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エリコの丘から 改版(岩波少年文庫)

エリコの丘から 改版 (岩波少年文庫)

E.L.カニグズバーグ (作), 金原 瑞人 (訳), 小島 希里 (訳)

  • 全体の評価 51件のユーザーレビュー
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  • 税込価格:75621pt
  • 発行年月:2004.11
  • 発送可能日:24時間
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ユーザーレビュー- 「エリコの丘から 改版」

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4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2011/02/06 15:47

スターになるのに必要な三つ目のもの

投稿者:wildcat(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

なじみある岩波少年文庫だが、E.L.カニグズバーグは、私にとっては初めて読む著者だった。

検索結果から書誌をざっと眺めてみると、11歳、12歳、13歳あたりの少年少女を主人公にしたお話が多いようだ。

同世代で出会うとより共感できる作品だと思う。

本書の主人公・ジーンマリーは11歳。

文体は、一人称で、ジーンマリー自身が当時のことを振り返っていて語っている。

ジーンマリーの母親は空港の荷物検査員で、ケネディ国際空港の検査員に抜擢されることとなり、母と娘は、トレーラーハウスでテキサスからロングアイルランド島へ引っ越してくる。

時代設定は、荷物検査をすべて人手でやっていた頃(その後も上映されていた映画とかコンピュータの描写などで時代が感じられる。)とちょっと昔だが、学校の雰囲気はそうそう今とは変わらない。

ジーンマリーは、転校して三週間が経つけれど、まだひとりで昼食を食べている。

周りは、「クローン人間どうしで仲よしグループ作って」いて、「クローン人間は、移動住宅ではなく家に住んでいる。両親がそろっている。母親は、PTAのバザーにケーキを焼いて持ってくる。電話をかけあって何時間もおしゃべりする。世界が始まって以来の親友どうし。クローン人間は、ぜったいにひとりっきりにならない」という具合だ。

同類同士が固まり、周りから浮かないようにしながらもその中で優位でいたいとする様子。

時代や場所が変わっても、学校というのはそういう場所のようだ。

ある日、ジーンマリーは、アオカケスの死体を見つける。

追いついてきたマルコム・スーに、「この鳥を埋めるの、手伝ってみたくない?」と持ちかけるジーンマリー。

ジーンマリーとマルコムは鍵っ子という共通点がある。

彼らには親がひとりで、仕事は季節ごとに波があるという共通点があったのだ。

ちなみに、ジーンマリー曰く、「クローン人間には、鍵っ子はいない」。

「エンパイヤ地所移動住宅駐車場の敷地からぜったいに出ちゃだめ」と厳しく言われていたふたりだが、「人がごみごみと暮らしている場所からはできるだけ遠いところに埋めてやろう」ということになり、「敷地の一部ではあるけれど、まだトレーラーを止められるようには整備されていないところ」まで歩いて行った。

知らないうちに出ていた空き地は、カケスを埋めるのにぴったりと感じた。

几帳面で数学的才能に恵まれていて科学でノーベル賞を取ることが夢のマルコムと劇場の名前になるぐらいの大女優になることが夢のジーンマリーは、一緒に生き物を埋めることで仲良くなっていく。

墓地の名前はジーンマリーがつけた。

「エリコの丘」と。

この名前は、自分の声で聞こえてきたのだった。

名前の響きが気に入って、そのときどういう意味を持っているのかわからなくてもぴたっとくることがある。

ふたりにとってこの名前はそういう名前だった。

あるとき、ふたりは、死んだダルメシアンを見つけてしまう。

またエリコの丘に埋めようとシャベルで穴を掘っているとマルコムが穴に吸い込まれ、そして、ジーンマリーも。

穴の中には部屋(ラハブの宿と名付けられている。)があり、タルーラの名乗る女性がいた。

タルーラは、生きていた頃は大女優だったらしい。

ふたりにある「宿題」をしてほしいらしく、ふたりを地上に透明人間の状態で戻すという。

「オルゴン」を通ると透明になり、「パピヨン」(フランス語で蝶々、魂を象徴する。)というと「ラハブの宿」に戻ってくる。

透明人間として地上に戻る試験を2回済ませ、タルーラが亡くなる時に身につけていたのだがなくなってしまった「レジーナの宝石がついているネックレス」を探すことが目的の冒険になっていく。

タルーラの魂が肉体から抜ける瞬間に意識が遠のいたのだが、霊体になってまた周りが見えるようになった時には自分の首元からそれがなくなっていたのだという。

  だれからも見えてないけれど、わたしたちは、本当に、ぜったいに舞台の上にいるんだ。

  こんなふうに感じたのは初めてだった。

  もちろん、これまで透明になったことなんかなかったけれど、でも、そのことよりも、もっと不思議なことがある。

  この透明人間は、わたしであって、わたしじゃないんだ。

普通の生活を続けながら、タルーラに呼ばれたとき(タルーラの犬のスポットがエリコの丘に現れたとき)はラハブの宿に行き、オルゴンを通って透明人間になり、タルーラが亡くなったときにそこにいた人たちに会いに行く。

透明人間としてタルーラに言われた「宿題」をすることで、ふたりの中で何かが変わっていく。

時にはけんかをしたりしながらも、タルーラに必要とされ、互いの異なる「才能」を生かして場面場面を乗り越えていくことで、次第に、ふたりの冒険の目的はレジーナを探すことだけではなくなっていく。

タルーラは、さりげなく語る言葉の端々に名言があるというタイプの人。

印象的な言葉を2つ挙げたい。

***

  カメラっていうのは、嘘つきなのさ。

  大人の女のなかの少女を見ようとしないんだから。

  少女はずっとそこにいるのにさ。

  おばあさんを見たら、いつもそのことは、思い出しておくれ。

  その人のなかにだって、十二歳の部分が生きてるんだよ。

***

  本当の科学者はね、アルゴリズムなんかとはちがうんだよ。

  芸術家であって、機械工じゃないんだから。

  芸術家も科学者も、真実を追いもとめているんだよ。

  真実が詩のような形であらわれる場合もあれば、事実にもとづいた場合もあるけど、ただ論理的で、ただ機械的に考えているだけじゃ、スターにはなれないんだよ。

  女優が感じるだけじゃなくて考えなくてはいけないように、科学者だって考えるだけじゃなくて感じなくちゃいけないのさ。

***

本当の科学者は・・・という言葉を聞いたときにジーンマリーは、スターになるのに必要なものは、「才能」と「タイミング」だとこの言葉でわかったけれども、「スターになるのに必要な三つ目のものは、なんなの?」と問う。

この謎がジーンマリーがレジーナの石を見つける理由になっていく。

最後の謎解きは、透明人間にならない生身のふたりの冒険になっていく。

ヒロインの生きていた時代も環境も異なるけれど、読後感は、「黒ねこの王子カーボネル」に近いものがあった。

最後は、透明人間にならないで冒険をやり遂げたジーンマリーとマルコムは、今度は、自分の日常の中で、自分の思う「スター」になるための一歩を踏み出していくことになるのだ。

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