紙の本
概説書、入門書として十分楽しめた
2009/05/06 09:52
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は東京芸大卒で現在恵泉女学園大学の准教授。本書は西洋美術に描かれてきた恋愛の意味するところを、その時代背景とともに読み解いていこうという書です。
取り上げられるのは男女の性愛に限らず、ギリシア神話における神と人間との交情や、同性愛、売買春に至るまで、さまざまな関係が西洋美術でどのように、またどういう理由から描かれてきたのかが、平易な文章で記されています。
書かれていることの中には西洋美術ばかりでなく、西洋文学を味わううえでも助けになるような事柄も含まれています。
例えばプレキフというロシア人画家が1873年に描いた「不釣り合いな結婚」という絵画。資産家風の初老の男と若く美しい花嫁との結婚を描いた絵ですが、著者はこれを引きながら、中世から続いた年齢差のある婚姻が19世紀にまで続いていた要因について解説します。出産時に命を落とす妻が多い一方で、子をなすことを結婚の最大の目的とする考え方が、富める一部の年長男性と貧しく若い女性との再婚を一般化させたようです。
本書と相前後するようにドストエフスキーの「罪と罰〈下〉 (岩波文庫)」
を読みましたが、プレキフと同時代のこの小説では、地方地主のスヴィドリガイロフや弁護士ルージンが貧しい主人公ラスコーリニコフの妹ドゥーニャに言い寄るという話が出てきます。当時のロシアでこうした経済格差と年齢差がセットになって結婚話が進むのが珍しくなかったことを改めて知りました。
本書の難点は、新書という紙数の限られた書物に、古代から近代までの西洋美術史を概観する情報を盛り込んだため--新書にしては珍しく300頁近くあるとはいえ--どうしても個々の作品の解説が短く淡白で、時に断片的なエピソードに終わった印象を与えるところです。
本書は入門の書として読み、興味をもった時代や作品については別の書でさらに奥深く分けいっていくというのがよいかもしれません。
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投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
恋愛をテーマとした西洋絵画。ということで、掲載されている絵も多く楽しめました。もっと絵が大きいと見やすいのですが、新書サイズなのでそこは仕方がないですね。
電子書籍
まぁまぁ。
2016/01/20 16:59
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ショコラ - この投稿者のレビュー一覧を見る
中野京子さんの本に比べると少しつまらないけれど、楽しく読了。
性の関して直接的な表現も多く、苦手な人はちょっと不快かも?!
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とてもおもしろかった。やっぱり西洋美術を知るには、キリスト教やローマ・ギリシャ神話を知らないと分からないなぁと感じた。でも、そういうのを1つずつ知って行くのも楽しいですよね。関係ないけど、なかなか直接的な表現も多くて、人の多い電車の中で読むのはちょっと恥ずかしかった。
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美術作品というのは、改めて思うと、
ともかくたくさん絵画などみて、そこで、「訳のわからないすばらしさ」を感じるときが、いつかおとずれ、そこから、「訳のわからない何か」と問われて、いろいろと歴史、技法、コンセプトを知りたくなる・・・というところまで、ともかく、作品を見続ければ良いんじゃないかを思う。浴びるように。話はそれからだ。
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絵を見るのは好きだけど、西洋美術にひそむキリスト教や神話についての素養がないので、もどかしくなることが多い。で、西洋美術史の本をぱらぱらと見たりしても、当たり前ながら頻出するカタカナの氾濫で頭が混乱することたびたびだった私。そんな私にとってこの「恋する西洋美術史」はパーフェクトな本だった。
この本は肩ひじの張らない入門書として最高だと思う。正しい美術史の知識が見え隠れしながらも、寝転がって読めるような軽妙な文章ですいすい楽しく読める。
有名な絵が多く採録されているのも◎。そして池上先生の悶々とした思春期の青い思い出話もほほえましい。
本当に最後まで興味深く読めた新書だった。が、中ほどの章(秘められた愛、禁じられた愛)は章の名前でも推測できるように直截的な絵が掲載されている。もちろん見る分にはちっとも平気な範囲ですが、電車の中で読むにはややためらわれました。
絵画鑑賞上級者には物足りないかもしれないけれど、絵は好きだけど、絵のモチーフの意味はイマイチわからないという人はマストバイです。犬やら鳩やら兎にも意味があったのですねぇ。
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よく見る神話のエピソードが復習できたり、時代時代の風俗・文化が解説されていて楽しみながら読めた。著者にもナゼだか好感が持てた。090331
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恋になやむのは、神も人もおなじ。
純愛にはじまり、結婚。そして…?
それでも皆、恋をする。
さまざまな観点から絵画を読み解く名著。
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西洋美術史というか、
『絵画を通して学ぶ西洋文化史』
といったほうが適している内容だと思った。
私はギリシャ神話とか世界史には興味が無いんだなーと実感した。。
でも昔の思想や出来事が今の美術に与える影響って大きいし、強制的に詰め込まなきゃいけないのかもしれぬ。
「接吻」をテーマにした絵画を何作か考察している部分で、最後の1作として紹介されていたマグリットの《恋人たち》が衝撃だった!
布で顔を覆った二人の男女がキスしていて、昔にはなかったキスの「匿名性と、その盲目性」を象徴しているんだそう!!
「唇は直接触れることなく、ただ行為としての、ただ形式としてのキスだけが描かれている」。。。
確かに、現代は軽い気持ちでキスする人が多いと思う。私も流されてしちゃったことが多々あるし(/_;)
キスの神聖性が薄れてきているのは確かだと思う。
まさに、「キスの美術史の最期を飾るにふさわしい作品」です!!!!!
***
ダンビーの《愛の絶望》は見た瞬間にぐっと引き込まれた。
女本位に描かれている作品がやっぱり好き。
実物を見てみたいなぁ。
***
あと、フュースリっていう画家の《男と三人の女たち》っていう作品は…刺激的すぎでした。刺激っていうか吐き気が…笑
ただ、「ここでは男性は自主性を持たず、女たちのなすがままである。彼は奉仕を強いられ、その報酬として快感が与えられる。」という解説にはなるほどと思った。
ふとボーヴォワールの『第二の性』に「絶頂の快感を経験しないで死ぬ女は多い。しかし、男にとって快楽は求めれば必ず到達できるものである。」って書いてあったのを思い出した。たしか女性の9割がイケないまま人生を終えるんだっけ。
自分だけイッちゃう分、女の人をいたわれってことなのかしら。。
ともかく、私は女性をファム・ファタール(※)として扱ってくれる男の人が好きですっ
※男の運命を握る女。男を破滅し、堕落させる。
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絵画に出てくるアイコンの説明あり。絵画を通して西洋の歴史、文化が勉強できた。絵を見るのは好きなんだけど理解はしていなかったので私には丁度よかった。
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[ 内容 ]
恋愛―それは人類の長い歴史を通じて、私たちの人生にとって常に重要なものであり続けた。
画家たちの恋愛事情、奔放な性的エピソードに溢れた神話、人類の恋愛の諸相を捉えた、新しい角度からの西洋美術史。
[ 目次 ]
第1章 恋する画家たち
第2章 愛の神話
第3章 愛のかけひき
第4章 結婚―誓われた愛
第5章 秘められた愛
第6章 禁じられた愛
第7章 愛の終わり
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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恋愛を画題にした名画にまつわるお話。
新書であるからして、それほど体系だった感じではなく、エピソード的。絵画から紐解く(あるいは垣間見る)西洋性愛史、といった趣き。
前半は比較的お行儀よい印象だが、後半は肉食系色恋のすさまじさの片鱗も漂わせる。
巻末の参考文献が親切だ。奥深そうな分野であるし、この森に入りたくなったら、こうした文献が手引きになるのだろう。
*新書なので仕方ないとは思うのだが、絵が小さくて、白黒のものがほとんどなのが残念。「画面右端にこれこれこういう男がこんな表情をしていて・・・」って言われてもわかりません、先生。こういうのは、大教室でスクリーンにスライドを大きく映しつつ講義してもらえばよいのかもなぁとちょっと思った。
*巻頭の『ピュグマリオンとガラテア』(ジャン・レオン・レジーム)が好きだ。ニューヨーク・メトロポリタン美術館にあるらしい。
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「西洋画」が苦手だった私。現代美術はある程度解釈の仕方を観る側にゆだねてくれている感じがある一方で、西洋画は「観るルール」だとか「正しい解釈」が存在しているというイメージから。恋愛という身近なキーワードで西洋美術史をひもといていくというこの本を読めば、少しでも理解が深まるだろうか、という期待から購入。
読んで思ったのは、昔の人も、昔の神様も、性にまつわるあれこれに翻弄されていたんだなあということ。現代の自分たちと何ら変わりなく。ただそこに時代背景の違いが顕著に表れていて、そのギャップが面白い。
現代には性の記録や妄想を、あんなにはっきりとキャンバスに残している画家はいるんだろうか?未来の人にもこんなシンパシーを感じてもらうために、ぜひ取り組んでいただきたいものです。
たぶん同じシリーズで、食事から西洋美術史を見るというものもあったので、次はそれを読みたい。
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恋愛という観点から美術史を説いた本。
ピカソとかロダンの恋愛話とその時期の作品の対比が面白い。芸術家の恋愛話ってロマンチックですき。
私は美術詳しくないので、直感的にブーシェとかフラゴナールの厚塗りしてますって感じの肌の描き方がとても可愛くてすきだったんだけど、だいすきな「ブランコ」が取り上げられててうれしかった。美術史上は評価低くても、お部屋に飾るなら絶対ああいう絵がいいです。
挿絵全部カラーならもっと良かったです。美の巨人見たくなったー!
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大学教授の著書。授業が面白いから読んだ。
先生は中学の頃、絵画の女性に恋をしていたらしい、変態だ。
高等な二次元愛、間違いなく変態。
でもなんとなくその気持ちもわかる、なんとなく。