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商品説明
日本最古にして最強の芸能プロダクション・吉本興業。いまや「大阪」という服も脱ぎ捨てて全国区を制覇。さらに異業種や海外市場をも侵食し始めている。世界的に見ても「ケッタイな会社」の「ケッタイな正体」に迫る。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
増田 晶文
- 略歴
- 〈増田晶文〉1960年大阪生まれ。同志社大学法学部卒業。作家。「果てなき渇望」で98年文藝春秋Numberスポーツノンフィクション新人賞受賞。他の著書に「速すぎたランナー」など。
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紙の本
1983年:ハロー、「あ」評論家!、バイバイ、「くっしゃみ講釈」
2007/06/14 03:42
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Living Yellow - この投稿者のレビュー一覧を見る
吉本興業についての本や、演芸評論はかなり出ているはずだが、特に「演芸評論」には難点があるようだ。故ナンシー関先生は笑福亭松鶴師(鶴瓶・鶴光の師匠)について語れなかったし、小林信彦先生はダウンタウンについては、事実上、沈黙を守っている。
つまり「マンザイブーム以降の芸」、たとえば「リアクション芸」(上島竜兵氏・山崎邦正氏に代表される)と人間国宝・桂米朝師(師も若い頃は小松左京先生とラジオ番組で馬鹿話をしゃべっていたりした。高座だけで育ったわけではない)に代表される「芸」をともに認め、評論する立場というのが、まだ確立されていないようなのだ。両方とも好きという人は多いはずなのに。「時代遅れ」、「あんなんほんまもんの芸やない」と不毛な言い合いが一般には流通している。多分しっかりとした評論をされている方はいるはずなのだが…。
吉本興業という会社自体も、裏情報が流されまくったり、ニューコンテンツビジネスの寵児と大げさに持ち上げられたり、となかなか地に足についた現在形の情報が流れない。 本書は大阪、そして過去と現在の「お笑い」に対する深い思い入れと感受性、そして勇気ある取材力を有した著者による本格的な吉本興業の通史であり、最新の分析である。
現在渦中の人である、中田カウス元顧問、大崎副社長、横澤元支社長、「ガキの使い」の菅日本テレビプロデューサー、果ては「麒麟」の川島明氏にまで幅広い取材を行い、おそらくは、現在の「マンスリーよしもと」の起源ともいえる「演芸タイムス」(大正十一年より発行)などの文書資料もチェックしたと思われる緻密な考証には、正直感動した。
第二章、第三章。明治45年に天満宮裏で吉本せいと吉本吉兵衛が小さな寄席の運営をはじめ、そこにせいの弟であり1991年までトップに君臨する林正之助会長が加わり、大阪の街の都市化、「田舎者」の流入に対応して、落語から浪花節へ、そしてエンタツ・アチャコに代表される近代漫才を確立し、松竹系と呉していく存在になっていくあたりまでの描写は、落語界の諸流派の内部対立から、ラジオ時代への対応、元プロレタリア文学者である秋田実らが参画した文芸部の創設、「笑わし隊」としての積極的な戦地への慰問団派遣など、隅々まで目が行き届いて、かつ読みやすい。
一転して、第四章、第五章で戦後、所属芸人がアチャコ一人だけという状態から、インテルとコンテンツ事業を計画し、アジア進出(「やりすぎ」上海)を目論むにいたる現在までを一気に読ませる文章はまさに一つの戦後史である。
第六章「ケッタイな会社」でフジテレビのプロデューサーが指摘する、吉本興業、唯一の弱点、ジャニーズにあって吉本にないもの、それは組織的なプロデュース力らしい。つまり、組織全体が個々の芸人自身のセルフプロデュース力に頼っている側面だ。
この指摘は、プロローグでの中田カウス元顧問のこんなつぶやきと繋がってくる。
「けど、吉本の実態なんてマネージメントという名の合法的な人身売買、テキヤ稼業の巨大化したもんですからね。」(本書p.27「プロローグ・放牧場」より)
最後に、本書で一番感激した豆知識を一つ。あの「ふんわかふんわン、ふんわかふんわァ」というあのメロディーはレオ・ウッド作曲の「サムバディ・ストール・マイ・ギャル」が原曲だそうです。てっきり「浪花のモーツァルト」、キダ・タロー先生の作だとばかり思いこんでました…。