ラストホープ (創元推理文庫)
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- 税込価格:756円(21pt)
- 発行年月:2004.6
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ユーザーレビュー- 「ラストホープ」
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2004/08/18 23:59
ほのぼのとあったかい読後感…お勧めクライム・コメディ
投稿者:べあとりーちぇ(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
『ダブ(エ)ストン街道』があんまり面白かったので、浅暮三文氏の著作をもっと読みたくなった。何かないかなあと書店の棚を漁っていたら、文庫特別書き下ろしだという本書を見つけて即購入。帰宅するのももどかしく一気読みしてしまった。
面白かった。解説の杉江松恋氏によれば、過去、浅暮氏はコント作家をなさっていた時期もあるのだという。たぶんそのコントも、小粋で洒落ていてちょっと皮肉が利いていて、例えて言うならチャップリンもののような雰囲気だったに違いない。なぜなら本書で味わえる笑いが、何となくそんな感じだからである。
元宝石泥棒の2人組、東堂と刈部が営む釣具店「ラストホープ」。主な商品は東堂が趣味全開で仕入れてくるとっておきの竿だったり、手ずから巻く疑似餌(フライ)だったりする。「どうしても釣れない時にご相談ください、きっとお力になれます」…そういう自信が店名の由来らしく、2人ともフライフィッシングに関してはかなりの通である。
とはいえ店の経営は結構苦しく、営業担当の刈部は金策にいつも四苦八苦している。そんな折、拾ってきたファクシミリに奇妙な依頼が舞い込んだ。「多摩川産の山女魚を釣って来て下さい。1匹につき2万円進呈します」。
あからさまにアヤシイ依頼。しかし刈部はいい小遣い稼ぎと乗り気になる。そしてこれがすべての始まりだった。なんとこの山女魚が、7年前の一億円強奪事件のカギだというのだ。
多摩川の氷川大橋の下で山女魚なんか釣れるんだ、へえ〜と正直思った。東京もまだまだ、その気になれば十分ワイルドライフを満喫できるらしい(多少のインチキはあるのだが)。その山女魚を巡って、ラストホープの2人組と、やることなすこと笑えるヘンな3人組、野球帽を被ったデコボココンビが追いつ追われつする。小ネタやくすぐりがふんだんに散りばめられていて、ついついクスリと笑ってしまうこと請け合いである。
コメディタッチのストーリーでもディテールは凝っていて、各章の扉に載っている東堂と刈部の「フライに関するセールストーク」は実に専門的で薀蓄に富んでいる。しかもその内容がストーリーに絶妙のタッチで絡んでくるあたり、本当にお見事である。シャーロッキアンならば思わずニヤリとせずにはいられない仕掛けもあったりして、サーヴィスは満点。
1億円強奪事件の笑うに笑えない真相や、思いがけなくも切実な、それでいて結構夢のある動機、ひたすら元気なおばあちゃんたち、ラストホープ組のきりきり舞いなどが、テンポ良く小気味良く配置されていて飽きさせない。根っからの悪人も一人も出てこないあたり、浅暮テイストなのかなあと微笑ましかった。
戦い済んで、日は暮れて。いろいろなことに振り回されすぎてうんざりしている東堂と全然懲りてない刈部の後日談、そしてラストシーンの新聞記事の内容が実にステキである。
読み終わった後、思わず渓流のフライフィッシングに出かける自分の姿を想像してしまうような、爽やかでほのぼのした満足が味わえる。元気付けたい友人が居たら、さり気なく本書を手渡してあげたい。そんな気持ちになる1冊である。
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2004/10/28 23:11
いい年をした男が手玉に取られる話が、好きではない。私が思う男性像とかけ離れているからだ。ユーモアよりもどかしさを感じるのは私だけ?
投稿者:みーちゃん(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
さすが、クライム・コメディと断るだけのことはある、といいたいほどに間抜けなコンビの登場。ともかく学習効果ゼロの二人なのである。いい加減にしろよな、またやられるのかよ、と呆れること限りなしである。だって、凄く格好いいはずじゃん、男たち。どう読んだって、こんなに馬鹿なはずないじゃん、と思うのである。
いつもの私なら、絶対に投げ出す。ブンブン振り回して、失せろ!ってごみ箱に捨てるはずである。でも、なぜか憎めないというのが浅暮三文である。1959年の作家は、京極夏彦、森博嗣などとともにメフィスト第一世代とでもいうのだろうか、安定した文章力と人物造形、京極、森、あるいは東北の巨人伊坂たちほどエキセントリックではないまでも、文句のつけようが無いのだ。
「東堂と刈部が経営する釣具店《ラストホープ》に届いた一枚のファクス、それがすべての始まりだった。病床のちちのために多摩川の山女魚が欲しいとの依頼を受け、東堂は山女魚を釣り上げるが、その途端何者かに襲撃される。困惑する二人はいつしか一億円争奪ゲームの真っ只中に。〈最後の希望〉を売る店の、愉快な悪漢コンビが奮闘するクライム・コメディ。『石の中の蜘蛛』で日本推理作家協会賞を受賞した鬼才が放つ、文庫特別書き下ろし。」
プロローグ「Appetizer アペタイザー」、第一章「Last Hope ラストホープ」、第二章「Persuader パースウェイダー」、第三章「Dad's Favourite ダッズ・フェイヴァリット」、第四章「Ace of Spades エース・オブ・スペード」、エピローグ「Angler's Curse アングラーズ・カース」、用語解説、杉江松恋の解説。
でだ、各章の扉には、「お買い求めいただいたラストホープ・フライセレクションをフライボックスの番号順に紹介します」となっていて、フライの写真があってそれに悪漢コンビというか、凸凹コンビが解説を書くという趣向。で、そのフライの名前というのが、タイトルのわけである。
Illustration:デン・ワバン・ジョー、Cover Direction & Design:岩郷重力+WONDER WORKZ。装幀の岩郷重力+WONDER WORKZ。は、最近のエンタメ系作品でよく見る名前だが、イラストの電話番をもじったであろうデン・ワバン・ジョー、このひとの装画は秀逸である。完全にジャズしてるっていうかスゥイングしているっていうか、ノリノリなのである。
お話のほうも、変にコメディせずに、それでいてちょっとネジが緩んだような、え、それなに、風な展開をしていて、かなり無理あるんじゃあないのと、冷静に考えれば思ってしまうところを、ま、いいか、てなふうに読者を煙に巻きながら快調に進んでいって、あんなことまでされて怒らないんだ、いい人なんだ、でもヒトラーはないよな、ふむふむとなるわけである。
ついでに書いておくと、長女は、この本に出てくる自動車のエピソードがまったく理解不能だったという。同感である。それをスラプスティック、映画にしたら面白いなどといった杉江の解説は、正直、仲間内のヨイショである。巻末解説の限界か。
何言ってんだか分からない人に、ぜひ一読してほしい。360頁720円、1頁あたり2円というのはちょっと高いかな、でも中公文庫はもっと高いし、書き下ろしだしなあ、と割り切れば十分お釣りがくるのである。む、「お釣り」、いい言葉ではないか、まさにこの本にぴったりである。それにしてもなあ、年齢不詳の登場人物がいっぱいなんだけど、違和感はまったくないわなあ、なイワナ…。
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2004/10/25 00:18
著者コメント
投稿者:浅暮三文(不明|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
BK1の皆様、どうも浅暮です。新作ができました。創元推理文庫から書き下ろしのクライムコメディ「ラストホープ」が好評発売中です。献本した作家・評論家諸氏から「おもろかったで」「一気に読んでしまいました」と感想を頂戴し、ふふふ、なかなか好調じゃないかと自画自賛しております。大量殺人も児童虐待も出てきませんが、代わりに釣り師と泥棒とアヒルが出てきます。一億円を巡る事件に温泉とグルメ情報も満載といった物語です。どうぞ、お楽しみに。浅暮拝







