「honto 本の通販ストア」サービス終了及び外部通販ストア連携開始のお知らせ
詳細はこちらをご確認ください。
紙の本
瀬名秀明ロボット学論集
著者 瀬名 秀明 (著)
現実の科学技術と空想の物語が相互作用しながら、らせん構造のように発展した希有な文化的背景を持つロボット。ヒトとロボットの境界とは何か? ロボット社会は必然か? 瀬名秀明の...
瀬名秀明ロボット学論集
瀬名秀明ロボット学論集
ワンステップ購入とは ワンステップ購入とは
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
商品説明
現実の科学技術と空想の物語が相互作用しながら、らせん構造のように発展した希有な文化的背景を持つロボット。ヒトとロボットの境界とは何か? ロボット社会は必然か? 瀬名秀明のロボット学に関する近年の考察を収録。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
SFとロボティクス | 15−31 | |
---|---|---|
「ロボット学」の新たな世紀へ | 33−53 | |
『デカルトの密室』特別講義 | 63−110 |
著者紹介
瀬名 秀明
- 略歴
- 〈瀬名秀明〉1968年静岡県生まれ。東北大学大学院薬学研究科修了。薬学博士。東北大学機械系特任教授。日本薬学会・日本推理作家協会ほか所属。著書に「パラサイト・イヴ」など。
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
ロボットから知る私。
2009/02/09 15:47
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ソネアキラ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「私たちはロボットを通して自分自身を知るのである。ロボットは<私>というものを私たちの内面から掘り起こし、顕在化させるという希有な特徴を持っているのだ」
自分は、自分で見ることができない。よって他者を投影させて、他者経由で見えてきた自分を自分だと認識する。さまざまな関係性で、さまざまな自分像というものが浮かび上がってくる。ラカンいうところの鏡像、ぶっちゃけ、ガマの油状態とでもいえばいいのか。
いままでは、人は、人(他者)を対象にすればよかったが、ロボットというものが現れた。そこから、新たな自分、人間像が見えてくる。
有名なアシモフのロボット工学の三原則があるが、「なぜロボットは人間に危害を加えてはならないのか」などは、「ロボット」を「人」に置き換えれば、もろ倫理学の永遠の課題であるわけで。もっとうがった見方をすれば、支配-被支配で、金持ち-奴隷が、ブルジョア-プロレタリアアートになって人間-ロボット、あるいは経営者-非正規社員(外国人含む)、ロボット(産業用ロボット)という図式も見えてくる。
『鉄腕アトム』などにもロボットの反乱が出てくるが、それは永遠に人間に搾取され続ける運命を呪ってのもの。学習能力がバージョンアップすれば、そうなるのだろうか。ヒューリスティクス・アルゴリズムとでもいえばいいのか。さだかじゃないけど。
「人間の脳にはテンプレートを見抜く能力があって、身のまわりの出来事をテンプレートと照らし合わせながら観察している」
「人工知能に予測をさせることは難しい-略-一方でぼくたちは知らず知らずのうちに自動化し、半ばロボットとして生きているわけです」
習慣化、規範化ってことか。ワンパターンでいいとこはワンパターンで。
「ぼくは小説の中で「クオリア」という言葉を使わないようにしているのですが、-略- ぼくは「記憶のタグ」みたいな感じで考えているのです」
「りんごの赤い感じ」のみならず、「齧ると、つぎの行動があって、時間的な経過があって、つながっていく感じがする」
「そこから次にくるストーリーは、ほんとうに体験したことでなくてもかまわない」
「記憶のタグ」とは素敵な言葉だ。属性や履歴ってことでほんとも、うそこも包含されている。ならロボットにとっての「記憶のタグ」って何だろう。それは上書きされるたびに人とのシンクロ度合いを深めるのか。で、「自我」のや主体性の芽生えにつながることなのだろうか。
「たぶん違和感は、動物的な本能で自分の生存を守るというところから発達した心の働きなんでしょう」
「ぼくたちは違和を感じたり、感じなかったり、創造性を発揮したりと、違和の感覚を操ることで社会の中で生きていく能力を備えているのです」
「動物的な本能」や「違和感」は、リテラシーってことなのかな。自分の居場所=存在理由なのかもしれない。金子みすずの詩のフレーズみたいに「みんな違ってみんないい」ってことかも。ただし差異と差別が同じ土壌にあることを忘れないようにしないと。
「今後のロボット学はむしろ本来の哲学にも似て、さまざまな科学/技術分野とコラボレートしつつ自在に領域を跨ぎ、行き来し、融合と発散を繰り返すのではないか」
昔流行った身体論がロボット学じゃ義体論としてリニューアルオープンするようだ。この本で作者は和辻哲郎や市川浩を取り上げているもの。
版元が勁草書房なので、さぞ難しいかと思ったら、さにあらず。講演や対談を起こしたものが、大半なので読みやすく、知的興奮度も高い。理系、文系を学際的領域で扱う「ロボット学」の裾野の広さを改めて知る。