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鯨類学

  • 出版社:東海大学出版会
  • サイズ:22cm/402p 図版14枚
  • 利用対象:一般
  • ISBN:978-4-486-01733-2

鯨類学 (東海大学自然科学叢書)

村山 司 (編著)

  • 全体の評価 51件のユーザーレビュー
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  • 税込価格:7,140204pt
  • 発行年月:2008.5
  • 発送可能日:1~3日

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商品説明- 「鯨類学」

鯨類に関する最新情報と系統分類、進化、生態学、社会行動、認知科学、環境問題、ホエールウォッチングなどを「鯨類学」という切り口から紹介する。全世界種83種のうち81種をイラストで掲載。【「TRC MARC」の商品解説】

著者紹介- 「鯨類学」

村山 司

略歴
〈村山司〉東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了。博士(農学)。東海大学海洋学部教授。

関連キーワード- 「鯨類学」

ユーザーレビュー- 「鯨類学」

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1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2011/10/27 00:14

―神、大いなる鯨(うお)を創造(つく)りたまえり―

投稿者:レム(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

  
  「神、大いなる鯨(うお)を創造(つく)りたまえり」 ”And God created great whales” 
  これはメルヴィルHerman Melvilleの『白鯨』(Moby-Dick; or, the Whale)の冒頭、「文献抄」の書き出しを飾る旧約聖書の創世記(1・21)の一文だ。 「大いなる鯨」は「おおいなるいお」と読んだ方が古めかしくていいかもしれない。 英語の旧約聖書のこの箇所はwhaleとする他にgreat sea-monsterとしている版もある。 そこで旧約聖書の原典であるヘブライ語でどのように書かれているか確かめたら「怪物のような大きさのものやあらゆる生き物」とあった。 この「怪物」という言葉には、並外れた大きさだけではなく「未知なるものを秘めた」という意味もあろう。
  
  メルヴィルが『白鯨』を出版したのは1851年のことだが、その頃は既に怪物から現実としての「漁獲対象」になっており、捕鯨が盛んに行われていた。 そして、鯨が魚類か哺乳類か議論の最中でもあった。 というより、哺乳類であることの可能性を議論していたと言った方が良いかもしれない。 今日では鯨類が哺乳類であることを誰しも当然の如く知っている。 しかしながら、哺乳類の世界では鯨類ほど圧倒的に不明な事項が多く、今なお多くの謎を残している種もないだろう。 ゆえに現在でもあえて鯨を未知なる怪物と呼んで良いかもしれない。  
  
  さて、本書に目を向けよう。 『鯨類学』は、一般に入手できる図書ながら、鯨類を詳細に解説し、今日の研究成果を知るとともに、未知なる生物に対して山積している課題をも知ることができる一冊だ。
  前書きに続く書き出し、すなわち第一章は、創世記ならぬ「進化と適応」というタイトルで始まる。 意外かもしれないが、動物学では化石種からの系統発生の議論は避けて通ることはできない。 生物の現在の生態学、解剖学、生理学を論ずる場合、どうしても生物学的歴史を系統進化からも検討する必要があり、これは通常用いられている重要な手法なのだ。 一般に鯨類は化石になりにくいとされる。 陸棲生物と違って、死後、土砂に埋もれる機会が少ないからなのだが、それでも新種の発見は相次いでいる。 これからも謎のベールが少しずつ剥がされていくだろう。
  
  本書の構成は、観察的学問としての形態学や解剖生理につづいて、そして徐々に鯨類の社会性に関する内容へ進んでいく組み立てになっている。
  「第8章 認知」では、鯨類の言語能力の検証まで触れている。 かつて、海外ではイルカの軍事利用が検討されたとも言われており、その題材が「イルカの日」という映画にもなったことがある。 チンパンジーでは簡単な文章を解し、自らも分を構成することができることが実証されているが、鯨類ではどうであろうか。 本書で紹介された最近の研究成果は、決して知見が多いとはいえないものの、少なからず読者の興味を引くだろう。
  さらには、鯨と人類の活動との間の相互の影響について触れる。 捕鯨だけではなく、ホエールウォッチング、水族館等を通して、また、人類が多大に変化させている地球環境等、鯨とかかわる人間社会へもまなざしを向けて学問の枠を広げた文化人類学的なアプローチもある。
  
  本書のタイトル『鯨類学』という言葉には教科書的なニュアンスがあるかもしれない。 ただ、教科書になるということは、過去の知見や考え方の妥当性がある程度科学的に合意され、それなりに固まってしまった言わば「古い状態」の知識をまとめることが多い。 「歴史教科書」と称される分野でしばしば物議を醸すのは、歴史認識の妥当性の合意ができていないとの考えが寄せられるからだろう。 かと言って、新たな見解をまとめた本では索引もない単なる論文集のようになってしまうこともある。 本書はどうだろうか。 前書きには、教科書として編まれたものでないことは明言されているが、各章にはきちんと引用文献が示され、索引もある。 一般には最先端の学会論文を日々読むことはできないから、本書のような存在は、進行中の学問分野でありながら、現在の鯨類研究のかなり先端の状況を知らしめることができるのではないだろうか。 また、教科書であることが学問書として最良の位置づけとは必ずしも言えないだろう。
   
  本書は複数の執筆者が各章を担当しているのだが、この手の本としては珍しく、「読者諸氏はどうお考えになるだろうか」といった書き振りで読者に対して語りかけるような表現が時折みられる。 それが、どの著者もそうなのだ。 議論中の課題については「慎重な研究を要する」等、科学を追求する立場からの謙虚な表現が用いられている。
  
  この7月のことだが、とある海岸を歩いた時、特徴的な斧型をした鯨類の上腕骨と思える骨を見つけた。 これをある博物館で同定していただいたところ、これは上腕骨ではなく、マッコウクジラの指の骨のひとつであることが分かった。 体長も18m以上と推測できた。 日本の周辺海域には、人知れず多くの数と種類の鯨類が泳ぎ回っていることを改めて思い起こさせた。
  以来、海岸を歩いては遠くに巨いなる生き物を感じ、本書を開いては身近にそれを感じている。

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