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金春屋ゴメス

  • 出版社:新潮社
  • サイズ:16cm/367p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:978-4-10-135771-3

金春屋ゴメス (新潮文庫)

西條 奈加 (著)

  • 全体の評価 3.51件のユーザーレビュー
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  • 税込価格:54015pt
  • 発行年月:2008.10
  • 発送可能日:1~3日

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商品説明- 「金春屋ゴメス」

近未来の日本に、鎖国状態の「江戸国」が出現。競争率三百倍の難関を潜り抜け、入国を許可された大学二年生の辰次郎。身請け先は、身の丈六尺六寸、目方四十六貫、極悪非道、無慈悲で鳴らした「金春屋ゴメス」こと長崎奉行馬込播磨守だった!ゴメスに致死率100%の流行病「鬼赤病」の正体を突き止めることを命じられた辰次郎は—。「日本ファンタジーノベル大賞」大賞受賞作。【「BOOK」データベースの商品解説】

【日本ファンタジーノベル大賞大賞(第17回)】【「TRC MARC」の商品解説】

ユーザーレビュー- 「金春屋ゴメス」

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3.5
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4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2008/10/23 17:01

現代人にとっての「江戸」とは何か

投稿者:佐吉(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

時代小説や時代劇は、いつの世にも多くの日本人に愛されてきた。しかし云うまでもなく、現在、実際にその時代を体験した人はいない。だとすれば、たとえば江戸を舞台にした作品であれば、現代人がそこに感じるリアリティの拠り所は、かつて現実に存在した江戸ではなく、現代人が思い描くイメージとしての江戸だと云えるだろう。極端な話、歴史上の事実からは大きく乖離していても、現代人にとってはむしろそのほうがリアルに感じられる、という事柄さえあるかもしれない。

そのように、歴史上の事実としての江戸を下敷きに、現代人に向けて江戸のイメージを創出したものが通常の時代小説だとすれば、この小説は、イメージとしての江戸を背景に、まったくの異世界を構築した作品と云うことができる。そしてまさにそのことが、この異色作がファンタジーたる所以であり、この作品の最大の魅力である。

2005年度の第17回日本ファンタジーノベル大賞受賞作が文庫化された。書店の平台でもひときわ目を引くだろう、このカバーに描かれた獰猛そうな怪獣、いや人物こそ、誰あろう、厚顔無恥、冷酷無比、極悪非道で知られた長崎奉行馬込播磨守。身の丈六尺六寸、目方四十六貫の巨躯を持ち、大盗賊でさえ恐れをなすという、通称「金春屋ゴメス」である。物語の冒頭、ゴメスは十三夜の月を眺め、今では人が暮らしていると聞くその月を「まがい物くさい話」と評する古参の手下にむかってつぶやく。『いまの時代、この江戸のほうがまがい物なんだろう』……。

近未来の日本に独立国家「江戸」があった。北関東から東北にかけて、東京、千葉、神奈川を合わせたくらいの版図を持ち、町並みや人々の生活様式は近世の江戸そのもの。専制君主制のもと鎖国が敷かれ、わずかな諸外国との通商の便宜上、「出島」が設けられているものの、外国から科学文明の産物を持ち込むことは固く禁じられていた。

20歳の大学生辰次郎は、江戸に生まれながら幼くして出国し、当時の記憶を失くしたまま日本で育った。辰次郎は、肝臓病で余命いくばくもない父のささやかな願いを叶えるため、江戸への入国を希望し、競争率300倍の難関をくぐり抜け、それを果たす。竹芝埠頭から千石船で江戸に渡った辰次郎は、長崎奉行と懇意の一膳飯屋の主に迎えられ、右も左もわからぬうちにゴメスの配下となる。折しも江戸では、罹れば必ず死に至るという奇病「鬼赤痢」が蔓延しつつあった。実は辰次郎は、15年前にその難病を患いながら、奇跡的に助かった唯一の生存者だった。ゴメスは、辰次郎の失われた記憶に鬼赤痢の謎を解く鍵があるとにらみ、裏から手を回して彼を入国させたのだった。

現代人が持つ江戸のイメージを具現した架空の独立国家「江戸」。イメージとしての江戸は、イメージであるがゆえに可塑的である。これがたとえばSFのタイムスリップものであれば、現代や未来のテクノロジーを過去の世界に持ち込んではならない、つまりその世界を変えてはならないということは、誰もが了承するところだろう。けれどこの物語においては、そのような禁忌は必ずしも自明ではない。そこに現代や未来の科学文明を持ち込まないというのは、あくまで人為的に定められたルールにすぎない。ならば人命尊重の立場から、医療技術や薬は例外としてもいいのではないか、と考える人がいても不思議ではない。実際、そのような問題提起がこの作品の一つの軸になっている。それをいけないとする根拠は何なのか。そもそもここに創出された「江戸」とは何なのか。そうしてこの作品は、現代人の思い描く「イメージとしての江戸」とはどういうものなのか、と読者に問いただす。

物語は基本的に捕物帖の構えをしている。ただし正直に云って、捕物帖としてみるかぎりにおいては、ややお粗末と云わざるを得ない。登場人物が無駄に多くて煩わしいうえに、謎解きも決して手際のよいものではなく、話の展開にもやや強引なところが見られる。作品のタイトルにもなっているゴメスにしても、その風貌に似合わぬ素顔が早い段階で明らかにされてしまうため、魅力的な人物造形の割に印象が薄い。手馴れた時代小説作家の書く捕物帖と比べるのは酷、というより的はずれかもしれないが、これでさらに読み物としての面白さが加われば、と思うのは独り評者だけではあるまい。舞台設定がユニークで面白く、それによって提示されるテーマが興味深いだけに、なおさらその点が惜しまれる。

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