- 出版社:文芸春秋
- サイズ:20cm/293p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-16-322640-0
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商品説明- 「弱法師」
難病を抱える少年と、少年に父親を超えた愛情を抱く義父との交流を描く表題作など、激しくも狂おしい愛の形を描く3篇を収録した中篇小説集。『別冊文芸春秋』掲載を単行本化。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧- 「弱法師」
| 弱法師 | 5-80 | |
|---|---|---|
| 卒塔婆小町 | 81-200 | |
| 浮舟 | 201-293 |
著者紹介- 「弱法師」
中山 可穂
- 略歴
- 〈中山可穂〉1960年生まれ。早稲田大学教育学部英語英文学科卒業。93年「猫背の王子」で作家デビュー。「天使の骨」で朝日新人文学賞、「白い薔薇の淵まで」で山本周五郎賞を受賞。
ユーザーレビュー- 「弱法師」
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2007/07/21 21:25
魂が燃えて燻るまでをここに。
投稿者:空蝉(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
中山氏の作中人物の放つ言葉は、こちらがこっ恥ずかしくなる程まっすぐ・直球である。そして真っ直ぐであるがゆえに脆く折れやすい危うさを含んでいる。こぎ続けなければ倒れてしまう自転車のように、ひたすら加速していく物語を、中山氏はいつもつむいでいるように思う。
それは中山氏自らも公言するレズビアンという違和感=世界からの疎外感が、彼らに安穏とした生き方を許さないというスティグマを刻んでいるからかもしれない。ともあれ、今回収録されている3篇は珍しくレズビアンを積極的には取り上げてはいない。どれも中性的でそういった問題は2次的な問題として隠れてしまっている、つまり性別を超えて魂の出会いと別れがそこに描かれているからなのだと私は思う。ただひたすら彼らメインキャラクター達の内面から始まり彼らの中でだけ完結する物語となっている。
だからこそ彼らの激しい熱情はこちらに一層ダイレクトに伝わり訴えかけてくる。先のわからない結末ではなく、なんとなくこうなるであろうラストを私達は暗黙の了解として知っている、そのラストに向かってひたすら加速していく。
まず1「弱法師」。薄命の義理の息子にほだされて挙句捨てられる男の物語なのだが、正直いって薄い。逆にキャラがカッコよく、血反吐を吐くような豪速球の人生を描いている「卒塔婆~」には巻き込まれるようにのめりこんだ。3篇とも好き嫌いはバラつきあるだろうが、全体を見るとなんだか音楽・・・「月光」のようだ・・・第一楽章がスローテンポで、第二楽章が熱情の様なアップテンポ、第三楽章でしっとりと纏め上げられる。まさにこの3作でもって『弱法師』が出来上がっている。全体のバランスがいい。
第二章『卒塔婆小町』
能の卒塔婆小町と同じく、ある落ち目作家が墓地で薄汚いホームレスの婆と出会い彼女の過去が語られることで物語が始まる。彼女はかつては若き美しいやり手の編集者で妬みと競争の中、愛を知らずに必死に走り続けていた。12歳も年下の新進気鋭の純愛小説家と出会い愛されてしまうことから悲劇は始まる。小野小町に中将が100日夜這いをしたのと同じ、100本の作品を彼女にプレゼントした時彼女をモノに出来るという破格な条件の下、彼はそれこそ血反吐を吐く思いで書き続ける・・・やがて彼の精神も肉体も蝕まれ何もかも出し尽くしてしまう。
この『卒塔婆小町』が私の一番のお気に入りだ。それはまさしく性別を超えた魂のせめぎ合いが狂おしいほどに私を魅了するからに違いない。
燃えるきるようなこの第二章を包み込むような1、3章。まさにこの本一冊で一塊の熱、発火から燃え盛り燻るまでの一連の魂の炎なのだといえる。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2004/12/07 18:37
ぎりぎりと胸を締めつけて離さない恋愛小説集。殊に、「卒塔婆小町」の一編にやられました!
投稿者:風(kaze)(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
身を焦がすような、ただでは済まされないような、そんな深くて苦しい愛の思いを描いた作品が三つ。
秘めやかな、それだけに一層激しい気持ちとなって湧き上がってくる恋する気持ち。かなえられない相手への想い。弓の弦を振り絞るような緊張感をともなって、愛する者の苦しみが描き出されていく話に、胸を噛むような思いにとらわれました。
難病にかかった少年と、彼の治療にあたる医者の物語……「弱法師(よろぼし)」。
出版社の女性編集者と、彼女に捧げるために小説を書いていった作家の物語……「卒塔婆小町(そとばこまち)」。
薫子(かおるこ)おばさんとある人物との秘められし恋模様を、高校生の碧生(みどりお)の視点から描いた「浮舟(うきふね)」。
どの作品も読みごたえがあり、切なく、苦しい気持ちになりました。殊に、「卒塔婆小町」の話にやられました。強く心を掴まれ、揺さぶられました。
「卒塔婆小町」は、落ち目の作家が墓地に来て、そこでホームレスの老婆と出会うところから話が始まります。そして、このおぞましい姿をした老婆が並々ならぬ才能を持った編集者であったことを知り、彼女から“昔の恋の物語”を聞くことになるのですね。天才的な作家に愛され、彼の愛に対して、作品を書かせるということで応えた編集者の物語を。
まさに身を削るようにして、精魂込めて小説を書いていく作家。彼が心底自分を愛していることを知りながら、編集者として距離を置いて接していく彼女。ふたりの悲劇的な愛の行方を予感させる話。ぞくぞくしながら読んでいって、強く心を揺さぶられました。
本の帯の裏に、>と、著者からのメッセージが記されています。その言葉にも惹かれて読み始めた三つの恋愛小説集。私にとっては、とにかく「卒塔婆小町」という名品に出会えたということで、忘れがたい一冊になりました。
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2004/05/03 00:49
石田衣良がサラリとした恋愛小説を得意とするのとは対照的に、中山可穂は濃密な恋愛を描かせたら天下一品である。
投稿者:トラキチ(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
久々に中山可穂さんの新刊を手にとって見た。
まるで魂を抜かれたような作品だ。
3篇からなる能の世界をモチーフとした中編集である。
月並みな言葉であるが3編それぞれが“秀逸”なのである。
従来の中山さんの作品(全部読んでませんが)の描いてきたもの(ビアン中心)と比べて、より深い次元の世界に突入した感じが強い。
きっと中山さんを支持する読者数も一気に増えそうな傑作作品である。
テーマは“かなわぬ恋”。
どの話も切なく心に残る。
表題作となってる「弱法師」は不治の病に苦しむ少年と彼を必死に助けようとする義父兼医師との純愛が描かれている。
「卒塔婆小町」はかつて編集者であったホームレスの老女と作家との狂気に満ちた恋が熱く語られる。
なんといっても聞き手役で作家志望の男、高丘の前向きなラストが印象的だ。
個人的にはラストの「浮舟」がベストかな。
真の親子愛や兄弟愛に渇望されてる方には恰好の作品となっている。
主人公碧生の成長小説としても読める点が他の2作品よりも印象深い。
本作は今まで少し偏見を持っていて中山さんの作品を敬遠されてた方にもきっと気に入っていただける作品だと思います。
大切に一字一字読んで感動を胸に沁み込ませて欲しいと思う。
ちなみに私は思わず読み終えてゆっくりと2〜3回深呼吸してみた。
どっぷりつかった証拠かな(笑)
凄く悲しくて痛々しいが、不思議と明日への活力となる作品であると確信しております。
トラキチのブックレビュー







