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  4. 日本は世界5位の農業大国 大噓だらけの食料自給率

日本は世界5位の農業大国 大噓だらけの食料自給率

  • 出版社:講談社
  • サイズ:18cm/189p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:978-4-06-272638-2

日本は世界5位の農業大国 大噓だらけの食料自給率 (講談社+α新書)

浅川 芳裕 (著)

  • 全体の評価 4.58件のユーザーレビュー
  • あなたの評価 この商品を評価して本棚に反映 評価しました! ×
  • 税込価格:88025pt
  • 発行年月:2010.2
  • 発送可能日:24時間
  • 新書

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商品説明- 「日本は世界5位の農業大国 大噓だらけの食料自給率」

農水省と政府が掲げる食料自給率向上政策がいかに無意味か、農家にも国民にも害を与える愚策であるかを論証。日本農業の実力、農業界が直面する本当の課題を提示し、さらなる発展を遂げるためにすべきことや方向性を提案する。【「TRC MARC」の商品解説】

著者紹介- 「日本は世界5位の農業大国 大噓だらけの食料自給率」

浅川 芳裕

略歴
〈浅川芳裕〉1974年山口県生まれ。エジプト・カイロ大学文学部東洋言語学科セム語専科中退。月刊『農業経営者』副編集長。若者向け農業誌『Agrizm』発行人なども兼務。

関連キーワード- 「日本は世界5位の農業大国 大噓だらけの食料自給率」

ユーザーレビュー- 「日本は世界5位の農業大国 大噓だらけの食料自給率」

全体の評価
4.5
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★★★★☆(2件)
★★★☆☆(1件)
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14人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2010/10/05 15:10

本書は一種の「革命の書」であろう。本書に書いてある骨太の真実は、日本全土を覆い尽くそうとしていた「日本の農業危機ごっこ」に確実に一石を投じ、農林族(私は以後脳淋族という字をあてるが)主体のコメコメクラブが垂れ流す「日本の食料自給率は40%!このままでいいのか!」という国民の思考を停止させんとするワッショイ!ワッショイ!の催眠活動に確実にダメージを与えつつある。

投稿者:塩津計(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

もう庶民は騙されない。これ以上、高いコメばかりを食わされることに我慢が出来ない。自民党の脳淋族が垂れ流してきた日本の農業政策は「農民栄えて農業滅ぶ」亡国の政策だった。その実態を最初に暴いたのが神門善久先生だが、本書の著者浅川芳裕氏は最後のトドメを刺したと言うべきだろう。

よく「数字はウソをつかないが、ウソつきほど数字をよく使う」というが、「日本の食料自給率40%」にも大きなウソが仕込まれている。それは40%という食料自給率が、世にもまれなカロリーベースで計算された数字だということだ。これは日本の農林水産省だけが1人で計算している数字で、世界中のどこも(例外が韓国)こんな数字を使っていない。農業大国オランダは近年カロリーベースでの食料自給率は大暴落しているが、オランダでは農業の危機なんてちっとも叫ばれていない。

なぜカロリーベース食料自給率が国民に誤解を与え、日本の農業を捻じ曲げるのか。理由はカロリーベースの計算の仕方にある。これは分母を日本で消費される総カロリーとし、分子を日本国内で生産供給される農産物の総カロリーとしているが、既にこの時点で、大きな問題がある。分母の消費カロリーというのが曲者で、これは日本人が食べた総カロリーではなく、消費したカロリーで、これにはホテル、レストラン、コンビニが排出する大量の期限切れ廃棄食品も含まれているのだ。日本では大量の食料が毎日毎日捨てられている。それは日本の農産物輸入量の3分の1、世界の食料援助の3倍の金額にのぼるという。仮にこの分母を全部日本人が残さずに食べたとしたら、日本人はアメリカ人を抜いて世界最悪の肥満国民になるとも言われている。カロリーベース食料自給率が、陰でメタボ自給率と揶揄されている所以である。

もっと問題なのは分子の計算方法にある。本書で鋭く指摘されているように日本では野菜類の自給率は重量換算で80%を超えている。スーパーを見ても外国産の野菜はほとんどない。日本人の主食たる米に至っては自給率は100%を超えコメ余りが問題となって今でも大量の税金を使って減反政策を継続しているのが実態だ。にもかかわらずなぜ食糧自給率が40%にまで落ち込むのか。それは分子の計算方法に重大な問題があるからだ。まず日本の自給率が非常に高い野菜や果物がカロリーが低い。野菜果物(それに奄美大島等で盛んな花卉)を幾ら増産しても日本の食料自給率はほとんど向上しないのだ。じゃあ、何が大きいかと言うと圧倒的に食肉用畜産物であり、そのエサなのだ。カロリーベース食料給率の計算では輸入エサで育ったウシ、ブタ、ヒツジは日本国内で育っても外国産・輸入に分類される。そして日本の畜産物の大半は輸入トウモロコシで育てられているので日本産畜産物の大半が輸入にカウントしまうのだ。肉のカロリーは高い。だから輸入されたトウモロコシで育った分のカロリーも高い。こうして大幅に分子のカロリーは削られる仕組みになっている。じゃあ、アメリカに対抗してトウモロコシを日本で生産したらいいじゃないかということになるが、そんな農地は日本にないし、そもそもアメリカ産トウモロコシのコストは圧倒的に安いので、対抗することが初めから不可能なのである。「ブタは残飯で育てたらいいじゃないか」等と言う人があるかも知れない。しかし残飯は品質にばらつきがあり、残飯飼育のブタは肉質の管理が困難で値段が下がる。だから高品質な豚肉が求められる日本ではブタの残飯飼育はとっくの昔に終わり、日本のブタはアメリカ産トウモロコシで育てられるようになっている。ちなみに韓国はいまだに残飯飼育である。かつて韓国で残飯に混ざった爪楊枝がブタの喉に刺さって死ぬという事故が起こり、それがきっかけになって韓国は爪楊枝は木製・竹製から水に溶けるセルロース製になっている。だから韓国の豚肉は品質が安定せずマズイのだ。

農林水産省も自民党・民主党の脳淋族もカロリーベースの数字ばかりを喧伝するが、食料・農業・農村基本法にはカロリーベース以外に、もう一つ生産額ベースと言う食料自給率の計算方法があって、それは農林水産省のホームページでも公開されている。そもそも農林水産省は生産額ベースの食料自給率しか計算していなかったし公表していなかった。カロリーベースの食料自給率はオイルショックの当時、「仮に全ての食料輸入が止まったら」という非現実的な前提のもとに農林水産省内で計算された試算に過ぎなかった。それが表に出てくるのは日米の貿易摩擦が過熱し、米国が牛肉・オレンジ・コメの輸入自由化を迫った時、この外圧を跳ね返す指標として自民党が農水省の倉庫から引っ張り出してきた数値なのである。こんなものを真に受けて振り回されているのは愚かなことで、カロリーベースの食料自給率は日本農業を強くするどころか弱くするという声さえ一部にはある。

さて、生産額ベースで日本の食料自給率を計算するとどうなるか。なんと日本の食料自給率は66%と先進国中米国、フランスに次ぐ世界第三位に跳ね上がり、ドイツや英国よりも上位となるのだ。理由は簡単で気候の悪い極北の寒冷地に位置する英国やドイツでは日照時間がそもそも少なく気温も低いので日本では自給自足できる野菜や果物の多くを輸入に頼っている。カロリーベースで彼らの自給率が高く見えるのは小麦やジャガイモがたまたま寒冷地でも栽培可能でそれらの自給率が高いからにすぎない。

日本の牛乳は100%国産である。だがカロリーベースだと自給率は40%になる。狂牛病騒ぎが起きたとき、この煽りで牛乳の消費が落ち込むのではないかと恐れた乳業組合は「牛乳は国産だ」とアピールする大キャンペーンを張った。このテレビCMは今も流されている。

日本では、なぜか「消費者の味方」であるはずの主婦連もつるんで、この「日本の食料自給率は40%で先進国中最低」というキャンペーに乗っかっている。日本に消費者の利益を代弁する人はいない。しようとすると「新自由主義者」などというレッテルを張られ、抹殺されそうになる。そろそろこの迷妄から脱し、正しい数字を前提とした冷静な議論をすべき時に来ていると思う。そのために本書は必読の書といえよう。

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10人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2010/08/05 15:37

顧客志向の「先進国型ビジネス」としての日本農業論

投稿者:サトケン(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 「なんでこんな重要なことを、いままで誰もいってくれなかったのだ」、と声を大にしていいたい。
 もちろん、私を含めて多くの日本人が、なんとなくうさんくさいと思いながらも、「食糧自給率」という日本独自の(爆笑!)指標に「洗脳」され続けてきたのは、ビジネスとマネジメントの観点から農業を見ていなかったからなのだと、本書を読みながら大いに反省した。

 本書は、月刊「農業経営者」という専門雑誌の副編集長が、データの正しい読み方と豊富な取材経験に基づいて一般読者向けにまとめた、顧客志向の「先進国型ビジネス」としての日本農業論である。
 これまでにも大前研一をはじめとする論者が農業自由化を主張してきたが、いまひとつ国民的な議論に発展しなかったのは、対象がビジネスパーソン向けで一般向けの本ではなく、しかも農業関係者の発言でなく、あくまでも外野からの発言だったためだろう。

 著者の主張は明快な根拠に基づいている。基本的には、GDPの規模の大きな先進国である日本は、当然のことながら農産物に対する国内マーケットサイズが大きく、しかも生活の成熟化によって趣味嗜好が多様化しているので多様な農作物が栽培され、販売されている。さらにまた充実した国内物流網がこれを下支えしている。今後たとえ国内市場が人口減少にともなって収縮傾向にあるといっても、膨大な海外マーケットが開かれていることは明らかだ、ということになろう。
 したがって、こころざしのある農業経営者による、ビジネスとしての攻めの農業、こういった明るいビジョンにもとづいた農業には大きな未来が開かれているのだ。

 ところが、票集めにしかアタマにない民主党は、「農業者戸別所得保障制度」という愚策によって、こころざしある農業関係者だけでなく、消費者としての日本国民を愚弄している。援助漬けでダメになるのは国際援助の対象国だけではない。日本国内の農業もまた、援助によってダメにされてきた典型的なケースである。

 いま必要なのは、農業にかかわる直接の関係者にとどまらず、マスコミが垂れ流す無批判的情報による洗脳から、日本国民全体を解き放つことだ。もちろん本書自身も批判的に読む必要はある。

 まさに警世の書である。と同時に、日本国民に勇気を与えてくれる本である。全国民必読書である。

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9人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2010/11/03 13:30

日本の農政の歪みもあるが、事実を正確に伝えないメディアの責任もまた大きい

投稿者:JOEL(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 政府の公式見解やメディアの報道が、真実と異なることはめずらしくはないのだろうが、農政のそれは相当にひどいということを著者は教えてくれる。サブタイトルにあるとおり「大嘘だらけの食糧自給率」にとくに光をあてて、農政のゆがみを描き出す。

 2010年11月のはじめの時点で、まもなく始まるAPECを控え、日本はTPP(環太平洋パートナーシップ協定)に参加するかどうかで、大揺れとなっている。経済産業省を筆頭に貿易自由化を促進したい省庁と、農水省に代表される慎重派とで、意見が割れてしまっている。

 その農水省が公表し、メディアを通じて伝えられている表現に「農業の負のスパイラル」というものがある。日本の農業は衰退の道を歩んでおり、これを止めなくてはならないというものである。

 しかし、本書は、多くの小規模農家は兼業農家であり、もはや農業で暮らしているというより大規模な家庭菜園のようなものに過ぎないという。これは、農業専門誌の副編集長として、日本の農業の実態を調査した結果であるという。
 専業農家はプロ化しており、農業法人として大規模になり、生産額のシェアも大きい。日本人の食糧も、大半がこうした品質の高い農産物を生み出すプロの農家に頼っている。

 プロの農家は、負のスパイラルどころか、生産額をどんどん伸ばしており。高品質を武器に輸出にも乗り出すか、その機会をうかがっているほどだという。
 テレビでも、自由化は歓迎すべき事であり、外国産の産物に負けることは絶対にない、と自信のほどを見せる農業法人経営者を見かけるようになった。

 農水省は、自らの権益を維持するために、弱い日本の農業というイメージを喧伝し、政治家も票田を確保するために、農業補助金や個別所得保証制度を続ける。

 著者は明快に、成長産業としての農業生産法人にシフトした政策を打ち出すことを求めている。

 実際、オランダ、イタリア、ニュージーランドなどは強い農業への転換に成功している。オランダやイタリアは、農産物の輸入国であると同時に輸出国でもある。
 これは、原料を輸入して加工し、輸出していることを意味する。たとえば、イタリアは2006年データで世界一の小麦輸入国だが、パスタや菓子に加工して大量に輸出している。こうした例もあるのだ。

 海外、とくに東アジアにおける日本の農産物の品質への評価はとても高く、伸びる余地は大きい。残念ながら、個別の都道府県が輸出促進にあたっているだけで、国レベルの政策になっていないと著者は指摘する。

 本日の朝刊(11月3日)に、日本は外国産米に778%の関税をかけているとある。外国産米というと長粒米のイメージが刷り込まれているが、海外では日本に似た品種や中粒米も生産されている。
 これらの関税をなくしていき、安価に消費者が食べられるようになれば、コメへの需要は回復する可能性がある。
 主食のコメが安くなるのは、低迷する経済と頭打ちないしは下落する所得に悩む大多数の国民を助けることになる。

 さて、食糧自給率をことさらに言い立てる国は日本以外になく、教科書に載せている英国にしても、これを引き上げるべきとは言っていないと著者は教える。

 食糧安全保障とは、万一の天候不良による国内産物の不作時でも、海外から調達できるルートを多様に確保していることだと著者は述べる。国内のみに調達を頼っているとかえって危うい。この食糧安全保障の認識は、海外でも広く共有されている。農水省の宣伝と、それをそのまま流してしまうメディアのために、日本の国民は誤った理解をさせられてしまっている。

 国の統計事務にあたる国家公務員の大半が農水省に所属している歪みも知るべきだろう。統計事務を維持するために、外国産農産物への過剰な検疫その他が適用されている。著者は統計事務の職員を別の目的に振り向けるべきだと力説する。

 著者は最後に「食糧自給率という名の呪縛が解けたとき、政治・行政主導による農業の時代に終止符を打つことができる。そして、自律した農業経営者の時代が始まるのだ」と締めくくる。

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8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2010/05/19 06:53

既存の農政批判本にはないのもがあった

投稿者:こうじ・1(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

まず、日本が世界第五位の農業大国である。という一般的批判論調とは逆から入る表題。
日本の食料自給率のカラクリ(金額ベース・カロリーベースの違い等)
もともと真面目に官僚が仕事をするとやる事は大体決まりきっていると思う私だが、いかに我々がメディアに『日本の農業は弱い』と洗脳されているかがわかる。

この本を読む限りでは農水省は地方農家にやさしい、と感じるのだが(逆に都市部の専業サラリーマンの方々にはそれが不満なのかもしれないが。)地方の零細兼業農家の生まれである私は、数値の取る方式その他カラクリまでも用いても厳しい地方零細農家の実態が浮かび上がる気がする。

地方からの農政バラマキの要望・海外からの市場開放・農産物その他輸入の要望がある板ばさみの中で仕事をしている高級官僚や国会議員の先生方を相手に農水批判をするには最低このぐらいのレベルの知識は必要なのだろうと感じた。

私には全ては理解することが不可能だったが、真面目な農家の方々にはぜひ読んで頂きたい本。

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4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2010/05/07 13:05

「食料自給率」ってそういうことだったのか!

投稿者:まっくす(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

「食料自給率」をあげよう。
という話は最近よく聞く話。
ただこの食料自給率というのは、
世界で日本しか採用していなくて、
実はあまり参考にならないということがこの本で分かった。
今後のビジネスの話もかかれており、
これから農業を始めようとする
起業家や経営者にも役立つと感じた。

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9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2011/03/08 00:35

農業問題の入門書。解答書ではないので注意。

投稿者:エリック@(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

本作は、一般に国際競争力が低く衰退産業であると認識されている日本農業について、その年生産額は約8兆円と世界第5位(先進国では米国に次ぐ2位)である点を端緒に、一般認識と事実との間には大きな乖離が生まれていることを指摘したものである。
より厳密に述べると、そういった乖離は日本農政の自虐的とも言える負の宣伝効果が背後にあり、政権交代後もその状況はむしろ悪化の一途を辿っているとする、極めて強い農政批判が繰り広げられている。

内容は全6章構成となっており、第1章~3章において、日本農業を語る上での「嘘」と問題点をまとめ、第4章~5章においては日本農業の未来への希望と著者からの提言、第6章において、食料自給率を含めた日本農業への問題提起が行われている。


本作で大きく取り上げられている「食料自給率の向上」と「食料安全保障の確保」は、日本農業を論じる上で外せない一大テーマであるが、これまでも各種媒体において欺瞞が指摘されてきた経緯にある。

前者については、度々賛否の両論併記という形で登場しており、賛成意見は「何かあったときに国内で食料を賄えないと国が滅びる」という抽象論であり、反対意見としては「食料自給率の世界基準は生産額基準であるのに対し、日本においては熱量基準(カロリーベース)で計算されている。生産額ベースでの日本の順位は先進国上位だ」等と一定の数値を根拠とした具体論だ。

両論のうち、どちらが正しいのか、という結論については、本書評で論じる点ではないため割愛するが、この食料自給率(カロリーベース)については、従来より「空虚な根拠」として悪名高く、本作ではこの点を大変に分かりやすく解説している。

詳細は本文に譲るが、自給率の「分母」については、実際には消費されずに廃棄された食物も含まれているほか、「分子」については肉など高カロリーの食物についてその肉(牛・豚等)を育てるために用いられた飼料が国産ではない場合、国産飼料の割合分しか参入しないなど、明らかに自給率が低く算出される計算式となっている。

極端な話、カロリーベースの食料自給率を100%にするためには、家畜の飼料を全て国産で賄った上で、廃棄分を一切出さずに生産された食料は全て日本国内で消費しなければならない。本作における農政批判の真否はともかくとしても、食料自給率の向上自体にはさほど意味のないことが明白と言える。

後者の食料安全保障についても、日本においては「食料を海外から輸入出来なくなると日本の国民生活が不安定になる。だから、輸入に頼らず食料自給率を向上させよう。それが安全保障だ」という使われ方をしているが、諸外国については、「世界には食料があるのに、貧困等により食料が得られなくなるとその国の国民生活が不安定になる。だから、皆が安定的に食料を得られるよう対策を立てよう。それが安全保障だ」という主旨で用いられており、国内外で言葉の定義が大きく異なっている。

前述の通り、本作では上記の相違点等を大変分かりやすく解説されており、これまで上記内容に触れたことのない人が手に取った場合にも、容易く理解できる内容となっている。
本作で特徴的な点は、これらの事実を解説・指摘するだけに留まらず、これらは農政が意図的に隠しあるいは創り上げた虚像であり、日本農業を真に衰退へと導こうとしている元凶は全て農政である、と断定的に糾弾している点にある。

ただし、本作の最大の見所は、それら農政批判自体ではなく、農政批判を盛大に繰り広げた後で述べられている、著者独自の農業支援策についてだろう。

例えば本作のP80以降の「黒字化優遇制度」はユニークで刺激的な政策提言と言える。これは従来型所得補填策と大きく異なり、交付金ではなく貸付金として資金を融通し、経営黒字化に成功した農家には返済義務を免除する内容であり、ある意味での成果主義を導入することを目的とした策だ。
これまでの「農家は弱いから守らなければならない」という意識ではなく、「農家もやり方次第で自立できる」という意識が鮮明であり面白い。民主党の掲げていた戸別補償ではなく、EUで導入されている直接支払いに近い形であり、戸別農家の経営者意識を高めることが産業としての農業を活性化させるという著者の持論が分かりやすく表現されている。
本作の第5章以降では、上記以外でも著者による農業成長のための提言が行われており、第3章までで盛大に農政批判の大号令をしていたことの伏線が、第5章で回収されている点には、思わず納得させられる。

当然というべきか、これら政策提言については、夢想的・非現実的な内容が含まれているものの、翻って考えると、新旧政権の農業政策もまた現実逃避・問題繰延の側面があり、「机上の空論ではないか」と本作を批判するには、まず、日本のおかれている現実があまりにお粗末な状況にあることを認識せざるを得なくなる。
少なくとも著者が第5章で論陣を張るに辺り、第1章~3章までの内容で、前提条件を丁寧に整えていることが、読み通す中で明らかになっているはずだ。


なお、作品への反証ということではないが、全編通して「日本農業は実は強い。保護主義は廃すべき」という主張が見え隠れしているものの、この保護主義政策については、実際には著者が「見習うべき」としている米国・欧州でもまかり通っているのが実情である。

例えばWTOにおいて厳しい規制対象の輸出補助金は削減されている一方で、価格支持は形を変えながらも維持されている。欧米の農業所得維持政策は日本よりもあからさまであり、著者が槍玉に挙げた「米」に限定しても、日本では価格支持を廃したのに対し欧米では維持されている。

加えて、自由貿易の阻害要因とされる保護主義的政策については、WTOパネル提訴という形で、各国がそれぞれの国益を守るために競っているが、その判定が下されるまでには年単位の時間を要している現実があり、それまでの期間においては、政策は維持されたままである。すなわち、保護主義的政策を「やったもん勝ち」という状況がまかり通っているのだ。

この辺りの統計的裏づけについては、著者の批判する農水省ではなく、経済産業省が毎年まとめる「不公正貿易報告書」でも記載されており、各国が保護主義色を強める中で日本が一段の自由化を推進することは、必ずしも是とは言いがたい状況も横たわっている。


作品への揚げ足取りは本旨ではないため、書評に戻ると、本作は食料を巡る農業問題を考えるには、入門篇としてとても分かり易い一冊と言える。
ただし、本作に限らず、刺激的なタイトルの書籍は、作品の販売戦略上、結論が極端な方向に振れやすいこともあり、本作のみで日本農業を論じることは暴挙に等しい。

もし、真剣に日本農業について知りたいという欲求を持っているのであれば、せめて小倉武一「日本農業は活き残れるか(上)(中)(下)」(農林漁村文化教会)辺りは読んでおいた方が良いだろう。
個人的には、四半世紀以前より、様々な議論がなされている分野であることを、日本国民の一員として知っておいても恥ずかしい話ではないと感じている。

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8人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2010/08/28 13:20

日本の農政についてかんがえるとき,ぜひ読むべき本

投稿者:Kana(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

政府は日本の自給率がひくいことを問題にしているが,その自給率の定義は日本固有のものだという. そこから出発して,民主党政権もふくむこれまでの農政を批判している. 論旨にはあやしい部分もあるが,ふんだんに統計をとりいれて,客観的に議論しようとしている. 重要なのは,これが農業をめざす専門誌編集者である著者が真剣にかんがえた結論だということだろう. 日本の農政についてかんがえるとき,ぜひ読むべき本のなかの 1 冊だろう.

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5人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2011/02/05 16:58

セーフティネットあっての競争

投稿者:Genpyon(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

農業生産額が世界5位の日本は既に農業大国である、という視点から書かれた本著。また、日本の農業は徐々に衰退していっているという見方に対しても、そんなことはない、と、反論する。

食料自給率計算の問題点について多くのページを費やして論難されているが、著者の論旨からすれば、それは、あまり大きな問題ではないと思う。どんな指標にも長所短所があって、それを踏まえて判断を行えばいい。

飼料自給率を加味したカロリーベースの自給率という指標に全く意味がないとは思わないし、たまたま、その数値が低く出るから農水省が利用しているだけで、もし、どう計算してもそこそこの自給率になってしまうのなら、農水省は何か別の指標を持ち出してくるだろう。

問題は、そういった何らかの指標を言い訳にして農水省がどういう施策を行っているかである。素人目に見ても何かおかしいと思われる農水省の施策を、著者は、「すべては省益のため」であるとして、小気味よく批判していく。

ただ、著者の論調に見られる競争重視の姿勢が、少し気になる。もちろん農業にも競争があっていいと思うのだが、それは、セーフティネットあってのうえでの競争だと思う。そのあたりの論述が丁寧になされていれば、バランスのいい主張になったと思う。

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