紙の本
固定観念を捨てて
2022/08/26 09:38
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投稿者:こっこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
解説にもありましたが、カフカが絶望、悲劇の類を書く作家との固定観念があり、本作もそう捉えがちということですが、本作は喜劇のように楽しく読めます。登場人物がそれぞれ個性を光らせているのが大きく作品に魅力を与えています。未完なのが残念です。
紙の本
読書会の課題本だったので
2021/04/29 16:52
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投稿者:TORA - この投稿者のレビュー一覧を見る
以前、
絶望名人カフカ、マスターピースシリーズのカフカ、
などを読んでいたこと、また今回読書会の課題本だったこともあり
購入。
未完のストーリーで、私は未完が好きではないので
読書会きっかけがなければ買わなかったと思う
でもおもしろかった。
皆まともそうでまともじゃない!
紙の本
再読にチャレンジ
2016/05/22 11:12
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投稿者:こばさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
遠い過去、学生時代に「審判」を読んだが挫折した。今回、評判の善し悪しはあるがタイトルも変わった光文社古典新訳文庫「訴訟」に再度チャレンジする。以前の訳よりも読みやすいとの評判もある。難読なカフカをわかりやすく読めることがいいのか? そもそもカフカを読みやすくすることが必要か? とにかく読み始めている。
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銀行マンのヨーゼフKは突然、逮捕される。しかし、罪状は明らかにされない。拘束もされず、銀行が休みの日に出廷する義務が課せられる。
法の存在は普段、意識されることはない。しかし、ひとたび法が強制力、拘束力を持ってしまうと、個人など虫けらのようなモノ。どこにいようと法は追いかけ、理不尽な要求を投げつけてくる。
そんな法のプレッシャーに潰されてしまった男、Kの悲劇でもあり、喜劇でもある作品だ。
法の理不尽さを、これまた理不尽な作品ばかりを残した不思議小説家フランツ・カフカが描くという理不尽の2乗な小説。
未完成のまま、カフカは亡くなったので、小説として成立してるのは前半部分だけ。それを翻訳者も忠実に再現しているので、よほどのカフカファンでなければ、読み続けられない構成になっているのが残念。
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さすがに最近は見ないけれど、昔はよく見た試験の夢。
何故か皆は知っているのに、自分だけ登校して初めて今日が試験日であることを知る。しかもその試験は、全く受けた覚えもない授業のもの。
どうしよう、いや、いまさらどうしようもない・・・・焦燥感と無力感に打ちのめされるような、なんとも嫌な気分で目覚めることになる夢。
新訳なったカフカの『訴訟』を読んで、そんな夢を見たような気分になってしまった。
ある朝、突然部屋に侵入してきた男たちに、逮捕されたことを告げられる主人公K。
男たちの正体も罪状も判らないという理不尽な状況に対して、そんなことはまともに考えることすら馬鹿馬鹿しいという強気の態度のK。
このKの対応は、そうした状況下においてはしごく真っ当に思える。
ところがKの周囲の人々は、Kのおかれたそんな理不尽な状況を理不尽とも思わぬような理不尽な反応ぶりで、しかも誰一人として正確な情報や知識をもっていないにもかかわらず、Kが受けることになる裁判や弁護に関してそれぞれに一家言をもっているかのよう。
そんな周囲の反応に引きずられるかのように、自分のおかれた立場の不当さはさておかれ、裁判の行く末や弁護のあり方に汲々としていくK。
予測のつかなさ加減が怖ろしくもあり、夢なら覚めてくれぇと言いたくなるような。
裁判所の一室でKが目撃する鞭打ちシーンのシュールさがかなり好き。
Der Process by Franz Kaffca
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タイトルは、プロセスと言った方がいいくらいかな。何故始まったかもわからず、永遠に終わる事のない訴訟プロセス。「城」と共通したテーマなんだね。
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カフカの未完の作品。
朝起きると主人公Kは突然逮捕され、「訴訟」と称した不毛な審理と無意味な手続きの連続で、段々と心身がすり減らされていく物語。
Kの感じる苛立ちや疲労感は、私たちにも馴染みのあるものです。
権利の主張を繰り返しても、それを真正面から判断する権限のない「窓口」で跳ね返されてしまう。最初の窓口をパスしても、また次の窓口で無意味な手続きを踏まなければならない。
手続きが目的のように、門番が法のように扱われていることへ疑義を投げかけ、私たちの絶望を共有してくれる作品です。
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やっと解放された、というのが正直な感想。本書はカフカファンでないと読めないと思う。
というのも、本書では訳者が解説で断っている通り、極力カフカの意思に沿うように(と言っても未完の遺稿であるため最低限の編集は施されているが)あえて直訳に近い翻訳になっているため、日本語としてはこなれておらずどの文章も頭からすんなりと流れていかない。同訳者の手による「判決(カフカ)」は同じコンセプトではあるものの非常に短い作品だったためこの点が気にならなかったが、本書のように長い作品になると読み進めるのに相当の忍耐を要する。
ともあれ、カフカファンの端くれとしてはカフカの筆跡が多少なりとも辿れることには価値があったように思う。
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『審判』時代の本作を読んでいないので,訳の対比ができない憾みがあるが,しかしながら,このような軽快な訳によって,人が漠然と抱えている不安を煮詰めたような暗い雰囲気と,不条理さとのコントラストが引き立っていることは間違いないように思われる。
カフカ的な血肉の上に,ヴォネガットの手足を持たせたのが村上春樹なのかなぁ,という印象を受けた。
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<概要>
突然ある男が訴えられるお話。
当初は裁判制度の非合理性・非効率性に憤り、彼はそれらを正すように働きかけようとする。しかし遅々として訴訟は進まず、焦りから彼は以前のように仕事に打ち込むこともできなくなる。それにつれて裁判制度の問題よりも自身の状況の打開を図るために怪しげな人物に相談したり、弁護士の解任などの行動をとる。
<所感>
訳者はこのお話は悲劇ではなく喜劇である(太宰治の作品についても)、と解説で述べるものの、私はそこまで読めないなぁ・・・と。また最終的に救われないのでやはり読んでいて辛い。
この物語は16章から成るものの、筆者が完成前に死去したためそれらの前後関係が明らかになっていない。ゆえにやや読みづらい部分もある。
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カフカの文章は、特定の精神状態の時に読むと鎮静作用がある。少なくとも僕の場合はそうだ。
けっこう切羽詰ってる。文章が頭に入ってこない。それだからいっそう(活字中毒の僕は)小説を求める。……そんな時、カフカの文章はめきめき効力を発揮する…ような気がする。
まったく身におぼえのない訴訟を起されたK。誰が訴えたのか、そしていつまでつづくのかもわからない。『城』でも散々だったKと、同一人物に思えて仕方なく、僕はかえってくすくすと面白がってしまう。
「掟の門」の話は、なんだかとっても惹きつけられる…でも意味わかんない! カフカは「意味わかんない!」から心地良くある。
光文社古典新訳でよかった。あとがきにもあるように、ユーモアが随所にちりばめられていて、今までのしかめっつらしいカフカよりこちらのほうが断然好きだ。
丘沢静谷の訳でケストナーの『飛ぶ教室』も前に読んだけど、あれもよかったしね。
追記。「未完成」とはいうものの、そもそも終わりのない訴訟を描いたのがこの小説なわけで、どこで区切るかの問題はあるにしろ(個々の読者が決定するほかないと思うが)、「未完成」がこの小説の欠点にはなりえない。
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『審判』として知られていたカフカの作品が、光文社古典新訳文庫によって原文により近い言葉のニュアンス、構成で翻訳された一冊である。
以前に『審判』を読んだことがあったので再読に近いものだったが、新鮮だった。物語の筋はだいたい覚えていたが、改めて驚いたのは一つ一つの文章。冒頭の一文から引き込まれる。読者は何の説明も無しにいきなり物語へと放り込まれる。主人公ヨーゼフ•Kも同様であるが、Kと読者の目線が重なることは無い。それはKの性格によるところが大きいと思う。カフカは読者が感情移入できないよう意図的にこのような性格にしたではないだろうか。
Kや登場人物だけではない。物語もそうだろう。目次の前の解説にあるように、この物語は一つ一つの章が分かれており、順番が決まっていない。切断された章を自分の中で繋いでいかなければならない。だから物語に入り込むのが難しい。また、カフカ自身はこの作品を未完のものとしていた。それ故に様々な憶測が生じながらも、どれも決定打にはならない。そういった背景も読者と作品との間に縮めることの出来ない距離感を生み出しているのではないかと思う。
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大学院の本を読まなくてよくなったので、前から気になっていた本を漁りはじめたい。まずは古典の新訳から。「審判」は「訴訟」であり、「ベニスに死す」は「ヴェネチアに死す」であるというシリーズ。
残念ながら「審判」を読んだことがないのだが、カフカなら不条理な話であることは推測はつく。不条理な公権力に翻弄されるかわいそうなKの日々が、妙なリアリティをもって語られる。残念ながら未完の作品だったようだが、十分に楽しめた。
このシリーズ、訳に問題があるなんて批判もあるようだけれど、古典を目に見えるところに届けてくれるありがたいシリーズであると思う。
(その昔に「翻訳論」を教えてくれた野崎歓教授も訳者に名を連ねている!)
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にやにやくすくす、笑えて笑えて、ブラックでぞっとする。オフビートで先読み不能、転がるロックンロールな小説でした。
「1984」みたいなんだけど、もっと楽しく皮肉に笑えます。映画「未来世紀ブラジル」っぽいけど、もっと挑戦的。
映画で言うと、「未来世紀ブラジル」をゴダールが好きに撮っちゃいました、喜劇です。なんだけど、これ本当に喜劇ですか?みたいな感じですね。
それはさておき。
フランツ・カフカさんの長編小説。長らく「審判」というタイトルで知られていました。
カフカさんは、生前は「変身」などを発表したくらいで、作家としては無名なまま1924年に40歳で死んでしまっています。
この「訴訟(審判)」は、カフカさんが30歳前後の頃に書かれたものらしいですね。
でも、未発表なまま死んじゃった。残された遺稿は、順番のはっきりしない16の章、16の連絡短編のようなものだったそうです。
で、カフカさんの死後、お友達のブロートさんという人が発表。
その際に、ちょっと書き換えちゃったり、いろいろしちゃったみたいなんですね。
で、タイトルも「審判」。「審判」に限りませんが、死後のブロートさんプロデュースの遺稿発表で、詳しくはなぜか知りませんが、爆発的に売れてしまったそうなんですね。
その後、「どうやらブロートさんが結構変えちゃってるらしいね」ということが研究者の間で判ってきまして。
今回の光文社古典新訳文庫では、「できるだけカフカの原文に忠実に」というのがコンセプトらしく、タイトルも直訳すると「訴訟」という方がふさわしいそうです。
ところが、16の章の並びが判らない。判らないので、そこは、えいやっ、って並べてみました、と、あとがきに書いてありました。まあ、しょうがないですね。
というのが、前置き的な備忘録なんですが、読後感としては、
「おもしろかった。でも…ちょっと長いかな?」
と、いうのが率直な印象でした。
やっぱり印象に残っているのは、
●冒頭、とにかく訴えられちゃった、困ったな、という、主人公ヨーゼフ・K。
なんだけど、なんで訴えられたのかさっぱり判らない。
刑事事件だそうなんだけど、被害者が居る訳ではなくて。
なんとなく、「お国の法に抵触した」という感じ。
誰も中身が判らないけど、それが置き去りにされて困っちゃうし、憤慨する(笑)。
(そもそも、この、ヨーゼフ・Kっていう名前が、いかしてるなあ、と思います。
Kってなんやねん、って感じですけど。その「肝心なところがわかんないじゃん」というのが、ものすごくこの小説にふさわしいですね。
とってもなんだか、ロックンロールな、お名前ですね)
●ヨーゼフ・Kさんは銀行員。それもそこそこの地位の人。
上役と競いながら、上役を気にしながら、部下にチョットいばりながら、一生懸命仕事する。訴訟が気になるけど仕事する。
これがまた、どんな仕事なのかはサッパリわからない(笑)
●この訴訟に絡んで、なんだか良く判らないけど良くないことをしてしまった銀行の部下が、
ある夜、銀��の物置部屋(?)で、鞭打ち人に、鞭を打たれている。
鞭を打たれて、ひぃひぃ苦しみ悶えながらも抵抗できないという。
それをみて、かわいそうと思いながらも何もできない、恐れおののくヨーゼフ・K。
これまた、何が何だかわからない。わからないけど、権力の恐ろしさ、権力のピラミッド構造の不条理さ、ほとんどマンガで気持ち悪いけど笑えちゃう。
●訴訟にまつわり、公判?に集う、わけのわからない人々。
そして、これまた中身はサッパリわからないけど、なんだかソレッポイだけの弁護士。
いらいらする主人公。
良く判らないけど、ゴルゴ13のマンガみたいにすれ違った女性と情事に及んだりする迷走。
●役場の対応が、これまたたらいまわしというか、なんというか。
訳が分からないけど、これまた権力がピラミッド構造になって、空洞化しているような虚無感の戯画化というか。
●ヨーゼフ・Kの叔父さんなどが、訴訟になったのか!と恐れおののき憤慨。
これまた、「なんでそうなってるの?」という餡子をさておいて疾走する物語。
このあたりも、クスクス笑って読めました。
●ヨーゼフ・Kが、男たちに連れられて、殺されてしまう。
これが、最終章ならそれはそれで判りやすい?終わり方だけど、この本としては「これは最終章じゃないんじゃないか?」という置き方。
なので、夢なのかな?という風にも読み取れる。
ただ、この章自体は、オモシロ怖かった。
と、いうようなところですね。
なにしろ、作者からすると「死後にごみにしてくれ」と言い残した遺稿なんで。
作者の中ではダメだったのか。それとも、もっと手を入れたかったのか。長くしたかったのか。短くしたかったのか。
面白いのは面白かったんですが、「変身」に比べると、冗長であることは確かだった気がします。
この「訴訟」だって、半分くらいとかにぎゅぎゅっとすると、もっと面白かったんじゃないかなあ、という気もします。
ただ、面白かった部分で言うと、普通の小説のような「密度」「テンポ」といったものとは別次元の面白さ。
いちがいに短くした方が良いとは言えないかもしれませんね。
オフビートで、先が読めない。リアリズムも定型も関係ないので、目が離せないジェットコースター状態なんですね。下手すると、平気で空中に飛び出して終わっちゃう、そんなジェットコースター(笑)。
ただ、この「訴訟」で翻訳者が意図しているように、大事なのはユーモアっていうか笑える部分なんじゃないかなあ、とは思います。
「変身」もそうでしたが、よくよく素直にぼーっと読むと、笑えちゃう。
不条理っていうとなんだかムツカシそうですが、
●「お前を逮捕する」
▲「なんでですか」
●「逮捕するから」
▲「困ったな」
●「有罪だ。処刑」
▲「なんで!助けて!俺はやってない!なにを?」
という感じですから、ほとんど、ドリフのコントなんですね。
別段、カフカさんはもったいつけたりしてません。カッコつけたり、ブンガクぶったり、高尚にごまかしたりしてないんですよね。
判りにくいこと、判らないこと、「???」となること自体が、書きたかったことなんでしょうね。
じめじめせずに、からっと乾いた笑い。
笑えて止まらないかとおもったら、ふっと怖くなる。気持ち悪い。
実際に僕らの生活でも、会社の中でも、なんだかいつのまにか「なんで?」という中学生レベルの疑問に、答えられない状態で進んでいることって、ありますよね。
…国家の政治の話でも、そうだったりするんですよね。
笑えませんね。
さすが、カフカさん。面白かったです。愉しみました。
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「審判」と従来は呼ばれていた未完の作品の新訳。20年くらい前に観たオーソン・ウェルズの映画版がすごく暗くてわけわからなくて面白かったのをよく覚えてる。
原作もやっぱりわけがわからない。監視人、判事、弁護士、事務局員さまざまな人々が入り乱れさまざまな出来事が起こるが、全体としてなにひとつ進まない。それどころか、いったい何の訴訟なのかも一向にわからない。にもかかわらず、主人公はその訴訟に巻き込まれ生活の全てを翻弄される。まさに不条理の極致。
その割りに、想像してたよりもぜんぜん軽い。映画版みたいな暗さはなく、全体として喜劇的な明るさと軽さがある。主人公がやたらと女性にモテることも含めて、何かに似てるなと思ったら、村上春樹だと気づいた。(フランツ・カフカ賞とか「海辺のカフカ」とかあるけど、直接的に村上春樹とカフカを対比した批評ってあったっけ?)元からそうなのか翻訳のせいなのか。カフカも村上春樹もよく読んでるわけじゃないのでよくわからないな。どうなんだろう。