青空の卵 (創元推理文庫)
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- 税込価格:780円(22pt)
- 発行年月:2006.2
- 発送可能日:24時間
- 本 文庫
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商品説明- 「青空の卵」
僕、坂木司には一風変わった友人がいる。自称ひきこもりの鳥井真一だ。複雑な生い立ちから心を閉ざしがちな彼を外の世界に連れ出そうと、僕は日夜頑張っている。料理が趣味の鳥井の食卓で、僕は身近に起こった様々な謎を問いかける。鋭い観察眼を持つ鳥井は、どんな真実を描き出すのか。謎を解き、人と出会うことによってもたらされる二人の成長を描いた感動の著者デビュー作。【「BOOK」データベースの商品解説】
収録作品一覧- 「青空の卵」
| 夏の終わりの三重奏 | 9-72 | |
|---|---|---|
| 秋の足音 | 75-159 | |
| 冬の贈りもの | 161-252 |
ユーザーレビュー- 「青空の卵」
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2009/06/06 20:51
読了後、とても気持ちのよい気分になれる一冊です。
投稿者:エルフ(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
*あらすじ*
主人公・坂木司は外資系の保険会社に勤務しています。
友人の鳥井真一はひきこもりのプログラマー。
一人暮らしが長いせいか料理の腕はプロ顔負け。
鳥井はほっておけば何週間でも家に閉じこもっている、そんな彼を外の世界へ連れ出すために僕は鳥井の家へ足を運んでいる。
僕が街で見た気になることを不思議なことを鳥井に話すと彼はその鋭い観察眼で僕が見えなかった真実へと導いてくれる。
そんな二人の前に現れたのは不自然なまでに化粧をした女性、誰かにストーカーされているという視覚障害者、知能に障害があるのか言葉が上手く話せない少年・・・・。彼らに隠された真実とは??
1.夏の終わりの三重奏
2.秋の足音
3.冬の贈り物
4.春の子供
5.初夏のひよこ
これは単なるミステリ小説ではありません。
その奥の深さに驚かされます。
さて、この本有栖川有栖氏の有栖・火村シリーズのように二人の男性によって数々の謎が解かれてゆきます。
火村シリーズとちょっと違うところはこの主人公・坂木と鳥井はお互いにお互いを常に気に掛け、深く繋がり信用しあっている仲だというところ。
火村シリーズだと 有栖の片思いっぽい感じがありますが、この二人は物語の途中で依存という言葉が出てきますが例え依存しあっていたとしてもいいんじゃないかと思えるくらい深い部分で必要としている二人なんですよね。
その部分は短編が進むにつれて深まっていく気がしまた。そして二人の信用度、深い絆を感じて行きます。
どちらかと言えば「ななつのこ」の駒子と瀬尾さんのような二人なのかしら。
ひきこもりになった鳥井の抱える問題、これは読んでいて胸が辛くなりました。
そして彼を見守り続ける坂木の姿も・・・・彼は本当心優しい青年なんですよね。
この透明感のある青年が自分の周りで困っている人を見逃せずに時に利用され、時に真実に傷つきながらも成長していく物語はミステリを読んでいるという感じはしませんでした。
そしてまた季節感溢れる文章がいいですね。
最後が初夏で終わる辺りもまぶしい青空が二人の将来を明るく見せているようでとてもいいです。
ちなみに私は「春の子供」が一番好き。ラストは感動しちゃいました
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2012/05/17 20:05
ひきこもり探偵シリーズの幕開けは、衝撃とともに始まったのです。
投稿者:たけぞう(男性|40代) - この投稿者のレビュー一覧を見る
夜の光を読んで、何かが心の琴線に触れた。その何かを掴みたく、デビュー作に戻ることにした。よく使う手なのだが、やはり正解で、坂木さんの魅力がむき出しの一編であった。
裏表紙から引用する。
「僕、坂木司は一風変わった友人がいる。自称ひきこもりの鳥井真一だ。複雑な生い立ちから心を閉ざしがちな彼を外の世界に連れ出そうと、僕は日夜頑張っている。」
ひきこもり探偵シリーズ第一弾とある。刺激的なキャッチコピーではないか。このサイトではないのだが、ひきこもりという単語に惑わされたのか、気持ち悪いなどという書評も残念ながら見かけた。失礼な感想で、書いた人は読み込めていないだけだと思う。非常に実直に、分かりやすすぎるほど心と対話する物語であった。もちろんひきこもりと称するだけあって、痛い感覚もあるのだけれど、私は真摯な気持ちにさせられた。
「夏の終わりの三重奏」「秋の足音」「冬の贈りもの」「春の子供」の短編と、「初夏のひよこ」のエピローグからなる。日常の謎の連作だ。ネットで見つけたインタビュー記事によると、坂木さんは北村薫さんを読んで日常の謎の魅力に取りつかれたらしい。読んでみてよく分かる。日常の謎と称される作品は、殺人事件の起こらない日常のふとした不思議を扱う的に紹介されることが多いが、目を引く作品は、必ずといっていいほど人物像に深く切り込んでいる。坂木さんのこの作品は、ひきこもりという設定を使っているので、その特徴が極めて分かりやすい。単なる謎解き作品ではないことが、このジャンルの最大の魅力だと思っている。
インパクトがある「ひきこもり」の評価であるが、読了して大成功という感想をもった。前半は、謎解きにおける探偵役の鮮やかさとか、犯人の内面の人間性などに目を向けられるが、徐々に探偵と案内のワトソン役にも視点があたってくるのである。そして、四本目の短編は、まさしくぐうの音も出なかった。素晴らしいの一言につきる。前半、ひきこもりの設定なんてちょっとおおげさかなあと思っていたのだが、後半、著者の求めたものがさらけ出された感じがする。
総じて、謎の作り方、伏線の張りかた、推理の本格度合いなど、非常に技術の高い作品だと思った。一方で、登場人物の描き方などにデビュー作ならではの粗さと初々しさも見え隠れして、非常に楽しめた。それにしても、語り手の心情を表わす文章が本当に多い。自意識過剰なほど考え込むシーンや、印象や含みをたっぷり持たせた文章の放り込みなど、作者の魂が宿っている感じがする。坂木さんが気になる人は、ぜひ手にとって欲しい一冊だ。
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2006/08/21 13:35
涙もろい凡人坂木・引きこもり探偵鳥井のコンビを楽しむ
投稿者:かつき(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者と同姓同名の「坂木司」を語り手とした安楽椅子探偵ミステリー。探偵役は、引きこもりの友人鳥井真一。
坂木司は、鳥井のために生きているようなもの。比較的自由な時間の取れる外資系保険会社に就職し、毎夜、彼の元に通い話し相手になり、週に一度は近所のスーパーマーケットに誘い出します。
鳥井もまたクールな性格なのに、涙もろい坂木が泣けば、シンクロして泣き出す。情緒不安定なのですが、それでも重篤なトラウマを抱えた彼が、シンクロするということは、内面ではかなり依存度が高いといえます。
この奇妙なふたりが日常のミステリーを解決する連作短編集。
鳥井が受けた傷、彼が発する心の傷を吐露するシーン、また彼が坂木によって癒されるシーンや、坂木が彼にとって絶対の存在であることを叫ぶなど、現代の繊細な若者を癒すモチーフがてんこもりです。
描かれるミステリーもまた、人間関係に疲れた心理を深く探るようなもの。本書で癒される人も多いんだろうな、と思います。私はほとんど理解できなかったけれど。
さらに著者は覆面作家。同姓同名の登場人物を男性に描いていますが、おそらくは女性でしょうね。このふたりの関係はボーイズラブっぽい。男性作家には書けないでしょう。
また、ふたりの同級生で、今は警察官になっている滝本孝二と、その部下小宮のコンビも登場。男性ばっかりな小説。
「夏の終わりの三重奏」
坂木と鳥井は週に一度行くスーパーマーケットで、美人だけれど化粧の濃い女性と知り合う。鳥井は彼女が故意に近づいてきた、と予測する。果たしてその通りになる。
「秋の足音」
坂木は通勤途中、ハンサムな視覚障碍者塚田と知り合う。しかし彼の後をつけている第三者がいることに気づく。
「冬の贈りもの」
前回「秋の足音」で知り合った歌舞伎役者安藤に、ファンから不思議な贈りものが次々に届く。匿名ではあるが、手紙が後日、必ず届く。やめる、と言いつつ、贈りものは続く。
「春の子供」
坂木は、駅のロータリーで迷子の子供と知り合う。彼が持っていた住所のアパートに行ったが、誰もいない。子供はほとんど喋らないが、おとなしい。なんとか鳥井も受け入れてくれそうなので、昼間は彼に預けることにする。
「初夏のひよこ」
おまけのような短編。本書の登場人物のその後をさりげなく追う。
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2006/03/13 00:00
坂木と鳥井の関係の危うさを打破してくれるのは、彼ら2人の心の強さと、今の彼らが大好きだと思ってくれている暖かい人たちの存在なのかもしれません。
投稿者:どーなつ(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
外資系の保険会社に勤務している「僕」こと坂木司と、ひきこもりのプログラマー鳥井真一が織り成す、少し心が暖かくなる連作短編集。
著者が北村薫氏の「六の宮の姫君」が好きだ、ということで、この作品も若干北村薫色が出ているように思う。
いわゆる日常の謎系のシリーズ。
「円紫さんと私」シリーズでいうところの、「私」が、坂木。そして、謎をもちかけられてそれに答えてくれる「円紫さん」の役目を果たすのが、鳥井真一。
北村さんの作品で登場する円紫さんは、年配ということもあるけれど、この人なら必ず答えに導いてくれる、素晴らしい助言をしてくれる、そういう安心感があるのですが、この作品の鳥井に至っては、とりあえずその謎に興味を示して、手を貸してくれるのかというお伺いをたてるところから始めなければならない。
学生時代のイジメ、家庭内での問題などで、ひきこもりになってしまった鳥井。
唯一坂木にだけは、心を開いてくれるのだけれど、なんだかつかみ所がないのも事実。
乱暴ものだと思いきや、泣き上戸であったり、人に関心を示さないのだけれど、坂木には弱い。
坂木は、なんとか鳥井を外へ連れ出そうと努力をしています。
毎回、坂木が外で何かの騒動に巻き込まれたり、謎を拾ってきたりして、鳥井に助けを求める。
鳥井も渋々ながら、坂木と共に安楽イス探偵をきどるのだけれど、おもしろいことにそんな事を重ねるうちに、鳥井の世界は少しづつ広がっていってるんですよね。
事件を通して顔見知りになった人達、同級生の警官、その後輩。
彼の周りに少しづつ人の輪ができはじめます。
と、同時に坂木は少し心の中に重いものも感じます。
嫉妬、に近いのでしょうか。
自分と1番仲の良かった友人が、別の誰かと楽しそうに喋っていたり、自分のいないところで何かおもしろいイベントの計画が進んでいたりする、そんな疎外感に近いもの。
誰しも、そういうものを感じたことがあるはず。
なんだ、結局自分じゃなくてもいいんじゃない。——と、少し拗ねてみたりして。
鳥井の世界が広がるのはいいのだけれど、彼が自分から離れてしまうことに不安を感じている。
保護者気取りでいる自分の方が、鳥井に依存していたことに気付きます。
読んでいて思ったのは、この2人の関係。少し危ういんですよね。
仲良くくっついている時は最高のパートナーとなりうるでしょうが、何かの拍子にボタンの掛け違いがあったとき、とんでもない方向へ歯車が転がっていってしまいそうな感じ。
坂木が悲しむと、鳥井も泣いてしまう。
2人はまるで目に見えない心の奥深くで繋がっているかのようです。
けれど、最終的にその危うさを打破してくれるのは、彼ら2人の心の強さと、今の彼らが大好きだと思ってくれている暖かい人たちの存在なのかもしれません。
今の状態で何か2人の間を裂くような決定的な「何か」が起これば、かなり怖いですが、これから少しづつ世界を広げていくうちに、その衝撃を和らげる為のスポンジを周りに寄せ集めていけば、きっと大丈夫です。
この作品。どうやらシリーズ化しているようなので、今後の2人の動向に注目したいと思います。







