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黄昏の狙撃手 上 (扶桑社ミステリー)
ボブの娘ニッキはニューヨークの大学を卒業後ヴァージニア州ブリストルの新聞社に就職し記者として活躍していた。ある日の夕刻、地元に蔓延しつつある覚醒剤汚染の取材を終え車で帰路...
黄昏の狙撃手 上 (扶桑社ミステリー)
黄昏の狙撃手(上)
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商品説明
ボブの娘ニッキはニューヨークの大学を卒業後ヴァージニア州ブリストルの新聞社に就職し記者として活躍していた。ある日の夕刻、地元に蔓延しつつある覚醒剤汚染の取材を終え車で帰路についていた道中、山道で彼女の車は正体不明の車に体当たり攻撃を受けた。攻撃を2度まではかわしたが、3度目はたまらず彼女は車もろとも森のなかへ突っ込んでしまった。ニッキが昏睡状態で入院中との一報を受けたボブは急遽現地へ飛ぶ。そこで、彼を待ち受けていたものは…。ボブの新たな闘いが始まる。【「BOOK」データベースの商品解説】
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ちょっと★五つは甘いかな、文学的な感動を求める向きからはそう言われそうです。でも、いい意味で映画にしたら面白いだろうなあ、っていう痛快さがあります。そうか、ベトナム帰還兵ももう老人なんだ・・・
2010/07/01 19:04
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
このお話は前作『四十七人目の男』の後の話で、ボブが怪我をしたのはその時のことらしいのですが、いいところは前作を読んでいない私でも十分に楽しめるということでしょう。ただし、分類としてはドンパチもので、映画化されれば例えば「ダイ・ハード」の系列に入ってしまうようなもので、あくまでエンタメとして楽しむべきものだと思います。
とあっさり書いてしまって、気になってハンターの略歴を見ると、「71年ボルティモアサン紙に入社、書評担当などを経て映画批評担当になる。96年ワシントンポスト紙に転じ、映画批評部門のチーフとなる。」とあります。映画的といわれることは彼にとっては願ってもない嬉しい評価ということかもしれません。
カバーもそれをよく示していて、いかにもアメリカ映画の原作風ですが、今のところこの作品が映画化されるという売り方はされていません。でも、この扶桑社がよくやる文庫デザイン、私は嫌いではありません。特に今回はカバー上半分に使われている写真がいいのです。注記を見ますと、カバー・デザイン:コガワ・ミチヒロ、写真:上 Jay Blakesberg/gettyimages、下 Images Source/amanaimages となっています。
舞台はヴァージニア(テネシーでもある)州ブリストルで、合衆国最大のモータースポーツ・カテゴリーであるNASCARの最高峰、スプリントカップ・レースの開催週のため何十万もの人がつめかけています。そこに蔓延する覚醒剤汚染を取材していた娘が犯罪に巻き込まれ、父親が真相解明にのりだす、というか仇を討つお話です。
アメリカでシカゴが行っている銃所持規制が憲法違反とされたそうですが、それを体現したような小説といえます。上下巻のカバーに話の概略が載っているので、それを写すと上巻は
ボブの娘ニッキはニューヨークの大学を卒
業後ヴァージニア州ブリストルの新聞社に
就職し記者として活躍していた。ある日の
夕刻、地元に蔓延しつつある覚醒剤汚染の
取材を終え車で帰路についていた道中、山道
で彼女の車は正体不明の車に体当たり攻撃
を受けた。攻撃を2度まではかわしたが、
3度目はたまらず彼女は車もろとも森のな
かへ突っ込んでしまった。ニッキが昏睡状
態で入院中との一報を受けたボブは急遽現
地へ飛ぶ。そこで、彼を待ち受けていたもの
は……。ボブの新たな闘いが始まる。
下巻は
ナスカーレースを間近に控え、沸き立って
いるブリストルの街に着いたボブは一路、
ニッキの病院へ向かった。幸い娘の容態は
良好と知らされると、彼は即座に娘を狙っ
た犯人捜しの聞き込みを開始する。その彼
を尾行する男たちが現われた。彼らは犯罪
者集団グラムリー一家の者たちだった。か
つてボブの父アールが“悪徳の都”ホット
スプリングズで対決した犯罪者集団グラム
リー一家の末裔たちだ。日本刀での死闘で
負った刀傷が完治しない体を奮い立たせ、
使い慣れた銃を手にボブは闘いの地へ赴く。
となっています。主人公はボブ・リー・スワガー、アリゾナに二ヶ所、アイダホに二ヶ所、コロラドとモンタナに各一ヶ所土地を所有する恵まれた元海兵隊特務曹長で63歳。ヴェトナム戦争の英雄で、その後も銃と銃撃戦の、世の中に対して封印された小世界で名声を博してきた天才で、つい最近、日本人の殺し屋に刀で斬られ、びっこを曳くようになっています。
小説ではその美貌が殆ど描写されないのですが、映画化されたら得する役となるのがジュリイ・スワガー、ボブの妻で、セクシーな美人というせっていです。前の夫をスナイパーによって射殺されているというのも好印象ではないでしょうか。ジュリイとボブの間には二人の娘がいます。一人がニッキーで、もう一人がミコ・スワガー、スワガー家の養女となった7歳の活発な日本人少女で、新しい家族から愛されていいます。
でニッキー・スワガーです。ボブの娘で24歳。テネシー/ヴァージニア州ブリストルに本社を置くブリストル・クーリエヘラルド紙の若手女性記者で担当は警察記事です。父親のことを心から愛している、というあたりもある意味アメリカ映画の定番かもしれません。といっても、彼女は怪我をして病床についたままですから、この小説で活躍する場面はほとんどありません。
そういう意味で似たような存在が、ニック・メンフィスです。彼はボブの命の恩人で、友人でもあるFBI特別捜査官だそうですが、上巻では全く出番がありません。ハンターは人物の書き分けが上手というか、非常に分かりやすくて読みやすいのが特徴です。ボブのためにドライバーとしての知識を提供することになる〈USMCC44〉の若いエース・ドライヴァーのマット・マクレディもそのひとりです。
なかでも印象的なのは、下巻に登場する頭のいいベトナム人の14歳の少女ハンナ・ニングではないでしょうか。頭の回転の素早さと、犯罪者を相手に一歩も引かない気の強さで強烈な存在感を見せてくれます。幼いながらも、この本に登場する女性のなかでトップに位置するかもしれません。映画化されれば、ジュリィかハンナが主人公を喰う可能性大です。ちなみにグラムリー一家は旧作『悪徳の都』にも登場するようです。
アメリカの冒険小説? らしい大雑把な話ですが、雑という感じはしません。一気に読み終わる楽しさで、訳文も抵抗感がないのですが、85頁中ほどの
*
「それは保証する。(中略)そのようになるはずだ。わたしは昨夜、そしてもこの朝もまた熱心に祈ったので、確信をもって――」
*
の「そしても」って何でしょう。案外簡単なミスだったりして。それはともかく、いい意味で、映画感覚でお楽しみください。