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書店員レビュー
最近「戦争文化論」...
ジュンク堂書店大阪本店さん
最近「戦争文化論」の邦訳が出たクレフェルトの著書。原題は「Supplying War」。いわゆる兵站について実証的に分析したものである。
ナポレオン以前の戦争とは現地徴発が基本であり、そのため冬場の戦争は不可能であり、また一度敵地で略奪を極めた地では再度の徴発が不可能なため進軍の方向が限定されるなど、戦略的制限のもとであった。20万を超える軍団の移動を可能にしながら冬将軍に見舞われた原因やその後の普仏戦争時での鉄道輸送の実態やシュリーフェン作戦や電撃戦、名将と名高いロンメルと逆に猪武者扱いのパットンの兵站的観点からの再評価、といったラインナップであくまでデータに基づいて定説を見直している。最終的にはクラウゼヴィッツの「戦争論」への実証的批判へと向かう。
兵站をビジネス語で「ロジスティック」と訳すと途端に物流の話に限定されてしまいがちだが、組織における物的・人的資源の確保が「戦争継続」に不可欠なのは先の大戦を引くまでもなく明らかである。ただ、科学的数値的アプローチを軽視して精神論でカバーしがちなのは戦争から何も学習しない日本人には多い現象である。 大阪本店 D
紙の本
戦略論からは見えてこない戦争の姿を克明に焙り出す名著
2007/11/01 23:54
16人中、16人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Skywriter - この投稿者のレビュー一覧を見る
人類の歴史は戦争の歴史とも言われるが、ということは補給をどうするかということが絶えざる問題だったということになる。戦場において、いかにして兵士に飯を食わせるか、消耗品をいかにして手に入れるかは、しばしば戦略そのものよりも大きな問題となって立ちふさがったのだ。
しかしながら、これほど重要な補給について、十分な研究は行われてこなかったと著者は指摘する。第一次世界大戦前に、ドイツの参謀長だったシュリーフェンの計画した壮大な計画であるシュリーフェンプランは、ベルギーやオランダを迂回することでフランス-ドイツ間の国境地帯にある要塞を無力化し一挙にフランス中枢に攻撃をかけるというものだった。
このシュリーフェンプランへの兵站面での批判が、迂回する半径より行動距離が長いので補給が現実的ではないという程度のものとはなんとも意外な話である(もっとも、本書の初版が1977年であることを考えればその後に研究が進んでいる可能性もある)。
厳密に事実と妥当性に基づいて近代戦争における兵站の問題を取り上げる意欲作である。といっても、取り上げられるのはヨーロッパの戦争であることは手に取る前に知っておいたほうが良いだろう。具体的にはナポレオン戦争から二次大戦に至るまでの戦争である。従って日露戦争やアメリカ独立戦争は扱っていないし、島嶼を舞台にした戦争についても触れられていない。その点で、日本の読者としてはちょっと物足りなさを感じるかもしれない。
さて、本書では近代戦争に移る前、16~17世紀の戦争について述べるところから始まる。スウェーデン王グスタフ・アドルフの戦争を取り上げることで、近代戦とそれ以前の闘いの違いがはっきりしてくる。
補給に興味がある方は是非読んで確認して欲しいのだが、兵站のあり方が大きく変わったのは、意外なことに二次大戦という。私のような半可通の場合、普仏戦争において大モルトケが列車を利用した補給体制を築いたのが変化点だと認識していたのだがそれは違ったようだ。
具体的にいってしまえば、ナポレオン戦争のような大規模な軍事行動を含め、軍は現地調達に頼っていたという。従って、補給線の問題は存在しなかった。むしろ、行動を止め、一箇所に留まろうとするとその地方の食料を食い尽くしてしまうという問題が起こった。ということは、歴史上ほとんどすべての軍隊は食料を求めて徘徊する武装集団と言い換えることすら可能かもしれない。
なんとこれがナポレオンも可能だったというのだから驚くのは当然だろう。なにせ、グスタフ・アドルフの軍はたかだか数万で、それですら一箇所に留まれば食料が不足したというのにロシアに攻め込んだナポレオンの軍は60万である。皮肉なことに、ナポレオンはロシア遠征にあたって過去になく兵站に気を配ったというのだが補給計画は画餅に終わった。大モルトケが失敗した理由は、なんと列車によって兵站駅に到着した物資を前線まで運ぶ手段がなかったことだという。
兵站の重要性に視点が置かれているため、取り扱っている個々の戦争の展開や帰趨について詳しく触れられていないのが残念だが、どれほど兵站業務が実行困難かつ重要か思い知らせてくれている。
かなり専門性が高く、私を含め一般人が読んでも何かの役に立つということはないだろう。しかし、兵站という思想、特に近代戦においては戦略や政略すら兵站の限界に従わなければならない以上、このような専門知に触れる機会があることは評価されるべきだろう。どれほど嫌でも、今後も戦争は起こるだろうし、そうなれば兵站が死活問題として迫ってくるのだから。
また、ナポレオン戦争、モルトケの分進合撃、シュリーフェンプラン、砂漠の狐ロンメルの戦いと、興味を引く戦争を中心に扱っているので戦史に興味がある方は兵站という視点からこれらの戦争を眺めると、戦略中心の観点からは得られなかった知識を得られるのではなかろうか。難解ではあるが価値ある一冊だった。
紙の本
結局は総合力
2021/11/21 17:11
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゼルコバ - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦いで補給がなければ、疲労困憊で自滅するだけだ。バックアップチームや補給品、交替要員の大切さはいわずもがな。
武器や食糧を相手から奪いながら戦うなんてできるはずもない。しかし、それをやろうとしたのだから、あきれる限り。
いまの会社などの組織でも学べる教訓が満載である。
紙の本
イスラエルの歴史学者で、軍事学者マーチン・ファン・クレフェルト氏の補給という観点から代表的な戦闘を分析した名著です!
2020/07/25 11:06
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、『戦争文化論』、『エア・パワーの時代』、『新時代「戦争論」』などの名著で知られる、イスラエルの歴史学者であり、軍事学者でもあるマーチン・ファン・クレフェルト氏の作品です。同書は、ナポレオン戦争から第二次世界大戦のノルマンディー上陸作戦に至るまでの代表的な戦闘を「補給」という観点から徹底的に分析しし、補給の計画、実施、戦闘への影響を、弾薬、食糧等の具体的な数値と計算に基づいて説明した名著です。補給こそが戦いの勝敗を決するということを初めて明快に論じた一冊と言えます。同書の内容構成は、「序章 戦史家の怠慢」、「第1章 16~17世紀の略奪戦争」、「第2章 軍事の天才ナポレオンと補給」、「第3章 鉄道全盛時代のモルトケ戦略」、「第4章 壮大な計画と貧弱な輸送と」、「第5章 自動車時代とヒットラーの失敗」、「第6章 ロンメルは名将だったか」、「第7章 主計兵による戦争」、「第8章 知性だけがすべてではない」となっています。
紙の本
補給と戦争の係わり合いについて研究した世界的名著
2015/05/06 10:56
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:瀬戸内在住の猫 - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦争史研究の立場から、補給・兵站業務が実際の戦争にどの様な影響を与えたかを論じた、世界的にも珍しい名著です。
詳しい内容については、既に他の方々が様々な解説をされているので、ここではちょっと違う角度から書かせて頂きます。
本書はかつて原書房から邦訳されており、私は、高校時代に市立図書館で原書房版を何度も借りて読んでおりましたが、長年絶版になっていたので入手は諦めていた所、近年になって文庫化されたと言う経緯があります。
また、本書は宮崎駿監督が愛読していた事が「宮崎駿の雑想ノート」(大日本絵画/刊)で紹介されたというエピソードもあります。詳細についてはそちらの方を読んで頂ければと思いますが…。
なお、本書では原書房版には無かった記述として「マーチン・ファン・クレフェルトとその戦争観」(石津朋之/文)と言う、著者の研究全般に対する紹介文が掲載されています。
この紹介文の執筆者は防衛庁(文庫版発刊当時)防衛研究所所属の戦史研究者ですので、こちらも読む価値は充分あります。
紙の本
腹が減っては戦は出来ぬ、ということを論じた古典です。
2006/06/02 16:05
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たけたろう - この投稿者のレビュー一覧を見る
古典的名著と呼ばれていましたが、なかなか手に入りませんでした。今回、文庫化されたことで手に入りやすくなりました。
軍事行動についての著作は多数有りますが、食料等の物資の確保が重要なウエイトを占めるという視点からの分析は、精神論やリーダーシップ論で語られる軍事や経営書とは違ったものであり、読んで頂く価値は有ると思います。例えば、戦国時代をテーマにした時代小説でも合戦シーンを中心とした記述が中心ですが、ある軍事行動には、当然のことながら、武器や食料の蓄積といった、さまざまな準備が積み重ねられているわけで、そういった小説などで描写されない部分の重要性ということを理解できる著作であると思います。
紙の本
最近は何を研究してらっしゃるのだろう。
2013/09/09 13:01
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:わびすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「完璧な補給は無理」という主張はわかったが、それでも補給がなければ戦争にならない。まあ、戦争はしないにこしたことはないが、先人の苦労の跡を申し越し解説してくれても良かったのではないか。また、現代の進んだロジスティックをどう論じているかも気になる、著者略歴だとまだ存命の方らしいが、最近の研究成果が読みたい。
紙の本
兵站について学ぶならこれ
2021/11/19 13:21
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あ - この投稿者のレビュー一覧を見る
兵站に関する本では最も良いといえる。
ただ、他の方のレビューにもある通り、かなり難解なので基礎的な軍事知識を有してから読むといいだろう。
また、最大の注意点として、この本ではヤード・ポンド法が用いられているので、ウィキペディア等で確認しながら読むことを勧める。