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茨文字の魔法(創元推理文庫)

茨文字の魔法 (創元推理文庫)

パトリシア・A.マキリップ (著), 原島 文世 (訳)

  • 全体の評価 4.54件のユーザーレビュー
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  • 税込価格:98728pt
  • 発行年月:2009.1
  • 発送可能日:7~21日
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商品説明- 「茨文字の魔法」

レイン十二邦を統べる王の宮殿。その下にある王立図書館で、捨て子だったネペンテスは育った。ある日、魔法学校の学生から預かった一冊の本。そこに茨のような謎めいた文字で綴られていたのは、かつて世界を征服した王と魔術師の古い伝説だった。おりしも年若い女王の即位に揺れるレイン十二邦は、次第に運命の渦に巻き込まれていく。名手マキリップが織りなす、謎と伝説の物語。【「BOOK」データベースの商品解説】

ユーザーレビュー- 「茨文字の魔法」

全体の評価
4.5
評価内訳 全て(4件)
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4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2009/01/29 14:56

不思議な文字が語るファンタジー

投稿者:菊理媛(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 読み終えると、ファンタジー映画を見終わったような満足感を得られる一冊です。
 ありがち?…と思って読み進めてゆくと、その思惑を次々と裏切って、強烈にとは感じないままズルズルと引き込まれてゆきます。読み進めるほどに、続きが楽しみになるのは、マキリップの真骨頂というところでしょうか。
 王宮の地下図書館で養われた書記で翻訳者のネペンテス。
 レイン十二邦を父王から受け継いだばかりの若き女王テッサラ。
 そして伝説の皇帝アクシスに使えた仮面の魔術師ケイン。
 この三人の女性(ケインが女性だったとは、登場人物とともども、知ったときには驚きました)の物語が、時と時空を超えて入り組み、交わり、日常と伝説に、伝説が日常にとドラマチックに展開します。
 あらすじを書くと楽しみが多少なりとも減ると思うので極力控えたいのですが、ちょっとかすってしまう程度のネタバレのをお許しいただいて。。。

 まだ歯も生えていないころに崖の上に捨てられ、王宮の地下にある図書館で育てられたネペンテス。Mで始まるマールという名を付けた子の次に拾われた彼女は、Nで始まるネペンテスという名を司書につけてもらったのでした。
 つまりは、少なくともこの図書館には14人以上(古い王宮図書館ですからA~Zを何順かしているなら26の何乗プラス14番目ということになりますので、もっと多いのかもしれませんが)の捨て子が、書記として養われたということになります。
 多くの同じ身の上の子が周りにいたからか、それとも書記という仕事が性に合っていたからか、自分の出自や将来になんの疑問も持たぬまま時は流れ、ネペンテスは翻訳者として図書館で日々を過ごしていました。こんななんでもないような平和な日常と、その後に彼女が出会う“空の魔法学校”の学生ボーンとの初恋が、レイン十二邦の危機を救う大きな力となります。
 また、十二邦を統べるには役不足と誰もが思っていたテッサラが、思いもよらない力を発揮し、魔法と知識を積み重ねた大連邦の主となってゆく姿は、同じ女性としてとても誇らしい気持ちになれたりします。トップに立つ者に、絶対必要な資質とは? テッサラを見ていて、意外な答えを見つけました。
 ケインについては、物語中のなにというよりは、「女性の本懐」という点で、大きな示唆を含んでいるように思います。皇帝との愛に純粋に殉じようとした彼女の真の望みはなんだったのか。いろんな見方ができるように思います。
 主な役柄であっても脇役であっても、登場人物はそれぞれ魅力的です。その人物描写や、服装、建物や室内の描写。どれをとっても過剰ではと思えるほど綿密に語られます。これが、まるで映画を見たようなという感想につながると思うのです。情景、人物が目に浮かぶように物語が紡がれます。
 よみがえる古の夢見人。時の扉をこじ開ける大軍隊。歴史書と吟遊詩人の詩に残る伝説と現実が織り成す、ファンタジーらしいファンタジーです。

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3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2009/03/12 21:51

なかなかに魅力溢れる作品

投稿者:萬寿生(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 ファンタジーとは意外と単純なものである。仮空の世界での、恋と冒険と魔法の組み合わせである。しかし、この物語は複雑で多層である。設定された世界の構造や、文字に組み込まれた魔法の仕組みや、登場人物の関係や、等々。どのように複雑であるかは、読んでもらうとして。
 四人の主要登場人物は女性である。それぞれの性格や心理の彩が微妙である。女性作家ならでの表現力である。脇役の男性陣の思いにも共感が持てる。
 ファンタジーといえども、意想外の魔法や心躍る冒険だけでなく、物語の展開と同時に、登場人物の性格や心理描写の書き分けも重要な要素であろう。そのような個別の構成要素を見ても、全体の構成を見ても、魅力溢れる作品である。

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2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2011/01/30 14:02

茨のごとく

投稿者:星落秋風五丈原(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

本作のタイトルに登場する茨の花言葉は「不屈の精神」である。読み終えてみると、なるほど三人のヒロインの不屈の精神が、物語を動かしたともいえる作品で、茨はさまざまなものの象徴であるように感じた。

さて、一人目のヒロインはレイン十二邦を統べる王国の、王立図書館に捨てられていたネペンテス。彼女が魔法学校の学生から預かった一冊の本には茨のような謎の文字が綴られていて、なぜか彼女は憑かれたように茨文字の解読をはじめる。書かれていたのは、かつて世界を征服した王と魔術師の古い伝説。ところが読み進めるうちにこの伝説が、伝説ではなくなっていく…という物語が主筋。
彼女が読み進める無敵の王と彼につき従う凄腕の女性魔術師の伝説がサブストーリーとなり、この二つの物語が文字通り茨の如く絡み合って、物語が展開してゆく。頼りないと思われていたレイン十二邦の年若い女王テッサラの成長ぶりも魅力の一つ。

若い女性がヒロインなのに恋愛要素は薄く、彼女の出生の謎や、王国を狙う謎の大国の影など、どちらかというと大局的な所で物語が動いてゆく。しかし最後に行く末を決めるのは、情念という非常に理性とはかけ離れた部分であり、そこが物語の面白いところでもある。

『影のオンブリア』では絵が異世界と現実のかけ橋となるが、今回現在と過去を繋ぐのは本。ミヒャエル=エンデのとある本を想起させますが、その本のタイトルはネタばれのためご容赦を。

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6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2009/06/15 00:03

終盤で突然物語の全体像が..それがドラマの始まり

投稿者:YO-SHI(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 著者のパトリシア・A・マキリップは、米国人の女性で1975年に「妖女サイベルの呼び声 」で、2003年に「影のオンブリア 」での2回、世界幻想文学大賞を受賞している。幻想文学の名手といわれる息の長い作家だ。

 そして本書もとても面白く読めた。舞台は12の邦国を従える王国の宮殿。主人公はその王立図書館で、翻訳の仕事をしている書記のネペンテス(和訳するとウツボカズラ、なんて名前なんだろう!)。彼女は赤ん坊のころ、宮殿のある断崖の縁に捨てられていた孤児だ。彼女が、持ち込まれた茨模様の文字で書かれた本の翻訳を進めることで、物語が進展していく。

 物語全体を覆う雰囲気が幻想的だ。断崖に建つ巨大な宮殿、その地下深くにある迷宮のような石造りの図書館、森に隠された宙に浮かぶ魔術師の学院、そして三千年前に栄えたと言われる伝説の王国。この舞台装置を使って壮大な愛のドラマがつづられる。ネペンテスに恋する魔術師の青年の振る舞いだけが軽くて現代的だが、それも憎めない感じでいいアクセントになっている。

 物語が終盤に差し掛かったあたりで、突然全体像が明らかになる。私は思わず「あっ」と小さく声をあげた。そして、それが明らかになった時点が本当のドラマの始まりなのだ。ファンタジー好きにはオススメ。私はこの作品に出会えて良かったと思う。
 

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