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夕子ちゃんの近道

  • 出版社:新潮社
  • サイズ:20cm/229p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-10-302251-5

夕子ちゃんの近道

長嶋 有 (著)

  • 全体の評価 4.53件のユーザーレビュー
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  • 税込価格:1,57545pt
  • 発行年月:2006.4
  • 発送可能日:購入できません

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商品説明- 「夕子ちゃんの近道」

アンティーク店フラココ屋の二階で居候暮らしをはじめた「僕」。どうにも捉えどころのない彼と、のんきでしたたかな店長、大家の八木さん、その二人の孫娘、朝子ちゃんと夕子ちゃん、初代居候の瑞枝さん、相撲好きのフランソワーズら、フラココ屋周辺の面々。その繋がりは、淡彩をかさねるようにして、しだいに深まってゆく。だがやがて、めいめいがめいめい勝手に旅立つときがやってきて—。誰もが必要とする人生の一休みの時間。7つの連作短篇。【「BOOK」データベースの商品解説】

【大江健三郎賞(第1回)】アンティーク店の2階で居候暮らしをはじめた「僕」。のんきでしたたかな店長、大家の八木さん、その2人の孫娘、初代居候の瑞枝さん、相撲好きのフランソワーズ…。人生の春休みのような日々を描く、初の連作短篇集。【「TRC MARC」の商品解説】

収録作品一覧- 「夕子ちゃんの近道」

瑞枝さんの原付 7-35
夕子ちゃんの近道 37-69
幹夫さんの前カノ 71-100

ユーザーレビュー- 「夕子ちゃんの近道」

全体の評価
4.5
評価内訳 全て(3件)
★★★★★(1件)
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3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2006/06/07 22:21

愛しさとせつなさと心強さと

投稿者:ナカムラマサル(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 主人公は、西洋アンティーク店「フラココ屋」に住み込みで働き始めた男。飄々とした店長の幹夫さん、近所に住むちょっと天然な瑞枝さん、おっかない大家さん、大家さんの孫の双子の朝子ちゃんと夕子ちゃん、相撲好きのフランス人フランソワーズなど、味のある登場人物たちと主人公の日常を描いた短編集。
 日常の何気ないやりとりこそ物語なのだ、と長嶋有の小説を読むたび思う。
たとえばこんな会話。
—「電話で苦情がきましたよ」何度うち直しても宛先不明の返信がくるって。
「駄衛門から?」店長の言い方には、どこかちょんまげの感じがあった。メールアドレスをうち間違えると宛先不明を知らせる返信があるのだが、その返信元の差出人名の欄にはかならず「MAILER-DAEMON」と書かれている。
 くすっと笑ってしまうようなエピソードの中に時折挟まれる「弱っている人は人前に出ない方がいいんだ」「寂しい人は最初からずっと寂しい」といった格言めいたセリフが胸に沁みる。
 淡々とした日常を描きながらも、本書は定職に就かない30男の、年齢に対するこだわりをそっと明かしている。
「自分は二十になっても三十になっても『もう』という感慨を抱いたことがない」
「最近の若者はなってない、という言葉がある。(略)若者のなってなさは、僕の世代で底をうったのではないか」
ニートだのフリーターだのと、がなりたてる喧騒を抜けた“大人になりきれない大人”を描いた物語でもあるのだ。

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4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2006/07/06 22:06

同じく舞台が古道具屋であるということもあってすぐに川上弘美の『古道具中野商店』を思い出してしまう

投稿者:yama-a(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 舞台は「フラココ屋」というアンティーク・ショップ。帯の宣伝文句を借りると、「古道具屋の二階に身ひとつで転がり込んだ『僕』。人生の春休みのような日々を描く初の連作短編集」である。主人公の「僕」は名前が何なのか、何歳くらいなのか、この店に転がり込む前までは何をしていたのかなど、具体的な背景が最後まで明らかにされない。雲を掴むような存在である。でも、なんか存在感の薄い気弱なお人好しという人間性は見事に描かれている。
 他の主な登場人物はフラココ屋の店長、フラココ屋の大家であり付近一帯の大地主である八木さん、八木さんの2人の孫娘である朝子さんと夕子ちゃん(このネーミングが人を喰っている。ちなみに2人の両親はここにはいない)、フラココ屋の初代居候であり、今は道を隔てたところに住んでいる瑞枝さん、そして店長の昔からの知り合いであるフランス人のフランソワーズという女性である。描き方としては「僕」と同じように、皆何かの情報が欠けている。例えば店長と瑞枝さん、店長とフランソワーズの関係は何なんだろうと気になるのだが、きっちり描かれていないので想像しながら読むしかなく、逆に言うと小説内にぼんやりと散りばめられた断片を集めながら想像するのが楽しい。
 同じく舞台が古道具屋であるということもあってすぐに川上弘美の『古道具 中野商店』を思い出してしまう。この淡々とした書きっぷりも共通点を感じてしまう理由である。
 川上弘美のほうは卓越した語彙と類稀なる表現力が合わさった、もうほとんど「話芸」と言って良い描写が魅力であるのに対して、長嶋有のほうはと言えば、この人のポイントはむしろストーリー上の「仕掛け」の巧さであると思う。仕掛けったって、ストーリーの上では何か派手なことが起こるわけではない、と言うか、大抵はほとんど何も起こらない。ただ、ある程度読み進むうちに必ず「あ、あそこで書いてあったことがここで復活してきた」「なるほど、あれはシーンのリアリティを補強するために加えた細部の描写だったんじゃなくて、その何ページか後のこの部分に繋がる布石だったんだ」と思うところに突き当たるのである。ひとつだけ例示すればそれは自転車のサドルだったりする訳だが、いちいち「これはひょっとしたら何かの伏線なのかなあ」などと勘ぐりながら読まないほうが良いと思うので、それ以上は書かない。ぼーっと読み進むうちに「あっ」と声をあげてしまうのが楽しいと思う。
 川上弘美は誰にも真似のできない感性と観察力で人生のひとコマを切り取り、誰にも真似のできない話芸でそれを再構築して再現して行く。長嶋有も独特の感性と観察力で人生のひとコマを切り出して来るのだが、彼の場合はそのひとコマを転がしてどう繋げて行くかに神経を注いでいるように思える。
 つまり、川上弘美は絵画的で長嶋有は動画的なのである。
 もちろん川上弘美のストーリーは止まっている訳ではない。ただ、彼女の小説では動きの中のひとコマひとコマの美しさに眼を奪われるのに対して、長嶋有の場合は動画を構成するコマの存在を感じさせるよりも流れの鮮やかさに感心してしまうのである。
 いずれにしても、どちらも大変巧い作家である。多分何年か経って思い出そうとしたら『夕子ちゃんの近道』と『古道具 中野商店』は僕の頭の中でゴッチャになってしまうだろう。そうならないうちに、今感じている両者の違いを書きとめてみた。
by yama-a 賢い言葉のWeb

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1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2008/08/09 00:43

ナイマゼにする

投稿者:笑いの影(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 主役の僕は何かに逃れるようにしてフラココ屋にやってきた。住み込みで働く、ということでフラココ屋2階に住むようになり、住むのは僕で5代目らしい。
新たなスタートを切った僕は、ここで静かな時を過ごすのだが・・・

 相変わらずだが、内容はとても過激だ。大体が離婚だとか不倫だとか、悲哀が絡んでくるものが多い。その割りに読後感は爽快で、次なるステップに進む勇気をくれるのである。
 全体を通して長嶋氏の独特の言い回しや場面展開が繰り広げられている。これは長嶋氏の持っているもので、意識してやっていることではないとだろう。
しかし以前よりもっと「小説」に近づいているように感じるのは僕だけじゃないはずだ。脱エッセイとまではいかないものの、過去の「心うちを描く」ものより「展開を楽しむ」ものに変わっている。
以前のような独特の展開や言い回しが更に小説として完成に近づいているのかもしれない。エッセイと小説をないまぜにした新たな読み物として、より独自感を打ち出したのではないだろうか。

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