子どもたちは夜と遊ぶ 上 (講談社ノベルス)
- 全体の評価
(4件のユーザーレビュー)
- あなたの評価
この商品を評価して本棚に反映
評価しました! ×
- 税込価格:1,040円(29pt)
- 発行年月:2005.5
- 発送可能日:24時間
- 本 新書
- 今なら本も電子書籍も全て【ポイント3倍】!!
- hontoポイントスタート記念!文庫もコミックも電子書籍もCDもDVDも全てhontoポイントが3倍!
商品説明- 「子どもたちは夜と遊ぶ 上」
同じ大学に通う浅葱と狐塚、月子と恭司。彼らを取り巻く一方通行の片想いの歯車は思わぬ連続殺人事件と絡まり、悲しくも残酷な方向へ狂い始める。掛け違えた恋のボタンと絶望の淵に蹲る殺人鬼の影には、どんな結末が待つのか?【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介- 「子どもたちは夜と遊ぶ 上」
辻村 深月
- 略歴
- 〈辻村深月〉1980年生まれ。千葉大学教育学部卒業。「冷たい校舎の時は止まる」で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。
ユーザーレビュー- 「子どもたちは夜と遊ぶ 上」
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2009/10/07 12:53
孤独な人が孤独な人をいとおしいと思うこと
投稿者:空蝉(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
正直、もうすこし硬めの熟した文章でも良いのではないかと最初に感じたのだが、読み終えて今言えるのは、これは『子供たち』の物語。これで、良いのだという素直な感想だ。
結局は自己防衛の物語なのだろう。
世界という非情な化物から自分という非力な存在を必至に守ろうとする「逃避」と「保守」によって引き起こされた悲劇の物語・・・
彼、浅葱は決定的な絶望と失望を世界に感じ、『独り』という恐怖を知り、
常に「伴侶」を求めた。が、どこにもいない自分だけの世界で、まずカレ自身を作り出してしまったのだろう。
もう一人の孤独なカレが暴走し、浅葱をのっとり、殺人を繰り返す・・・というのならどこかであったような物語だ。 けれど本書はそれでは終わらない。
浅葱と「i」。 彼らはそれぞれ「存在」し、お互いをのっとるのではない・・・必死に生きて欲しいと、人間として生きて欲しいと、それこそ命を懸けてゲームをし、子供たちは夜を遊んだのだ。
何度も交錯する「浅葱」と「i」。お互いがいなくてはいけない存在だったけれど、決して「出会っては」いけない存在だ。しかも「浅葱」は自分の背中の火傷に気がつかない。iの本当の姿、iの、自分の負ってきた過去にも気がつかない。人間の知覚と記憶の都合よさ。 それが、キーと成る。
浅葱は本気で気がつかないフリをし、iを手に入れた。
月子は記憶に蓋をすることで安穏を手に入れた。
それでも人間は、触れたくても触れられないものを、いとおしくて仕様がないものを、必死に守りたくて、時には必死に逃げるのだろう。
人間として生きるという、本当は自分が手に入れたかった孤独ではない人生を、iは浅葱に生きて欲しかったに違いない。そして浅葱は月子を、狐塚を、iを失いたくなかった。 独りにならないように。
人間って、本当に寂しがりなのだ。そして、どんなに絶望のふちを見ても、人間さをなくしてしまっても、それでも人恋しいのだと。そう思う。
ミステリーとしてどうかとか、文章がどうだとかそうした書評めいたことは他のお方に任せるとして。私はこの作品が好きだ。痛いけれど、温かい。
いとおしいのだ。
きっとそれは、人が人をいとおしいと思う、本当に自然な感情そのものなのだと思う。
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2005/06/05 13:17
心の中の宝物
投稿者:紫月(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
主だった登場人物はとある大学の学生と学院生。二人の殺人犯の間で繰り広げられる残虐な殺人ゲーム。前作、『冷たい校舎の時は止まる』でメィスト賞を受賞した著者は、なんと1980年生という若さです。
キャンパスもののミステリは特に目新しい設定でもなく、読み始めた時点では最後まで読み続けるのは苦痛かも……などと思っていたのですが、それは一つ一つのシーンが丁寧に描かれているために話の進展が遅く、なかなか物語りに入り込めなかったせい。
ある場所を境に、ページを繰る手が止まらなくなります。
作者の年代を投影しているせいか、登場人物たちがとても魅力的でした。
自分を、他人を大切にして精一杯生きようとして、悩み、傷つく彼ら。
なかでもひときわ魅力的だったのは、冷徹な殺人犯その人です。
——たすけて。
心で血を流しながら、ゲームを降りられない犯人の苦悩と悲哀。
そして悲しい恋心。
少しのすれ違いで大きな穴に落ち込んでいくその、心。
透明感の溢れる瑞々しい筆致が爽やかです。
若さが感じられる文節がいたるところで弾むよう。
ですが、本書はやはりミステリ。
胸の悪くなるような殺人が繰り返された後、あちこちに張り巡らされた伏線がラストで綺麗に収束されます。これはミステリのお約束ですが、細部まで丁寧に書き込まれ、整合性を保持したストーリー展開は気持ちの良いもの。
とても好感が持てます。
ですが本書で最も心惹かれたのは、それぞれの登場人物が投げかけてくれたメッセージでした。
——人間には誰でも、大好きで泣かせたくない存在が必要なんだって。
君が生きているというそれだけで、人生を投げずに、生きることに手を抜かずに住む人間が、この世の中のどこかにいるんだよ。不幸にならないで。——
私の、大切な存在は誰だろう。
間髪入れずに、一人の人を思い浮かべられることは、とても幸せなことなのかもしれません。それでもそうした気持ちに気づき、きちんと向き合うことが出来たのは本書のおかげです。
まるで心の中に宝物を見つけたような気持ちになりました。
読書を通して、私には時おり「心の転機」とも言うべき瞬間が訪れます。
本書もそんな瞬間をくれた一冊でした。
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2005/09/12 19:16
「うまくすれば崩壊や破滅を止められたのに、少しづつタイミングがずれたせいでそれが叶わなかった」
投稿者:どーなつ(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者辻村深月氏は「冷たい校舎の時は止まる」で第31回メフィスト章を受賞なさって、鮮烈なデヴューを飾っておられます。
1980年生まれの20代。若いけれど、才能ある方だと実感しました。
本編のメインキャラである狐塚たちの年齢も大学生ということで、辻村氏と近しいということがあるからなのか、キャラに無理がなく、等身大の大学生がごく平凡な日常生活を送っているという設定がすんなりと受け入れられる。
もちろん、平凡な日常というのは表面だけのものであって、皮を剥いでみると全然違った世界が広がっているわけです。
i(アイ)とθ(シータ)の行なう殺人ゲーム。
片方は凶暴さが前面に押し出ていて、けれど全てを統括する冷静さも見え隠れする。
それは時には尖ったナイフのように冷たく、決して抗えない圧迫感を与えてくる。
片方は、揺れ動いている。穏やかな波間にポツリと落ちる水滴。
ゆっくりと凪いだ水に波紋が広がるかのように、少しづつじわじわと、理性を抑えきれないで恐怖する。
すべてが終わるまで、止められない。止めることができない。
止めてしまえば、繋がりが消える。会いたい。怖い。止めたい。怖い。会いたい。
彼の苦悩が伝わってきました。
本編で印象に残っているセリフがあります。
「うまくすれば崩壊や破滅を止められたのに、少しづつタイミングがずれたせいでそれが叶わなかった。今でもたまに思い出すよ。あの映画で、その後のすれ違いや誤解さえなかったら、あの盲目の天使は彼の中の怪物を止めることができたんじゃなかったかって」
これは登場キャラがとある映画について語った一説です。
実際にこんな内容の映画があるのか、それとも辻村氏のつくったものなのかは分からないのですが、この小説の世界観を表現するのにピッタリの言葉だと思いました。
本の裏のあらすじにもありますが、「掛け違えた恋のボタン」、ここが大きな分岐点だったのかもしれません。
ここを起点として、if(もしも)の可能性を探っていけば、また別の結果が生まれていたのかもしれない。
人間、誰しも経験したことがあるであろう「思い違い」。
今回の場合、それがあまりにも悲しい結果を生んでしまったということでしょうか。
言葉に出す、思いを伝える、そうしなければ伝わらないこともきっとあるんですよね。
下巻で徐々に見えはじめてきた事件の全貌。
そして散りばめられた伏せんが1つになりはじめます。
思わず、ええ?! と思ってしまうところもあって、上手く騙されたことが嬉しかったりして。
そしてそして、最後は切なくて、涙が出そうでした。
けれどそれと当時に、思わず「良かった」、そう思ったことも事実。
悲しいけれど、幸せで、幸せだけれど、やっぱ悲しい。
読み終えたとき、そんな複雑な感情が私の中に残っていました。
この結末が1番最善のものだったのでしょうか。
——if、もしもあの時……。
その可能性を考えずにはいられません。
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2005/05/23 01:49
斬新な人物描写で、登場人物以上に読者を事件にのめり込ませるミステリーです。
投稿者:楊耽(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
デビュー作の「冷たい校舎の時は止まる」が高校生を内と外から描いたのに対し、本作は、工学部の研究室に所属する三人の男性と、教育学部に通う女性を中心に展開されてゆきます。
先ず、浅葱や孤塚らが研究を進める様に接して僕が特徴的に感じたのは学校特有の競争社会でした。個人に対して評価が下され、なんらかの順位付けがなされる彼らの社会です。基本的に同僚と利害関係を共有し、チームワークが成果に重要な影響を及ぼす企業の研究体制との違いです。
そんな競争の中で、スタープレイヤーとして天才の名を恣にする浅葱。周囲の人間から見た天才肌の浅葱と、彼が演じようとしている人間像は一致しています。しかし、実際に彼が自分を天才と考えているのかどうか。
外面(客観)描写に徹する小説はハードボイルドと呼ばれます。また、一人の内面描写に徹する小説もあります。僕は今まで小説というものは、そのどちらかか、またはその中間だと思っていたのですが、本作は違いました。登場人物は、彼らの内と外に加え、第三の視点からも徹底的に描写されています。
その第三の視点とは無意識です。彼らの行動を拘束する過去や本能です。
つまり、読者である僕は、登場人物のどんなに親しい友人や肉親よりも、彼らを理解し、彼らの挙動を追って行く仕組みになっているのです、
そして、本作はミステリーです。
小説の前半では、仲の良い四人が、それぞれの将来を考えながら学生生活を営んでいます。せいぜい緊張があっても、それは、よくある恋愛小説の域を超えない、と、僕が油断をしながら読んでいたことに気づいたのは、事件が発生した後でした、そして、事件には、既に僕が深く理解し親近感を感じていた登場人物が直接関わっています。
なぜ? どうして? 彼が? 彼女が? 事件については、その発生状況が一から十まで描かれています。僕はそれを丁寧に読んでいたはずです。
それにも拘わらず、上巻を読み終えたときに、僕は多くの疑問を抱え、理不尽さに憤りを覚えていました。







