- 出版社:新潮社
- サイズ:20cm/123p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-10-477001-9
アナ・トレントの鞄
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- 税込価格:1,785円(51pt)
- 発行年月:2005.7
- 発送可能日:24時間
- 本
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商品説明- 「アナ・トレントの鞄」
遠くから見つめていたものが、いまなら手に入るかもしれない。かくして時空を超えた仕入れの旅が始まる−。旅先から届いた品々は全34品。探し求めたすべて一点かぎりの商品を洒落た写真と文で紹介する架空カタログ。【「TRC MARC」の商品解説】
ユーザーレビュー- 「アナ・トレントの鞄」
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2005/10/04 17:46
アナ・トレントなる少女の行方
投稿者:鈴虫(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
昔購入していた少女雑誌に、オシャレな古い映画として紹介されていてた「ミツバチのささやき」という映画。
その映画に出てくるのが、この本のタイトルになっているアナ・トレントという名前の少女だ。
ビデオを借りて観たはずだけど、憶えているのはスペインが舞台で、7〜8歳の小さな女の子がふたり出てきて、なぜかトレンチコートを着ている。内容は綺麗に憶えていない。
トレンチコートを着ているくらいなのだから、旅行鞄を持っていたのだろう。
不思議なものがなんでもある、クラフト・エヴィング商會が、どうしても欲しいと、主人公のアナ・トレントが持っていたはずの鞄を探す旅行に出かける。
旅の最中にその他の商品なんかも、ちゃっかりと仕入れてくる。
さすがは、クラフト・エヴィング商會。
本書事体、こうみえてまごう事無き旅で収集した商品カタログなのである。
見たい時に火を付けて吸えば、頭の中にスクリーンが写し出されると言う、携帯用のシガレットムービー。
夕立ちの後に採集できる、氷砂糖みたいな青色をした稲妻のさきっぽ。
世にいろんなコレクターはあれども、サンドイッチに立てた旗、サンドイッチフラッグのみ3万点。
どれも一目見てみたい、手に触れてみたいと願わずにはいられないものばかり。
私が欲しくなったのは、
「あらゆる過ぎ去った夜から選ばれた、ただひとつの香り
コルクをはずせばゆるやかに夜がたちのぼってくる」という夜の香りを持つ液体だ。
それは都会のバーのけだるい喧噪だろうか。
それとも、人が出会う事の無いような深い森の静寂だろうか。
いろいろと楽しくて、幻想的な美しい夜を想像してしまう。
見事に、クラフト・エヴィング商會の思うつぼだ。
華々しくてペシミスティックな仕入れの旅。
果たして、目的であるはずの「アナトレントの鞄」は手に入るのだろうか?
読むごとに、どんどんと夜は深くなってゆき、商品達はさらに不思議なものになってゆく。
秋の夜のお供に、お似合いの本だ。
それにしても、仕入れの旅にはどんな鞄で出掛けたのだろう。
また想像してしまった。
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2005/10/07 19:03
クラフト・エヴィング商會の正体見たり彼と彼女、というあたりは巻末をゆっくり呼んでみてください。それにしても、文章を含めたこのセンス、脱帽です
投稿者:みーちゃん(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
予想外、拾い物という点では今年、最高の本ではないでしょうか。まず、私の側の思い込みがあります。今までも何度か、クラフト・エヴィング商会について触れたことがあります。筑摩の新書内田樹『先生はえらい』、橋本治『ちゃんと話すための敬語の本』がそれで、積読状態にあったそのカバーを長女が見つけて「これ大好き、色が優しくて、なんだか日本人っていう感じで」とのたもうたことについても報告しています。
で、この「商会」という字から、私は洋書の「タトル商会」、あるいは素晴らしい和風の図柄を提供することで我が家で評判の菊寿堂いせ辰のように、てっきり下町の建物、できれば入口も木製の厚めの硝子がはいった真鍮の取っ手の扉で、ちょっと建物自体が傾いたような印象を与える煉瓦造りの洋館に入った、英国製か何かの古い洋服が似合う老人が経営する小さなお店を連想していたわけです。
で、実物を手にして、外観を愛でるのですが、ともかくいいです。まずカバーの基調となる色がいい。で、そこに白地の窓があって、字がさり気無く置かれる。間、っていうやつですね。で、本文の紙質が、これまたいい。マットで、ちょっと厚めでコシが強くて、触っていてちょっとザラっとして、紙って主張する。
そういう紙に写真がたくさん載っていて、当然、これも光沢は全くなくて色が沈み込む。もう、落ち着いちゃっているわけです。今まで私が抱いてきたイメージ、ま、妄想かもしれないわけですが、それにピッタリなわけです。じゃあ、文章は誰が書くんだろう、会社の広報とか宣伝部とか、もしかして海外調達部の人たちが仕入れたものについての思い出をかくのかな、そう思うのです。
で、最初の文章を読みます。???これって、紀行文?やけに語り口が、しっくりしてちょっと小説してるし・・・。それに、オブジェの素適なこと。例えば五味太郎『絵本を作る』や小杉小二郎の画集にでているそれを連想させます。
ようするに、輸入関係の商売をしている人の文章、作品なんかじゃあまるでありません。長新太やたむらしげるといった、ちょっとシュールな絵本作家、あるいは奇想小説を書く椎名誠、そういうレベルの文章であり、それを飾るオブジェはプロの画家の手になっても違和感のない小物類なわけです。
で、その謎は奥付をじっくり読み込めば、ああ、そういうことか、って思います。もしかするとネット検索かければ一発かもしれませんが、私は最後に納得しました。そうなんだ、でも、うまいなあ、こういう文章は簡単に書けるもんじゃありません。才能って凄いなあと思います。ちなみに、装幀・レイアウト=吉田篤弘・吉田浩美、写真=坂本真典です。
全体は最初に「鞄にのまれる」という前振りがあって、catalogue a、catalogue b、あとがき、となっていて、そこに「旅の途上」というタイトルで「オトリ商會」「これからどちらへ」「怪盗からの小包み」「言葉を売る男」の報告文?が紛れ込んでいます。素敵なイラストつき。
カタログ部分には、数多くの、それこそ素敵な商品というか小品と、短い小説?が載っています。例えば冒頭「エッジの小さな劇場」、そこに出ている携帯用のシガレット・ムービー、正直、欲しいです。次の「ひとりになりたいミツバチのための家」だって手の上に乗せて遊びたいです。「Fの小包み」が誰かから送られてきたらいいな、と思います。「サンドイッチ・フラッグ」がこんなに素敵だったなんて、いつか国旗もこうなれば、戦争もなくなるだろうに、そう夢想します。万能薬を収める「シレーノスの函」の愛らしいこと。
まだまだ書ききれない、それこそ掌の上の宝石、お宝が、ちょっとユーモアをまじえた短い文とコンビで満載です。こんなに素敵な本には滅多に会えるもんじゃありません。一家に一冊、『アナ・トレントの鞄』。
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2007/01/07 19:38
冬のひとときに、ほんわかと優しくなれる鞄です。
投稿者:クーニー(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
”ミツバチのささやき”という映画は、随分と昔に見逃して、今でも映画館で観たい作品です。主人公の少女が持っていた鞄を探しに、仕入れの旅に出るというお話です。
鞄はなかなか見つからず、鞄の中身が少しずつ増えてゆきます。外国の切手が貼られた、船便の小包を待つかのような、のんびり感が漂っています。いつの間にか、未来の目的地と締切時間に追われ「現在」を手放しで楽しめなくなった、不器用で逆説的なオトナ達にはぴったりなカタログです。
ピントの甘い美しい写真は、初めて目にするはずなのに、懐かしさで一杯になり、かつて夢で見たどこかへ連れて行ってくれそうでもあります。
欲しいものを一つ、と問われれば「ARROW THROUGH ME」(胸がキュンとなった時に突き刺さった矢です。ご無沙汰しております。。。)
あともう一つ、ならば「マアト」という、そこはかとない軽さの天使の名前がついた箱入りのお菓子。どんな小さな天使と出会えるのでしょうか。
魔法が使いたくなるオトナな日常。お茶の冷める時間が短くなった冬の日に、静かに丁寧に眺めたい作品です。







