- 出版社:飛鳥新社
- サイズ:22cm/289p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-87031-824-3
綺想迷画大全
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- 税込価格:3,800円(108pt)
- 発行年月:2007.11
- 発送可能日:1~3日
- 本
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商品説明- 「綺想迷画大全」
サルの将軍ハヌマーン、多頭の魔王ラーヴァナ、白い悪魔、飛行する仙人と空飛ぶ絨毯…など、未知への好奇と憧憬に満ちた面白ヴィジュアル作品をカラーで紹介。『歯医者さんの待合室』連載に加筆して単行本化。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介- 「綺想迷画大全」
中野 美代子
- 略歴
- 〈中野美代子〉1933年札幌生まれ。北海道大学文学部卒。同大学名誉教授。中国文学者にしてシノロジー図像学の第一人者。著書に「奇景の図像学」「肉麻図譜」「乾隆帝」など。
関連キーワード- 「綺想迷画大全」
ユーザーレビュー- 「綺想迷画大全」
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2008/01/21 05:46
斉天大聖(せいてんたいせい)大暴れ
投稿者:仙人掌きのこ(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
「まぁ、なんとお行儀のわるい……」
お釈迦様にそう怒られるのではないか、というのがこの本の第一印象だった。
「西遊記」の訳者であり、シノロジー(中国学)図像学の第一人者である中野美代子氏が、お気に入りの絵画について語った本とくれば面白くない訳がない。そう思って読み始めたのだが、こちらの想像をはるかに超えた自由な精神の飛翔にめまいを覚えた。
対象は中国を飛び越え、タイの寺院の壁画、中世ヨーロッパの写本、ペルシアの絨毯にまで及ぶ。さらにその内容といったら、巨大な一本足の怪物スキヤポデス・写字生たちが写本の余白に描いたラクガキ・皇帝のハンコがペタペタ捺された画巻・、日本の誇る若冲のニワトリ・デューラーの犀・十八世紀中国のフィギュアスケート……興味のおもむくままにその美味しいところを味わおうという姿は、天界の蟠桃や金丹を平らげた斉天大聖(孫悟空)の大暴れを思わせる。
しかし、ただ単に食べ散らかす(この場合は見散らかす、か)のではない。その絵の描かれた時代背景に深く切り込み、作者やその絵を描かせた権力者の思惑までを暴き出す。たとえば、パオロ・ヴェネローゼ作『アレクサンダー大王の前のダリウス一家』のなかにさりげなく描かれた一匹のサル。ヨーロッパには棲息しないサルは、「東方」への植民地主義の表れだと読み解く。それは十七世紀のヨーロッパの地図に見られる偏見を経て、現在の私たちにもつながっている。本書の巻末で紹介される『西遊漫記』(1945)の内容は強烈だ。
また権力者の肖像画の顔ではなく体の「異様な大きさ」に注目し、その例としてイギリスのヘンリー8世と明の洪武帝・永楽帝をあげる。ともに暴君として知られ、帝王の本質が洋の東西を問わないという指摘にはなるほどと思った。
その逆に、西洋絵画と中国画の違いの解説も興味深い。十五世紀に「消失点」を発見し、二次元のなかにリアルな三次元を再現しようとしたヨーロッパに対し、中国画は遠近法をもたない。これはひとつの画面のなかで右から左へと視点が移動していくからだ。その鑑賞法を知らなければ、奥行きのないつまらない絵として見過ごしてしまうかもしれない。
ただ漫然と画面を見ているのではわからない事がなんと多い事か。今まで絵画を見散らかしていたのは自分の方ではないか、と恥かしくなる。
最初に著者の奔放さを孫悟空になぞらえたが、むしろ釈迦如来に例えるべきだったかもしれない。
自分は絵画が好きで他人より多く観賞してきた、世間の評判にとらわれず自分の価値観で好きな絵を選んできた……そういう人にこそ、この本を読んでもらいたい。今まで自分が見てきた絵画とその理解が、いかに狭く浅いものであったかを知るだろう。そして自分こそが、「世界の果てまで飛んできたと思ったら、お釈迦さまの掌から出ていなかった孫悟空」だったと気づくに違いない。
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2011/10/28 21:35
お薬としての絵画鑑賞
投稿者:更夜(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本は、普通の絵画解説本とは、違っています。
『歯医者さんの待合室』という歯医者さんだけに配られる特殊な月刊誌に
3年間連載されたものをまとめた本です。
この本で紹介された絵もたまげますが『歯医者さんの待合室』なる雑誌があったということも、たまげます。
中国文学、文化が専門で『西遊記』の全訳などをされた中野美代子さんが、歯の痛みをこらえ、
または、これから来る恐怖の時間を想像して青くなり、憂欝になっている皆さまへ
「こんな面白い絵があるんですよ。見て下さいね。
ね?面白いでしょう。」
と気を紛らわせようと語りかける本なのです。
紹介される絵は、珍しい絵で名画と呼ばれるものよりも、迷画、珍画というものですが、
中野美代子さんは、名画、迷画は関係なく、自分の目でえらびとり、勝手に自分の
論理を展開することの快楽が得られるような絵画こそが「私にとっての絵画」だと書かれています。
この本で紹介されるのは、ブリューゲルなど有名な画家の絵もありますが、専門で研究されている人しか
知らないような、ほとんど無名の絵ばかりです。
そこから、中野さんは色々なものを読み解き、お話をされます。
やはり中国の絵画が多くあるのですが、西洋の絵画との共通点や世界観の違いなどを
あくまでも、おっとりと「一緒に楽しみましょうね」
各章のタイトルも
・ぎっしり・びっしりの絵
・天の井戸に何がいる?
・十八世紀のフィギュアスケート
・北斗を蹴とばす
・子どもたちのお買物・・・・
といった風に「え?どんな絵?」と見たくなるようなタイトルのつけ方も洒脱です。
西洋が大航海時代に、東洋へ行った時の「東洋にたまげる西洋人!」という気持が
よくわかる絵は中国で伝統とされてきた形式を全く無視した「中国画」です。
西洋が中心だった・・・という西洋人思想から、東洋、南米大陸の なんとな~くの資料から「こんな感じ?」という
間違いだらけの絵であっても、中野さんはあくまでもおっとりと「猿、一匹描いただけでも、こんなに違うのですね」
こんな猿、いないよ、どこにも・・・と今なら思えるのですが、西洋と東洋の壁のへだたりが
一匹の猿を描くことで、ひとめでわかるのです。
とても楽しんだのは、通俗画と呼ばれる当時の街並や人々の生活を描いた絵です。
「子どもたちのお買物」という絵は、色々な物を売りに来る行商人にむらがる子どもたちの絵なのですが、
担ぎ荷によじのぼろうとする子どもなんか お尻むきだしっ!
ちゃっかりくすねたお菓子を、その場で食べちゃうという子どものずるそうな表情・・・
さすが、画家というのは、観察力がするどい。
そして、肖像画については、顔よりもどれだけ体格を大きく、肩幅広く、立派に描くか・・・
というところに着目します。
暴君と呼ばれたイギリス・ヘンリー八世の肖像画はたくさんありますが、何枚もあって、だんだん枚数を重ねていくうちに
「残酷な暴君のしての自信がみなぎり、まだ、すこしは懐疑的だったまなざしも
「神の目」をよそおっているのがわかります」と中野さんは語ります。
たくさんの絵がふんだんにもりこまれた、大変贅沢な絵を、中野さんの語りで楽しむ本。
別に知らなくてもいいのかもしれませんが、やはり、これはあくまでも
「歯医者の待合室の不安な人々」のために書かれた本ですから
改めて、単行本として読んでも、妙な安心感が得られる本なのです。
これは美術評論ではなく、お薬としてのたのしい絵の話です。







