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ΑΩ 超空想科学怪奇譚(角川ホラー文庫)

ΑΩ 超空想科学怪奇譚 (角川ホラー文庫)

小林 泰三 (著)

  • 全体の評価 52件のユーザーレビュー
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  • 税込価格:82023pt
  • 発行年月:2004.3
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ユーザーレビュー- 「ΑΩ 超空想科学怪奇譚」

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2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2011/01/07 15:49

「超空想科学怪奇譚」などという副題が付いているが、角川の編集者はアホか?

投稿者:消息子(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 地球に2つの異星生物が降下する。赤い玉を青い玉が追っている。青い玉の宇宙人は誤って人間を死なせてしまったため、彼に同化して命を繋ぐとともに、地球上で活動する基盤を得る。普段は人間として活動するが、敵である赤い玉の生物と戦うときには、銀色の巨人に変身する。しかし、地球上ではその変身態は短時間しか維持できない。
 それは『ウルトラマン』のストーリーだろうって? 『AΩ』のストーリーです。
 明らかに『ウルトラマン』を意識した、ある種の怪獣SFである。角川ホラー文庫に収録とあって「超空想科学怪奇譚」などという副題が付いているが、角川の編集者はアホか?
 ホラーの意匠を借りているのはプロローグ。航空機事故で死んだ、別居中の夫が蘇って、起き上がり、妻の腕をつかむ。悲鳴を上げる妻。
 ところが蘇るのには上記のような理由があるのだから、ホラーにはならない。ウルトラマンに当たるのが、ガ。プラズマ生命体である。情報のみで定まった肉体を持たない生命。ガはそんな「一族」の中のトホホな存在。繰り返す失敗の末、起死回生を期して、困難な任務に挑む。「影」を追うのだ。
 「影」とはこの宇宙の物質より2分の1スピン小さい素粒子によって構成されているために、この宇宙の物質とは干渉し得ない何者かである。干渉し得ないとはいっても、重力だけは共通して影響を受ける。「影」はこの唯一の回路を通して、オートマトンをこっちの世界に送り込んできた。目的はよくわからないが、明らかに「一族」にとって危機だ。この「影」の破壊がガの任務である。地球に向かった「影」を追ったガは飛行機に接触し破壊してしまう。
 ガによって疑似細胞を補填されて蘇った男は諸星隼人。諸星ダンとハヤタ隊員を合成したような格好いい名前だが。どうやら彼は彼で人間社会の中ではかなりトホホな男だということがわかってくる。そんなトホホ同士でも、互いに目的はまったく違う。「影」と戦うときには不要な色素はなくして白色の体で、と描写しつつ、それを「銀色」と言わせてみたり、戦闘体の出す声が「ジュワ」とかだったり、随所にオマージュが。
 「影」と戦う度に肉体がズタボロとなる隼人にとってはいい迷惑だが、ガなくして隼人の生存もない。そんな共生状況にあって、やがて、妻を助けに行こうとする隼人とガが心を通わせる部分は感動的。ファースト・コンタクトSFでもあるのだ。他方「影」ははじめは怪獣のような形態を取ってガと戦うが、やがて地球生物に干渉し、ドロドログチャグチャズルズルと壊滅的な状況になってくる。破滅SFでもあるのだ。
 そして最後は宗教SF、哲学SFをかすめて、硬質な抒情のもと終結を迎える。傑作である。

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1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2004/03/24 20:43

ハードSFウルトラマン

投稿者:のらねこ(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 プラズマ生物、というものがいたと思いねぇ。広範囲・低密度に広がり、ある程度自分の体の形や大きさ、構造を、自分自身の意志で作り替えることができ、知性があり、膨大なエネルギーを体内に秘めていて、宇宙にぷかぷか浮かんでいる……そんな生物を。そんな生物でも知性があり、仲間同士で社会を作っている。社会という物があれば、当然、そこから落ちこぼれるのも出てくる。本人のミスや偶然が重なり、不本意ながら種族内で「落ちこぼれ」になってしまった「ガ」が、本書の主人公(の一人)だ。「ガ」は、名誉挽回を計って、種族全体に不利益な(同時に、正体がいまだ判然としていない)敵、「影」を追って、本来の住処とはまったく異なる環境である地球上に降りてくる。
 その途中、「ガ」と「影」の追跡劇に巻き込まれ、墜落した旅客機にたまたま」居合わせた諸星隼人が、もう一人の主人公だ。諸星は奇跡の生還(実際には、「ガ」による恣意的な身体の再生)し、以後、「影」によって怪事件が起こるたびに、「ガ」によって「超人」に変身して戦うようになる……。
 はい、ここまで書けばわかる方には分かりますね。大まかなシュチュエーションは「ウルトラマン」です。でも、これ、著者が小林泰三でレーベルが「角川ホラー文庫」なんですよ。かなりスプラッタ、グロテスクな描写が盛り込まれていて、なおかつ、ハードSF的な考証もかなりしっかりやっています。
 個人的にはグロ関係の描写はあまり引っかからなかったけど、「ガ」の種族の生態とかの設定とかがかなり作り込まれていて、そのあたりだけでも面白かったです。あと、「影」(一種のオートマトンか? 「影」自体の意志はあまり感じられない。プログラムされたままの行動をルーチンでやっている、という感じで)の影響を受けた人間たちの行動のばかばかしさ、愚かさに大いに失笑。宇宙生物の「ガ」が、全キャラクターの中で一番まともに見えるのってどうよ?
 設定とかはかなり突飛だけど、意外なところで笑えて(まあ、苦笑がかなり混ざっているんだけど)、意外な所で一種の詩情がある(特にラストは、いい。かなり、いい)。なんだかんだいって、かなりお得な一冊でした。

酩酊亭亭主

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