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告白

  • 出版社:双葉社
  • サイズ:20cm/268p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:978-4-575-23628-6

告白

湊 かなえ (著)

  • 全体の評価 414件のユーザーレビュー
  • あなたの評価 この商品を評価して本棚に反映 評価しました! ×
  • 税込価格:1,47042pt
  • 発行年月:2008.8
  • 発送可能日:7~21日

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第6回本屋大賞 受賞作品 第29回小説推理新人賞 受賞作品

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商品説明- 「告白」

愛美は事故で死んだのではありません。このクラスの生徒に殺されたのです。第29回小説推理新人賞受賞。【「BOOK」データベースの商品解説】

【小説推理新人賞(第29回)】【本屋大賞(2009年)】「愛美は事故で死んだのではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」 わが子を亡くした女性教師が、終業式のHRで犯人である2人の少年を自ら裁いた−。様々な立場の人物が語る言葉が、事件の真相を解き明かす。【「TRC MARC」の商品解説】

著者紹介- 「告白」

湊 かなえ

略歴
〈湊かなえ〉1973年広島県生まれ。武庫川女子大学家政学部卒。2005年第2回BS‐i新人脚本賞で佳作入選、07年第35回創作ラジオドラマ大賞受賞。

ユーザーレビュー- 「告白」

全体の評価
4.0
評価内訳 全て(14件)
★★★★★(5件)
★★★★☆(5件)
★★★☆☆(1件)
★★☆☆☆(1件)
★☆☆☆☆(1件)

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14人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2009/04/08 21:21

読者と作家の勝負では、作家に勝負ありの一冊

投稿者:JOEL(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 本作は2008年最大の話題作である。たしかに、よく練られた筋書には最後までどきどきさせられた。1日で読み終えてしまったくらいだ。人の死にアレルギーを覚えるような敏感な人でなければ、だれしも一読の価値があると言ってよいだろう。

 書評などというものを連続して書いていると、自分でもミステリーのひとつくらい書けそうな錯覚に陥りがちなところ、本作は凡庸な書評家の錯覚など、見事に打ち砕いてくれる。非凡な才能なくして、この世界では通用しないのだよと教えられるようだ。

 作者のデビュー作なのだが、脚本家としての実績があるので、まったくの素人というわけではない。それが、デビュー作にして、本書を老練な作家の技巧を散りばめたような作品にしている。読んで損はない。

 ただし、何か救いがないという読後感が残ってしまったのも事実である。たしかに、今の時代の気分を映しているのかもしれないのだが。登場人物ごとに、心象風景を上手に描き分けてもある。それでも、人の中に巣くう「悪」というものをこんな風に取り出してしまって・・・、そのことを手放しでほめてよいものかどうか迷う。

 それは、宮部みゆきの作品が、同様に人の悪や殺人事件を描きながらも、柔らかで温かな眼差しを含んでいるのと対照をなしているようにも思える。宮部作品でも人はよく死ぬが、最後にはすがるよすがを与えてくれる。そこに私たちは、殺伐とした世の中でも、喜んで宮部作品に手を出してしまう理由がひそんでいたりもする。

 もちろん、湊かなえが本作に相当するような酷薄な人であるわけではない。新聞や雑誌がすでに人となりを浮き彫りにしている通りだ。さらには、作品には作家の世界観が必ずしも投影されるわけではない。作品と自分をうまく切り分けられるのも、作家としての要件のひとつに挙げることができるかもしれない。

 ただ、容易には取り除きがたい「重たさ」が心にずしりと残った。そのくらい、読者はフィクションを読んだというよりは、現実に起きた出来事を作家とともに追いかけているという感覚を覚えさせてくれた。その意味では読者と作家の勝負では、作家の完勝に終わっている。今後の作品にも、大きな期待を覚えつつ、満足感にひたりながら読み終えた。

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8人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2009/05/06 19:59

語り切る才能、読み進む快楽

投稿者:けんいち(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

文句なしの傑作である。

何がかといえば、読ませる。引き込むように読ませる。まず、冒頭がいい。余計なお喋りのように語り出した話者は、気づけばこの上なく残酷な加虐/被虐を語り出している。もう、一読者の力では逃れられない。

場面が展開し、話者が変わっても、この緊張感は作品のトーンとして最後までつづいていく。また、結末が素晴らしい。「素晴らしい」という賛辞が不謹慎に感じられる程度にはスリリングで後味悪くもあるのだが、その印象の強さはやはり波の筆致ではない。冒頭と同じ話者が語り終える最後のページをめくると、もはや何も考えられない。しばしは、その圧倒的な物語世界、その語りに眩暈さえしそうなくらいだ。

──これを、作者・湊かなえさんの「語り切る才能」と呼ぶのなら、それによって読者には、「読み進む快楽」が間違いなく与えられる。本屋大賞というのも肯ける。もしかりに、「純文学云々」という輩がいるなら、これほどの快楽を与えつつ、現代社会的にも重く意義深いテーマを提出した作品を一つでもあげてみるがいい。いや、他を貶めるには当たらない。『告白』は、それ自体がすでに奇跡のような傑作なのだから。

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8人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2008/12/21 13:42

今日の教育とは成功者を作り出すことだけに終始していないか?

投稿者:菜摘(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

衝撃作である。小説であってもやりすぎだろうか?いや、何よりも恐ろしいものは人の「悪意」であり、それが引き起こす事件とは本当に想像がつかないものなのだ。

第一章の「聖職者」のみで独立した物語だが、あえてその続きを連作短編集としたチャレンジに注目である。ここまで完成されている作品に続編を書くとほとんどが蛇足で終わってしまうはずなのに、本作がそうはならないのは切り口の上手さとその展開の巧みさだ。各章で語り手をそれぞれ異なる立場の者に置き換え、更に大ドンデンと言える展開を用意している。この大ドンデンの凄さはもう既に薬丸岳クラスの上、社会現象への関心の高さは桐野夏生クラスと言えるのでは。難しい少年事件を題材にし当事者である少年の心の闇を少年の立場から描くことに見事に成功した。

【成功】と【失敗】この言葉も多く出てくる。現代社会は【成功すること】だけが本当に求められているのだろうか?教育とは、成功者を多く作り出し失敗作の子ども達を排除すること、なのだろうか?学校そして家庭という子どもを育てはぐくむ場に身を置く者として、厳しい警鐘と感じた。

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6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2008/09/16 14:36

目を背けたいのに、一気読み

投稿者:カフェイン中毒(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

やりきれない想いと嫌悪感ばかりが募るのに、
ページを繰る手はどんどん速度を増していく、そんな1冊でした。

ある女教師の衝撃の告白から、物語は始まります。
最愛の娘は、目の前にいる教え子の中の2人に殺された……と。
学校を去る前に、彼女は犯人を裁くのか?と興奮気味に読み進めていくと、
けっこうな一撃が待ち構えていました。
それが、最初の章。

さて、その一撃が教室に(そして犯人に)与えた影響が気になります。

犯人たちのかなり近くで、それらを体験した少女。
自分の弱さを認めたくない犯人の片割れ。そしてその母の日記。
そもそもの犯罪を計画した、もうひとりの犯人。

様々な角度から、そして当然本人だけの視点で、殺人事件とその後の生活が語られていきます。
騙されていたのは周囲の人だけでなく、読者である自分もだったのかと愕然としながらも、
その心地よさにどっぷり浸ることができました。

醜く、目を背けたくなるような勝手な言い分。
まだ救いがあると思えた人物の、じつはどうしようもない正体。

復讐というものが必要か否か。
少なくともこの物語の中でだけは、そんな迷いは吹き飛んでしまったことを告白します。
反省も後悔もない、後悔するのは自分のためだけという人間たちの狂演なのですから。

処女作にありがちな、読んでいて不安定さの気になるような文体ではありません。
先が読めてしまう部分も多少あるのですが、私には許容範囲でした。
むしろあっと言わせる展開のために、
そこまでの物語がおざなりになっているものよりは、満足できると思います。

冷静かつシニカルな女教師の視線が、
作者の立ち位置と重なるような錯覚を起こしたのは、偶然でしょうか。
後味云々の前に、こちらの興味をそらさない物語に拍手です。

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5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2010/01/24 17:14

ラストの展開は予想不可能

投稿者:らんぷ(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

「愛美は事故で死んだのではなく、このクラスの生徒に殺されたからです。」

終業式の日、中学校教師はこう語った。最後の授業で彼女は娘・愛美の死の真実について話し始めた。

このようなショッキングな内容で幕をあける2009年本屋大賞を受賞した「告白」。文章は登場人物の語り口調であるため、読み易いだけでなく、非常にリアルで登場人物の心情がダイレクトに伝わってくる。ただし内容がハードであるため、軽い気持ちで読むことは控えた方が良いだろう。

「殺人、復讐、真実、親子、思春期、心の闇、歪んだ愛情…」が被害者・加害者・それぞれの家族やクラスメイトにとってどのような存在であり、それが様々な形に変化しどう影響したのか。それは本人が語らないとわからない。それを知ることができるというのがこの作品の最大の魅力である。
登場人物の語りということで、時系列は人物を中心とし進んでいくので読み手は前後してしまうが、読み進めていくことでジグソーパズルが完成するような楽しさを味わうことができる。

そしてラストは予想できない展開である。

「ミステリーはラストが大事」という読者を決して裏切らない作品となっている。「ラストはどんな展開になるんだろう」と期待しながら一気にラストまで読み進められるであろう。

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20人中、19人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2008/09/28 18:04

感情移入していいものなのか

投稿者:田川ミメイ(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

『愛美は事故で死んだのではありません。このクラスの生徒に殺されたのです』
帯文にあるこの一文から、最初はいじめが絡んだ事件を題材にしたものかと思っていた。これは、殺された「愛美」という少女の母親の台詞だろう、と。が、そうではなかった(確かにいじめに絡んでもいるのだけれど)。まず、そこのところで驚かされる。

物語は、ある女性教師の語りから始まっていく。春休み前の終業式の日。クラスの生徒を前にして語る先生。この中学が『厚生労働省・全国中高生乳製品促進運動』のモデル校に指定されていたが為に、毎日牛乳を200mlずつ飲んでもらってきたけれど、それがこの日で終了です。よくある光景の中で語られる、よくある「先生のお話」で、特に驚くようなものではない。

が、彼女の話は少しずつずれていき、やがてはつい最近起こった不幸な事件に触れはじめる。その流れは自然でありがなら、どこか不穏な気配が潜んでいて、この語りの部分がとても上手い。この先生はいったい何を言いたいのだろう、と、眉をひそめたときにはもうぐいっと物語の中に引き込まれていて、そしてついには冒頭の「お話し」こそが、実は「恐怖」の始まりだったということを知り、驚愕する。

この小説は章ごとに語り手が変わっていく。つまり、ひとつの事件が起こるまでの経緯とその後の波紋が、それにかかわった者ひとりひとりの「目」と「心」を通して描かれていくのだ。確かに、ニュースとなって表に出てくる事件は、突然起こった悲劇のような衝撃があるけれど、その発端となる出来事はもっと前に起こっていたはずで、事を起こした者にもそれなりの訳がある。章ごとに語り手を変えることで、その部分が読み手にも手に取るように分かる仕組みになっている。宮部みゆきの「理由」もそうだったけれど、でもあちらは限りなくノンフィクションに近い作りになっていたが、この「告白」はあくまで小説の形をとっている。それだけに読み手は物語の中に入り込みやすいし、語り手に感情移入することができるのだ。

そこで、ふいに思う。果たして犯人に感情移入していいものなのか、と。
一人一人のドラマが丁寧に描かれているから、事件を起こそうとする者の気持ちをつい理解してしまいそうになる。そのせいでどことなく恐怖感が麻痺してしまう。が、そのことについて立ち止まって考える間もなく、物語は進んでいく。進んでしまうから引きずられるようにして読んでしまう。ミステリーなのだからそれは当然のことだし、犯人に心を重ねるというミステリーだって珍しいわけではないというのに、この「告白」に限ってはなぜか抵抗があった。

こういう事件を扱ったミステリーを、ああ面白かった、と言ってしまっていいのだろうか。読み終えたとき、そんなふうに思っていた。ミステリーらしい結末に、なるほど、と思う反面、犯人に対してもっと怒りを感じるようなラストにならなければまずいのではないか、と思ったりもした。それだけこの小説がよく出来ているということなのだろうけれど。

でもよくよく考えてみれば、この物語をまったくのフィクションと割り切って読むことができないという、そういう今の時代こそが何よりも恐ろしいことなのだと、本を閉じてあらためて思ったのだった。

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8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2008/11/23 09:58

中学校教師の娘が校内で亡くなった事件を核に、それぞれが「告白」したことは。戦慄と衝撃、そして恐怖。感じた理由は…

投稿者:月乃春水(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

戦慄と衝撃をおぼえずにはいられなかった一冊。
新聞広告で見て気になり、読みはじめたら止まらず、最後まで一気に。

本書がデビュー作となる湊かなえさんは、「小説推理」に掲載の「聖職者」で第29回小説推理新人賞を受賞。これが本書の第一章となっています。第二章「殉教者」、第三章「慈愛者」も同じく「小説推理」に掲載。以下、第四章「求道者」、第五章「信奉者」、第六章「伝導者」は書き下ろしです。

6章はすべて、モノローグから成っています。
中学校内で、シングルマザーである教師の娘が亡くなった事件を核に、関係者それぞれが自らの行動、気持ちを語り、真相が明らかになります。

娘を亡くした母である一年生の担任教師が、淡々と、終業式のホームルームで生徒に向けて話す。今月いっぱいで、教員を辞職する、と。「辞めるのはあれが原因か?」と生徒のことばを受けて、「そういうことも含めて、最後にみんなに聞いてもらいたい話があります。」
自分の生い立ちから、テレビでよく見かけるようになった熱血先生『世直しやんちゃ先生』の話に至り、そして、娘は事故で死んだのではなく、このクラスの生徒に殺されたのだと、ふたりを少年A、少年Bとして名指しします。
名指しが衝撃なのではありません。教師がこのふたりにしたこととは…ここで、まず衝撃、そして戦慄、恐怖がじわじわとやってきます。
この語りだけで、第一章「聖職者」は成り立っています。

第二章「殉教者」はクラスの委員長の美月が、担任だった悠子先生に向けた手紙。
助けを求めるのではなく、ただ一つ、どうしても聞きたいことがある、と、二年になってからのクラスの異様な様子と、その後に起きた事件を語ります。

第三章「慈愛者」は、娘を殺したと担任教師に名指しされた少年Bの姉のモノローグ。ひきこもりになった弟が引き起こした事件について、なにか知りたいと、母の日記を探し当てる。日記に綴られた母のモノローグが挿入されています。

第四章「求道者」は少年Bである直樹が、真っ白な狭い部屋の中で繰り返し見る、ある事件の映像。それは自分自身の体験に他ならないのですが…
「ここに出てくるバカな少年はいったい誰なのだろう。そして、どうして僕はこの少年の気持ちが手に取るように分かるのだろう。」直樹はそう語ります。

第五章「信奉者」は少年Aである修哉がインターネット上に掲載した「遺書」。

第六章「伝導者」は、修哉が握りしめていたケータイにかけてきた悠子先生が修哉に向けて語るモノローグ。いちばん短いこの章。最後には衝撃のことばが…。
戦慄が走りました。


本書には、3人の「母親」が登場します。教師であり、幼い娘を殺された母、息子を溺愛する直樹の母、添い寝で小さな息子に電子工学の話をし続け、自分の夢を成し遂げられないのを息子のせいにし、手をあげたあげく、離婚させられた修哉の母。

それぞれの立場、思いについて、様々に考えをめぐらせてしまいました。

正しくはなくとも、共感はできなくとも、もし同じ立場だったら。…できるものなら、自分もやりかねないのではないか。
その思いが、ラストの衝撃と戦慄につながっているような気がするのです。

これまでに、ミステリなどを読んできて、感じたのとはまったく異なる衝撃と戦慄、恐怖の理由は、このあたりにありそうです。


それぞれの「告白」を聞いて、読んで、なにを感じるのでしょう。
様々な人の思いを聞いてみたくなります。

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7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2009/02/09 16:19

書き手としての技量が冴え渡る秀作!

投稿者:soramove(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

「この教室に私の娘を殺した犯人が居ます」

主人公の幼い娘が
学校のプールで死んで居るのが見つかった。
主人公は教壇に立つ最後の日、
その犯人の名前をイニシャルで話すことで、
静かに復讐を開始する。

当事者数人の告白や手紙で
ひとつの事件が語られ、
主人公の投げかけた石が
池の中で同心円を描いて
徐々に広がるように、
読み手にも全体像が次第にあきらかになっていく。

うまい語りの小説だ。

これが大人の社会なら
これ程のインパクトはないだろう、
学校という閉鎖的な社会で、
ひとつの事件が別の形にへと変形していく。

ムリな飛躍もなく、
そんなこともあり得るだろうなと
ちゃんと納得させてくれるのは
作家の力だ。

非常にうまいつくりで、
突っ込みどころも無く、整然としている、
逆にいえば鮮烈な驚きというか、
ある場所から「ポーン」と
思い持つかない場所へ運ばれるような
そんな感動はなかったな。

それでも次が楽しみな作家とまた巡り会えた、
と思って居たら、書店で新刊発見、
即買いです。

★100点満点で75点★

http://yaplog.jp/sora2001/

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4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2011/03/18 21:38

悪の問題に鋭く切り込みながら、ホラーに流れてしまった

投稿者:ががんぼ(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 恐ろしい本である。内容が恐ろしいだけではなく、それを冷徹に緻密に組み立ててゆく作者の怜悧な頭脳が飲み込んで来たであろう毒が恐ろしい。ベースには話の通じない他人、当たり前が成り立たない人間関係という絶望に近い苦さがあるような気がする。
 中条省平が、久坂部羊のたしか『無痛』について、ドストエフスキーを引いて賞賛していたが、ドストエフスキーの名前はまさにこの作品にふさわしいのではないか、と思いながら読んでいた。一応犯罪小説には違いないし、ミステリーと言えばミステリーだが、その形を借りながらも、問われているのはまさに悪の問題だからだ。愛娘を殺された担任の女性教師を含め、誰もが異様な精神を見せるようにみえる。教師はまず被害者だからまだわかるし、同情の余地もあるが、主に中学生を軸に話が展開することからも伺えるように、本当は人間そのものの土台に狂いがあるのだ。それを倫理や宗教や思想などの太い支柱を築くことで、あるいは絆の力によって、人間は乗り越えて来た。だがそれらが崩壊した今(今までもそうだと言えばそうだろうが)、狂った知性としての人間の「悪」の問題が必定のものとして浮上する。
 だが、悪の問題をとことん追求しているかというとそうも言えない。救いの道筋は結局示されないし、問い続けられるわけでもない。昨今のミステリーは人間の問題をけっこう正面から扱うことが多く、社会性が高いと言ってもいいのだろうが、この小説の場合、少年犯罪、いじめ、虐待、エイズという重い問題を扱いながら、それらに取り組むというよりも、それらをあたかもホラー小説の道具立てのように使っているのが辛い。焦点は罪よりも罰であり、それもまたホラーじみた怖さを伴って提示される。悪の問題は問題提起を越えるものではない。結局狙いはホラーであり、悪の問題はその設定にすぎないと感じさせる点において、最終的には娯楽小説なのである。
 もともと短編として第1章の「聖職者」を書いて、それが何かの賞をもらったらしい。何といっても中学校のクラス担任が、このクラスに私の子どもを殺した犯人がいる、と宣言する衝撃、そして、最後の復讐のオチの恐ろしさは見事だ。が、見事さはそれにとどまらず、作者は短編の続編という形で第2章「殉教者」を書き、さらに3章を別の短編として書いた上で、残り3章を書き下ろしで書いて長編として見事にまとめた。題を「**者」で揃え、それぞれ語り手を別にした章立てを見ても、作者のセンスと相当な頭の良さがわかる。締めくくりのスタントも、行為自体は大したものではないが、教師の逆転の悪意によって引き締まった効果的なものになっている。そうした工夫があり迫力があるから一気に読ませる。
 ただし欠点もないわけではない。特に書き下ろしの後半には、やや無理なこじつけやら要素のリンクが目について、リアリティに欠け、作品全体が薄っぺらになる印象があった。ある種の安易さ、不自然さ、わざとらしさが感じられるのである。
 すぐれたアイデアの佳作であることは間違いないだろう。だがうっかりひとに勧められないという気がした。そんな毒を含んだリアルな無気味さに満ちた物語だった。

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5人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2009/06/06 20:13

そこまでしなくても

投稿者:kumataro(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

告白 湊かなえ 双葉社

 読むことに抵抗感がありました。いわゆるケータイ小説を予測しました。十代の少女がいろいろな男性と関係して妊娠し、男に捨てられて手首を切って、薬物中毒になってという展開はもう読みたくありません。しかし、いくつかの書評を読んだところそうではなく、この本は推理小説であり、教師のこどもが生徒に殺害されたところから始まるとあったので読み始めてみました。読み終えてみて、後半の「信奉者」の章は必要がなかったのではないかと感じました。その章があるために、全体がゲームだった雰囲気になってしまうのです。記述も14歳男子の心理描写ではなく、大人の作者の心が表れています。中学生男子の思考力はもっと浅い。ただし、最終章「伝道者」につなげなければならない部分であり「伝道者」の最後では、そこまでやるのかと、感嘆とは正反対の意味でため息がこぼれ出ました。
 この小説では「母親」が鍵を握る存在になっています。加害者渡辺修哉君の母親大学の先生、もうひとりの加害者下村直樹君の母親主婦、そして被害者の母親である森口悠子先生です。いずれの母親も勝手な人ばかりです。わたしは彼女たちの正当性を認めることはできません。
 読み始めの固まりの記述は奇異です。読点(とうてん 、)がなく、びっしりとページ全体に文字が並んでいます。(読点については読み進むうちに改善されていきました。)
 舞台はM中学校の1年B組です。わたしは、イジメの場面が嫌いです。冒頭付近で、もう読むのをやめようかと思いました。これは以前読んだ「ツ、イ、ラ、ク」姫野カオルコ著と同様の感想になりますが、その本は最後まで読んで印象が良い方向に変わったので、この本も読み継ぐことにしました。
 先生は語ってくれるけれど、先生の目の前に生徒たちはいない。呪い(のろい)という言葉が頭に浮かぶ。知らなくてもいいことを知ってしまう苦痛がある。日記に嫌なことを書いて記憶の消去をするということはある。陰湿な場面は嫌いです。今の若い人たちはこういう場面を受け入れることができる精神状態があるのだろうか。直樹の母親には、子どもを失ったもうひとりの母親の気持ちがわかっていない。
 小説は殺人事件に関わった人たち個別の「告白」という手法で、順番に事実が語られていきます。事件関係者の証言集です。「さらしもの」とか「だます」とか「人間をモノと思う」とかの文節が思い浮かびます。裁判員制度という言葉も思い浮かびました。自分の子どもを殺された母親が、復讐のために鬼になるという報復計画が描かれています。人が人を法律の外で裁くことの是非を問う問題作でした。

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