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武江年表 増訂 オンデマンド 1

  • 出版社:平凡社
  • サイズ:21cm/237p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-256-80116-2

武江年表 増訂 オンデマンド 1 (ワイド版東洋文庫)

斎藤 月岑 (著), 金子 光晴 (校訂)

  • 全体の評価 51件のユーザーレビュー
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  • 税込価格:3,15090pt
  • 発行年月:2004.9
  • 発送可能日:7~21日

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3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2010/01/08 11:10

花のお江戸から現代を見れば・・・

投稿者:りっちゃん(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 著者の斎藤月岑は神田の草創名主の家に生まれたんだって。15歳で家督を継いだとか。
 「名主の職務は上からのお触れの下達、人別改め(戸籍簿と居住証明、キリシタン禁止)、火の元の取締り、奉行所への願書や訴訟の奥印、町内訴訟の裁断、家屋敷の売買譲渡の証書の検閲、税務の処理、非行者の説諭、治安維持をつかさどった」。お江戸に住んでいた「士民」(市民ではないところがみそ)の「士」を管理するお上と「民」間の伝達役でもあり、民の仲も取り持つ、広範囲にわたるお役だったのねぇ。よくこんなものを書く時間があったなぁという気もするし、だから、庶民の生活を熟知していたんだとも思った。
 「天正十八年〔一五九〇〕庚寅
  今年八月一日、台駕はじめて江戸の御城へ入らせ給へり。そのころは御城の辺、葦沼汐入等の地にして田畑も多からず、農家寺院さえ所々に散在せしを、慶長に至り始めて山を裂き地をならし、川を埋め溝を掘り、士民の所居を定め給ひしより、万世不易の大都会とはなれり。」から「明治六年〔一八七三〕癸酉
  ○一月一日、晴。○同一日、今般御改暦に付き、人日、上巳、端午、七夕、重陽之五節句を廃され、神武天皇御即位、天長節の両日を以て自今祝日と御改めに相成り候旨御布告」まで。五節句って、江戸幕府の定めた祝日だったのね。1/7七草粥、3/3お雛様、5/5子どもの日、7/7七夕、9/9菊。覚えやすいし、間隔もいいし、男女平等だねぇ。なかなかやるじゃん。ふむふむ、江戸時代の風習を消し去りたかったわけだ。新しい政権は。
 「江戸に関することと言えば、封建制度のもとでの人間蔑視、藩公への藩士たちの強いられたみじめな忠誠、あるいは武士の切り捨て御免、町人文化の淫靡、低俗、遊里を中心に栄えた流行風俗、個人よりも家中心の家長の絶対権力、家系を絶やさないための蓄妾の正当化、その他の悪政、悪風俗、鎖国による世界の水準からの万般のおくれなどと、否定面ばかりが取り立てられてきたのは、それによって明治の親政の優越性を強調するための国策の線に添うての選択であって、政治的色彩の濃いものであることは言うを俟たない。勿論、江戸の政治が圧力政治で、その政策が愚民政策であり、人民の平和が、生簀の中の平和であったことは弁解できないし、明治の政治が、圧力の上では、さらに重さを加えながらも、列国の趨勢に鑑みて、諸般の平等自由を人民に約束している点を進歩と見ることができる。」
 金子光晴による「解説」も面白い。
 地名とかがわかればもっと面白いのだろうけれど、火事とご開帳が多すぎて、ひたすら眠くなる。火事対策として、茅葺から板葺きそして瓦に変化。道路を広げたり、橋を掛けたり、土手を築いたり、火除け地を造ったり、そのときには代替地を用意。火消しも時々組織替えが行われている。
 ご開帳は庶民のお楽しみでもあったようで、見世物なども詳しく載っている。なかには、竹細工などの工芸品もあったりして、江戸時代の工芸技術の高さもうかがえる。「オッ」と思うのは、鎖国の前なのだろうけれど、「安南」「柬埔塞」「呂宋」「太泥」「暹羅」「占城」「田弾)」「亜馬港臥「新伊西杷弥亜」「漢又刺亜」などの国とのお付き合いがあったこと。「慶長九年この年、朝鮮より使来りて和平を乞ふ。故に生捕の者を帰さしむ」とある。慶長3年に秀吉が死んで、4年が関が原。やっと和平交渉がはじまって、「慶長十二年には朝鮮信使初めて来聘」となる。15年には琉球来聘。この両国だけはその後もちょくちょく載っていた。
 週刊誌の集大成って感じかな。ファッション、グルメ、有名人の死、歌舞伎や力士などの興行、流行り病、通貨、流星や日食など自然現象、地名の由来、噂話しの類も。十返舎一九の辞世「この世をばどりやお暇にせん香とともにつひには灰左様なら」などの歌や句も載っている。
 地震、台風、洪水、噴火、冷害などの自然災害も多い。気象の記録としても貴重。そして、御救米銭、御救い小屋等。封建制度の中でも救済策をそれなりにやっていたことがうかがえる。
 承応2年「今年、玉川の上水を都下に通じて、衆庶の用に充てしめ給ふ」。人口の増加に伴って、上水を完備したということだね。庶民の生活を重視していたのかな。今も玉川上水は、貴重なグリーンベルト。大事にしたいねぇ。
 明治になってからの福祉政策としては、三年「深川浄心寺前に、貧民細工物職業営みの為、建物を設けられ、爰に止宿せしめらる」。五年「娼妓芸妓は人身売買同様の所業に付き、御解放の上其の主人へ引き渡し候様、又従前の娼家をば貸座敷と心得候様御布告有り(此の頃遊技巷歌女を徘徊するもの頗る多し)」などという記述がある。ウーン、今と同じで制度が整っているようで、当人にとっては無効或いはかえってよくなかったりすることもあったようだね。上から目線って奴ですかねぇ。身分制度は否定されるべきものではあるけれど、封建制度の中の検校なんかも一種の福祉政策。家制度もそうだね。「小身の武士家禄奉還の儔、又は元御用達町人など、商売を始む。骨董分けけて多し。或ひは貨食舗、酒肆、茶店、汁粉、蕎麦、鮓、漬物、紙類、煙草、蝋燭、乾魚、其の余色々の物を售ふ人多し。・・・しかれども、多くは商買の道に疎き輩なれば、羸余を以て活計するに足らず、まもなく閉店の人多かりし」。私のご先祖もさぞかし苦労をされたことだろう。靖国神社の前身、招魂社の記述も多い。躍起となって力を入れたことが伺える。元年「神道仏道混淆を改めらる。神社は神職に改められ」。やれやれですね。影響は大きかったのかなぁ。江戸に多かったお寺はだいぶ減ったみたいだね。
 今の週刊誌と違うのは、例えば、元禄15年「12月14日、浅野家の義士四十七人本意を達す(ことは人口に膾炙するをもてここにいはず)」と、一つのことにぐだぐだと同じことばかり書いたりはしないってこと。
 解説に、東京人は、関東大震災や東京大空襲でも「江戸庶民と同じ、諦観による執着の浅さと、それを不可抗なできごととして擦過させ、そこを思考の場として追求することを怠る性向を持ち合わせており」なんだけど、「同時に又、やけ跡のバラックで即日戸板の上に商品を並べて商いにかかるという、庶民の雑草的根づよさも」持っているって。
 せっかくの政権交代も、それを活かせるかどうかは、私たち庶民が、積極的に声をあげ行動していくかどうかにかかっているのだろうね。あきらるのも、お上にお任せもやめときましょう。

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