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カレーソーセージをめぐるレーナの物語

  • 出版社:河出書房新社
  • サイズ:20cm/221p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-309-20439-2

カレーソーセージをめぐるレーナの物語 (Modern & classic)

ウーヴェ・ティム (著), 浅井 晶子 (訳)

  • 全体の評価 53件のユーザーレビュー
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  • 税込価格:1,68048pt
  • 発行年月:2005.6
  • 発送可能日:7~21日

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商品説明- 「カレーソーセージをめぐるレーナの物語」

それは終戦直前の1945年、敗色濃いナチス・ドイツのハンブルクで、ひとりの女性が若い脱走兵を家にかくまうことから始まった…。戦後ドイツの歴史、そしてひとりの女性の歴史を描いた、戦争が生んだ悲恋の物語。【「TRC MARC」の商品解説】

著者紹介- 「カレーソーセージをめぐるレーナの物語」

ウーヴェ・ティム

略歴
〈ティム〉1940年ハンブルグ生まれ。毛皮加工職人としての職業訓練を受けた後、大学に入学。哲学とドイツ文学を修める。著書に「僕の兄の場合」等。シューバルト文学賞等多くの賞を受賞。

ユーザーレビュー- 「カレーソーセージをめぐるレーナの物語」

全体の評価
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4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2009/08/23 10:32

スパイスのない人生なんて。

投稿者:求羅(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

きっかけは、ほんの偶然。
第二次大戦下のドイツ、男女の出会いと別れのドラマから、ある食べものが生まれた。カレーソーセージ。輪切りにしたソーセージを、カレー粉とケチャップを混ぜ合わせたソースに絡めて炒めた、ドイツの庶民的な食べものである。
一見相容れない「カレー」と「ソーセージ」がどのようにして結びつき、広く親しまれるようになったのか?その誕生の謎に迫る時、戦中戦後の混乱をたくましく生き抜いたひとりの女性の人生が浮かび上がってくる。

おいしそうなタイトルにそそられて手に取ったのだが、意外にも物語は食糧事情の厳しい終戦間際のドイツが舞台だった。しかも描かれているのは、親子ほどに歳の離れた男女のラブストーリーである。
戦争を生き延びたい若い海兵ブリュッカーと、女性としての欲求に突き動かれた40代のレーナ。打算から始まった秘密の同棲生活は、二人の間に緊張感と奇妙な一体感をもたらすようになる。

この作品、さりげなく配置された出来事が、後の登場人物たちの行動に繋がって意外な展開をみせていくのがおもしろい。
ブリュッカーが保身からついた些細な嘘が、恋情を募らせるレーナにある嘘をつかせ、その結果長引いた「戦争」がブリュッカーとレーナの心身を徐々に蝕み二人に決定的な別れをもたらす、といった具合に。まるでドミノ倒しを眺めているようなおもしろさがある。

死と隣り合わせの深刻な時代背景にもかかわらず、物語はどこか飄々とした明るい印象を残す。それは、「食べる」という行為が中心にあるからだと思う。
正確な文章は忘れたが、大平健の『食の精神病理』という本の中で、「食べる行為は、愛情を取り込むこと」という指摘があった。物の極端に不足した時代、レーナは創意工夫で次々と舌と心を満足させる代用食を作っていく。〈どんぐりのコーヒー〉、〈にせの蟹スープ〉、極めつけは偉大な〈カレーソーセージ〉・・・。そこには、殺伐とした時代でも枯れることのない愛情があふれている。
〈カレーソーセージ〉はいわば、生命力であり、庶民のたくましさであり、愛情の象徴なのだ。悲しみも苦しみも、スパイスとなって人生をより豊かで味わい深いものにしてくれる。甘くてぴりりと辛いレーナの物語は、からだの深いところから力が込み上げてくる美味しさであった。

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3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2006/06/10 18:53

カレーソーセージは密かな恋の香り

投稿者:TYANA(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

カレーソーセージというのはドイツではよくある庶民的な屋台料理だそうです。ソーセージを切って炒め、ケチャップにカレー粉を混ぜて絡めたもの。レーナが作るシーンでは本当に美味しそう!
ことの起こりは第二次大戦末期、ハンブルク。子供達も巣立ち、夫が出征したまま他の女性に走ったため、一人暮らしだったレーナは、空襲の夜に出会った若い海軍兵曹ブレーマーが死地に赴くと知ってアパートに案内します。
そのまま匿って、密かな同棲生活に…
物のない時代に、工夫を凝らして蟹スープなどのご馳走に似せた料理をふるまうレーナ。二人だけの空間で、カレーを初めて食べた思い出を語るブレーマー。
脱走兵は捕まれば銃殺なので、隠れているしかなくなったものの、まもなく連合軍が上陸。しかし、レーナは彼を引き留めたくて、それを言えない。実は彼にも秘密があり…
複雑な状況がすんなりこちらの胸に飛び込んでくる書き方でテンポ良く読ませ、文句なしに充実した時間を過ごせました。
何よりも、たくましいおかみさんのレーナが魅力的。
戦後の物々交換を上手くやってのけるあたりの展開も、すごく面白いのです。そして、思いがけない偶然から生まれるカレーソーセージ!
既に敗色の濃い時期に生きる市井の人々がありありと描かれ、ナチスへの密告をする近所の人もいる一方で、反骨精神のあるコックの行動などもおみごと。
特殊な状況下での恋も納得のいく展開で、結末にほのぼのとした余韻を残す、味わい深い物語です。

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3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2005/09/04 08:35

カレーの魔法

投稿者:こうめ(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 カレーソーセージ? 私は初耳だったのだが、ベルリンやハンブルグなどドイツ北部で人気の屋台フードらしい。ケチャップベースのカレー入りソースをからめたソーセージとのこと。ハンブルグ出身の「僕」は、子供の頃から行きつけだった屋台のおばちゃんレーナこそがこの戦後急速に広がった食物の元祖だと信じている。そして、今は老人ホームにいるレーナにその真偽を確かめにいく。老女は、ゆっくりと終戦直前の日々を語り始める。
 当時レーナは40代、ろくでなしの夫は数年前から姿を見せず、娘と息子は動員で家を離れていた。そんなある日、休暇中だった20代の水兵を一晩泊めることに。妻子持ちの水兵は、生還の確率が低い前線へ戻る気が失せ、美人でスタイル抜群ながらそろそろ「老い」の兆しを感じる中年女レーナと、今は90近い彼女が頬を染めて「いい愛人だった」という若い男との人目をしのぶ同棲生活が始まる。見つかれば脱走兵として捕まる。同じアパートのカチカチのナチ心酔者の男や階下の口うるさい女の疑念をなんとかくぐり抜けながら、二人の愛の生活は続く。そんな夜にレーナは水兵からカレーの話を聞く。インドでホームシックで体調を崩したときに初めて食べたカレーは、「楽園の味、別世界の味」で、「風が体の中を駆け抜けた」という。
やがて敗戦。だがレーナは別れが嫌さに水兵にそれを告げない。籠もりきりの生活に苛立つ彼。告げるのを一日延ばしにするレーナ。街では、ナチ信奉者の男が自殺し、ユダヤ人虐殺が明らかになってレーナの心を凍らせる。そしてある日真実を知った水兵は出て行ってしまう。
 息子と、父親のない子を連れた娘が戻り、夫まで戻ってくるがこれはまた追い出し、レーナは物々交換の闇市経済の中をたくましく生きる。だが生活は苦しい。一家の行く末をかけてソーセージの屋台を出すことにしたレーナは、基盤作りの大事な取引でふとカレー粉という言葉を聞き、思わず取引してしまう。だが、さっそく舐めてみると食べられたものではない。なんとバカなことをしたのかと気落ちするレーナ。だが、ここで運命は思いがけない悪戯をしてカレーソーセージが誕生するのである。失敗から素晴らしい料理が生まれた例は多々あるが、これもその一つらしい。レーナの屋台の初めての客となった、疲れ果てた売春婦たちは、一口食べて「音楽が聞こえてくる」「人間に必要なものはこれなんだ」と思う。そして、ある日ふと客として立ち寄ったかの水兵にも、素晴らしい奇跡をもたらすのである。
 敗戦前後のハンブルグの庶民の生活が鮮やかに描かれ、そこに女としての盛りを過ぎかけたレーナの哀しい恋と、その実直でたくましい生き方が重ねられる。人間に対する温かな眼差しに満ちた、とても魅力的な物語。読後すぐにレーナのレシピを真似してカレーソーセージを作ってみた。美味しかったが、カレー慣れしている私の舌には、魔法は起きなかった。

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