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図書館の女王を捜して

  • 出版社:講談社
  • サイズ:20cm/228p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:978-4-06-215337-9

図書館の女王を捜して

新井 千裕 (著)

  • 全体の評価 41件のユーザーレビュー
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  • 税込価格:1,68048pt
  • 発行年月:2009.3
  • 発送可能日:7~21日

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商品説明- 「図書館の女王を捜して」

亡くなった妻が図書館の文学全集に残した蝶の栞。白薔薇の香りとともに、書架から書架へ、そして霊界へと誘っていく。彷徨いの果てに出会う心やさしい光景とは…。本と死者をめぐる癒しのミステリー。【「BOOK」データベースの商品解説】

亡くなった妻が図書館の文学全集に残した蝶の栞。白薔薇の香りとともに、書架から書架へ、そして霊界へと誘っていく。彷徨いの果てに出会う心やさしい光景とは…。本と死者をめぐる癒しのミステリー。【「TRC MARC」の商品解説】

著者紹介- 「図書館の女王を捜して」

新井 千裕

略歴
〈新井千裕〉1954年新潟生まれ。早稲田大学法学部卒業。区役所職員、コピーライターを経て、86年「復活祭のためのレクイエム」で群像新人賞受賞。ほかの著書に「忘れ蝶のメモリー」ほか。

ユーザーレビュー- 「図書館の女王を捜して」

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2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2009/12/21 23:38

大丈夫。

投稿者:ぼこにゃん(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 サリンジャー勝訴のニュースを知り、相変わらず大人げないじいさんだとは思いつつ、やはり私もほっとしたのだ。ラムネ瓶に取り残されたガラス玉みたいに哀切な終わり方ではあるが、だからこそ「ライ麦畑」は広く愛され、読み継がれているのだろう。サリンジャー本人が書いたものであれ、誰も続編なんか望んでいないような気がする。
 でもその後世の中も変わり、瓶の中に閉じ込められたまま自分の痛みとだけ向き合うという方針は、現代を生きる我々には許されない甘美な贅沢になった。そう感じるのは年のせいか?
 そんな境地にさしかかった人にはかなり沁み込む、新井千裕の小説である。
 主人公は妻に先立たれ、開店休業に近い便利屋稼業を営みつつ家賃収入で暮らす男。無気力な日々に訪れた小さな謎が、凪の生活に穏やかなうねりを与え始める。
 現実社会とやや不調和でいくつになっても子供っぽさが抜けず、傷つきやすい自分の周りに諧謔の繭を張り巡らせて、ちょっぴり孤独で流されやすい(早い話がさっぱり冴えない)男性、という人物造形は読者にとってはもはやおなじみ。かつてはこういう男が人ごみの中で松任谷由実を叱っていたらしいのだが、今日的にはむしろ周り中の女達からガンガン説教されるタイプだろう。情けないったらありゃしない。
 この人の小説はシンミリと怖い。軽やかで人好きのする語り口で始まり、誘われるままホイホイ読み進んで行くと、一瞬にして落とし穴のような寂寥に包まれてしまう。虹色のファンタジーと軽い毒を含んだ俗な軽口とのカクテルは実は周到に仕組まれた罠で、いつも突如ビョウボウたる砂漠にただ一人置き去られたように終わるのだ。辺りは真っ暗、今までの楽しい気分が反転したネガと化し、やりきれないほど寂しい。喪失の後にやって来る無風のインターミッションを、これほど軽やかに切なく描ける作家が他にいるだろうか。読後の強烈な寂寥に打ちのめされ、まったくなんだってこの人はこんな話ばかり書くのだ、辛気くせぇ!と昔は腹を立てたものである。
 しかし私とてもう純真な若年ではない。この無情な暗黒が夜明け前のソレであり、最も辛いこのひとときを乗り切れば朝が訪れることを、今は経験的に知っているのだ。
 若いコールフィールドならば「インチキ」と切り捨てるであろう様々な方便を駆使し、新しい朝をいくつも迎えて格好悪い人生を遣り繰りしなければ生きては行けない。かつてキラキラと輝いていたガラス玉は埃まみれの傷だらけでも、人は前にしか進めないのだし、それはそれほど悪くないことなのだよ。
 そんなことを教えてくれるのが雄々しくも華麗でも熱血漢でもない、地味でくたびれた男にすぎないところがなんとも嬉しくて泣かせる。サリンジャーの放つ暗色の透明感に憧れながらも、今の私はこのパッとしない主人公の内にひそむ、妙に粘り腰なしたたかさの方に元気づけられたりするのだ。確かに世界は悲しみと嘘と苦々しさに満ちているけれど、でも大丈夫だよ、大丈夫だからね、とかなんとか言われている気持ちになる。
 そこいら辺が、私がこの人の小説を読み続ける理由かもしれない。

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