- 出版社:角川書店
- サイズ:20cm/228p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-04-873911-5
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商品説明- 「鬼の跫音」
心の中に生まれた鬼が、私を追いかけてくる。—もう絶対に逃げ切れないところまで。一篇ごとに繰り返される驚愕、そして震撼。ミステリと文芸の壁を軽々と越えた期待の俊英・道尾秀介、初の短篇集にして最高傑作。【「BOOK」データベースの商品解説】
鈴虫だけが知っている、過去の完全犯罪。蝶に導かれて赴いた村で起きた猟奇殺人事件。心の中に生まれた鬼が、私を追いかけてくる。もう絶対に逃げ切れないところまで…。「鈴虫」「冬の鬼」など、全6篇を収録した短篇集。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧- 「鬼の跫音」
| 鈴虫 | 5−39 | |
|---|---|---|
| 【ケモノ】 | 41−87 | |
| よいぎつね | 89−118 |
著者紹介- 「鬼の跫音」
道尾 秀介
- 略歴
- 〈道尾秀介〉1975年東京生まれ。「背の眼」で第5回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞しデビュー。「シャドウ」で第7回本格ミステリ大賞受賞。ほかの著書に「ラットマン」など。
ユーザーレビュー- 「鬼の跫音」
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2009/11/21 16:19
それもまた幸せのひとつの形だろう
投稿者:桔梗(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
ふと何かに執着して 踏み外し やがて落ちていってしまう
そんな人間の姿を描いた6つの短編
どれもじわじわと怖いのだけど
心に残ったのは 一番短くてシンプルな「冬の鬼」
ある女性が好きな男性との暮らしを綴った たった8日間の日記
8日目から1日目へと時間を逆にたどり 過去に遡ると見えてくる ふたりの間にあった出来事
ずっとそばにいるよと手を差し伸べられる
でも 握りしめた途端に 心は変わるんじゃないか 振りほどかれてしまうんじゃないかと
そんな不安がいっぱいで 手を取ることもあきらめることもできずにいるとしたら…
壊れているとは思えない 狂気でもない
そばにいてほしいというその想いを形にしただけのこと
そんな気がする
大丈夫だと信じさせてくれるなら それもまた幸せのひとつの形だろう
目の前にある腕をぎゅっと握っていいと思わせてくれるというのは 羨ましい程の幸せだと思う
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2009/07/30 16:00
ケモノ偏に王と書いて、狂う。
投稿者:空蝉(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
時には心理的な、時には民俗的な長編ミステリーで人気を集めてきた道尾氏の初の短編集である。ミステリと言えばミステリかもしれない、ホラーといえばホラーかもしれない。
どの章も日常がズルズルと猟奇的な事件に発展し、正気を保っていた彼らはいつの間にか己の中の狂気に飲み込まれ、やがて作品全体が読者を恐怖で震撼させる。
第一章<鈴虫>
かつての妻の恋人で私の友人であった「S」の遺体が大雨で流れた土中から発見された。ともに出土した所持品から事情聴取を受ける「私」は死んでいた彼を埋めただけだと主張し、彼はそうすることで彼女を自分のモノにした、はずだった。では殺したのは、誰なのか?
第二章<ケモノ>
出来の良いエリート家系の中でただ一人落ちこぼれ、嘲りのなか劣等感に苛まれる「僕」。ある日刑務所作業製品の椅子に隠すようにして刻まれたメッセージを偶然見つけた僕はその彫り主の過去を辿るうち、43年前に起こった猟奇殺人を探り当てる。その惨殺された一家は「僕」と全く同じ家族構成、そして屍と犬とケモノで出来ていたその家族に起こった悲劇を目の当たりにし、僕は一つの行動に至る。
第三章<よいぎつね>
故郷の神社の伝統芸能「よい狐」を取材するうちに学生の頃友人にそそのかされて犯して強い待った過ちが蘇る。通りがかりの女を神輿蔵に引摺り込み強姦したという罪悪感はやがて私に忘れていた記憶と新たな記憶を錯乱させる。殺したのは誰なのか?殺されたのは誰なのか?
第四章<箱詰めの文字>
盗んだ貯金箱と中に入っていた紙片を手に謝罪に訪れた青年。私は貯金箱には覚えが無かったが、その紙片の上の文字「残念だ」。そこにはミステリ作家としてデビューした当時の忌まわしい過去と罪をがこめられていることを私は知っている。
彼は何者なのか?なぜ私の元を訪れたのか?鏡に映る彼の顔を、私の顔を私は見ることが出来ない・・・。
第五章<冬の鬼>
1/8から1日ずつ遡っていく私の日記には、生まれ変わった私と恋人Sとの幸せな時間が綴られていく。そして最後の1/1の日記には前日大晦日に行われたSの手術と、ダルマへの「目」入れと、唯一つだけ叶った真実と願いが明かされる。
第六章<悪意の顔>
友人だったSからイジメを受けるようになった「僕」は見知らぬ女性の「助けてあげる」という言葉に惹かれ彼女の家に赴いた。画家だった夫と子供をキャンバスの中に取り込まれてしまい、彼らのもと(絵の中)に入ろうとした結果足を失ったという狂信的な彼女の言葉。しかし僕は彼女の「ウソ」を利用してSを消すために彼女の家に連れ込んでいく。
狂という字は第二章の標題「ケモノ」偏に王と書く。獣ではなく「ケモノ」、人間の理解を超え理性や常識や言葉も力も通じない別の世界の住人であるケモノ、その王と書いて、「狂」だ。
友の死体とともに秘密を埋めた男、惨殺し変わり果てた家族の前に顔をうずめた青年、鏡を見ることが出来なくなった男、唯一つの真実に生きる愛し合う男女、この世のすべてを捨ててキャンバスの中の幸せに身を投じた孤独な女・・・
彼らの起した行動は世間一般からは「異常」といわれる猟奇的行動だ。しかし彼らにとってはそれが己を生かす唯一の方法で、彼らの中では「普通」であったとしたら?
狂うという字はケモノ偏に王と書く。世間一般=多数派が共有する常識ベースから外れるということ、ヒトを捨てケモノになるということが狂うということだとしても、彼らにとっては常識と規律にかなっているのかもしれない。
「私たちの心は、壊れてなんかいない」彼女の言葉が痛い。
光を捨て、世界を捨てて唯一の真実を恋人と獲得した彼らは、ヒトとしては狂っているのかもしれない。・・・が、彼女は幸せであることはわかる。彼女たちは狂ってはいない、彼らの心はその世界では、壊れてなんかいない。







