紙の本
ひなたの猫
2007/03/19 20:45
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:こちゃまる - この投稿者のレビュー一覧を見る
穏やかに晴れた日の昼下がり、窓の外を眺めると猫が昼寝をしていた。だらんと伸びきった体を踏み石の上に横たえ、時折鼻ちょうちんを膨らませながら気持ちよさそうにしている。カメラを持ってきて構えたとたん、膨らんだ鼻ちょうちんがぱちんと弾けた。ちいさく1回おおきく1回、くしゃみをした猫は踏み石の上で頭を起こしカメラを構えたこちらを睨む。カメラをしまい窓を開けるとひと言ありげな仏頂面にしてやったりの色が出る。サンダルは猫の体の下だ。そのことを猫に言うと仏頂面をしたまま体を動かしサンダルを踏み石の下に落とす。何をするんだと猫に文句を言いながらサンダルを拾って庭に下り、踏み石の上に座ると猫が体を嬉しそうに摺り寄せてきた。いい気になって猫を撫でると空いた脇に風が冷たい。なるほど風除けに呼んだか。猫は髭と尻尾をそよがせて偉そうにしている。寝言も言い始めたのでその顔を接写して悔しさを紛らわせたところで猫はなんら困る様子も見せず、やふやふと寝言を続けている。人の負け。
猫の生活はもちろん猫のもので、そこにおいて人は無力だ。猫と生活圏を共にしていても、猫は猫様然として君臨し人の生活など知ったことかと気侭にふるまい、時折しかたがなく人の面倒を見てくれる。暴力的に猫の生活を支配しようとしても欲求に根差した願望は際限のないもので、ある服従があればさらなる服従を要求するのみであり、やがてそれは猫を猫でないものに追いやってしまうだろう。欲求不全と喪失感が不満と後悔になって己を最低の位置に落とし、絶望のまま暗い欲求をあたりに撒き散らしたところで、寄る辺となった最低の位置すら失い更なる深みに嵌るだけだ。そんな馬鹿馬鹿しい事態をさけるためには猫様を中心にした生活を営むしかないのか。否。ルールが身勝手なルールでないならば猫は納得してそのルールに従ってくれる。共同生活の場において住み分けに対するルールは死活問題だ。ルールは場を円滑に使用するためのものでしかなく、猫は人ほど頭が悪くないのでルールを定めることが手柄にならないことを知っているのだろう。もちろんルールのための場なぞ場として認めてくれさえせず、にゃふんと一笑に付して終わりだ。
『すべては、ネコさま次第』とは本書内に記された言葉。本書を読むと『ネコを撮る』とは猫を写すのではなく猫を中心においた風景を写すことだと思えてくる。主観的なものが感じられることではあるが、それは著者である岩合光昭氏が写真家として自分ならこう撮るということを写真家の視線で記しているのだから当然のことだ。むしろ主観を示してくれないことの方が困るだろう。生き物とは何か、そして生きるとは何か。写真が記憶の引き出しとなる記録であるなら考えねばならないことだ。彼我の差は無理で埋まるものではない。双方が少しずつ時間をかけて寄る、信頼と呼ばれるものは一朝一夕に生まれはしない。それは何も猫に限ったことではないことは、帯や本書内にある岩合光昭氏が写ったどの写真よりも裏表紙にある著者近影の方がいい顔だと思えてならないことからも伺える。
隣で伸びていた猫は寒くなったのか丸まっていた。抱きかかえて縁側に上ると猫はぐんにゃりと体を預けたまま離れてくれない。そばの椅子に座ったあと無理におろすのも忍びないと仏心を出したのが運のつきか、猫はカメラを下敷きにして膝の上で寝入ってしまった。手をすべりこませてカメラを引き抜こうとするとぴったり体をすり寄せて手を引き抜くことを許さない。顔を覗き込んだらしてやったりの表情だ。猫を膝から引き剥がすと何食わぬ顔で飯を要求する。人がまごつくとにゃーんと可愛く鳴いた。やっぱり、人の負け。
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本日買いたてほやほやの一冊です。岩合光昭氏の猫写真を上手に撮るための方法と心得書。猫の気持ちをさっしながら、無理強いをしないあくまでも猫本位で撮影に挑む。猫と写真家との気で感じあう素敵な写真術満載です。
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ネコ、自由に生きるその生物を写真におさめるにはどのようにしたらいいか。筆者の体験を下に、ネコの生態と写真を撮ることということをライトに描いている。
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岩合光昭さんが教える、ネコ写真の極意エッセイ。カラー写真も16ページ。白黒写真も満載。読んで、猫に対する礼儀が今まで足りなかったと反省(^^; やっぱり岩合さんは凄い。
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写真家岩合さんによる猫を上手く取るための本。カラー写真は少ないですが、白黒写真が豊富。
どこにでもいる猫をどこにでもありそうな風景の中で撮った写真が凄くイイ。
猫を撮るっていうと、猫に近づいた写真ばっかり撮ってしまいますが、その猫の暮らしている路地とか空の下で撮られた写真ってなんだかその猫の生き様を写しているようでカッコよい。カメラは望遠レンズのいいものを購入した方がやっぱり猫は上手く取れるようなので本気で真似するならかなりの出費がかかりそうですが(笑)
とても面白く読めました。
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イワゴーさんの猫の写真は、気取ってない。餌で釣られた上目遣いとは大違いだ。美しい、不細工な猫。こんな表情を取れるためには、やっぱり、猫に還るんだ!
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ネコ大好きな写真家さんの写真と文章がすてきでした!世界中をネコを撮るために旅するなんて素敵・・・もちろんネコだけじゃないみたいですが。動物を写真に収めるって大変なんだなあと思った。
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まず、あっさり読めるのがよい。
そして当然、写真が多く掲載されているのがよい。
カラー写真には度肝を抜かれた。
特に最後の写真。
ミコノスのネコだろうが、大ジャンプ。
こんなの撮影できるのか…!!!さすがプロ!という感じだ。
自分はネコが大好きだ。
偶然出会ったネコをデジカメでパシャッと撮ることもある。
しかしよく逃げられる。
なんとかうまいこと撮れないか…と思ったらこの本に出会った。
逃げられる理由がわかった。
私が急に迫ったり、しつこくするから、ネコに恐怖を与えていたのだ。
これからは挨拶から始まって、ゆとりを持って接したい。
そしてネコ溜まりにオスネコに連れて行ってもらおう。
写真技術より、ネコとの付き合い方に重きを置いてある本。
2008年03月30日読了。
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(2007.07.23読了)(拝借)
いろんな野生動物を取っている写真家岩合さん。ネコの写真の本も何冊か出しています。
この本は、ネコの写真の撮り方についての本です。ネコの写真を撮っている人は結構いるようです。我が家のネコを見ていると、写真を撮りたい気持ちも分かりますが、私はまだ、我が家のネコにカメラは向けていません。見ているだけで十分楽しいので。
この本の目次を紹介しておきましょう。
第1章 ネコにアプローチ
第2章 撮影編
第3章 世界のネコ
第4章 野生のネコ
ネコの写真がいっぱい掲載されています。アップのネコ、景色の中のネコ、さまざまです。
基本的には、街の中でネコをどう探してどう撮るかという話です。
「お日様が出てくるときが、ネコの活動の開始でもある。」ので、夏なら4時半ごろ冬でも6時半には街に出ようといっています。
「あなたがネコを見つけるよりも先に、ネコはあなたをしっかり見定めている」
「ネコに限らず動物というのは、まず初めにこの人は安全かそうでないかということを見極める。」「僕が、街角に座っている猫を見つけたら、いきなりネコに向かわないで通り過ぎてはまた戻って、というアプローチをする」
「ネコが何を考えているのかというところまで、撮影側は見抜かなければいけない。」「被写体であり、ネコが主人公なのだから、ネコの立場になって考えること。」
猫の習性をよく観察してどう動くか分かるようにならないといい写真は取れない。シャッターチャンスを掴めない、ということです。
☆岩合光昭の本(既読)
「海ちゃん」岩合光昭・岩合日出子著、新潮文庫、1996.11.01
「地中海の猫」岩合光昭著、新潮文庫、2005.03.01
動物写真家 岩合光昭
1950年 東京生まれ
1970年にガラパゴス諸島を訪れ、写真家の道を選ぶ。
1980年 木村伊兵衛写真賞受賞
1985年 日本写真協会年度賞、講談社出版文化賞受賞
(2007年9月2日・記)
内容紹介(amazon)
カメラを構えると、ネコはプイと横を向くんだよね。レンズを見ると、ネコは必ず逃げるんだよ。そんな永遠の悩みを、この1冊で解消。ネコの写真を撮らせれば右に出るものがいない岩合光昭が、30年にわたる撮影エピソードを織り交ぜながら、ネコに好かれる術、モデルネコの見分け方、上手に撮れるポイントなどの秘策を披露! デジタルカメラの普及で急増した「ネコカメラマン」に贈る、待望のネコちゃん写真解説書。
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ネコはとっても気まぐれで人見知りな動物です。
そこが可愛くてたまらないのでぜひ写真を撮りたいのですが、カメラを向けるとぷいっと逃げられ、後ろ姿しか残せないことがほとんど。
タイミングを逃さないようにシャッター速度を上げたり、自分も寝転がってレンズをネコの目線に合わせるなど工夫はしますが、なかなか思うような一枚に出会えません。
この本では動物写真家の岩合さんが、ネコの上手な撮り方を解説しています。
ネコ写真を撮る上でまず大切なのは、ネコの立場に立って考えることだそうです。
ネコがどんな時間帯や場所を好むのか、どんな人を好きになって近寄ってくれるのかを理解し、ネコとの距離を縮めることからなのです。
岩合さんの撮るネコが、どの子もネコらしくのびのびした表情やしぐさをしているのは、ネコとの信頼関係があるからではないでしょうか。
また、カメラ技術の解説もあり、世界中のネコや野生のライオンやパンダの写真も掲載されています。
新書以上のボリューム感があります。
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[ 内容 ]
写真はネコに始まり、ネコに終わる。
すばらしい「ネコ写真」は、すべての写真にも通じます。
モデルネコの探し方、機嫌のとり方、シャッターチャンス、「ネコフォト」のヒント満載。
[ 目次 ]
第1章 ネコにアプローチ(早起きは三文の徳 ネコを撮るなら朝のはずだが ほか)
第2章 撮影編(いきなりはダメ 準備体操―ネコを安心させる ほか)
第3章 世界のネコ(ヒトの道はネコの道 こんなところにもネコ ほか)
第4章 野生のネコ(ライオン百獣の王説に限らず、ライオンへの誤解?は多い ほか)
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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ネコの写真と言えば、岩合さん。
カメラ雑誌アサヒカメラのカレンダーでもお馴染み。
いい表情してるんですもの。
・・・ネコが!
読後当時(20070607)にブログに掲載したコメントです。
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私でも名前を知ってるくらい、「動物写真といえばこの方!」な写真家岩合氏の撮影指南書(?)
といっても技術的なはうつー本ではなく、ネコ、ひいては自然や街並みを「撮らせていただく」心構えを語られてます。
でもネコ写真。
たまらんネコ写真。にゃー。
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猫は、本当に鼠を取るために飼われているのだろうか。
あるときは、食い物はないかと催促をする。
あるときは、人間のことなどそ知らぬ振りをする。
あるときは、動くものを追いかける。
猫の視線に、生き物としての姿勢を見ることができるかもしれない。
日本猫のように、飼い猫、野良猫を問わず、まったりとした、ゆったりとした雰囲気をかもしだしているかもしれない。
それぞれの空間と視線を切り出す写真。
猫の写真といえば、この人。
情報満載の本なので、一枚でも猫写真を持っている人なら読んでみると飽きない。
「早起きは三文の徳」とのこと。てっきり「得」だと思っていた自分が恥ずかしい。
徳1 カメラマンの基本。光を見方につける
徳2 朝、ネコは朝日を浴びに出てくる
徳3 健康の第一歩、歩く、歩く、歩く
アサヒカメラ2001年1月号に面白い特集があるとのこと。
ネコの撮影方法と、海外でのネコの撮影の記録。
猫科の他の動物の話題も最後にある。
似た行動をとるらしい。
ps.
撮影場所と撮影日の情報があるとうれしい。
同じ場所で、同じ猫が撮れたら最高。
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ネコの写真の撮り方の本、かと思ったが、ある意味でそうで、ある意味で違った。写真の撮り方、というより、この著者がいかにネコが好きか、の方が伝わってきた。ネコに写真を撮らせてもらってる、という感じがひしひしと伝わってきた。また、ネコへの近づき方なども、著者の長い経験の中から編み出しており、とても参考(?)になった。
なぜなら僕も、ネコが好きだからだ。