- 出版社:筑摩書房
- サイズ:20cm/255p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-480-88805-1
謎のマンガ家・酒井七馬伝 「新宝島」伝説の光と影
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- 税込価格:1,995円(57pt)
- 発行年月:2007.2
- 発送可能日:購入できません
- 本
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商品説明- 「謎のマンガ家・酒井七馬伝 「新宝島」伝説の光と影」
【日本漫画家協会賞(第37回)】マンガ史に名を残す手塚治虫の単行本デビュー作「新宝島」。そのもうひとりの作者・酒井七馬。手塚神話の陰で、餓死したとまで噂される謎のマンガ家の知られざる生涯と、「新宝島」誕生の裏側へと迫る。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介- 「謎のマンガ家・酒井七馬伝 「新宝島」伝説の光と影」
中野 晴行
- 略歴
- 〈中野晴行〉1954年生まれ。和歌山大学経済学部卒業。大阪に編集プロダクション設立。まんが編集者、ノンフィクションライター。「マンガ産業論」で日本出版学会奨励賞、日本児童文学学会奨励賞受賞。
関連キーワード- 「謎のマンガ家・酒井七馬伝 「新宝島」伝説の光と影」
ユーザーレビュー- 「謎のマンガ家・酒井七馬伝 「新宝島」伝説の光と影」
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2009/06/03 23:48
例え『新寶島』が手塚治虫の単独の作品だったとしても、酒井七馬の名前が語り続けられているということはそれだけの役割を果たした人なのだということはよく分かった本
投稿者:みなとかずあき(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
『新寶島完全復刻版』で改めて日本のいわゆるストーリーマンガの元祖を読んでみると、どうしても気になることがある。それは、酒井七馬なる人のことである。復刻版に解説書が付いているので、そこでも触れられているのだが、それにしてもこれまでほとんど語られることのなかった人なのではないかと思う。
そこで、本書を読んでみることにした。刊行された当時(と言っても、たかだか2年前だけれど)から気になる本ではあった。それは上記したような理由なのだが、今ひとつ手にしようという気にはならなかった。作者が中野晴行氏であるから、というわけでもないのだが。
それでも、今すぐに酒井七馬のことを知ろうと思うと、この本くらいしか見当たらないので、ともかく読んでみて長年の気になることを少しでも解消できればと思った。
読んでみて、非常に酒井七馬に好意的な評伝だという気がする。マンガはもちろんのこと、日本のアニメーションの創世期にもそれなりの活躍をした人であったり、紙芝居作者としても活動していたり、テレビアニメにも関与していたりと、言ってみれば現在のマンガやアニメの興隆の極々初期に多大な活躍をした人だ、と言うように描かれている。
作者自身がやはり感じていた「酒井七馬とは何者なのか」という疑問を、多くの取材から知り得たことを丁寧に記述することで解決する方向へ持っていこうとした結果がここに表れているのだろうが、これを読み進めていくと酒井七馬はとても出来た人、大人であり、片方で諦観の人であったというイメージになってしまう。これって、何の根拠もないのだが、今まで漠然と感じていた酒井七馬のイメージとは違うように思えてならない。もちろんこの本は、私も持っていたようなイメージとは異なった人物であったということを言わんがための本であるとは思うが、何だかあまりにもイメージが異なっていて、かえって本当なのかしらんと思ってしまう(作者の取材は嘘偽りではないことは、十分承知しているのだけれど)。ここで描かれているような活躍をした人ならば、これまでに何らかの形で評価されていても良かったのではないか。それが評価されていないということは、やはりその程度の人だったということにはならないのだろうか。
たとえそうであったとしても(そうでなかったならなおのこと)、この本で語られている酒井七馬と彼の活躍した時代のことは、もっと知られても良いのだろうと思う。
これも個人的な印象かもしれないが、今の日本のマンガが太平洋戦争後に手塚治虫が忽然と登場したことで突然始まったように思ってしまいがちなのだが、実際にはそのようなことはなく、手塚治虫に先だって多くの人たちがマンガの世界を広める努力をしていたのだし、手塚治虫が教えを請うた人たちもいるのだということをきちんと認識しておくことが、日本のマンガをきちんと評価することに繋がるのではないかと思う。
そんなようなことを改めて考えさせられたという点でも、やはりこの本は重要な本だとは思う。
ちなみに、これを読んでもやはり『新寶島』成立のいきさつはよく分かりません。たかだか60年前のことなのに、当事者がいなくなり、周囲の人たちも数少なくなってくると、記憶や記録されているものがいかに不完全なのかということをこそ、分かってしまいます。
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2009/08/04 13:42
大変な労作です。
投稿者:ぱせりん(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
「新宝島」から日本の戦後漫画が始まったという歴史的事実に異を唱えるという人は今更いないとは思いますが、そういえば私たちは神様となった手塚の名前は知っていても共著として名が上がっている酒井七馬についてはほとんど知らなかったのでした。
私は今回初めて酒井七馬の絵をきちんと見たのですが、そのあまりの達者さに驚きました。
ペンと筆を巧みに使い分け、絵柄も丸っこい子供好きのするデザインからシャープな大人向けの線などまさに変幻自在。
さすが神様・手塚の師匠筋です。
そこまでの仕事をしていた人ですら、100年もしないうちに忘れ去られていくという時間の無情さを感じます。
それでも可能な限り当時を知る人たちとコンタクトを取り丹念に酒井の人物像を追っていくのは大変な労力だったことでしょう。
ただ、一人の人間の生き死にを取り上げる伝記とはいえその最期を自死ではないかと書くのは評者としては僭越ではないでしょうか。
また、最終章が「大団円」なのですが、それは酒井七馬の生涯についてではなく、作者の洞察が当たっていたことに対するものでいささか自画自賛が過ぎるように感じました。
ともあれ、あとがきにもありますが、酒井七馬の生涯をなぞるということは、そのまま戦後漫画の復興をなぞることでもあり大変に読み応えがありました。
12人中、12人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2007/04/09 12:41
敬意と情熱が、忘れられた存在に光を当てた
投稿者:木の葉燃朗(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
とにかく、漫画に詳しくない私には、「『新寶島』に手塚治虫氏とともに名前が掲載されていた人物」という程度の印象しかなかった(漫画家であるということすらはっきり認識していなかった)酒井七馬氏について、詳しく知ることができたのが貴重な経験だった。
また、酒井氏の名前を知る人達にとっても、「晩年は食べるものもなく、コーラで飢えをしのぎ、裸電球を布団に引き込んで暖をとり、とうとう最後には餓死した」(pp.7-8)という、都市伝説のような認識がされていたらしい。他ならぬ著者の中野氏も、そのように長年信じていたという。そこから、少しずつ証言を集めて、実像に近い姿を突き止めた評伝がこの本。酒井氏の生涯が本という形でまとまっただけでも貴重だし、非常な労作だと思う。
はじめは、自分にはあまり馴染みのない戦前から戦時中の大阪の漫画・映画関連の人物名や、関西の地名が登場するので、読んでいてちょっと戸惑ったが、中盤以降読み進むにつれ、ぐんぐん引き込まれた。
酒井氏の活動は、もちろん興味深い。例えば戦後に左久良五郎の名義で紙芝居の制作をしたことや、アニメーションの制作にも携わったことなど(1966年からはあの『オバケのQ太郎』のアニメの絵コンテを担当していたという)。しかしそれとともに、本の中にも度々登場する手塚治虫氏の人間らしさ(もう少し悪い言い方をしてしまうと、人間臭さ)も感じた。
例えば手塚氏の『ぼくはマンガ家』(1969年,毎日新聞社)でも、晩年にコーラだけを飲み、電球で暖を取ったという、事実とは異なるエピソードが書かれているようだし(p.9参照)、『新寶島』について、これまで手塚氏側の証言のみが残ってきたことが、酒井氏の評価が下がった(そして存在が忘れられた)一因でもあるようだ。手塚治虫漫画全集版の『新宝島』の「『新宝島』改訂のいきさつ」には、手塚氏の原稿がそのまま出版できそうな水準だったのに、酒井氏が不要な修正を加えたような書かれ方がされている(pp.110-111参照)。しかし実際は、そうではなかったらしい。酒井氏の没後、手塚氏の母から酒井氏の姪へ、「二十数年前を振り返って『デッサンひとつ習ったことのない息子』にとって『新寶島』の合作が良い勉強となり、何度も七馬の指導を仰いだことに感謝している」(p.117)という内容の手紙が送られたという。また、『新寶島』の後に袂を分かったような印象のある酒井・手塚の両氏だが、実際は手塚氏が東京に出るまでは、マンガ家によるショーや児童養護施設の慰問、関西漫画芸術協会の会合などに、両氏とも参加していたという。
しかしそうした証言は、これまで公表された手塚氏による漫画や文章などの記録には書かれていない。講談社の手塚治虫漫画全集版の『新宝島』は、『新寶島』を元に手塚氏がリライトした別の作品である。そして『新寶島』(酒井・手塚合作版)は今に至るまで復刊されていない。
もちろん、手塚氏に酒井氏の存在を消す意図はなかっただろう。中野氏もそう考えている。私も、手塚氏はその時その時で自分にとって一番いい、そして読者の人気を得られる作品を世に出そうという意図からの行動だと考える。そしてそれが、手塚氏の人間らしさだと思う。
しかしそれでも、中野氏は「果たして、作家には自分の作品や共作者の存在を消し去る権利があるのだろうか」(p.240)と疑問を呈している。この考えにも、私は賛成である。そして、「図らずも存在を消されてしまった酒井七馬という不思議なクリエーターの実像に迫ってみたい」(p.240)という思いから取材を進め、この本にまとめ上げた中野氏に、私は改めて敬意を感じる。







