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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2007.9
- 出版社: 東洋経済新報社
- サイズ:19cm/243p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-492-68128-2
紙の本
ゆうちょ銀行 民営郵政の罪と罰
民営化すれば、郵便貯金は縮小する? 次々に新規事業に出ようとしているのはなぜ? 「地域のサービスは低下させない」は本当? 熱狂から2年。こんなはずではなかった! 民営郵政...
ゆうちょ銀行 民営郵政の罪と罰
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商品説明
民営化すれば、郵便貯金は縮小する? 次々に新規事業に出ようとしているのはなぜ? 「地域のサービスは低下させない」は本当? 熱狂から2年。こんなはずではなかった! 民営郵政の真相と行く末を鋭くえぐる。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
有田 哲文
- 略歴
- 〈有田哲文〉1965年新潟県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。朝日新聞東京本社経済政策グループ記者。
〈畑中徹〉1972年岐阜県生まれ。一橋大学社会学部卒業。朝日新聞東京本社産業金融グループ記者。
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紙の本
「裏切られた革命」?
2008/06/06 12:19
7人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:CAM - この投稿者のレビュー一覧を見る
二人の著者は朝日新聞の記者である。 2005年9月11日の総選挙投票日当日に「小泉首相はこれまで見たこともない型の指導者だ。 『郵便局は公務員でなければできないのか』 『民間でできることは民間に』。 単純だが響きのいいフレーズの繰り返しは、音楽のように、聴く人の気分を高揚させる。」 という、執筆者の“理性”を疑わさせるような、多分我が国のマスコミ報道の歴史に(もちろん悪い意味で)残ることになるであろう社説を掲げた朝日新聞社の記者による著作であることに意義が認められると思う。
「あとがき」で、著者は、2005年9月の選挙運動で、当時の小泉首相の演説を聞いた時に感じた疑問が本書(の元となった新聞記事)執筆への動機になったことを述べる。 たとえば、公務員数を減らす改革だと叫ぶ小泉演説について、「嘘ではない。しかし、郵政公社は独立採算制である。 税金で給与が払われる警察官や外務省職員とは違う。」、「もう一つ気になったのが、民営化の最大の大義名分にふれなかったことだ。郵便貯金と簡易保険の資金を『官から民へ』流れを変えるという主張だ。」 そして、「大義名分にはふれず、乱暴な議論で聴衆の気持ちをかきたてる。そんな手法に違和感を持った。」と述べる。 そして、著者は「『官から民』にふれないのは、主張にもともと弱さがあるからではないか」(p.230)という問題意識から記事を書くのである。 不勉強な記者が多いマスコミの中で、(本来は当然のことではあるのだが、)自らが犯した過ちを検証するという最低限の良識と責任感が残っていることに、少しだけ安心する。
私は、(小泉政権が実施した)郵政民営化については、郵便事業という側面についてもさることながら、最大の問題点は財政金融面のものであると考える。その問題点は、本書では主として「第2章 異形の銀行」で指摘されている。 確かに政府は、郵政民営化の理由をいくつも並べ立てた。しかし、それらの多くは誇大広告か、そうでなければ議論のすり替えであった(p.60)。 小泉元首相が、『郵政省解体論』(光文社)で郵政改革の立場を鮮明にしたのは1994年9月であった。 たしかに、この頃であればこの郵政改革論には説得力があったろう(p.56)。 しかしながら、郵便貯金の財投への預託義務は2001年度に廃止されただけではなく、現在では、その後に大量発行された国債の受け皿が大きな問題となっている。 現在の日本における資金循環構造を考えると、最重要の課題は政府の資金不足へのファイナンスであろう。 そしてこの政府セクターにおける資金不足は、社会福祉関係費など義務的経費の増大によって生じているので、資金供給を絞ることによっては縮小できるものではない。 こうした中での民営化により、郵貯が運用対象を国債から他に転じることは、国債市場を混乱させる危険性が高い。 要するに、2005年時点になっての郵政民営化政策はアナクロリズム以外の何物でもない。 およそ政策において最も重要であるのはタイミングであろう。 タイミングを失した政策などは有害無益でしかない。
郵政民営化委員会委員長の田中直毅にしても、元来は「郵便貯金・簡易保険の廃止」論者であった(p.66)。 郵貯縮小論も、国債受け皿の収縮という点で問題がないわけではないが、まだしも正論ではないだろうか。この田中直毅の“変節”も問題であるが、最大の戦犯は、言うまでもなく郵政民営化を主体的に推進した竹中平蔵であろう。
本書の「はしがき」で、著者は以下のように述べる。
> 郵政民営化が「裏切られた革命」になってしまったと決めつけるのはまだ早過ぎるかもしれない。しかし、2005年9月11日の総選挙を頂点としたあの熱狂はいったい何だったのか、と感じる人は少なくないはずだ。
郵政民営化が「裏切られた革命」となる可能性は高いと思うが、そうだとすれば、小泉・竹中の責任は重いだろう。 我々国民は、このような二流の政治家・経済学者に騙されることのないように気をつけながら、郵政民営化の実行段階における展開、国債残高、金利の動向を、今後とも厳しく注視していく必要があると思う。 本書はそのための一資料として有益なものであると考える。