- 出版社:文芸社
- サイズ:20cm/278p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-286-00468-6
すれ違った風景
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(1件のユーザーレビュー)
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- 税込価格:1,785円(51pt)
- 発行年月:2005.11
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- 本
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収録作品一覧- 「すれ違った風景」
| 閉ざされた時間 | 7-90 | |
|---|---|---|
| 臍帯 | 91-183 | |
| すれ違い | 185-275 |
ユーザーレビュー- 「すれ違った風景」
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2008/10/29 13:28
人は闘う事で優しくなる
投稿者:hisao(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
作者はプロの作家ではない。20代には富士正晴氏に師事、井上靖氏に“この作品には感心した、この作者の眼は作家としてすでに出来上がっている”とまで絶賛された作品を残しながら、生活のため筆を断ち 某メーカーの営業の職に就きその努力と才覚で副社長にまで登り詰められたそうである。
今75才を前にして決して穏やかでなかった人生を振り返り自伝をものにする。
終生 創作への断ちがたい情熱を抱きながら、私達には想像も付かぬ闘いの人生を駆け抜けた方の自伝であるだけに、小説とはどのようにして創られるのか 人が生きるとはどのような事なのかが正に生々しく語られている。
もし あなたが自分の生きてきた道を振り返ってみたいなら、もし あなたが文学を志す若者なら 是非手に取って頂きたい1冊である。
敢えて記憶回路に封印する事で生きてきた作者と母との生き別れ、哀しくて美しい。
母のぬくもりの言葉を求めながら届かぬ苛立ちに、母から買い与えられた牛乳瓶を線路に叩きつけホームに逃げ上がる幼時の作者。
“母はさっと背を向けて弟を引きずるようにして歩き去った。その着物の柄も覚えていない。顔の色も表情も覚えていない”
職人気質の父との田舎暮らし、猥雑で朗らかな近在のおばさん達。海員養成所入学、空襲・敗戦。生と死臭の中にも“愛がなかった訳ではない”
15才高等小学校卒業を待って復員船の乗組員として壮絶な生活が始まる。
飢餓・嵐・引揚者や同僚の死、硬質で緻密な筆致が感傷を寄せ付けない。
船を降り 創作と雑誌編集の生活。赤貧と失意の戦慄。仲間の自死が淡々と語られる。
絶望的窮乏の中での愛する夫人との結婚は“私達の誕生日”
そしてサラリーマンへの転身と営業苦。
やがて夫人は癌を患い二人の闘いが始まる。圧巻である。
“お前を死なさない”
“私は死なない事に決めたから”
“私たちの勝利宣言はまだまだ先やからね”
幼時、海員生活、編集者生活、夫人との邂逅、夫人との闘病と、あたかも作者の人生・思い・闘いの軌跡の如く文体が微妙に転調する。闘いが大きくなるほどに文体は優しさを増してくる。







