覚に陥る。主人公が、プロファイリングを得意とする女性警察官だからだ。
アメリカのFBIで本格的に運用を開始されたプロファイリングという技法は、猟奇殺人犯を逮捕するためにかなり有用とされている。本書のヒロイン・吉村爽子は犯人を挙げたい一心で心理捜査官という立場から犯人像を推測するも、完全なる男社会で更には縦社会でもある警察の体質から、当初は全くアテにされない。しかも、足を使った捜査こそが第一と考える古い連中からは罵声を浴びせられる始末。どこの社会でもそうだが、新しいモノというのは、なかなかに受け入れられ難いものだ。そうとは分かっていても、彼女が自身を信じ健気に捜査を続ける姿には、思わず涙しそうになる。
彼女の武器は頭脳。プロファイリング技術を駆使し、女性の敵である犯人を追い求める。様々な状況を分析し、心理状態を推測し、徐々に犯人像を明確なものへとしていく。警察官というより、安楽椅子探偵的な要素が強い。だが、聞き込みや張り込みをこなし、他の男性刑事達と共に現場に赴く姿は、まさに警察官そのもの。文中には様々な隠語(警察用語)が飛び交うし、やはり本書は警察小説なのだ。
文庫化にあたり上下巻となった本作品。私は上下巻の作品を読む時、上手く読み継げずにひどい場合には数日間の間隔をとることがあるのだが、本作品は間髪を入れず読み継ぐことが出来た。どんどん先を読みたいという気持ちが強かったからに他ならない。ぜひ上下巻続けて読み、心地よい疲れを感じて欲しい。
電子書籍
こっちを読んで欲しい!
2013/01/21 23:49
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:だっくまま - この投稿者のレビュー一覧を見る
こちらの方が先に出版されてるから、ス○ロ○ベ○ーナイトの原案になった作品じゃないかと疑う!!
男性社会での若い女性刑事の苦悩や叩き上げで、執拗に目の敵にするおやじ上司刑事!さらには、過去のトラウマやその際、助けてくれた若きお巡りさん、家族との確執!どれをとっても酷似している!!こちらの方が先で、しかもリアリティがあり、優秀作品!必見の価値あり!!
紙の本
登場キャラ
2016/02/09 04:31
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たっきい - この投稿者のレビュー一覧を見る
よく比較されるストロベリーナイトと比べ、登場キャラが少し弱いような印象はありますが、爽子、柳原が、魅力的に描かれており、藤島も含め、犯人に迫る後半の活躍に期待です。
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連続殺人事件そのものはそう難しいトリックでも新鮮でもない・・・。
心理分析捜査官のトラウマも,警察の対立構造も抱える闇も。
それを飽かずに読ませてしまうのは,キャラクタの描き分けが上手いのかな。
主人公だけではなく脇役まで,人間くさい感じでなんか惹かれる。
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誉田哲也の姫川シリーズにムード的には似ているものの、
キャラの個性・作品パワーは不足している。
女性刑事物を読みたいなら、
個人的には「姫川シリーズ(誉田哲也)」をお薦めする。
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心理捜査官の女性、爽子を主人公とした警察小説。
男社会の閉鎖的な警察で、女性であり心理捜査官という特殊な立場の爽子は多くの警察官から偏見と反感を持たれている。そんな中で彼女は自分の信じるままにプロファイリングを進めていくが…
今のところ海外にありがちな警察小説という感じで、面白いけど今ひとつ目新しさやインパクトに欠ける。下巻でどう展開するのか楽しみ。
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性的異常者による犯罪をプロファイリングする女性捜査官。被害者に繋がる筋に警察上層部の過去の汚点を封印する動きが絡んでくる。
犯人像を推定するプロファイリングもさることながら、警察という組織の中での権力というか主導権争いの駆け引きが、リアルというかあまりにネチっこく書かれている点をどう評価したものか・・・
(2011/1/11)
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主人公でもある女性心理捜査官、吉村爽子に惹かれる。
物語としては専門用語が多く、少々読みづらい部分もあるが、
それぞれのキャラクターが魅力的で、先の気になる一冊である。
下巻も楽しみに読みたいと思う。
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心理捜査官もの(?)って、流行ってた時に映画では良く見てたんだけど、みんな似たり寄ったりで本では食わず嫌いしてたところあって。
でもこれは面白かった~。
一気に下巻まで読んじゃいました。
タイトルはこれだけど、警察小説ですね。
でも面白かった。
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心理捜査を、猟奇的殺人の全容を、主人公の心の強さと、犯人を許さぬ絶対検挙する事の物語を軽快に、時に難解に、緻密に、軽妙に紡いでいく面白い作品。
只量が多く読むのに苦労した。
只読後感は心地よかった!
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面白かった。前半は説明がやたら長ったらしくて読みづらかったけど、その分キャラ設定がしっかりしていてのめり込んじゃいました。心理捜査官という立場を異端視し、しかも女性刑事を蔑視する男性刑事達がイヤーでたまらない。男の嫉妬はみっともないですね。中盤からは爽子に感情移入しまくりで、読み進めちゃいまいした。決して派手ではないが、そこが逆にいいと思います。
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黒崎視音の初読み。
性的倒錯者による異常犯罪かと思いきや、何やら事態は別な方向に重点が置かれている様子。個対組織 の構図とともに、なかなか目の離せない展開は◎。
とりあえず、下巻を読むのが待ち遠しい。
女性刑事モノを読むのは、誉田・柴田・乃南・秦、に続きまだ5シリーズ目でしかないが(誉田哲也で2シリーズ)、それらの中ではヒロインが最も可愛らしい感じ。(弱々しい?可憐?)
若干性急な展開を見せそうな恋愛模様は、このペースで進んでしまえば鼻白んでしまいそうな予感もするが………、その他サブキャラも立っているし、主人公の芯の強さも魅力。
「ハンチョウ」その他、警察小説原作の刑事ドラマが立て続けにヒットしている昨今………「アンフェア」「ストロベリーナイト」の女性主人公モノの成功も前例としてあることだし、味を占めたテレビ関係者から、そのうち映像化の話も持ち上がりそう。
あとは………ヒロインに見合うキャスト(“背が低くかなりの童顔”に見合う若さと容姿をもち、かつ“アイドル系女優主演の話題先行ドラマ”で終わらないだけの演技力も備える)が見つかるかどうかかな。
上巻時点なので、★3つの7.5ポイント
2012.05.28.了。
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本書は、黒崎視音のデビュー作品である。本書が描くのは、心理的プロファイリングにより犯人像を予想し、それにより逮捕に繋げる心理捜査官である。上梓当時、日本にはそのような警察組織はなく、全くのフィクションの構想のもと生まれた小説であるにもかかわらず、リアリティが高い描写は、視覚的でもあり、それだけ真実味を帯びているので読んでいて息苦しくもある。とても処女作とは思えない出来ではあるが、それ故に主人公の自己分析の部分が重く、全体に影響を及ぼした感がある。上巻では、捜査会議の中で孤立し、力関係の主導権争いの中に揉み込まれ過程が細かく描かれており、日本人作家の得意とする心情描写に力点が置かれた構成となっており、警察小説の好きな読者にはたまらない内容となっている。
再読
やはり、主人公を女刑事に持ってきた点が、男社会との軋轢や対比でこの物語を秀逸なものにしており、作者の狙いが奏功している。佳作と思う。
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シリアルキラーが犯人なのは良いんですけど、主人公自身も暗めのバックグラウンドを持っている上、警察内部のドロドロした部分も詳しく描写されているので、ずっと陰鬱な感じで話が進みます…暗い雰囲気が好きな方には良いんじゃないでしょうか
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このホトケはまるで陳列されているようだ…抉られた性器をことさら晒すポーズ、粘着テープ、頭部からの夥しい流血。臨場した捜査一課に所属する心理捜査官・吉村爽子は犯人像推定作業を進める。