凍りのくじら (講談社ノベルス)
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- 税込価格:1,040円(29pt)
- 発行年月:2005.11
- 発送可能日:24時間
- 本 新書
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商品説明- 「凍りのくじら」
カメラマンの父が失踪してから5年。毀れそうな家族をたったひとりで支えてきた高校生・理帆子の前に現れた青年・別所あきら。彼の優しさが理帆子の心を癒していくが…。家族と大切な人との繫がりを描く「少し不思議」な物語。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介- 「凍りのくじら」
辻村 深月
- 略歴
- 〈辻村深月〉1980年生まれ。千葉大学教育学部卒業。「冷たい校舎の時は止まる」で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。
ユーザーレビュー- 「凍りのくじら」
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2005/11/29 09:23
少し・不思議な物語
投稿者:紫月(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
辻村深月待望の三作目。
わくわくして手にした私は、ちょっぴり後悔した。
サブタイトルにドラえもんの道具名がずらりと並ぶ。
どうやら、今回の作品は藤子作品に共鳴しているよう。
そりゃあドラえもんは名作だけど、やはりアニメ。
小説に持ち込むのはどうだろう。
気乗りしないままページを繰ると、主人公の理帆子は高校生。
予想通り、若者の心理を描くのが上手な著者らしく、今回も主だった人物は、高校生やそのあたりの年代だった。
失踪した父と病に倒れた母を持つ理帆子は、密かに周囲の人間を分類する遊びをしている。
尊敬する藤子・F・不二雄がSFを自分の中では少し・不思議な物語だと位置づけたのに共鳴し、友人たちを「スコシ・ナントカ」で現している。
いわく、スコシ・フゾロイ、スコシ・フリー、スコシ・ファイティング...。
そして理帆子自身はスコシ・フザイ。
誰にも溶け込めないで、どこにも居場所がない。
自分を、そんな風に感じている。
理帆子の元彼、友人たち、そして理帆子自身、登場人物はみなプライドが高く、傷つきやすく、思春期特有の不安定さを露にしている。
こうした点、著者は本当にこの年代の人物を描くのが上手だ。
これまでの主人公と違ってどこかクセのある理帆子にも、読み進むうちに次第に共感を覚えていく。
ドラえもんの道具はのびた太の願いや窮状から現れたもの。
だから、それらは人間の願望や心の弱い部分を鋭く衝いている。そしてこれらは物語りの中で重要な役割を果たしていた。
アニメの中に潜んだ哲学が、物語の伏流となっていた。
ラストは少し不思議で、切ない。
ファンタジーとホラーとミステリの要素が少しずつ混じった、しかしそのどれにも分類されない不思議な物語は、読後感がとてもよかった。
私の中では前作、『子どもたちは夜と遊ぶ』が第一位なのだけど、本書もけして見劣りはしない。
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2009/09/23 12:43
挫折しなくちゃ
投稿者:山茶(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
なかなか読み進めなくて、時間が掛かりました。
なんだろう、主人公の心情が伝わるたびにココロ苦しくなって・・・。
ページをめくるたびに辛くなっていったんですよ。
内容は面白かった。SF(少し不思議な)物語でした。
辻村作品はテンポが緩やかで、
その分読み手が色々考えることが出来ます。
場面場面で僕だったらこう考えるなぁとか、
そういう見方も出来るのかとか考えながら読み進めれます。
あと、すごく心に残る言葉がちりばめられてるんですよ。
今回で言えば
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
「挫折しなくちゃ。」
「全部を自分の責任だと認めて、その上で自分の実力がないのだと諦めなくちゃならない。精一杯、本当にギリギリのところまでやった人にしか、諦めることなんて出来ない。挫折って、だから本当はすごく難しい。」
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
なるほどねと想いました。
僕よりも2歳ほど年下の辻村さんですが、
いつも考えさせられます。
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2005/12/08 12:22
主人公=理帆子を応援する友人の目線と、彼女の成長を願う大人の目線の両方を経験出来ました
投稿者:楊耽(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
第31回メフィスト賞を受賞してデビューした辻村深月の第3作。
デビュー作「冷たい校舎の時は止まる」が高校生の、第二作「子どもたちは夜と遊ぶ」が大学生の学校生活とプライベートを描き、本作「凍りのくじら」では、新進女流写真家「芦沢理帆子」の高校時代を描いています。
大人になってゆく子供の外面と内面の葛藤を描く著者の持ち味はそのままですが、前作までが謎解きに重点を置いていたのに対して、本作では理帆子が事件を通して精神的に成長していく様子に重点が置かれているように感じました。つまり、僕は「普通のジョブナイル小説」として本作を読んでいたのですが……、
人との接し方で悩む理帆子の目線を通した物語は、あたかも自分が今、高校生として生活していると錯覚させるほどのリアリティーが感じられるのに、彼女が自ら危険に接して事件に巻きこまれてゆく様子に接すると、彼女を心配する自分が大人として見守る目線に立っている事に気づきました。例えば、まるで一度子育てを経験した上で、再び高校生に戻って友人の理帆子に接しているような不思議な感覚でした。
これは、小説家として既に老成の域に達した著者が緻密な構成と客観性を駆使しながら、実際にはまだデビューしたての若さをも発揮しているからなのだと僕は思います。いったい、どんな人生を送ったら二十五歳でこんな小説が書けるのか、これも不思議でなりません。
物語は、高校生の時に見た『暗い海の底や、遥か空の彼方の宇宙を照らす』光を写真として再現する=芸術家としての写真家理帆子の経験です。絵画や音楽とは異なり、芸術と社会性を併せ持つ写真の、芸術としての意味も納得出来た作品でした。
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2007/05/22 17:46
主人公の痛いほどの思いは、びしびし伝わってくる
投稿者:読み人(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
雑誌、「ダ・ヴィンチ」の冒頭に今月のこの一冊みたいなコーナーが
あるのですが、そこで紹介されていた、話題の一冊です。
最初に、これ講談社ノベルスですが、ミステリじゃないですね。
どちらかというと、中間小説というか、語りなんかは、純文学系に近いです。
主人公は、女子高校生の理帆子。カメラマンの父親は失踪、
元彼は、精神を病んでいて、ストーカー一歩手前と
ここまで書くと、物凄いかわいそうな女の子の話しって思われそうですが、理帆子は、全然暗くならずに、前向きに普通に生きています。
しかし、著者の上手い語りによって、理帆子の”痛い”思いは、びしびし伝わってきます。
みんなと同じように生きているのに心の中では、叫びや悲鳴をあげている感じ。
それも、叫びを書いてあるわけではないのに、それが、読者には、しっかり伝わってくる感じ。
書きかたとしては、かなり文学度が高い気がしました。
どうして、この作品が、ミステリ系の講談社ノベルスなの??って感じですね。
又、文学度って書きましたが、この理帆子は、わたしにとって、頭がいいっていうことは、その人の読んだ本の数だ。とか、本好きには、にやりとさせるか、嫌な女の子かは、微妙なところ。
もう一つどきっとさせられたのが、理帆子が、母親に対し
私は、あなたよりもう充分頭がいいからと、思う描写。
これも、かっこいいか、嫌な女の子かは、かなり微妙ですが、
ざくっと、読者の心には、入ってきます。
ストーリーテリングは、ちょっと今一乗れなかったけど、文章表現というか、語り口調は、
めちゃめちゃ凄い、タレント(才能)です。
講談社ノベルスって、ミステリって銘打って
自由に、それこそ、小説スタイルの右から左まで幅広いタレントを育てている感じで、逆に自由な小説出版形式だなぁ、とも思いました。
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2007/11/30 15:38
ああ、こいつは私だ。
投稿者:四月ねずみ(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
ドラえもんのアイテムをたくみに組み込んで進んでいくこの物語は、1人でいても、皆といても行き詰まりを感じる主人公である理帆子が、ある少年との出会いによって、少しずつみんなとの繋がりに気付いていく・・・って筋
それは、とても読んでいて、痛みを覚えるような感性で書かれていて、面白い。けれど・・・
この物語には理帆子をストーキングする男・若尾がいる。
理帆子いわく、カワイソメダル(それをつけてる動物が、誰でも可哀想でたまらなくなる)をつけてる、SF(少し・不自由)な男。
そいつの書き方が、私にとって他人事だとは思えなかった。
若尾には夢がある。その夢に向かってするべき努力が足りなくて、でもそれに気付けないで、いつまでも回りに責任転嫁をしてる。
そして、自分では前進だと言い張りながらも、後退を続けてしまっている。
たとえば、気分転換にスロットを始めてみたり。
たとえば、見知らぬ女の子にナンパまがいの会話をしてみたり。
そういうことを理帆子目線で語られた時・・・なんだか、とても痛々しい。
理帆子いわく「不自由あらため腐敗」
中盤、若尾が安定剤をガリガリ飲み下したり、理帆子の友達を怒鳴りつけたりする場面。
どうしようもなく腐敗していく様に、思わずページを閉じたくなる。
元彼女にちっとも信頼されてなかったり、上手くいかなくてどつぼにはまり込んでしまう事って、意外にありふれた事なんだと思う。
それを、優しさの欠片も無い視点で語られてしまうと、同じくどつぼの渦中にいる身としては「ちょっ・・・待って下さい。もう少しだけ時間下さい」って叫びたくなる。
物語は若尾に対して最後まで救いを与えなかった。
若尾も許しがたい最低な事を仕出かすけれど、どうしても、この「少し・腐敗」してしまった男が今後、少しでも立ち直っているといいと願ってしまう。
読み返すたび、若尾はこのあと立ち直るんだろうか?
いや、無理だろうと思って、がっかりせずにはいられない。







