さまよう刃 (角川文庫)
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- 税込価格:740円(21pt)
- 発行年月:2008.5
- 発送可能日:24時間
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商品説明- 「さまよう刃」
長峰の一人娘・絵摩の死体が荒川から発見された。花火大会の帰りに、未成年の少年グループによって蹂躪された末の遺棄だった。謎の密告電話によって犯人を知った長峰は、突き動かされるように娘の復讐に乗り出した。犯人の一人を殺害し、さらに逃走する父親を、警察とマスコミが追う。正義とは何か。誰が犯人を裁くのか。世論を巻き込み、事件は予想外の結末を迎える—。重く哀しいテーマに挑んだ、心を揺さぶる傑作長編。【「BOOK」データベースの商品解説】
ユーザーレビュー- 「さまよう刃」
19人中、19人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2008/08/06 17:29
私的復讐の是非。
投稿者:ひろし(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
元来私は過剰な性的描写のある作品、とくに女性に対する暴行が描かれた作品は、手に取らない。胸糞悪いだけだからである。実際、予期せずしてそのような作品を手に取ってしまい、途中で読むのを止めてしまった事も数知れない。そういう意味で、本作品を読み始めるかどうかしばらく躊躇した。女性に対する暴行と、それに対する私的復讐を描いた作品だと分かっていたからだ。それでもページを開き始めたのは、他でもない東野作品であるから。まさか唾棄すべき内容で終始する訳が無い、と信じて読み始めたのだ。果たして、読んでいる間じゅう、ずうっと胸が痛かった。主人公の男の想いを想像するに、心痛極まりない。
法治国家日本において、私的復讐は禁じられている。どんなに愛する者を理不尽に殺されようとも、その殺人者を私的怨恨を理由に殺害する事は禁じられている。誰でも知っている事だし、重々認識している。が、しかし。
妻を早くに亡くし、つましくも可愛い娘と二人楽しく生活してきた。その娘がある日、ケダモノのような少年達にさらわれさんざん蹂躙された挙句、殺されてしまう。さらに少年達はその残虐な行為の一部始終を、映像に収めていた。そして父親はその映像を、目の当たりにしてしまうのである。父親として、これほどの不幸があるだろうか。そして少年達は少年法に守られ、場合によっては殺人罪さえ問われないかもしれない。法の下、個人的感情で人を裁くことは絶対に許されない。しかし父親は、復讐の道を選んでしまう。逃亡した主犯格の少年を、さまよえる刃となって、追いかけていくのだ。
本作品は決して私的復讐を是としているわけではない。実際、作品中で警察をはじめとして、色々な立場の人間に事の是非を語らせている。建前と本音、という角度からもである。法治国家なんだから、もちろんそんな行為は許されない。拙い少年達を守り更正を図る法も、あって然るべきであろう。でも、でも本音を言うと・・・。
逃亡し続ける悪意に、復讐の刃と警察が近づいていく。しかし一途だった復讐者の心は、暖かな善意に触れ揺れ動き、憎悪が薄れ平穏を取り戻しかける。しかし悪魔の囁きとも言える一本の電話が、刃の憎しみをまた加速させてしまうのだ。そして・・・偶然の連鎖なのか、運命の悪戯なのか。鍵を握る者たちがみな、終焉の地に集まって行く。そしてバラバラだった運命が、一本に収束された時。悲しい結末と、意外な事実が、明らかになる。
読後、まるでさまよう刃が、自分の喉元に突きつけられたように感じた。
「さあお前は、是なのか?非なのか?」と。
私は正直たった今、本音で答えることが、出来ない。
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2009/01/04 18:12
やりきれなかった一冊
投稿者:sammy(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
刊行時に購入していたものの重たいテーマそうだったので今まで積読本に。
しかし読み始めると思わず一気読みするほど面白かった一冊です。
まず本の帯に「裁く権利は誰にあるのか?」と書かれているのですが、私はこの本に関しては殺された娘の父親がとった行動は正しいと思っています。
きっと私でも父親と同じ行動をとる、もしくはこの本の中に登場したペンションに泊まっている家族の母親のように逃げ道を作った上で復讐を必ずすると思います。
この本では一人娘で彼女以外に家族のいない父親にとって、娘を失った後の世界なんて「無」でしかなく、そこへあのビデオを見た直後に犯人の一人が現れたならば、人であれば怒り狂い彼と同じ犯行をしてしまうだろうのではないでしょうか。
基本的に私は「少年法」なんて不用だと思っていますし、更正は「人」がするものであり、この本に登場するような少年達が何故赦され生き続けることができるのかしかも「更正」されるチャンスを与えられるのかも理不尽でならないのです。
殺された人は二度と戻ってこない、なのに彼らには別の名前が与えられ、名前や顔が晒されることなく守られ、どこかで生きていく。
その後の人生の中で笑うことも楽しむことも赦されるなんて被害者にとっては我慢ならないことだと思うのですよね。
確かに復讐を赦してしまうとこの世の中が狂ってしまうことは分かっていますが、現実に今まで起きた事件をみると再犯する可能性が高いことや、本当に彼らは「更正」したのか?と思うようなことばかりなので加害者を守るような法律が果たしてよいのかどうか疑問がわいてしまいます。
「手紙」では加害者の家族の視点から物語を書き、この「さまよう刃」では被害者の家族の視点から物語を書く。
毎回東野さんの本を読むと考えさせられることばかりなのですが、「もし、自分が」という立場で考えるとこの本の場合は犯人を裁く権利は遺族にあると思いたいです。
しかし東野さんは主人公に感情移入させるのが上手い方ですよね。
ついつい誰もが被害者の父・長峰に肩入れしたくなるのではないでしょうか。
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2010/04/24 20:25
もういいという限界あり。
投稿者:kumataro(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
さまよう刃(は) 東野圭吾 角川文庫
非常に暗い物語です。長編ですが、早く読み終えたくて、夜を徹して明け方まで休み休み読んで、2日間で読み終えました。
犯罪被害者家族の叫び声が響いています。16歳のひとり娘を強姦され、覚せい剤を打たれたのちに、ごみのように遺体を川に捨てられた父親の復讐劇です。彼は妻も病死で亡くしています。加害者である少年3人は未成年で、逮捕されても短期間の刑で済む立場にいます。
主人公父親は長峰重樹さん、40歳ぐらいでしょうか。娘さんの名前が絵摩さん、高校1年生です。少年たちは18歳ぐらいらしく、菅野快児(スガノカイジ)はケダモノです。伴崎(トモザキ)アツヤも同類です。中井誠も人間のくずです。彼らにも親がいます。産むだけ産んで、こどもの言いなりになって、最後はこどもを捨てたり、卑劣なかばいだてをしたりしています。長峰さんはだから、怒りと憎しみでいっぱいになったのです。
何人もの刑事たちが登場しますが、彼らは物語の進行係を務めるだけです。いまどきらしく、携帯電話が犯罪の鍵を握っていきます。ただ、被害者側にしても加害者側にしても、あまりにも極端なお話ではあります。この素材で、もうひとつ別の作品をつくれないだろうかと考えていたら、偶然並行して読んでいた「三匹のおっさん」有川浩(ひろ)著に女子高生娘を強姦されそうになった父親有村則夫さんが登場するのです。こちらは、明るい物語展開となっています。60過ぎのおっさんたちが強姦魔を捕まえてみれば、現職警察官だったのです。ただ、その展開ではなくてもっと別の展開になる物語ができると思うのです。
この物語の場合は、長峰さんは犯人の少年たちを殺害したあとに自殺する気配があります。読み続けていると長峰さんに声をかけたくなりました。お疲れでしょう。もうやめましょう。自首しましょう。天国の娘さんも、もうこれ以上の復讐は望んでいません。
長峰さんの行動に協力する通りすがりともいえるペンション経営者の娘さん丹沢和佳子さんがいます。彼女は正面から長峰さんに説得を試みます。それは、作者自身の姿だと感じました。終わりはハッピーエンドになってほしい。そう思いながら読み続けました。だけど、読み終えてみて、むなしくなりました。
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2009/10/23 23:25
救いはどこに求めればいいですか?
投稿者:あがさ(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
重い。とにかく重い。
最近の東野作品は、とにかくテーマが重いのだ。
妻を亡くした男の家族は、愛する一人娘のみだった。
その一人娘が、人間として扱われず、ただの肉の塊のように暴行され殺害され、ゴミのように捨てられた。
そのときから、一人の凶暴な殺人者が誕生した。
娘を殺したのは少年たち。
警察に捕まったところで、そう重い刑にはならない。
少年法に守られているとでもいえばいいのか。
それならば、自分の手で、自分たちのしたことを、心の底から後悔させ、あの世へ送ってやりたい。
そう思う被害者の家族の気持ちもあるだろう。
刑事たちだって人間だ。
被害者の遺族の犯罪も認めるわけにはいかない。
もちろん、少年たちの犯罪も。
だが、彼らに遺族の家族を捕まえることに、心の底から納得している人間がどのくらい居るだろう。
加害者、被害者の遺族、刑事たち。
どの人間の気持ちも、私には「わかる」とは言えない。
ほんの少し、想像できるだけだ。
本当にその立場に立ったものだけが「わかる」と言えるのだろう。
東野氏の作品の中には、過激な性描写の多いものもある。これもその一つだ。
それに嫌悪を感じる読者も中にはいるだろう。
しかし、それなくしては、被害者の父たちの怒りの感情の大きさは表現できなかったのではないかと、今回は思う。
手元に置いてから半年寝かせて読んだ本書は、本当に心を重くする作品だった。
少年法がどうのとか、被害者の遺族の気持ちをもっと裁判に反映させるようにとか、そういった議論になっていくべき話なのかもしれないが、読了したばかりの私には、何も言えない。
何が正しくて、誰がどうすべきだったのか、考えがまとまらないのだ。
ただただ苦しくて、悔しくて、悲しい。
どこに救いを求めるべきだろう。
私はそれを見つけることができない。
少なくとも、今は...。
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2010/11/07 09:24
殺人は誰も救われない
投稿者:かつき(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
未成年者に身内の者を殺されたら復讐をするか――。
深く、重いテーマで、容易には答えが出せません。
被害者家族の心情のせめぎ合いはよく描かれるテーマですが
本書では、実際に加害者を殺してしまい
自らも殺人者となります。
事件は高校中退の2人の少年によって
少女が凌辱され、殺害されます。
少女は父子家庭の一人娘で、父親の悲しみは深い。
父親は、何者かによる密告電話によって
警察よりも早く加害者を知り、偶発的に殺害してしまいます。
しかし、その「殺してやりたい」という気持ちは
常にどこかにあったものでした。
再び密告電話があり、父親はもう一人の少年を追っていきます。
警察はこの殺害事件が、実は連続レイプ事件であり
父親を理解しながらも、殺人者として指名手配します。
うまいのは、父親を援護する世論と、
では実際に手を下すかどうかに揺れる世間、
そして警察も同様の心情で事件を追っていく点。
さらに、凶悪な犯人の少年は救い難いのですが
彼らの言いなりになる主体性のない、もう一人の少年を登場させ
彼が物語のキーパーソンとなっていることです。
この全く想像性のない少年がリアルです。
最期まで被害者は救われず、父親も救われない。
だからこそ、世論はもっと未成年の犯罪や
性犯罪に敏感になっていくべきなのでしょう。
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2008/09/21 22:53
強烈でした
投稿者:あん(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
復讐と少年法という重すぎるテーマ。
法律を学んだ時にも感じたことですが、法律知識は武器としては使えるけれど、必ずしも弱者を守ってくれる物ではない。
未成年だと何をしても刑罰は緩い。
自分の身は自分で守るしかない。夜道はなるべく1人で歩かない、大金を持たないなど…
どれだけ気を着けても、ちょっとした隙に付け込んで犯罪は行われる。被害者なのに「油断があったんだろう」と言われる。敬遠される。
蹂躙され殺された娘だったら、やっぱり復讐を願うでしょう。親だったら復讐したくなるでしょう。
警察や司法関係者は果たして本作の刑事のような葛藤を抱えているのでしょうか?
問題提起したなと感じました。







