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ぐるりのこと

  • 出版社:新潮社
  • サイズ:20cm/170p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-10-429904-9

ぐるりのこと

梨木 香歩 (著)

  • 全体の評価 56件のユーザーレビュー
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  • 税込価格:1,36539pt
  • 発行年月:2004.12
  • 発送可能日:24時間

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商品説明- 「ぐるりのこと」

イギリスの断崖に立って思ったこと、トルコの女性に出会った話…。喜びも悲しみも深く自分の内に沈めて、今いる場所から、一歩一歩確かめながら考えていく。静かに、丁寧に、世界と心かよわせるエッセイ。【「TRC MARC」の商品解説】

著者紹介- 「ぐるりのこと」

梨木 香歩

略歴
〈梨木香歩〉1959年生まれ。児童文学者のベティ・モーガン・ボーエンに師事。著書に「西の魔女が死んだ」(日本児童文学者協会新人賞等)、「裏庭」(児童文学ファンタジー大賞)など。

ユーザーレビュー- 「ぐるりのこと」

全体の評価
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4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2008/06/22 08:10

ひたひたと考えたいことが次々に浮かぶ…

投稿者:佐々木 なおこ(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

著者のデビュー作『西の魔女が死んだ』が映画化され、昨日が封切の日だった。
この映画は絶対に見たいぞ!と思いつつ、本棚にふと視線を移したら、この本と目が合った。
久しぶりに取り出したこの一冊!
最初は立ち読みしながら、とうとう座り込んでほとんど読んでしまった。
以前読んだ記憶が薄れる中、今回はまた違ったところで
深く深く響くものがあった。
梨木香歩さんの数年前のエッセイだ。

「九州山地の外れの山に、小さい小屋を建ててから数十年になる。」という梨木さん。
あふれんばかりの自然に囲まれて日々を過ごされている。
そんな気配をページのあちこちから感じる。
そしてきっとその様子は映画『西の魔女は死んだ』の舞台に似ているのでは?とそんな想像をかきたてる。
彼女は植物に対する想いが人一倍なのだ。
そうしてそのまなざしは動物にも向けられる。

それは例えばお住まいの山小屋から程近いところで偶然にも出くわした若い鹿の話。
バンビのような風貌に見とれてしまった彼女、
はたしてバンビも彼女を見つめ返していた。
そして数年後、同じ場所、同じ時間帯に立派な雌鹿に出くわす。
見事な角とふさふさとした毛並みに、思わず見とれてしまった。話はこう続く。
「帰宅してからも、不思議なこともあるなあ、とまだそのことを考え続けていて、はたと、気づいた。本当はもっと早く気づいても良さそうなものだった。前回のバンビと今回の立派な雌鹿は同一個体ではあるまいか。」

カラスの話もある。
旅行中、急ぎの用事を抱えた彼女が瀕死のカラスとわずかな時間に目を見つめ合わせながら想いを交換する。
これはすごいなとただただ思った。

また、旅の途中に角館の美術館では大きな岩を見つける。
そこからまた一つの扉が開く。
「気持ちがすっと入っていきそうな木々や岩に出会うと、思わず手を当てて、なにか語ってくれるのを待つことが、私の習い性になっているけれど、この岩が、こうして自らの由来を語ってゆく。」
この岩のささやきに気づく彼女に圧倒された。
その後、「実は会いたい木がある」と日光の植物園へ行くのだが、「これはまた別の話」とあって、続きがぜひとも聞きたいなぁと思った。

さらに忘れられない場面はイギリスの断崖を友達二人と散策したときの話。
「不思議な静けさに満ちていて、それていて開かれている」そんな風貌の人とすれ違う。
そこで交わす数少ない言葉が実に深い。余韻が残る。

~もっと深く、
 ひたひたと考えたい。
 静かに丁寧に世界(ぐるり)と心かよわせるエッセイ~

と、本の帯にあった。
読みながら、ひたひたと考えたいことが次々に浮かぶ…そんな感じのエッセイだった。

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3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2006/05/10 15:52

『沼地のある森を抜けて』の精神性を生で感じたような思いがします。

投稿者:紗螺(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

何て、深く、広く考えが広がっていく随筆なのだろう。随筆、という言葉でくくるのはもったいないような感じが、正直言ってする。著者の言葉の数々が、ある時は美しくて立ち止まり、ある時は不思議と静かで浸りたくなり、ある時は深く考えさせられ…。何とも不思議な書物、という思いが、私の心に広がってやまない。
簡単ではない、のだ。いや、簡単にさらっと読んでしまうこともできるだろうけれど、例えば「境界を行き来する」という章で著者が言っていることは、実はかなり難しい、と思う。例えば。「共感」することは境界を越えることではない。キリスト者の社会活動も、「こちら側」の私が、「向こう側」のあなたに施す、という自己完結の方法であって、意識レベルでは境界を越えていない。この論を読んだ時、私は自分のむずがゆいところをかいてもらったような気がした。深い、と思った。じゃあどうすればいいのか。そこからは、個人が考えなければならないことになるけれど、意識を「開く」こと。これが大事なのだと、ドーバーの光景をバックに語られたこの論は示唆しているように思われる。この著書の魅力的なのは、次から次へ、無理なく話題が移っていくことで、この論の後に「鳥の世界」こそ「境界の向こう側の世界ではないか?」という話が続くのも面白いのだが、他に私が興味深いと思った別の箇所に敢えて移ろう。
それは著者がトルコへ行くと、「普段は外界に向けていればすむ集中力が、何をしていても自分の内界に向いて」しまい、「『自分』という透明なカプセルの中にいるよう」になる、「『自分』の濃度が内側でどんどん上昇していってしまう」というのだ。日本では今たくさんの人が外国へ行くけれど、このようにある意味敏感に空気の違いを感じる人が、どのくらいいるだろうか。実は私は自分が外国へ行った時のことを思い出して、恥じた。見るものに目を奪われて、そんな風に感じてなどいなかったような気がするからだ。もちろん、そう感じなければならないというものではない。ないが、「自分」の濃度が上昇する、という著者の鋭敏な感覚はとても大事にするべきもののように思う。
ああ、いい感覚だなあ…と思いながら読み進めていた時、更に、何とも言えずよい言葉に出会った。
「もっと深く、ひたひたと考えたい。生きていて出会う、様々なことを、一つ一つ丁寧に味わいたい」
素敵な物語をつくる著者の生き方を、垣間見させてもらったような一冊だった。

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2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2010/09/28 09:07

心を開く種子をそだてたい。それはとても難しいことだけれど。

投稿者:プラチナ若葉(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

この本に出会うべき時期に出会ってしまった。
いきなり最初の章から排他的経済水域に入った不審船を海上保安庁が銃撃・撃沈したという10年ほど前に起こった事件について考察している部分があるからだ。今日本が揺れている事件を彷彿とさせる。
この頃の事件とは相手側とこちら側の状況が少々違うこの過去の事件について思いだし、10年前から今に至るまで、私たちは全く進歩がないことに気付き、少し悲しくなる。
私たちには猛々しく生きるか卑屈になるしかないのだろうか。主義も思想も違う相手に対してお互いの物語を胸を開いて理解しあい、両方の思考回路を自然に変化させていくことはできないのだろうか。
著者は感受性の鋭さで、身の回りの生活にかかわる人たち、旅先の人たちや、動物や植物に対してまで「共感できるものがあるのではないか」と心を開こうと努める。それでも相変わらず山小屋の隣人とはささやかな攻防が続き、旅先のガイドとはなかなかしっくりとはいかず、共感や理解とは正反対の方向の事件が起こり、世の中が動いていく。
しかしこの著者はあきらめず、個人としてできる気の遠くなる作業を続けていこうと決意している。
自分というものを持ち卑屈にならず、ちがう物語を持つ相手に心開くことはとてもむずかしい。夢中になってのめりこむうちにお互いの間に横たわる断崖から落ちてしまいそうになる。それでも著者は心を開き他者と共感できる新しい物語を紡ごうとするのは、著者はウエスト夫人と出会い心を開くという姿勢の種子を受け取り、大切に育ててきたからだろう。そして私もこの本を読むことでタンポポの綿毛のようにはかない心を開く種子を受け取ることができたのではないかと思う。
私はこの種を大切に育てたい。まずは身のまわりの「ぐるりのこと」から。ひそかに共感しあう相手を増やすことで、たくさんの人が紡ぐ新しい物語を作り上げるきっかけになるのなら。

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2004/12/24 22:02

梨木さんの思いが、凛として立ち上がってくる

投稿者:風(kaze)(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 日本を始め、英国やトルコなど、梨木さんが訪ねた土地にまつわる思い出。執筆当時に起きた幼児殺害事件やイラク人質事件の報道と、それに対する国内世論の反応に接して考えたこと。映画館で『ラスト・サムライ』を観て、「西郷隆盛」的生き方とは何なのか、思いをめぐらせてみたこと。
 こうした、梨木さんの身の回りで起きた“ぐるりのこと”について、心の奥から立ち上がってきた思いを綴ったエッセイ集です。季刊誌「考える人」2002年夏号から2004年秋号に掲載された八つのエッセイ。梨木さんの心にふつふつとたぎる思いが言葉によって解き放たれたような、そんな味わいがありました。

 初夏の午後、英国のセブンシスターズの断崖を、米国人の知人と散策した時の思い出を記した「境界を行き来する」。不思議な静けさに満ちた英国の黄昏のひとときを振り返りながら、梨木さんの思いは、“自分”と“境界の向こう側”とを繋いでいるものへと羽ばたいて行く。思索がふわりと飛翔し、自由に空を舞う風情に引き込まれました。

 E・W・サイードの自伝『遠い場所の記憶』を読んで感じたことから始まり、イラクの人質問題、日本人の国民性へと梨木さんの思いを語って行く「群れの境界から」の第二部。日本民族主義の“歪んだ同胞意識”について思いをめぐらせたこのエッセイは強く共感を覚えるもので、なかでも次の文章が印象的でした。

 >(p.147より引用)

 ひとりの“個人”としての意識よりも、民族共同体としての“群れ”の意識を優先させる傾向を持っている日本人の国民性に対して、>とは言い得て妙。日本人のひとりである自分も、その共同体意識に知らず流されていることはないだろうか、いや、きっとあるに違いないと、ハッとさせられたのです。ここからさらに、流浪の生活を送ってきたある民族の“ノスタルジー”へと、梨木さんの思いは転じて行きます。凛とした文章からほとばしるものに、何か圧倒されるような読みごたえを感じました。

 ところで、それぞれのエッセイの出だしと途中の言葉の何文字かが、他の文字と比べて太く、大きく印字されています。見た目にアクセントをつける意味で、こういう体裁にしたのでしょうか。率直に言って、これはいただけませんでした。この大・太文字の所で、せっかくの話の流れが寸断される気がして、かなり違和感を覚えました。

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1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2005/03/30 11:00

心の中で静かに「ぐるりのこと」ことが広がっていく…そんな1冊でした。

投稿者:エルフ(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

梨木さんの本を読んでいるといつも心の中がシンと静まり返り、梨木さんの言葉に静かに耳を傾ける…そんな気分になります。
今回のエッセイは梨木さんの回りでおきた「ぐるりのこと」が丁寧に綴られています。それはまるで池や湖に石を投げたときに広がる波紋のようにふとした出来事から輪になり次第に広がってゆく梨木さんの視点の大きさに驚かされるとともに何気ない出来事にも「考える」ことの素晴らしさ想像力の凄さを感じさせられたエッセイでした。
日々世界では色々な事件や出来事が起きています。
ただ日常の中で話題に出てもそのことに関して一人で深く考えることはあまりありません。でもこのエッセイでは一つ一つの出来事についてまずは自分の中で奥深く煮詰めてから綴られているので読んでいると梨木さんの伝えたい言葉の渦に埋もれていくような感覚がありました。
決して激しさや押し付けがましさはなく、ただ静かに、ゆったりと広がる梨木さんの言葉に酔いしれられる1冊でした。
でもこれだけ静かな書かれているにも関わらず梨木さんの物語を作る、物語を書いていくという意志の強さに最後は圧倒されるものがあるのですよね。

丁寧に書かれた分、丁寧に読みたい、そう思える1冊でした。

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2004/12/21 14:13

内容紹介

投稿者:新潮社(不明|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

もっと深く、ひたひたと考えたい。生きていて出会う、一つ一つを、静かに、丁寧に。

イギリスのセブンシスターズの断崖でドーバー海峡の風に吹かれながら友と交わした会話、トルコのモスクでのへジャーブをかぶった女たちとの出会い、イラク戦争の衝撃、少年少女による殺害事件への強い思い——喜びも悲しみも深く自分の内に沈めて、今いる場所から考えるエッセイ。

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