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収録作品一覧
銀しゃり食って、酒は甘口 | 宮部みゆき 述 | 11-46 |
---|---|---|
渋めで勝負、赤で決める | 北方謙三 述 | 47-70 |
鳶の頭、力士、与力がカッコいい | 北方謙三 述 | 71-92 |
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紙の本
とにかく目からウロコが落ちまくりです。
2009/06/23 21:50
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:紅葉雪 - この投稿者のレビュー一覧を見る
いきなりだが、宮部みゆきさんによる「文庫化によせて」から引用させていただく。
「「絶対、ご自宅は江戸にあるんだよね……」
もちろん、どこにお住まいなのかは存じ上げていましたし、杉浦さんが現代の東京人であることは百も承知です。でも、どうしてもどうしても、師匠の本当のお宅は江戸の町のどこかにあるような気がしてなりませんでした」
なお、ここでの「師匠」とは杉浦日向子さんの事。
杉浦さんと対談した後の宮部みゆきさんと編集さんが期せずして同じセリフを吐いてしまったという。それが先述の「絶対……」以下の台詞なのだが、宮部みゆきさん、北方謙三さんらが「師匠」と言い、その杉浦さんとの対談を「授業」というほどに「江戸」に精通していた、江戸風俗研究家の杉浦日向子さん。
文庫本カバーの『内容紹介』によると、
「本書は、その杉浦日向子が、6人の仲間とともに、魅惑の都市とそこに住む人々の魅力を語った、究極の江戸案内である。……(以下略)」
となる。
対談相手は、北方謙三さん、宮部みゆきさん、山崎洋子さん、田中優子さん(法政大学社会学部教授)、石川英輔さん、高橋義夫さん。
しかし。宮部みゆきさんが、対談で「目からウロコです」と言っていたのだが。
江戸時代を詳しく調べながら時代小説を書いている作家ですらそうなのだから、ただただ楽しんで読んでいるこちらは、その倍以上は「目からウロコ」状態となってしまった。
何しろこの本からすると、自分がファンで今まで読んできた時代小説や見てきた時代劇に、「あれは間違っている???」というシーンが出てきてしまうのだ。
この本の中でも、高橋義夫さんが「物書きの立場からいえば、時代考証家っていうのは天敵なんです(笑)」と言っているのだが……。
蛇足になるが、その高橋さんに切り返す杉浦さんの台詞がいい。たったひとこと。
「いやなやつですよね(笑)」
さすが江戸っ子、『粋』を地でいっていると感じた。
話は戻る。
『目からウロコ』の例を幾つか挙げるなら。
江戸長屋風景の一つ、「井戸端で(井戸水を使って)お米を研ぐ」のは『有り得ない』事に。
さらに。江戸の庶民は家で煮炊きをする事は少なく、おかずは今で言う「お惣菜屋さん」からお惣菜を買ってくるのが当たり前。何しろ竈がある家が殆どなく、包丁・まな板が「普及していなかった」のだから、推して知るべし。
もう一つ驚いたのが、江戸の町の女性たち。宮部さんが、「私、江戸時代に生まれれば良かった(笑)」と言うほどに、かなりの女性優位だったようだ。
なにしろ長屋に住む「かかあたち」も大変大切にされていて、「長屋で朝ご飯の支度をするのが亭主の鑑」だったとか。
良い亭主になる条件その一、「ご飯が上手に炊けること」、その二、「マッサージが上手なこと」、その三、「育児が上手なこと」。
これには笑ってしまった。
そうでないと「乗り換えられて」しまうのだ。しかも三行半を書くのはもちろん男性だが、その男性が家を出ていくというから唖然。
なにしろ天下のお江戸は、慢性の「女性不足」。男性たちは結婚してもらうのも一苦労だったらしいが、結婚してからも大変だったようだ。
その他にも識字率は高く平仮名ならほぼ全員が読め、江戸のデートのお誘いやプロポーズはまず女性から、男性はひたすら待つ身だったとか……。
今まで読んでいた時代小説や見ていた時代劇、それらから受けたイメージで勝手に自分の中に作り上げていた『お江戸』が、見事180度転換してしまった。どうやら自分が持っていた江戸のイメージに当てはまるのは、当時の上方のものだったようである。
とにかく江戸の町の庶民はおおらか、そんな印象を受けた。
自分がここに例として挙げさせて貰ったのはほんの一部、「目からウロコ」がボロボロ状態で、江戸は非常に奥が深いと感じた。
杉浦日向子さんは残念ながら2005年に他界されたが、もっと面白い江戸の話を読んでみたかったとも思う。
ただし問題も一つ。
この人の本を読んだ後に時代劇を見たり時代小説を手にすると、そこに出てくる江戸文化の描写に、「これは違うのでは?」と首を捻ることが増えてしまうのではないか、と。