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  4. 新・日本文壇史 第1巻 漱石の死

新・日本文壇史 第1巻 漱石の死

  • 出版社:岩波書店
  • サイズ:20cm/261p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:978-4-00-028361-8

新・日本文壇史 第1巻 漱石の死

川西 政明 (著)

  • 全体の評価 4.54件のユーザーレビュー
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  • 税込価格:2,94084pt
  • 発行年月:2010.1
  • 発送可能日:24時間

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商品説明- 「新・日本文壇史 第1巻 漱石の死」

大正5年12月、弟子達に見送られ48歳の生涯を終えた夏目漱石。彼の死は大正文学の始まりでもあった。芥川龍之介、北原白秋、佐藤春夫、谷崎潤一郎らが繰り広げた当時の文壇スキャンダルを描いて、作家達の実像に迫る。【「TRC MARC」の商品解説】

著者紹介- 「新・日本文壇史 第1巻 漱石の死」

川西 政明

略歴
〈川西政明〉1941年大阪府生まれ。中央大学卒業。文芸評論家。38年間筆一本の評論活動を続けてきた。「わが幻の国」で平林たい子文学賞、「武田泰淳伝」で伊藤整文学賞受賞。

書店員レビュー- 「新・日本文壇史 第1巻 漱石の死」

ジュンク堂

1930年(昭和5年...

ジュンク堂さん

1930年(昭和5年)8月18日、谷崎潤一郎と妻・千代が離婚し、
千代は佐藤春夫と再婚するという文書が、知人達に送付された。
これが「細君譲渡事件」。

谷崎は千代のまじめさを疎ましく感じるようになり、
その妹と関係を持ち、でもその妹には振られてしまう。
元々は谷崎と佐藤春夫はこの上なく理解し合える友人だったが、
佐藤は千代への同情を恋心に変えて、のめり込んで行く・・・
まさに戦前の文士らしく情熱的で破滅的な私生活です。

大正期からの文壇の裏側までつまびらかに描くこのシリーズ、
第一巻目は夏目漱石の死を中心に据えながら、谷崎と佐藤の
友情の始まりから事件の一件落着までを、二人のやり取りした手紙など、
貴重な資料を交えて読ませます。

文豪の壮絶な喧嘩は、やはり文学を持ってなされるのだと実感。
例えば佐藤は谷崎を、詩で攻撃しています。
間に挟まる、谷崎と千代の子供、鮎子のいじましさなども印象的ながら、
何にもまして谷崎の奔放なこと!

【折々のHON 2010年8月18日の1冊】

関連キーワード- 「新・日本文壇史 第1巻 漱石の死」

ユーザーレビュー- 「新・日本文壇史 第1巻 漱石の死」

全体の評価
4.5
評価内訳 全て(4件)
★★★★★(3件)
★★★★☆(0件)
★★★☆☆(1件)
★★☆☆☆(0件)
★☆☆☆☆(0件)

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5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2010/03/02 21:41

ぐっと身近な大作家たち

投稿者:碑文谷 次郎(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

作家の身長や体重は、その作品を理解してゆくうえで貴重な情報であることを知らしめたのは、伊藤整『日本文壇史』であった。作品の中に存在する作者のみが唯一の姿だと信じる読書法からみると、こういう外部情報経由の見方・読み方は邪道ではあるのだろう。作品を味わうのは作品が全てである、と。だがその作品に惹かれれば、尚一層、作者のことが知りたくなるのも愛読者の悲しい性だ。本書は、腰巻に《大正文壇のスキャンダルを赤裸々に》と謳って、教科書に出てくる大作家たち(漱石、龍之介、春夫、潤一郎ら)の醜聞を暴くかのような印象を受ける。しかし、実際に読んでみるとスキャンダラスなエピソードよりも、寧ろ夫々の作家の真摯な生き様・死に様が胸を打つ。

例えば第1章の「漱石の死」。《(父漱石が危篤状態に陥ったため学校から呼び戻された)長女の筆子、二女の恒子、三女の栄子、四女の愛子、長男の純一、二男の伸六が帰ってきた。愛子は病室に入ると、いきなり、わっと泣き出した。鏡子がたしなめると、漱石は目を瞑ったまま「いいよいいよ、泣いてもいいよ」と言った。》《高浜虚子が来た。虚子が「夏目さん」と言うと、漱石は「ハイ」と答えた。「僕高浜ですが・・・」と言うと「有難う」と答えた。》生命の最終期に見せた漱石の素顔が如実に現れているようだ。もう一度「明暗」を読んでみたいと思う。

又、第4章「直哉、春夫、潤一郎」では、父の反対を押し切って、雇い人である千代との結婚を断固決行する志賀直哉の情熱溢れる、友人宛書簡が紹介される。《父は僕を廃嫡するとも此事は許さぬと云ふさうだ。祖母は廃嫡は家のカキンである。これに比すれば地位の違った女でも入れる方がよいと云ふさうだ。そんなことはどうでもよい。兎に角、僕はこんな人達とは共に暮らせない。僕が孤独で平気ゐられる人間でないことは君もよく知ってゐよう。僕には君と重見(武者小路)と千代とがゐる》。論理や社会的主題を追求するよりも、一貫して感情的主観をその作品のベースにした若き日の志賀直哉の面目躍如だ。

「スキャンダル」というキーワードから読み込んでゆくと、芥川龍之介の二人の愛人(共に人妻)を巡る写真つきの詳細な考察とか北原白秋の姦通事件など、大作家も又一人の男であることが等身大で描き出され、思わずわが身を省みることもしばしばであった。最も驚いたことは、久米正雄について夏目家に送られた怪文書の主が、「路傍の石」「真実一路」の人道主義作者であったことだ。様々な暗い心の屈折を経て人は作家になってゆくものなのか。・・・このように日本文学史の教科書には載りそうもない大作家たちの隠された生身―それを「スキャンダル」と呼ぶかどうかは別として―に触れ、彼らの古典的作品が一段も二段も身近な、ぬくもりのあるものに思われてくるのは間違いがないであろう。

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5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2010/09/01 20:11

文壇史、なんていうと大層ご立派な気がしますが、内容は完全に週刊誌レベルのゴシップばかり。つまり、当時の作家というのはそのレベルの人間ばかりだったわけで、驚くやらあきれるやら、それを文学者、なんて崇めるほうがおかしい。ともかく、下の欲望に忠実な男ばかりで、特に久米正雄ときた日にゃ、カスですね、はい。

投稿者:みーちゃん(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

私がもう何十年にも渡って未読であることを気にかけている本があります。伊藤整『日本文壇史』(18巻目まで、大日本雄弁会講談社/講談社、1953-1973年、のち新版)がそれで、内容はわからないものの、その端正な造本と、全18冊というボリュームに気を惹かれ続けてきました。そしてもう一冊が高橋源一郎『日本文学盛衰史』(講談社2001年)です。伊藤の本は遠目に見るだけ、高橋本は積読のままずいぶん時間が経ちました。

で、そんな私の前に飛び込んできたのが、この本です。タイトルから想像するに、川西の頭にも伊藤整『日本文壇史』があるはずなのですが、未読の私には両者を比較してどうこう言える権利はありません。でも、川西本であれば、約三ヶ月に一度の出版ですから、今からリアルタイムで読むことができます。あまりよく知ることのなかったわが国の文壇史ですが、ようやくその一端に触れることが可能になりました。

で、この本、装幀者名の記載はありませんが、いかにも文壇史にふさわしいカバーデザインです。色合いも素晴らしいし、BOXの使い方、線の色のつけ方も上品で文句無し。背のデザインも秀逸で、こういうデザインは岩波書店と講談社がたまにやって私たちの目を楽しませてくれます。岩波に装幀室があるかどうかは知りませんが、デザイナーの有無は知りたいところです。

記憶をたどってみると、伊藤整『日本文壇史』は箱入り本だったはずで、その意匠が今回の本に似ていた気がします。とはいえスマートなのは本の頁を開くまでの話。あとは延々と作家の恋愛模様というか痴情の様を描き尽くすというか、これなら文学史ではなく文壇史と銘打たれたのも御尤も、といいたくなる内容です。無論、川西の描き方が扇情的というつもりはサラサラありません。むしろ押えているといっても構わない。

問題は当時の文壇に巣食う有象無象の魑魅魍魎ぶりにあるわけです。ま、時代が時代ですから女を買う、なんていうことは男の甲斐性、というか娯楽の一種だったみたいな部分は、好き嫌いはともかく理解できないではありません。でも、です。文学者が恩師の家に入り込み、その娘との結婚を虎視眈々と狙う、その一方で女を買いに行く。

結婚したはいいけれど、妻より義妹のほうが好きになり14歳の少女をレイプする。こうなると、人妻に懸想するなんていうのは当たり前で、妻と男をくっつくように仕向けその様子を見る、好きな男と一緒になって一年もしないで男を作って駆け落ちする。仕事はしないは、就職しても2ヶ月で職場を離れる。姦通罪はないだろう、とは思いますが、それにしてもこの人たちの恋愛感っていうのは何だ? って思います。

不倫が常識? そしてその経緯を直ぐに文章にする。相手に対する配慮なんて少しもない。むしろ相手の家庭が崩壊するのを狙っているとしか思えない。あるいは私小説というスタイルに隠れての才能の枯渇の糊塗。こんな話読まされて、文学!なんて感動している人の気が知れません。志賀直哉? 高等遊民? 所詮実家の金頼みのヘタレじゃん。私小説を文学の王道扱いするから、こんな馬鹿な話になる。

創作のネタに困ればチョッと変わったことをやらかして文章にする。他人の悲劇も、家族の苦悩も、自分の愚かささえ飯のタネ。それが文学? ってまあ思うんですね。現在、純文学が若者から相手にされない、っていうのは最初が間違っていたからで、頭に「純」などとつけて持ち上げるからのぼせ上がる。バカもおだてりゃ木に上る、じゃありませんが、戦前の文学者なんてそんなレベルでしかなかった。そういうことがよくわかります。

何ていうんですか、この時代の文学者っていうのは、要するに今の芸人、ゴシップの対象です。だから憧れる女性も多かったし、金になりそうだから嫁にやる、という親もいた。でも、です。人間的には、そのレベル以上では、決してありません。今で言うタレント。学士なんていうのも、ほぼそれと同じ。人間として少しも出来ていません。

岩波書店が出した偉大なるゴシップ本とでもいうべきか。だから人間臭さに満ち溢れているし面白い。文壇史、なんて見ると構えてしまいますが、そういう本だとわかれば気軽に読めます。文学、なんてエラソーに構えるからおかしくなる。所詮、そこにいるのは人間なんです。学問も芸術も政治も経済も人間に支えられている。それがよくわかります。

最後に、カバー折り返しのことばと目次を写しておきましょう。

大正五年十二月、文豪・夏目漱石は家
族と芥川龍之介、菊池寛、久米正雄、
松岡譲らの弟子に見送られて、四十八
歳の生涯を終えた。漱石の死は大正文
学の始まりでもあった。漱石の長女・
筆子を争った久米と松岡、そして戦後
の知られざる和解、芥川と女性達の恋
の諸相、姦通罪で監獄に収容された北
原白秋、「世紀のスキャンダル」といわ
れた谷崎潤一郎と佐藤春夫の細君譲渡
事件など、大正文壇で繰りひろげられ
た事件を新たに発掘した資料を交えて
克明に描きだし、作家達の素顔に迫る。

 目次

第一章 漱石の死
     漱石の死 漱石と芥川龍之介 久米正雄 遺骸の解剖 久米と夏目家の接触 ほか
第二章 恋敵、久米正雄と松岡譲
     漱石の長女筆子への久米正雄の恋 久米の結婚申し込み 松岡譲に筆子への恋心 ほか
第三章 芥川龍之介の恋
     「羅生門」の出版記念会 「月光の女」野々口豊 芥川龍之介と長崎 ほか
第四章 直哉、春夫、潤一郎
     西班牙犬の居る家 志賀家の成立――直員、直道、直温と直哉 佐藤春夫と大逆事件 ほか
第五章 白秋と姦通罪
     北原白秋とソフィー・松下俊子との愛 姦通罪で告訴される 監獄の中の歌 ほか
第六章 細君譲渡事件
     谷崎潤一郎と佐藤春夫 小田原事件 詩爆弾 佐藤の台湾旅行 ほか
第七章 文壇から消えた相馬泰三
     相馬泰三、秋庭俊彦の三浦半島行き 南下浦村菊名での合宿生活 ほか

 参考文献

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2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2010/04/23 20:52

小説よりはるかに面白い日本文壇史

投稿者:あまでうす(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る


伊藤整の日本文壇史を引き継いで川西版の第1弾が、大正5年12月の「漱石の死」のシーンから始まりました。冒頭の「明治という時代を生きた文豪夏目漱石は、今、死の床についていた」という格調高い1行は、大正の作家たちや昭和文壇の形成、昭和モダンと転向、文士の戦争へと続く全10冊への期待をいやがうえにも高めてくれます。

著者によれば漱石の死の遠因は、彼が20歳の時に患った虫垂炎の治療法の間違いにあるそうで、わずか49歳でこの世を去った偉大な文学者の「夭折」が、今更ながら惜しまれます。この章では師匠の枕辺に集う小宮豊隆などの高弟と、芥川・久米・松岡などの若い弟子たちの周章狼狽ぶりと漱石の長女筆子をめぐる久米と松岡の争奪戦が興味深く描かれます。

漱石の妻鏡子の信頼を集め当初大きくリードしていた久米が、油断大敵伏兵の恋敵松岡の逆転を許してしまうくだりなどは文字通り巻を措くあたわざる面白さです。

もっと面白いのは第3章で紹介される芥川龍之介の不倫の恋です。最晩年の漱石によって後継者に擬せられていた芥川の「月光の女」野々口豊、「愁人」秀しげ子との姦通の現場を、著者はまるでシャーロック・ホームズのように天眼鏡片手に執拗に追跡しています。

芥川よりもっと面白いのは、佐藤春夫と谷崎潤一郎の谷崎の妻千代をめぐる愛の争奪戦です。14歳の時千代の姉初子の娘小林せいを強姦した谷崎は、彼女を自分好みの悪魔的な女ナオミに育て上げ、「痴人の愛」の泥沼に沈みます。千代を離縁してせいと結婚しようとする谷崎は、当時人気絶頂のイケメン俳優岡田時彦(岡田茉莉子の父)の童貞を奪い、谷崎の元を逃れようとします。

苦悩する谷崎にないがしろにされ、DVの憂き目に遭っていた千代を救ったのは、純情詩人佐藤春夫の純愛でした。昭和5年8月18日、幾多の変転を経てついに千代は晴れて谷崎を離縁して佐藤の妻となったのです。万歳!

谷崎よりもっともっと面白いのは、第5章の「北原白秋の姦通罪事件」ですが、残念ながら本日の字数が尽きました。どうぞ書店へ駆けつけて、この世にも奇怪な姦通事件のおどろおどろの大団円を、川西名探偵とともに追跡してください。

ただ白秋が「ソフィー」と呼んだ運命のファム・ファタール松下俊子に一目ぼれしたのは、私が長く勤務していた原宿の会社のすぐ傍であり、かつまた現在岡田茉莉子氏の自宅のすぐ傍、さらに白秋の2度目の不倫相手江口章子が、白秋と別れて流れ着いたのは、私の郷里の街にある郡是製糸の教育係であった、とはまことに不思議なこともあるものです。その章子が、熱烈なキリスト者波多野鶴吉翁が設立した製糸工場の、女工の生活改善のために戦ったとは、本書を読んではじめて知りました。

さて一言にして小説より面白いこの本の感想をつくせば、作家はいちじるしく色を好み、また色に翻弄され尽くすということでしょうか。男の肉は女の肉より薄いのです。

♪哀れまた美女に食われし文士かな 茫洋

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1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2012/01/25 16:24

生身の人間像、あるいはスキャンダル史?

投稿者:ががんぼ(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 「漱石の死」から初めて、明治以降の日本の作家群像を描いた浩瀚なシリーズの第1巻。全10巻のこのシリーズ、渉猟する資料だけでも膨大なものになるはずで、ひとりでこなすというのは、大変な力業だろう。
 周知のように、だいぶ前に「作者の死」が宣言され、批評、文学研究の焦点は、作家から作品、さらには読者の反応という方向へ、そのまた先は文化研究など、コンテクスト面へと大きくシフトしてきた。
 とはいえ、気にいった小説があればその生みの親である作家に興味がわくのも人情である。講演会やらサイン会で、身近に作家の肉声を聞いたり顔を拝んだり握手したりしてみたい。それは表の顔だろうが、さらには秘められた内面に触れたいと思うかもしれない。作品に現れた「作家の顔」とは別のレベルで、実在の人間のレベルで作家を知りたいと思ったとしても何ら不思議はない。
 本書はそうした欲求を満たすものかもしれない。著者は一方で、作家の(かなり劇的な)人生がその文学にどう関わったかという点にも相当力を込めて書いているのだが、しかしやはり根底にあるのは、生々しい人間の裸の姿への興味とみえる。それは生々しい物語が「人間」を喝破して興味深いように興味深くもあるのだが、同時にその赤裸々さのゆえに辛くもある。
 何しろ文壇史と銘打っていても、この1巻で取り上げられるのはもっぱら、恋愛、性愛、情痴、姦通の類である。たとえば有名な谷崎潤一郎と佐藤春夫の間の「細君譲渡事件」、あるいは北原白秋の姦通を微細に描くのだ。基本は週刊誌ネタとあまり変わらない。そうした興味は誰でもあるのかもしれないが、好みはけっこう分かれそうだ。とにかくドロドロである。愛と憎しみ、狂気やら死やら、凄まじい。著者は『文士の姦通』(集英社新書)も書いており、もともとそうした分野が得意なのかもしれない。
 ここで描かれた諸々の出来事、ひいては作家たちの心理や人間像についての解釈も、当然のように示されている。だがそれは、小説の解釈が一つに決まらないように、絶対的なものではありえない。あるいはその秘密に迫りたいなら、やはりまた作品に戻ることになるのではないか、とも思う。ただ、「事実は小説より奇なり」とか「世界は劇場」といった言葉が連想されるのもたしかだ。
 文章としては、引用と本分の区別がしばしば曖昧なのが少し読みにくいと思った。

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