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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2010.12
- 出版社: 新潮社
- サイズ:20cm/123p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-10-320921-8
読割 50
紙の本
師・井伏鱒二の思い出
著者 三浦 哲郎 (著)
「君、今度いいものを書いたね」 先生との出会いは、その言葉から始まった−。日本文壇の中央を歩んだ師弟の、初期20年間を描いた交遊録。筑摩書房版「井伏鱒二全集」の月報に掲載...
師・井伏鱒二の思い出
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商品説明
「君、今度いいものを書いたね」 先生との出会いは、その言葉から始まった−。日本文壇の中央を歩んだ師弟の、初期20年間を描いた交遊録。筑摩書房版「井伏鱒二全集」の月報に掲載の文章をまとめて書籍化。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
三浦 哲郎
- 略歴
- 〈三浦哲郎〉1931〜2010年。青森県生まれ。早稲田大学仏文科卒。「忍ぶ川」で芥川賞、「拳銃と十五の短篇」で野間文芸賞、「少年讃歌」で日本文学大賞受賞。
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紙の本
先生との優雅な時間
2011/02/28 08:13
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
脳科学の世界で「ミラー・ニューロン」という言葉を最近よく聞く。他人の行動を見て自分の行動のようにする「共感能力」のことらしいが、楽しい人のそばにいるだけで気持ちが弾むのはこの能力から生まれるらしい。
昨年逝去された三浦哲郎氏がそれにに気づいていたかはともかく、三浦氏が「先生」と呼ぶ井伏鱒二との関係を本書で読んでいくと、三浦氏と井伏氏との関係にはこの「ミラー・ニューロン」効果が大いに影響していたと思われる。三浦氏にとって、師・井伏鱒二はまさに鏡のような存在だったのだから。
そのことは本書の解説にあたる文章のなかで、荒川洋治がこう書いている。「人がその人のそばにいること、そこで学びつづけることの意味を、この本からあらためて感じとり、新しい気持ちになることだろう」と。
本書は「井伏鱒二全集」の月報に十六回にわたり連載されたものをまとめたもので、当然三浦哲郎氏からみた井伏鱒二像には違いないのだが、その一方で作家三浦哲郎誕生の自伝的要素も大きい作品である。
三浦氏の三作めの習作『遺書について』(のちに『十五歳の周囲』となった作品である)が井伏の目にとまり、昭和三十年六月まだ学生だった三浦氏は荻窪にある井伏の住居を訪ねることになる。そこで井伏は若い三浦氏に「君、今度いいものを書いたね」と賞賛するのだが、その後井伏の庇護のもと、三浦氏は作家としての道を歩みだすことになった。
もし井伏がいなかったら、三浦哲郎という作家は誕生しなかったかもしれない。あるいは、作家として歩きだしたとしてもその作風はちがったものになった可能性はある。
そばに井伏鱒二がいたことで、三浦哲郎氏のいささか地味ともいえる格調高い文学が作り出されていったのではないだろうか。
いま三浦哲郎氏は天国で師・井伏鱒二と師の大好きだった将棋の盤をはさんで心いくまで酒盃を重ねているのではないか。時間はたっぷりとある。
なんとも羨ましい、優雅な時間だろう。
◆この書評のこぼれ話は「本のブログ ほん☆たす」でお読みいただけます。