紙の本
「まっとうな」論じ方のほうへ
2005/09/09 18:52
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あきやま - この投稿者のレビュー一覧を見る
テーマは「哲学的クリティカルシンキング入門」。
この題名にしては見通しの悪い本だけれども、内容はコンパクトで、ほんとに大事なことしか書いてない。多くの人に読んでもらいたいし、この本を読んで「哲学」のイメージが変わる人は必ずいると思う。
本書で紹介される「哲学」は、主に英米系の「分析哲学」なのだけれども、一般になじみがないと思われるのでごく簡単に紹介しておくと、デカルトの「明晰判明」な議論の伝統を受け継いだ“マトモ”な哲学が分析哲学。
一方、一般に「哲学」といって想起される、「名言・箴言」でものごとを曖昧に仄めかしたり、謎かけのような何を言っているのかわからない詩のような、でも偉い人のありがたい託宣だから心して聴くように、的なものは、「(ヨーロッパ)大陸哲学」に多く存在する“トンデモ”哲学である(だからといって大陸系は何でもダメか、といえば、もちろんそんなことはない)。
以前、サイモン=クリッチリーの『1冊でわかるヨーロッパ大陸の哲学』を、野家啓一が「羊頭牛肉」とかいって激賞してたけれども、あの本は分析系の支配的なイギリスで出版されたことに意味のある本であって、英米系に暗い日本の哲学状況にはそぐわない。それよか、フランスの哲学者・ジャック=ブーヴレスの危機感を共有しろよ、とぼくなら言いたいところだ。
現代哲学を蝕む二つの病、「神秘主義」と「相対主義」。この二つにいかに負けずに「まっとうな」議論を育てていくか、というところに“マトモ”な哲学のキモがある。
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投稿者:なつめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
論理的な哲学思考のトレーニング方法が、よくわかりよかったです。不毛な議論に陥ることなく、建設的に考えられそうです。
紙の本
日常に使えるほどよい懐疑主義
2006/06/26 21:34
8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:GTO - この投稿者のレビュー一覧を見る
正しくものを見るため(クリティカルシンキングあるいは、ロジカルシンキング)の入門書として最適である。論理学の入門書としては『論理トレーニング101題』などの有名な本があるが、かなり厳密な論理性を追求するため、日常性から乖離していると感じる人もいるだろうし、いきなりだと難しいかもしれない。この本は、他の哲学者とたがわず、哲学者らしいくどい文章ではあるが、題材を身近なものにとっていて分かりやすい。(哲学者仲間の突っ込みを恐れず、もっと簡潔に書けば読者が増えただろう。)
自分の立論ばかりを考えたり、反駁ばかりを探っていると見落としがちな「思いやりの原理」や極端な懐疑主義を回避するための「文脈主義」をていねいに説明している点が、現実的でもあり生産的でもあり好ましい。私たちが実生活で迫られる決断や企業内のディベートを行ううえで大変役立つ本だと言える。
第5章「みんなで考えあう技術」は、推論のしかた、陥りやすい誤りに、その解決方法までがコンパクトにまとめてある。重要な会議や決断の前に読み返すと得るところがあるだろう。
巻末の「これからのための文献案内」が、またなかなかいい。この本で、クリティカルシンキングに興味を持った人、さらにロジカルシンキングを極めたい人に大変役立つ。
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「価値観の多様性」も、ちょっと考えてみると、いろいろと検討の余地はある。例えば「生きる意味はあるか」ということ。「意味」の定義はどうか。生きることの「意味」をどんな文脈で言っているかにより、その解釈は異なる。日頃当然のごとく受け入れている論理をちょっと批判的にみてみると、そもそも「議論のルール」ともいうべき原則に反しているがために、議論の本質からずれてしまうことはないだろうか。そのことを見直す、基本的な事柄を教科書的に述べてある本。ただし、どれもほんとうに基本的なことばかりで、論理学や批判的思考の入門の入門といったところか。「議論の考え方」を紹介する、といった本である。この本自体はそうした性格をもっているため、本書を読み、自分の関心にひっかかった項目を、参考文献を手掛かりに勉強することで、はじめて深くなにごとかを学ぶことになると思う。文章はやや読みづらい。知識の度合いによっては、重要項目を拾い読みするだけでも十分。
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クリティカルシンキングのための解説書。物事をきちんと評価するための考え方の道筋を示してくれる。「できる大人はこう考える」と同じ範疇だけど、もう少し「大人」かも。
5章からなる本書だが、その後に「結局、何がどうだったの?」という人のためのガイド、というまとめのページがあって、著者の薦めていないが、先にこちらを読むと良いかも。
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非常に面白い。基本的な三段論法から「段階的なクリティカルシンキング」まで。
これを読んでから多少思考体系が変わった気がする。
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数ある本の中でも、私の知となり肉となっている本。
わかりやすくいろんなことが書いてある。
思考がやわらかくなった気がする本。
同著者の「疑似科学と科学の哲学」もお勧め。
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クリティカルシンキングって何。
哲学的に考えるって何。
論理的に展開していかなきゃいけないって何???
というときに読むと、少しすっきり・・・
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「文系(特に哲学)なんて何の役にも立たない研究をしているのだからこっちに金をよこせ」
という理系のみなさんの声に対して、
「哲学を勉強することは思考のスキルを磨くことになるんですよ」
という気持ちで書かれた一冊。
だから、本のタイトルには「哲学」が前面に押し出されているが、本文で重要なのは「クリティカルシンキング」。物事を、批判的に、そして論理的に考える方法について書かれている。
著者のこれまでの本にくらべれば分かりやすいはず、
と書かれているが、素人の僕には結構難しかった。
でも、クリティカルシンキングは、僕を含めて、日本人が苦手としているものだし、この分野にも、哲学としての様々な研究があるのだということが分かり、たいへん驚いた。
多人数でクリティカルシンキングを行なう際の心構えとして、「間違いを認めて改める」という態度を挙げている。
これができなければ、ここまで書いてきたクリティカルシンキングの手法をいくら学んだところですべては無駄である
それは大変だ。
自分の意見に対する批判は必ずしも自分自身に対する攻撃ではないということをわきまえることは大事である
まったく、まったく。
耳が痛い限りだ。
マスコミ報道などを見るにつけ、もう少しクリティカルシンキングができないとマズイんじゃないか、と心配になる。
「ほどよい懐疑主義」など、どこにも見当たらない。
鵜呑みにするか、何が何でも否定するか・・・、
どちらも思考停止には変わりはない。
だからクリティカルシンキングを身につけることは必須だと思うんだけど、そのためには、かなりの訓練が必要だと思う。
やっぱり学校でディベート訓練などを経験しないといけないよね。
せめて、批判されることで自分の人格を傷つけられた、と感じることはないくらいのレベルには達しないと。
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[ 内容 ]
テツガクなんて小難しいだけで、日常の現場では何の役にも立たないのでは?
否、それは工夫しだいで思考のスキルアップに直結するものだ。
本書では、分析哲学、科学哲学、懐疑主義、論理学、倫理学などの思考ツールを縦横無尽に使いこなす術を完全伝授!
もっともらしい屁理屈や権威にだまされず、かといって不毛な疑いの泥沼に陥ることもなく、一歩ずつ筋道を立てて考え抜くコツが身につく。
すぐにも応用可能なノウハウを習得しながら、哲学的思考の真髄も味わうことのできる、一粒で二倍おいしい知の道具箱。
[ 目次 ]
第1章 上手に疑うための第一歩―日常会話のクリティカルシンキング(まずは疑う習慣から 議論とは何か 議論の特定の手法 行間を読んで議論を再構成する)
第2章 「科学」だってこわくない―科学と疑似科学のクリティカルシンキング(「科学的事実」の持つ権威 今西進化論の事例 ほか)
第3章 疑いの泥沼からどう抜け出すか―哲学的懐疑主義と文脈主義(デカルトの方法的懐疑 方法的懐疑の破壊力 論理的展開 文脈主義の考え方)
第4章 「価値観の壁」をどう乗り越えるか―価値主張のクリティカルシンキング(価値主張 「生きる意味」の事例 ほか)
第5章 みんなで考えあう技術―不確実性と合意のクリティカルシンキング(地球温暖化をめぐる論争 不確実な状況における推論の問題 立場の違いに起因する問題 クリティカルシンキングの倫理性)
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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当たり前のことしか書いていない本。そして、すべての人に読んでほしい本。役に立つ(応用的な)哲学の実践を目論む著者による、クリティカルシンキングのすすめ。良い本だなあ。
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1つ1つ言ってる事はもっともで納得できるんだけど、
明日からクリティカルシンキングの習慣が手軽に身に付くかといえばそうではない。著者が言うようにもう一度体系立てて理解しながら読み直す必要があるかな。。。むずかしい。
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思ったより長くかかってしまった…。
ほぼ毎日電車通勤になったのに、意外と時間がかかってしまった。わかりやすい例題とでも貴重な哲学の考え方が書いてある。日常生活で見落としがちな観点もあった。なるほど!こういう観点で議論していけばいいのか!と仕事の打ち合わせのことを頭によぎらせながら読んだ。
ただやっぱり思考っていうのは題名にあるようにトレーニングが必要だから、継続的に実践して慣れていかないといけないんだろうなぁ…。
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グライスの対話原理の話を知ることができたのは収穫。
倫理パートが完全に理解できていない可能性があるため読み直してみよう。あと自然からの誤謬と自然主義的誤謬を私は混同していたらしい。。。
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高校生位で思考法等に興味のある方は良い入門書として役立つのでは?
最後の「結局、何がどうだったの?」という人のためのガイドが全体のまとめで解りやすいと思われ