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金融権力 グローバル経済とリスク・ビジネス

  • 出版社:岩波書店
  • サイズ:18cm/220,22p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:978-4-00-431123-2

金融権力 グローバル経済とリスク・ビジネス (岩波新書 新赤版)

本山 美彦 (著)

  • 全体の評価 51件のユーザーレビュー
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  • 税込価格:81923pt
  • 発行年月:2008.4
  • 発送可能日:24時間
  • 新書

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商品説明- 「金融権力 グローバル経済とリスク・ビジネス」

現在の投機的金融システムの危機と限界を明らかにしたサブプライムローン問題。ブレトンウッズ体制の崩壊にさかのぼり、金融が本来の役割を離れて「リスク転売ビジネス」の性格を深めていった過程を具体的にたどる。【「TRC MARC」の商品解説】

著者紹介- 「金融権力 グローバル経済とリスク・ビジネス」

本山 美彦

略歴
〈本山美彦〉1943年神戸市生まれ。大阪産業大学経済学部教授。京都大学名誉教授。著書に「姿なき占領」「格付け洗脳とアメリカ支配の終わり」など。

関連キーワード- 「金融権力 グローバル経済とリスク・ビジネス」

ユーザーレビュー- 「金融権力 グローバル経済とリスク・ビジネス」

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8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2008/09/30 17:26

サブプライム問題に寄せて

投稿者:hisao(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

私の少年時代アメリカは憧れの的だった。
大きな兵隊さんが投げてくれたガムは夢のような味がした、きらめく消費文明、明るくフランクで自由な労働、月面に降り立った宇宙飛行士と地上管制官との機知に富んだ会話にどれ程胸をときめかした事でしょう
ソ連とか中国、何か胡散臭い”権力社会”に比べ希望と透明感に満ちていた。しかし何時の日かアメリカは”世界の警察官”を自認、ヴェトナムや中東の人々をゲームのように殺傷するようになっていた。それでもITとかなんとか、才覚に任せて信じられない程お金を稼ぎまくる人達は現代の英雄に見えた。
経済の主役は産業資本から金融資本へ、 “金融コングロマリット”“金融立国” “貯蓄から投資へ”
華麗な“錬金術師”たちを誇るアメリカはグローバリズムの名の下に日本はじめアジアに世界に“市場原理主義”による“構造改革”を迫った
投資銀行の新入ディーラーの年俸1億円、トップの年俸45億円などの噂が飛び交った。
そして今、リーマン・ブラザーズ破綻、バンカメがメリルリンチを吸収合併、米保険最大手のアメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)に公的救済
サブプライム問題に端を発した金融界の嵐がその主戦場アメリカで吹き荒れています
ブッシュ大統領は“金融恐慌の危機が迫っている”と叫び、アメリカ繁栄の象徴FRBの高官は”アメリカの経済成長縮小すらあり得る”とコメントしました
“ウォール街のエリート達を救済すべきか?”国庫が75兆円の不良資産を金融機関から買い取る事を柱にした金融安定化法案は、ついに否決され株式市場は更に暴落を記録しつつあります


著者である本山先生はサブプライム問題を解説しながら、アメリカ金融資本のリスク・ビジネスの仕組み、”新自由主義=市場原理主義”の危うさを分析しています
本書で述べられている事はもはや皆様の常識かも知れませんが、今現在の“金融界”の本質がとても易しく手際よく纏められています(お金儲けのための“経済学”ではありませんが)
一体何が起こったのか?

アメリカが標榜する“新自由主義的企業統治”とは何か?
その監視者はアメリカ証券取引委員会(SEC)お墨付きの「格付け会社」NRSROに委ねられています
なかでも上位二社であるS&Pとムーディーズは世界のシェアの80%を越え、世界の企業並び経営陣の生殺与奪をほしいままにしている、まさに金融世界の帝王、「閻魔大王」である
アメリカ金融当局に格付けの基準設定はありません、全て「格付け会社」に一任され、その具体的「格付け基準」は公表すらされていないのです
先生はその”格付け会社”を筆頭とするウォール街の証券会社やアナリスト、法律事務所と政治家などの結託で構成されたアメリカン金融パワーを“金融権力”と名付けます

その“金融権力”が絶対的な自信をもって作り上げた自分達のための“儲けの手段”“貨幣増殖システム”が“サブプライムローン”でした。
しかし今その金融システムが世界経済に激震を与え、アメリカから世界にかけての“大恐慌”を引き起こそうとしているのです
サブプライムローンとは
1.最初にローン(もともと低所得者層向け住宅融資)を供与した組織が投資銀行にABS(資産担保証券)として証券化してリスクを転嫁
2.投資銀行はこの債権を返済優先順位毎に細かく区分けしてCDO(債務担保証券)という短期証券を発行(“格付け会社”が証券価格を支配、販売に貢献)
3.CDOはタックス・ヘイブン(税金逃避地)に登記されたSIVの手でヘッジファンドに、ヘッジファンドは富豪会員や世界の金融機関に売買する金融システムです
(つまり“証券化”で債権を分散すればデフォルトリスクは最小化するとして華々しく登場したリスク・ビジネス、ノーベル賞級の学者が打ち立てた金儲けのための金融理論は、デフォルトリスクを世界に無限転嫁する理論に過ぎなかったのです。しかも先物市場を利用したレバリッジは投機を呼び、損失リスクを無限大にまで高めたのです)

しかし07年突如としてパニックが起こる
住宅ブームの終焉、無限借り換えが突然不可能になり借入金利が高騰、かって自らが販売に貢献した「格付け会社」がCDO格付けの大幅引き下げを発表、金融当局の会計基準変更もあって、金融機関はCDO再評価を公表、その巨額損失が一斉に露呈する事になる
拡散されたリスクによって金融界全体の損失はいまだ定かでない
ローン残高1兆3000億ドル、損失8000億ドル(79兆円)?過去最悪の金融危機?
“リスク転嫁”の滞った“リスク・ビジネス”は“システム・リスク”として爆発する
アメリカに流入していた投資資金全体が逆転、投資資金は原油など商品市場に流れ込み、原油価格が高騰、そして“円キャリー取引”の逆転、円高

サブプライム問題の困難性
1.レバリッジを使った信用の拡散で損失額そのものさえ把握不能になっている事
2.短期金融が長期金融の原資を構成している事(担保があるといっても不動産であり簡単には現金化出来ない)
3.公定歩合を引き下げてマネタリーベースを増やしても資金の借り手がない(流動性のワナ)
マネタリスト・フリードマンは“通貨を安定的に供給すれば不況にならない、不況になってもマネーサプライを増やせば乗り切れる”と主張したが、恐慌時にマネータリーベースを増やしても流通するマネーサプライは増えなかった、フリードマンが利用されたのは彼のマネー理論ではなく、“政府介入”の否定だけだったそうです
政府規制を社会主義と退け“全てを市場の手で”、この“市場原理主義”が“新自由主義”の本質です

以上 先生は現代金融工学が証券化によるリスク転嫁と拡散の理論であり、マネタリズムは“市場原理主義”の理論であると主張、いずれも“金融権力”の私欲に貢献した方策であり、そのツケがサブプライム問題であると断罪します
“金融権力”が拡散した資本主義の病理に先生は独自の処方箋を提出されています
先生は今更政府規制や国家の働きに期待されません
逆に国家権力の限界を予言、“共産主義”を批判したプルードン流社会主義(個人の自由がある社会主義)の再評価を提起しています
プルードンの“組合主義”への評価は別として、“市場原理主義”と“国家社会主義”に翻弄される社会情勢の中で、”市場”は何処まで自由であるべきか?”国家”は何処まで介入すべきか?私達はもう一度国家や権力・組織などを原理的に見つめ直す必要がありそうです。

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