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商品説明
日本の財政は破綻するか? 中国はどのくらい脅威か? 今日本を揺るがす最重要課題をオピニオン・リーダーたちが直言する、全論書き下ろしの論争誌。小論文・面接対策、企画立案に最適。2011年が手にとるようにわかる!【「TRC MARC」の商品解説】
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紙の本
「論点9.財政は破綻するか」
2010/11/29 20:29
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:CAM - この投稿者のレビュー一覧を見る
私は雑誌では「週刊文春」「月刊文春」を愛読するが、この「年刊文春」とも言うべき「日本の論点」も好きだ。カバーの色が黄色となった2011年版も多彩な論文が収録されているが、各4頁程度なので、非常に読みやすい。今年度版では、「日本再建への道」(稲田朋美氏)、「今保守を再定義せよ」(佐伯啓思氏)などの精読すべき論文があるが、テーマとして、もっとも喫緊であり国民生活に重大な影響を及ぼす論点は「9.財政は破綻するか」であろう。
まず「日本の財政は最悪の段階。尋常な手段では解決不能であり、楽観論は無責任」と題する藤巻健史氏の論文。内容的には目新しいところはない。もう聞き飽きたような内容が4頁にわたり記述されているだけである。「今までのところ」日本財政破綻論、日本国債暴落論は現実化していない。この藤巻氏の円安論も過去10年にわたり曲がり続けてきたと言わざるをえない。「しかしながら」この日本財政破綻論、日本国債暴落論は、「やっと」現実化の兆しを見せ始めたのではないかと評者には思える。
11月も明日で終る。来年度予算の具体形も徐々に明らかになってくると思うが、本日(2010年11月29日)の日経新聞夕刊には、「基礎年金税負担割合、実質引き下げで調整 財務・厚労省」という記事が出ている。いよいよ日本財政も末期的症状を呈してきたことを示す記事である。本書でも、「論点61 年金は破綻するか」で、野口悠紀雄氏がこの問題に触れておられ、上記新聞報道は予想されたもので内容的に意外感はないものの、野口悠紀雄氏が述べるように、問題は、「蓄えをいま使ってしまうのでは、制度崩壊を前倒しすることになってしまう」こと、そして、「解決策を年金制度に求めるのでは、国庫負担率引き上げの趣旨に矛盾する」ということであろう。
日経新聞では、すでに11月22日朝刊で「基礎年金、国庫負担維持、財源見えず、11年度2.5兆円必要、改革先送り限界」として、「現在の基礎年金の国庫負担の割合は税金のほか、財政投融資特別会計の積立金を特例で活用して50%となっているが、来年度以降は特会の積立金が枯渇する。政府内では負担割合を08年度と同じ36.5%に引き下げる案も浮上している。基礎年金の国庫負担の割合を来年度予算で下げても、即座に保険料や年金支給額が変わるわけではない。だが、中長期的には年金財政の悪化に結びつく可能性がある。」と述べている。
このほか、最近の日経新聞を注意深く読むと日本財政の「恐ろしい現実」に気づかざるを得ない。たとえば、10月28日朝刊では「特会仕分け3つの焦点、ムダ削減、埋蔵金発掘、借金解消策、廃止効果に疑問も」として、「今年度当初予算でも埋蔵金を含む税外収入を10.6兆円活用した。国債発行を抑えるため、来年度予算でも新たな埋蔵金を発掘する必要に迫られている。ただ近年は、経済対策などで大幅な取り崩しが続き、埋蔵金も枯渇ぎみだ。・・・・・3つ目の狙いは特会の借入金などへの対応で、交付税、年金、国有林野事業の3特会が焦点になりそうだ。交付税特会は財源不足を穴埋めするため借金を重ね、09年度末時点で地方自治体の負担分として33.6兆円の借入金残高がある。返済の先送りを続ける典型的な「塩漬け借金」だ。
年金特会の借入金残高1.5兆円は会計検査院が「一般会計から繰り入れを要する措置」と指摘するが、1970年代から「棚上げ」が続く。国有林野も1.3兆円の借金を抱えている」述べている。
特会は、「埋蔵金」どころか「借入金」という問題を持っているのだ。こうした点については、11月24日日経新聞の「経済教室」で、富田俊基教授が、「『埋蔵金』依存から脱却を 財政健全化の一歩に 日本は金利上昇に脆弱」として、「「埋蔵金」とされた外為特会の積立金は借金」「政府のグロス調達額は税収等の2倍超える」「持続可能な制度構築と税制抜本改革が必要」と述べておられるところである。
本書「論点9 財政は破綻するか」で、藤巻氏と並んでいるのは高橋洋一氏である。かつて「霞が関の埋蔵金」発言で脚光を浴びた、ということであるが、本書では「埋蔵金」には触れられていない。高橋氏は「財政の健全度は純債務GDP比で判断すべき」というが、評者は説得力は感じない。そもそも年金積立金等を政府の資産として考えることが納得できないし、まして上記のような現状ではそうである。10年7月13日日経新聞は、「年金積立金、減少進む、昨年度、国債9年ぶり売り越し――給付増え取り崩し」として、「公的年金の国債売買が2009年度に9年ぶりの売り越しに転じた。年金給付の増加や年金運用環境の悪化を受けて、積立金を取り崩したためだ。厚生労働省は少なくとも13年度まで積立金の減少傾向が続くとみており、国債発行残高(国庫短期証券を除く)の1割以上を保有する公的年金の買い余力が低下する可能性がある。財政再建を求める市場の圧力が強まるとの見方も出ている」と述べている。
なお、本書では「論点44 郵政改革をどうすべきか」で小林慶一郎氏が「財政再建が進まない今、郵政マネーの戦略的活用を考えるべき時だ」と論じておられる。「財政破たんの危機が近い将来に起きるならば、郵政民営化が中途で止まったことは結果的に日本にとって幸運だった、と後世から評価されることになるだろう」とされる結論は同意できるし、「300兆円の郵政マネーが、現時点で国債を売って外貨建て資産を大量に購入すれば、円高の行きすぎを是正する大きな効果がある」という意見は、「考え」としては大賛成ではあるが、郵貯が国債を大量に売ることなど、「実行不能」というものであろう。