- 出版社:ぎょうせい
- サイズ:19cm/223p
- 利用対象:小学生
- ISBN:978-4-324-09020-6
山月記・李陵 (新装版文芸まんがシリーズ)
中島 敦 (原作), 小田切 進 (監修), 司 敬 (作画)
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- 税込価格:1,000円(28pt)
- 発行年月:2010.4
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「山月記・李陵 (新装版文芸まんがシリーズ)」が含まれるセット商品
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商品説明- 「山月記・李陵 (新装版文芸まんがシリーズ)」
風流人への狂おしい憧れから虎に変ずる李徴。運命にもてあそばれながら、おのれの道に生きる李陵、蘇武、司馬遷。中国古典の世界を駆ける男たちを通して、中島敦の心の叫びが響きわたる。【「BOOK」データベースの商品解説】
近代名作への橋渡しとして発刊された「文芸まんがシリーズ」の中から、人気作品を厳選。脚色を一切していない分、原作の味わいが伝わってきます。シリーズ12は、中国古典の世界を舞台に描く「山月記」「李陵」を収録。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介- 「山月記・李陵 (新装版文芸まんがシリーズ)」
中島 敦
- 略歴
- 〈中島敦〉明治42〜昭和18年。東京生まれ。東京帝国大学大学院中退。国語編集書記として南洋庁に勤務。作品に「南島譚」「名人伝」「弟子」など。
ユーザーレビュー- 「山月記・李陵 (新装版文芸まんがシリーズ)」
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2011/10/21 12:47
人の理性と、獣への狂いのはざまで
投稿者:wildflower(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
満月に吠える男と虎の対比が鮮烈な表紙。高校の国語教材にも採り上げられることの多い中島敦著『山月記』ほか1編を収めたまんが版が本書である。ぎょうせいから2010年4月に刊行された、現代文学に馴染みない少年少女向けにつくられた1冊。未だに高校の国語教材に採り上げられることの多い中島敦著の短篇「山月記」と中篇「李陵」が収載されている。ここでは評者にとって印象に強かった「山月記」について語ろうと思う。
主人公は李徴。前半は早熟で切れ者の彼の独白による回想である。進士の試験に若くして合格するような気鋭のエリートでありながら、地方の役人となることを拒み、詩作の道を極めるべく鍛練を重ねる。その後詩作への挫折感によって再び妻子を養う為の仕事にはついたものの、かつての同僚の出世にプライドは傷つくばかり、煩悶の末とうとう旅先で狂じ姿を消した。1年後、旧友袁慘(えんさん)が監察御史として訪れた長安から東南に位置する小都市を通った折に、袁慘は虎と変じた旧友李徴と数奇な再会を果たす――。
かつての旧友に、<虎>と<人>とを行き来する数奇な運命へと堕ちた自分を自嘲気味に語る李徴と、柔和な性格そのままに友に共感を寄せ、心から李徴の詠ずる詩に耳を傾ける袁慘。死ぬに死にきれないと袁慘に書き取り託した李徴の詠じた詩の朗読は長短三十篇、非凡を想わせる卓越した秀作ばかりであった。にも関わらず超一流に近い詩の力量を持ちながら、なにか微妙な点について欠けている――。かすかな手がかりは人を容易には寄せつけず厳しい性格であった若い頃の李徴に、すでにみられた自嘲の癖。家族や友人よりも理想へと燃え立つ原因になった尊大な羞恥心ゆえの結果なのかと自問する李徴。その語りを哀しく聴くことしかできぬ袁慘の思いが示されるばかりである。
突然虎と化し、しかも次第に<人>の理性や知性を失い、猛獣と化し人を喰らう者と狂ってゆく時間が増えていく、その我が身をどうすることもできぬ李徴の苦しみ、歎きは深い。それでいて透徹して醒めている。原話の変身譚は因果応報の説話色が濃い作品だというが、本作はより一層、抗いきれぬ運命に翻弄される主人公の苦悩と自意識のありようにスポットが当てられている。
おれの中の人間の心がすっかり消えてしまえば、おそらく、その方が、おれは”しあわせ”になれるだろう。だのに、おれの中の人間は、そのことをこの上もなくおそろしく感じているのだ。ああ、まったく、どんなにおそろしく、悲しく、切なく、思っているだろう! おれが人間だった記憶のなくなることを。この気持ちはだれにも分からない。だれにも分からない!おれと同じ身の上になった者でなければ…。(p26-7)
芸術に賭ける意識をつよく持ち、せっかくの有望な前途を絶ってまで煩悶する李徴は、若い頃に習ったころには理解し難くどこか遠い存在であったために、さほどの印象も覚えず読み過ごしていた。今ごろになって読み返すと少し違って見えてくる。この李徴を非現実な夢想者の末路と嗤えるだろうか。むしろ、どうにもしようがない煩悶の歎きに身を寄せ、揺さぶられる心地がする。不条理な人生の波に翻弄されつつ諦めつつも咆哮せずにおれない虎となった李徴の叫びは、読後も脳裡にこだまするようだ。太平洋戦争のおこっていた時代に小説を書いた著者の最晩年の作品と識って読み返せばまた、ひときわ違って見えてくる。
原作のほうがもちろん、いっそう濃い味わいを保っているが、本書がなければ読み返すためにわざわざもう一度手に取ることはなかっただろう。漢文調の原文につかわれる<ことば>の深みに細やかな注釈も欄外に付され、敬遠せずにすんなりと作品世界に入って行けるガイドとしては手ごろな魅力ある作品である。巻末解説、年譜つき。










