- 出版社:集英社
- サイズ:20cm/204p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-08-774815-4
初恋温泉
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- 税込価格:1,365円(39pt)
- 発行年月:2006.6
- 発送可能日:7~21日
- 本
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商品説明- 「初恋温泉」
二人が二人でいれる場所…。都会に生きる男女の憂鬱や倦怠感を鋭く捉える著者が「温泉に宿泊する男女」というテーマで描く五組の男女の物語。【「BOOK」データベースの商品解説】
2人が2人でいられる場所。突然妻に別れ話を切り出され、とまどう夫。雪の一軒宿の謎めいたカップル…。都会に生きる男女の憂鬱や倦怠感を鋭く捉える著者が「温泉に宿泊する男女」というテーマで描く5組の男女の物語。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧- 「初恋温泉」
| 初恋温泉 | 5-44 | |
|---|---|---|
| 白雪温泉 | 45-84 | |
| ためらいの湯 | 85-112 |
著者紹介- 「初恋温泉」
吉田 修一
- 略歴
- 〈吉田修一〉1968年長崎県生まれ。「最後の息子」で文學界新人賞、「パレード」で山本周五郎賞、「パーク・ライフ」で芥川賞を受賞。
ユーザーレビュー- 「初恋温泉」
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2007/07/06 23:36
湯煙にけぶる5編の男女の物語
投稿者:らせん(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本各地に点在する実在の温泉を舞台にした短編集です。
5編の作品が収録されておりすべて男視点の一人称になっています。
熱海の高級旅館に妻を伴って来た男。外食チェーンを経営し成功したはずの人生だったが、男は妻に離婚を切り出されていた(初恋温泉)。
話し始めたら会話が途絶えることがない似た者同士と言われる騒々しいカップルが、ひなびた温泉旅館で自分たちとは対称的に静かな佇まいが印象的な男女に出会う(白雪温泉)。
学生時代の同級生とW不倫中の男は、不倫相手の女に京都旅行に誘われる。ひと足先に女が投宿した宿で男が見た光景は(ためらいの湯)。
外資系生保のトップセールスマンで妻に裕福な暮らしをさせていることを誇りに思っていた男は、妻が本心では幸せを感じていなかった事実を知り、激昂して妻に暴力をふるってしまう。家を後にして、ふたりで行くはずだった温泉に一人で出かけた男は、そこで一人の女に出会う(風来温泉)。
高校生カップルのはじめての温泉旅行。彼女には夫婦仲が危機的状況にある兄夫婦がいて、彼女はそれをひどく悩んでいた(純情温泉)。
私個人の考えですが、男女二人で行く温泉旅行ってドメスティックな感じがしてあまり好きじゃありません。
団体旅行や女友達と行くのは別に良いのです。
女友達と「後片付けもしなくていいし今夜は女同士朝までゆっくり話そうや」なんてのは、日常を離れ楽しむために温泉に来た!という感じがして甚だ魅力的なのですが、これが男女二人だと、温泉に行く目的はつまるところ「飯食って風呂入って寝る」でして、これでは日常と何ら変わらないのではないか?と常々心の中で疑問視していました。
各編の主人公は、皆様々な日常を引きずったまま温泉に来ています。
離婚を口にした妻を伴って温泉にきた男は、妻同伴ゆえに夫婦の問題を温泉に来てまで直視しなければならず、逆に発作的に妻を殴って一人で温泉に来る羽目になった男には、それゆえに妻と来られなかった現実が重くのしかかっています。
温泉に行くという行為が、一見日常を離れて非日常を楽しむことに見えて、こと夫婦や恋人といった男女の仲においては、むしろ日常をドメスティックに抱え込んだまま、ただいつもと場所を移しているだけに過ぎないのでは?という私の持論はいい線をいっているんじゃないかと思いました。
しかし、この男女で温泉に行くことのドメスティックさこそが、物語に組み込まれた作者の仕掛けなのだと思います。
ところで温泉の非日常性の最たるものは、当たり前ながら温泉そのものにあります。
家庭の風呂とは違う、広々として様々な効能がある温泉に浸かることで、男たちは持ち込んだ日常を湯に溶かし、立ち上る湯煙越しに傍らにいる女、或いは傍らにいるはずだった女を想うのです。
この男たちが抱える日常を、温泉の非日常性に浸かることで見せる物語の仕掛けは、実に上手いと言わざるを得ません。
さらに上手いと言えば、5組の男女の書き分けも丁寧で、男たちが抱え込んだ日常と口に出されない心の機敏がよく伝わります。
最初はそうではなかったはずなのに、いつの間にか妻の心を見失っていた夫の心中など特に良く描かれていて、夫婦という同じ型にはまりながらも、心の場所は別な夫婦関係って?と考えさせられます。
そして歳月を伴にした男女の心のすれ違いに切なさを感じた後に、初々しい高校生カップルの一編を読むと、その眩しさが際立ちます。
少女を愛していることを自覚した少年が、湯煙の中でこれから傍らの少女以上に愛する者はいない、と決意する心の声は気恥ずかしいくらいの直球で、これこそ温泉という日常の中の非日常が生んだ魔法のようなきらめきを感じました。
この高校生カップルの話を短編集の最後に持ってきた構成も見事で、やはり吉田修一は上手い作家なのだと再認識致しました。
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2006/08/16 14:50
そして、温泉に行きたくなる
投稿者:佐々木 なおこ(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
「…なんていうか、たとえばさ、
自分が一番幸せな瞬間を見せたいって思うような男、
お前にはいる?
別に付き合わなくてもいいんだよ。
遠くでその瞬間を喜んでくれるだけでもいいんだけど」。
初恋が成就した結婚のはずだった。
すくなくとも夫にとっては順風満帆の結婚生活のはずだった。
一番幸せな瞬間を見せたいと思い続けてきたのに、
妻は別の思いを持ち続けていた。
そして妻から離婚の話を持ち出される。
そんな夫婦が温泉へ行く「初恋温泉」をはじめ、
温泉が舞台の短編が五つ。
さまざまなカップルが登場する。
結婚が決まったばかりの恋人同士が温泉へ行く。
大学時代の同級生が偶然出会い、不倫の関係となった二人が
出張にかこつけて京都で落ち合う。
妻と喧嘩して、一緒に行くはずだった温泉旅行に一人で出かける夫。
高校生カップルが親に内緒で一泊の温泉旅行に出かける。
すれ違ったり、理解を深めたり、戸惑い続けたり、
投げやりになったり、そして真剣に求め合ったり、
年齢も事情も違うカップルが
同じ温泉と言う舞台でくりひろげるあれこれ。
温泉につかると、柄にもないことを訊いてみたい気持ちにもなる。
例えば、「どうすれば、あんな優しい表情で、
自分の愛する女性を見つめられるのか?」などと…。(「白雪温泉」)
こんななにげない会話が心に残る。
そして、温泉に行きたくなる。
真夏に思う雪積もる温泉宿。
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2006/08/18 23:09
吉田作品は温泉につかる以上に効能効果があると感じる1冊。
投稿者:トラキチ(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
いや〜、本当に巧いな吉田修一。
男女の機微や心のすれ違い、人間に潜む本質的な部分を語らせたら第一人者と言って過言ではないであろう。
たしかに、他の作家のようなメッセージ性は薄いかもしれないが、それが吉田作品のスタイルでもあるのだと思う。
吉田作品の特徴は、読んでいて“わかるわかるこの気持ち!”というように読者を必ず納得させてくれる部分。
平易でさりげない文章の中にも現代人の持つ倦怠感や不安な心理状態を鋭くあぶり出している。
本作は全国各地の温泉を舞台としている5編からなる短編集。
それぞれ5組のカップルが登場するがそれぞれの姿が実にバラエティに富んでいる。
離婚を言い出された夫とその妻、これから結婚する予定のおしゃべりカップル、不倫のカップル、喧嘩した夫婦のカップル、高校生のカップルなどなど。
本当にいろんな恋がありますよね。
日本人にとってお風呂に入るという行為は日常的である。
日常的であるがゆえに、普段と違う特殊なお風呂=温泉につかるということで目の前に普段ある現実を冷静に見つめなおす機会を描いている本作。
本作で特に秀逸なのは、温泉に来ている現在に過去の回想部分の見事な織り交ぜ方。
たとえば「ためらいの湯」なんか不倫している方に是非お読みいただきたい。
これは結構、ズシンとくるはずである(笑)
5編ともいずれもそれぞれアプローチの仕方は違っているが、根本的には“結婚の意義”を読者に問いかけている。
もっとも印象的なのはラストの「純情温泉」。
この高校生カップルの初々しさと切なさは読者にとってたまらない。
あっ、それと父親の行動のリアルさと滑稽さも(これは読んでのお楽しみ)
女の子の方は兄に離婚の危機が起り(前述した結婚の意義がきちんと描かれている)、少し憂鬱な心境である。
男の子の方の性欲を押さえきれずに突き進もうとする姿との対比の描写が私には“名人芸”のように感じた。
読後、この主人公の2人(結婚するかどうかはわからないが)が、冒頭の表題作「初恋温泉」の2人のようにならないことを祈ったのははたして私だけであろうか?
全体を通して、吉田さん得意の少し曖昧な終わり方も奥行きが深くって余韻を感じ、他作以上に読後吉田さんからバトンを手渡されたと感じたのである。
あなたもくつろぎつつも自分に近い心境のものや、懐かしいあの頃を思い起こしてください。
本作には北は東北から南は九州までの温泉が登場します。
一番喜んでいるのは、取り上げられた各地温泉スポットの方々かもしれないな。
本作は温泉に浸かって疲れが取れるが如く効能効果が高い安心して読める完成度の高い短編集です。
個人的には、初めて吉田作品を手に取られたい方には本作をオススメしたと思う。
なぜなら全体を漂う“女性の現実的な姿”を学び取れたからだ。
私はタイトルを“吉田温泉”に変更して欲しいなと思う。
最大限の賛辞の言葉のつもりである。
活字中毒日記
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2009/08/27 18:56
ゆっくり風呂に浸かりたい。
投稿者:オクヤマメグミ(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本に実際にある温泉を舞台にした、男女の短編集。
温泉と耳にしてぱっと思いつくのは『リラックス』とか『日常からの解放』とかそういったゆるいイメージなのだが、ここに収められた5つの物語はちょっと違った。
旅先という非日常の中で、ふと日常に戻ってしまうような。
楽しいのに突然悲しい事を思い出してしまうような。
なんだか物悲しい気分になった。何故だろう?
お湯に浸かると黙り込んでしまう。
その静寂の中でひとは自分と向き合うのだろうか。
宿や取り囲む自然の描写が細やかで、まるで自分がその地を訪れたかのような温泉風景を思い浮かべた。







