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砂漠の惑星 新装版

  • 出版社:早川書房
  • サイズ:16cm/319p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-15-011566-4

砂漠の惑星 新装版 (ハヤカワ文庫 SF)

スタニスワフ・レム (著), 飯田 規和 (訳)

  • 全体の評価 52件のユーザーレビュー
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  • 税込価格:79822pt
  • 発行年月:2006.6
  • 発送可能日:1~3日

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商品説明- 「砂漠の惑星 新装版」

6年前に消息をたった宇宙巡洋艦コンドル号捜索のため“砂漠の惑星”に降り立った無敵号が発見したのは、無残に傾きそそりたつ変わり果てた船体だった。生存者なし。攻撃を受けた形跡はなく、防御機能もそのまま残され、ただ船内だけが驚くべき混乱状態にあった。果てなく続く風紋、死と荒廃の風の吹き抜ける奇怪な“都市”、貞察機を襲う“黒雲”、そして金属の“植物”…探検隊はこの謎に満ちた異星の探査を続けるが。【「BOOK」データベースの商品解説】

ユーザーレビュー- 「砂漠の惑星 新装版」

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2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2007/04/12 01:08

知の砂漠、思索の惑星

投稿者:シノスケ(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

レムによる未知の知生体との接触を書いた3部作の最後の作品。執筆順序は『エデン』 、『ソラリス』そして本書となる。6年前に消息を絶ってしまったコンドル号捜索のため、無敵号が砂漠の惑星へと向かうところから始まる。序盤の惑星探査場面から、調査隊がが隊長の判断により慎重な行動をとるため、「未知の危険」への緊張感はいやでも高まるというもの。それでなくても『ソラリス』のあの圧倒的迫力を思い起こせば、こちらではいったいどんな存在をレムが考え出したのか。
さて、いつまでも惑星の軌道上からの調査というわけにも行かず、現地調査となるわけだが、ロハンはじめとする調査隊の面々が見つけたのは奇怪な建造物のようなものと、真っ黒い雲だ。これらが結果的にどんな存在であったかは省くが、こちらと比較するとエデンに登場する複合生命体はなんとか意思の疎通がとれそうな気がしてくるほどである。
邦題は『砂漠の惑星』だが、現代は『無敵』。ロハンたちの乗る宇宙船も無敵号という名前だ。無敵号はおよそありとあらゆる場面に対応し、まさに無敵を誇る装備を搭載していたはずだったが、選び抜かれた宇宙飛行士たちの頭脳と、その設備をもってしても何故石鹸に歯型がついていたのか、明確な回答は得られない。何故、それが起こったのか。解説で上遠野浩平が語っているとおり、これは重大なものが破壊された結果である。無敵号が搭載している設備では、おそらくえることのできない結果だろう。破壊されてしまったのは人間性と記憶そのものであるからだ。人間性が含まれた記憶そのものと言ったほうが正確かもしれないが、ともかく結果として「破壊」されたしまった。
人間が作り上げた枠組みを超えた概念と存在を持ち込むことで、レムは人間を否定する。そして、否定は悲観ではない。万能戦車が持つ究極の破壊力は、現実世界が持つ武力の無意味さだ。現に戦車の持つ砲撃は黒雲には全く通用しない。砂漠の惑星がにより破壊される人間、そして類似性の欠如から諦めざるをえない相互理解だが、これは現実に人間が必要としていることではないだろうか。人間が持っているものの無意味さを再認識し、それらを手放した上での行動と決断を求めているように思う。
終盤、行方不明者の捜索に単身乗り出すロハンだが、彼に反応する存在たち。知性を持った海よりも、無機質でまさに乾いた砂漠のようなその存在の意図はわからず、理解するすべもない。無敵の名を冠するはずの宇宙船ですら、さじを投げる。『ソラリス』では人間の感情が入り込んでいたが、本書ではそれすらもなく無常観あふれる現実と宇宙への達観がある。しかし、これは決して諦念ではない。ロハンの決断と行動は人間性の証明である。既存概念の破壊、そして再構築。破壊されることも無駄な行動も、決して無意味ではない。

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2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2006/08/17 13:56

さようなら——幾度にもわたる分割や侵犯にさらされた国に生まれ、「圏外」における「認知」を超えたものの存在を書き切った巨人よ。さようなら。

投稿者:中村びわ(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 あっけに取られ、ぽかんとしたまま本当にあんぐりと口を開け、その開いた口がしばらくふさがらなかった。「こんなことって、あり?」と驚かされる小説の場面というものは、それこそ今までに何度もあったけれども、ここまでの水準のものはあっただろうか。
 本の半ば過ぎ、第6章であった。老機械工といった風采の生物学者ラウダがこの章の主役である。遭難なのか、7年前に琴座星系の砂に覆われた星で、宇宙船「コンドル号」が消息を絶った。その行方を捜索にやってきた「無敵号」(つくりはコンドル号に同じ)に、ラウダは多くの科学者とともに乗り組んでいたのである。発見されたコンドル号の船内は常軌を逸した混乱状態で、説明不能と思われる、いくつもの奇妙な痕跡が残されていた。そこに起こったことの原因について仮説を立てたラウダがホルパフ隊長の部屋を訪れ、持論を語り始める。
 ラウダが語るのは、人間の「認知」を超えたところにある自然現象の1つである。天候や重力や波の動きなどと同様の自然現象であるのだが、それが人間の常識では考えられない「進化」という過程を経たものだという説明をする。このように書くと、ネタは「ソラリスの海」と同じようなものなのかという取られ方をしてしまいそうだが、あちらには知性があるのではないかという可能性があった。しかし、ラウダは、この自然現象に知性はないのだとしている。
 曖昧極まるあらすじの説明になってしまうが、まとめると「知性」のない「無生物」が「進化」したものということになり、遭難船はそれの犠牲になった。ここで「そんなのって、ありか」ということになる。
 現代を代表する知性だと高い評価を受けつづけたSF作家の、しかも本人が一番気に入っていたらしい代表作に対して全く適切さを欠くけれども、このラウダの説明の概要が分かった瞬間、私が感じたのは「アンパンマンの話みたいな荒唐無稽ぶりじゃないか」ということだ。初めて劇場でアンパンマン映画を見せられたときの、ばかばかしいまでに突き抜けた荒唐無稽ぶりが思い起こされた。あんパンや食パンがマント羽織って空を飛び、根性の悪いバイ菌が操作するロボットと戦っていたのである、それは。
 ただ、アンパンマンとの大きな違いは、そちらが大人げない滑稽感と愛らしいまでの素朴さに支えられていたのに対し、こちらは、しなやかで強靭な知性が創出した「概念」「光景」「ガゼット」などの入念な描写に支えられている点である。実際、その第6章に至るまでに提示されていく「概念」「光景」「ガゼット」は、虚構世界を読み手の脳内で現実として構築していくのに豊か過ぎるまでの材料を提供してくれる。知力、想像力、芸術的なまでの表現力が尽くされていることに大いなる満足感を抱きながら、レムの現出する宇宙空間を冒険し探索していくのであるが、そこまでの力が尽くされた先に「これか」と呆れさせられる。
 間違ってもらっては困る。それは失望の伴う裏切りでは決してない。意外なところへ飛び出して行くものへの感嘆であり、高揚である。そして、一流の知性というものが人にもたらすものは、どこか息苦しい閉塞感なのではなく、緊張を緩和させ、喜びや楽しみという「幸福」をもたらすものなのだという確信である。
 知性なき進化した無生物は、敵として、人間に危害を加えてくるものとして立ちはだかりはしない。しかし、彼らが原因となることで、この物語は「宇宙大戦争」的様相を呈してくる。いかにも男の子たちが好きそうなその戦闘シーン、そして勇者が命を賭けて仲間を救出に向かうシーン。娯楽いっぱいの物語展開のなかで、人間の「認知」を超えた存在というテーマを描き切ったことは、確かに「してやったり」感をこの偉大なる知性にもたらしたのかもしれない。

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