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アシェンデン 英国情報部員のファイル(岩波文庫)

  • 出版社:岩波書店
  • レーベル:岩波文庫
  • サイズ:15cm/481p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:978-4-00-372504-7

アシェンデン 英国情報部員のファイル (岩波文庫)

モーム (作), 中島 賢二 (訳), 岡田 久雄 (訳)

  • 全体の評価 52件のユーザーレビュー
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  • 税込価格:98728pt
  • 発行年月:2008.10
  • 発送可能日:7~21日
  • 文庫

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商品説明- 「アシェンデン 英国情報部員のファイル」

モームの実体験に基づくスパイ小説の古典。第一次大戦初期、作者の分身アシェンデンはスイスで各国情報員と競い、その後シベリア鉄道経由でロシア革命を目撃する。はげしい工作合戦の中での駆引き・裏切り・愛と滅びの人間劇。連作読切形式。一九二八年刊。【「BOOK」データベースの商品解説】

収録作品一覧- 「アシェンデン 英国情報部員のファイル」

15−19
警察が宿に 20−44
ミス・キング 45−79

ユーザーレビュー- 「アシェンデン 英国情報部員のファイル」

全体の評価
5.0
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5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2011/10/25 23:20

文豪モームの書いたスパイ小説。

投稿者:読み人(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 インテリゲンツァの右手の友、岩波文庫です。
 前に父親から、モームは大学入試の英語によく使われていたとか、
聞かされていたし、
 中学時代に「月と6ペンス」を途中で投げ出した記憶もあるしで
かなり構えて、ビビリながら読んでみたのですが、

 なんと、

 本書、めちゃくちゃ面白かったです。
近年読んだ、近年書かれたスパイ小説と比較してもトップレベルの内容です。
 モームは実際にスパイだったそうで、
(この手の仕事に携わっていた人は、スパイという呼び名を嫌います、
 エージェントと呼ばれるのを好みます、しかも情報を扱う仕事ということで、
 ばりばりのエリートで知的労働生産者ということにもなっています)
前書きにもあるのですが、モームの経験に創作をプラスアルファして、
書かれたのが、本書です。

 英国のアシェンデンという名のエージェントが 第一次世界大戦下活躍した冒険譚で
一応、短編の連作形式になっていますが、全体として時間軸は正しくて
緩~く繋がった長編ともいえます。
 めちゃくちゃ面白いって書きましたが、先ず、文豪と呼ばれるだけあって
なにより小説として、表現、人物描写、構成、ストーリーテリングがかなり高め。
 そして、スパイ小説というより、ミステリ、スリラーかな?としても、
手堅く、纏められています。
 そして、かなり前に書かれたはずなのに、あまり古さも感じない、、。

 ただ、唯一というか、私は、純粋なスパイ小説として読んだのですが、著者モームは、
そこにあまり興味がないみたい、、。
 狡知さ、だましあい、といったことにモームはあまり興味がなくて、(ちょっとはあるんだけど、)
どっちかというと、中間小説的面白さ、ドラマ、
小説として描くべき人間の面白さ、エピソードなんかに興味があるみたいです。
 で、放っておくと、普通の小説っぽくなってしまいます。
この辺が、終盤の革命下のロシアでのシベリア鉄道の話が、前半の面白い作品に比べると
ちょっとぐだぐだになってしまった気がします。
 でも、しょうがないですね、、、。

 しかし正直とても面白かったです。

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0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2012/05/17 23:00

作家でスパイ、絵に描いたようなオイシイ話だが甘い話ではない

投稿者:SlowBird(男性|50代) - この投稿者のレビュー一覧を見る

実は第一次大戦前後に情報員を務めていたというサマセット・モーム。その経験を小説にしないわけにはいかないのだが、敵のアジトに忍び込んだり、要人を暗殺したりというサスペンスは無い。知名度のある作家という肩書きのために、他国に長期滞在しても怪しまれないわけで、しかしやることは人と金を使っての地道な情報収集、そしてその報告書を作成して本国に送ることの繰り返しだ。
とはいえ単なる事務処理をするだけではなくて、その末端の人間は大なり小なり法に触れる可能性を持っている。そこに人物を見定める眼が必要であり、まさにそこに作家の能力が活かされていたと言えるのかもしれない。
大戦初期にはスイスのホテルに逗留し、つまり敵国ドイツの情報を国境伝いに入手して、フランスの拠点に送る。スイスはスパイ天国で、敵国スパイも二重スパイも呉越同舟。かといってドンパチは無いので大人しくしていれば安全であり、つい色仕掛けごっこに手を出してしまったら、芋づる式にエジプトの王族なんてのが手繰りだされて来て、国際社会の複雑さを垣間見せてくれる。
続いてのエージェントは、メキシコから来た元革命軍の将軍という男。陽気で荒っぽくて女好き、しかし有能な男だ。とはいえ革命の戦乱と、静かな諜報戦では、求められる有能さは微妙にずれている。しかしほとぼりが冷めればまたメキシコに戻って、指導者として活躍するのだろう。この男を観察することを通して、それぞれの持つ背景世界も浮き上がって来る。
大戦末期はモスクワに派遣されるが、これは単なる情報収集ではなく、ボルシェビキによる革命によってロシアが戦線から離脱することを阻止しようという、複雑にして困難な任務。その任務が失敗したことは歴史に示されている通りだが、主人公の語りはそれとまったく別のところに向かう。目立たないように東方からモスクワ入りする道筋、すなわち日本を経由してシベリア鉄道の旅のうんざりする日々。モスクワで歓談した大使は、幾十年か前の踊り子との破滅的な恋愛を延々と語り、主人公自身も、当地での工作への協力者である、かつての恋人との回想に耽る。
メキシコでもシベリアでも、人々はその土地での暮らしを精一杯生きているし、するとこの戦争の戦線はいったいどこにあるのだろう。ドイツでもオーストリアでも、人々はその日の暮らしのために、情報も売れば国も売る。官僚も諜報員も、国境を自由に往来し、恋や芸術を堪能できる暮らしを望んでいる。だから戦争がどうだとは作者が書いていなくても、国家の行う戦争というものがいかに一人一人の生活や感情からいかにかけ離れたところにあるのか、否応無しに納得せざるを得ない。国境の両側を見渡す諜報戦の現場というのは、そういった観察をするのには格好の場所であるのかもしれない。
戦争に人生を翻弄される悲劇もあれば、それを掻いくぐって素知らぬ顔で生きる人生もある。主人公ののほほんとした日常描写にも、その裏側には非情な決断が繰り返されていることも窺える。戦争とは、国家とは、一人の個人にとってどのくらいの重みを持つものなのか。作家の目は人間観察にとどまらず、人々を取り巻く世界まで透徹して見ているはずだ。

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