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赤いヤッケの男

赤いヤッケの男 (幽ブックス 山の霊異記)

安曇 潤平 (著)

  • 全体の評価 42件のユーザーレビュー
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  • 税込価格:1,36539pt
  • 発行年月:2008.2
  • 発送可能日:24時間

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商品説明- 「赤いヤッケの男」

『幽』2号で鮮烈デビューした山男・安曇潤平が、自ら山で訊き集めた怪談実話短編集。多彩な顔を持つ山の描写を豊かに織り込みながら、山という異界を語る。『幽』『ダ・ヴィンチ』等掲載に書き下ろしを加えた全25編収録。【「TRC MARC」の商品解説】

収録作品一覧- 「赤いヤッケの男」

八号道標 7−23
アタックザック 24−33
赤いヤッケの男 34−43

著者紹介- 「赤いヤッケの男」

安曇 潤平

略歴
〈安曇潤平〉1958年東京都生まれ。サイト『北アルプスの風』主宰。サイト内にて怪談作品を発表。怪談専門誌『幽』二号の「山の霊異記」でデビュー。

ユーザーレビュー- 「赤いヤッケの男」

全体の評価
4.0
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2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2010/07/08 20:22

そこにある山

投稿者:星落秋風五丈原(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

そこに山があるから、と言ったのはイギリスの登山家ジョージ・マロリー氏。
いろいろ諸論はあれど、人が山に魅せられる理由をぴったり現すのは、やはりこの言葉ではないだろうか。
さて、魅せられるのは生きている人ばかりではない。死してもなお、山に執着する人々が、本書には数多く登場する。

語り手の年齢もシチュエーションも様々で、それぞれの語り口に特に工夫が凝らされているわけではないので、本書の魅力は素材-話そのものだ。まるでピッチャーから直球勝負を宣言された感がある。3Dがいよいよ本格的に登場しようかというのに、2次元の世界でもこれほど怖さを体感できるとは、捨てたものではない。

但し、別の評者も挙げているように、話の聞き書きを刊行したならば素材で勝負するしかないが、あくまでも作品とするならば、技巧上の工夫はあってしかるべきではないかと思われる。京極夏彦氏の話が独特の味わいを保っているのは、あの語り口と無縁ではない。工夫を凝らすことは、素材を壊してしまうことにはならない。

読了後、ああ怖かったと思いながら、それではいったい何が怖いのだろうと考えた。登場するこの世ならぬ者、そして死者達の中には辛い経験をした者が少なからずいる。彼等は決して山に良い感情を抱いてはいまい。なのになぜ、どこへでも好きな所へ飛んでゆける身になってもなお、彼等は山に執着するのか。そう考えると、本当に怖いのは、彼等ではなく、生者も死者も惹きつけてやまぬ山そのものかもしれぬ。

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6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2008/03/07 07:08

現と霊界の狭間に

投稿者:ねねここねねこ(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

山の怪談実話。こっそりとかしこで聞いた山の怪談。打ち明ける秘密の話。そうした隠微のなかにある、ぞっとする、畏怖の感情を起こすもの。
このなかには都市のものにはない、温度と湿度、土の匂い、雪の匂いがするものがあった。
古くからの信仰の対象、山への畏敬。山を愛する者たちはどうしてそこに登るのだろうか。あの世に最も近い場所、霊のまします頂を目指して。
怪談。そのものは多く、畏怖と恐怖を伴う霊の話が多いものだが、収録この本にはどこか、身にどこか馴染んだ土着のもののようなぬくもりを思った。
日本人気質、馴染みがあるとでも云うのだろうか。手触り、ぬくもりのようなものさえも。勿論怪談だから怖い、しかしながらもその上で。もしかしたら山が与える、そのものが為す業だろうか。揺らがず強くにそびえる、強さ、大けきものとしての。
収録された怪談たち。これらは単なる怖い、だけではない。
上述のように、近いもの、土ある山のものとして、肌身に感じて身に覚える。それだけに一層感情は掻き立てられる。交錯するものを思う。崇高なるものへの畏怖、感謝とそして愛情。そこには作者のこころすら垣間見えるごときものに思う。山の温度、そうして人の温度も思う。
 
山についてのもの。そこに棲み付く霊異の記録。
それは凄惨であったり、残酷耽美であったりするゴシック風味の色は弱い。貴族趣味であったり、硬質な冷たいものばかりでないということ。環境には田舎で昔語りをするような、色褪せた感じの和みがある。山男の持つ業として、内に住むぬくむ肉質が残っている。
どちらかというと、僕は球体関節人形や中世風味であるシャープな耽美ゴシックが好みなのだが、味わいのあるものとして、このものも興味深く楽しむことができた。この怪談は日本的な、骨太で肉のあるテーマであったと思う。
 
しかしながら、繊細さについて若干の瑕があったことも感じられた。
山というテーマ、ロケーション。作者が訊き集めた実話、とのことだが、収録の後半、作品が似たような内容(構成)になってしまったことが悔やまれる。そして、同じく切り口で問題も浮かぶ。それぞれに細かい詳細は違えども、それぞれが山という限定ロケーションのいくつか、素人にはヴァリエーションの妙が薄く思えてしまった。一貫したテーマとしてのメリットであり、多様性としてのデメリットでもあり。(そこまで望むのは贅沢な話なのかもしれないが)
そして語られる物語として。客観第三者の読み手では、予想を更に裏切る展開があって欲しくも思ってしまう。この本ではそれぞれが短いショートストーリであるものだが、もう少し濡れた湿度ある筆致で、聞いた湿度や念が(おそらくそうだった筈だろう)、綿密な更に肌迫る書き方で伝われ来る方が好みであった。
奧付より、作者はサイト内で怪談作品を発表しているとのこと。作品、と云う以上、そのもので受け取る。当書物は物語の書籍にしては改行が多い。文章の句点が入る度、多く段落が変わってしまう文章形式も戸惑いが残る。形式の上で淡白に意識が切れてしまいやすい。
 
怪談、ホラーは難しい。一歩間違えば滑稽さに転じ、出来損ないの都市伝説のようにもなってしまう。その点では収録作から霊の威が無くなることは無かった。内容の説得力は伝わるものだったと思う。
しかしながら、それは話の要旨として。語りと筆記は異なる。
物語に於いて、文章の形式は内容を規定し包括する、という云われも残るのだ。
物語を書くのは難しい。
ここにはないどこか、異世界を見せて扉を開く幻想文学。そして、人の根源に根付くもの。ホラーのジャンルは更に、のこと。
 
どこかぬくもりある、されども怖い霊の話。
中心には山と、人がいる。そのことを強く感じ取った。
中心で、狭間に山があったこと。

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