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お艶殺し

  • 出版社:中央公論新社
  • サイズ:16cm/175p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-12-202006-9

お艶殺し (中公文庫)

谷崎 潤一郎 (著)

  • 全体の評価 21件のユーザーレビュー
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  • 税込価格:56015pt
  • 発行年月:1993.6
  • 発送可能日:1~3日

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収録作品一覧- 「お艶殺し」

お艶殺し 7-106
金色の死 107-160
不思議なペア 佐伯彰一 著 161-175

ユーザーレビュー- 「お艶殺し」

全体の評価
2.0
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2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2006/09/17 12:44

既視感を伴うお話

投稿者:松井高志(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 谷崎潤一郎が大正3年に発表した、設定を江戸時代とする小説。この本には、同時期に発表された(当時の)現代物作品「金色の死」を併載している。
 物語はシンプルな構成である。さる質屋の一人娘と手代が道ならぬ恋に落ちる。娘が積極的に唆す形で手に手を取っての駆け落ち。まるで芝居の筋書きだが、娘は芝居の筋を自分が実行してみせることに酔いしれているようである。二人は一癖ありそうな男にかくまわれるが、両方の親にかけあって話をつけてやる、と約束したこの男は、当然の如く二人を騙して甘い汁を吸おうと企む。娘・お艶は家出するや、たちまち生来の妖婦ぶりをあらわし、手代・新助をはじめ、彼女の色香に迷う男たちを踏み台にし、辰巳芸者として売れっ妓となる。そして邪魔になった男どもを噛み合わせて抹殺し、自らは新たな情夫を拵える。
 と、まぁ、たとえば「妲妃のお百」だの「白子屋政談」だのといった世話講談を読み、聴き馴れている人には、特に新味のない(途中で先の展開が読める)プロットである。それを読ませるのは、物語の視点となる手代があまりにもナイーブ(ウブ)で、彼があれよあれよという間に道を踏み外していくテンポと、ラストに象徴される近代小説の非情さによってであろう。講談だったら、お艶は因果が身に報いて殺害されるのであるが、ここではそうではない。勧善懲悪の退屈なお話なんかではないのである。
 前述の通り、この話は基本的に手代・新助の経験する物語であるはずである。だが、視点が必ずしも新助に固定されておらず、必要とあれば適宜全知描写にスイッチされる。本来、新助の見えないものは、描けないのが近代小説のルールである(去っていく人間は後ろ姿しか描けない)。このあたりの「ルール破り」は、いかにも日本の小説らしい。「いけない」というのではない。これが「ローカル・ルール」であるということなのだ。
 それよりもこの小説に問題があるとすれば、文庫本100ページを費やしながら、文庫本20ページ相当の古典落語「夢金」の方が、同じ家出娘と彼女を巡る男どもの思惑を描きつつ、お話として数段面白い(イマジネーションを刺激する)のはなぜか、ということなんである。それは、やがて果たして日本に小説というものは必要なのか、という問いに連続するであろう。私は、「お艶殺し」を1回読む時間があれば、「夢金」を5回聴くべきであると思う、今のところ。

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