- 出版社:文藝春秋
- サイズ:16cm/571p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-16-770508-7
凶器の貴公子 (文春文庫)
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- 税込価格:980円(27pt)
- 発行年月:2005.8
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ユーザーレビュー- 「凶器の貴公子」
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2006/01/26 10:33
テラン、新境地を拓く!
投稿者:tujigiri(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
「神は銃弾」で鮮烈なデビューを果たし、続く「死者を侮るなかれ」でノワール界に確固たる地位を築いたボストン・テランの放つ、長編第3弾。
今作では、暴虐の詩人と賞されたテラン独特の韻律は影を潜め、かわりに内省的な筆致で世界や主人間の不安定性を強調した。
前2作までの立ちくらみを引き起こすような情念の奔流は抑えられているが、それに反比例して登場人物個々の背景と、それが各人におよぼす影響が丁寧に書き込まれており、あらたなファンの発掘が期待されそうだ。
奇しくも本書カバー写真が象徴するように、寒々と垂れ込めるにび色の心象風景を鉤裂くがごとくに稲妻が明滅を繰り返し、「神は銃弾」で衆目を驚かせた怒涛の疾走感から解放されていっそうの輪郭を顕した観念的なセンテンスが全編を貫いて、読者を重厚に取り囲む。
暴力的なシーンが少なく、あの強烈なテラン節が変貌を遂げているため、ファンのなかには読む前から本書を敬遠する向きがあるかもしれないが、案ずるなかれ、テランの筆力はいささかも衰えていない。
巻末の杉江松恋の解説にあるように(この解説がまた秀眉!)、ミノタウルス神話を核にすえたテランの真髄が見事に開示されていて、彼の創作がこの先目指す方向を示している。
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有力な実業家である父親の裏の顔を知り、自殺したテイラー・グリーン。
彼の死に納得できず、独自に調査を始めた恋人のエシーの前に現れたひとりの男。
テイラーから角膜を移植され視力を取り戻したと言うデイン・ラッドとともに、エシーは事件に隠された真相を明らかにしていく。
しかし、デインには謎めいた過去と秘密の意図があった————。
若者の死にまつわる謎解きと、それを解明すべく立ち回るデイン自身がまとう深い闇。
正体のしれぬこの主人公は、いったいなんのために湿地の街に現れたのか。
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くだらないミステリにうつつを抜かす推理屋には絶対に書き得ない、魂の彷徨を紙上にとどめた傑作小説。
テランの特徴でもある「かっこいい女」も、ちゃんとエシーのなかに脈打っている。
テラニストは無論のこと、いままでテランを知らなかった人も、本書は買いだ。
暴虐の詩人が歌い上げる、清澄なる悲しみと痛みを伴った再生の物語を追体験せよ。







