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2011/4 読
東大の講義の採録。建築、環境という側面から、ちょっと哲学的な面も交えている。
単なる建物、環境を考えるにあたって、光、熱、水、風、音というヨウ素から見方、盲目点を指摘された気がする。
最後の講義での「ボクらのセンサーは鈍ってませんか」との問いが印象的。デジタル時代、合理主義、データで画一化された見方で現在分かっているつもりが生で感じていない、人間の感覚を今一度感じ直したいと感じた。
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東大の教授による講義集の第二弾。環境デザインとは我々をとりまく空気環境や設備環境についての学問。サイードを引用し、「知識人とは危ういところに立って発言するものだ」という立場から、著者の個人的体験に基づく授業を行う。例えばハクスリーの「近くの扉」を引用したり、一方でザハの建築を(これは構造デザイン講義だけど)けなしたり、危険な立場に立っての発言がとてもよい授業になっている。この教授の授業が受けたかったなあ。
光、熱、水、音、風にわけた環境について、境界条件を設定し、解ける問題にしてから解くという工学的なアプローチのケーススタディを行う。この基本を活用してきた工学エンジニアなのでそれを怠ることはしない。だが、同時にこのアプローチに潜む危険性を認識することが重要であると説く。この危険性に対応するには、個人的な体験を積むことで、全体性に対する身体感覚を身につけること。ううむ。かっこいい。
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環境を専門にやってる人は得られることが多いと思う。が、建築やってる人は意匠系でも目を通すべき内容。著者が述べている内容については簡単に実現することはできないけれども、今の建築業界が変わるにはもっとも重要なことが述べられていると感じた。
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建築家であり、本年度をもって東京大学を退官された内藤廣さんの著書です。東京大学の講義を文庫化したもので、内藤さんが環境を形成すると考えている5つの要素「光」、「熱」、「水」、「風」、「音」についてどのように捉え設計活動をしてきたかが書かれています。講義録のようなものなので授業を受けているような感じがして読みやすい本です。建築の設計をする人だけではなく、都市、土木を計画する人でも読む価値が十分ある本です。
内藤さん自身の建築実作の話も書かれているけども、それぞれの要素についての逸話、先人たちの捉え方など教養的な意味においても
充実しています。書かれていることが多いため勉強できることも多いけど、自分の経験とすり合わせてもなるほどと思う話を1つ書いておきます。
「水」の話の中で、前々から考えていたことの話です。この本の中で内藤さん自身の環境設計の目指すものは、機械的に環境を操作するアクティブな操作より、自然法則が自然と作り出すパッシブな操作によって環境をつくることと言っています。この考え方は日本古来、地域に根ざした風土を反映させた建築においては自然と行なわれていることです。僕の家は割と古い家で、冬は寒いけど、夏場は南北の戸を明けていくと風が通ってクーラーが必要がありません。北側は日陰になっているから当然涼しいし家中が涼しい。夜は防犯とかの理由で戸を開けっ放しにすることはできなけど、おそらくクラーは必要ないと思います。これは家の前が田んぼだから、土もあるし水がはってあって周辺より何度が低いんです。ある意味理想の環境(笑)クラーが完備されたビルで生活しているより、やっぱり自然の力を利用して快適な環境、生活を作り出すと、心の快適度なんかも違うのではないかと思います。
これは建築の話の1つだけど、これ以外にも数多くの話が書かれています。設備とか意匠とか構造とか関係なく、都市、建築、土木にこれから関わっていく人にとっては「なるほど」が数多く存在する本です。非常に興味深い内容で勉強になりました。
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内藤さんの経験を元に話しが進み読みやすかった。
デジタルに頼っている現代だが、五感で建築を捉えていかなきゃと感じた。
自然と言う切り口から建築を考えなければいけない。
土地の癖を考える。
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内藤氏の最終講義をまとめた1冊。
輻射暖房をめぐる章、照明に関する考え方が興味深かった。
建築家の仕事には、やはり総合的に「人間」を見る目が必要だということを改めて感じさせられた。
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建築環境について、大学講義がそのまま本になった感じの内容であり、音、光、空気、熱について、とても分かりやすい。数式などは一切無く、どのようにして現在の建築環境に至ったか、数字の持つ意味を分かりやすく解説している。とても良書です。
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建築家内藤廣が「空・風・火・水・地」と「眼耳鼻舌身意」を組み合わせて森羅万象を語る。
「「水」というのはやはり「時間」のメタファーなのではないかと思っています。」
(抜粋)
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内藤廣の東大での講義「構造デザイン講義」「環境デザイン講義」「形態デザイン講義」の3部作のうち第2弾。
環境を光、熱、水、風、音に分け、それらと建築のあり方を論じている。
光の回の、闇を設計する必要性には納得させられるし、熱の回の、温度、湿度、風速、輻射熱を測定する機器を持ち歩いて人が感じている環境に対する感覚を身につける姿勢には感心させられる。
水が入り込まない設計は、私も常々難しさを感じている。雨と屋根の関係が、「切妻」「寄棟」「入母屋」の3つだけの応用だけで成り立っていることや、水が熱環境や人の心理に与える影響も勉強になった。
また、建物が軽くなったり、高層化すると、構造も重力系より風力系による影響が大きくなるという事も参考になった。
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間々面白い話はあるが、技術的な話を覗けば、いくつかの主張に集約されると思う:
○建築だけで「閉じて」考えない方がよい
熱にしろ風にしろ水にしろ、本来はまちや都市との連続的な系。それを、いままでの建築や都市はスケールごとに分節してとらえようとしてきたが、もっと丸ごとの連続体として考えた方がよい。また、IT技術が進歩すればそうした全体的な視座でのしみゅーレーションも可能。
○身体を開いて、センサーを全開にするべき。
著者が温度計などを常時携帯して感覚を身に着けたっていう話が象徴的だが、ほかにも、音や風についても、とにかく「体験的」な感覚なのだという。構造デザインの時(前著)に「シミュレーションに頼らず、力の流れを読む」重要性を語っていたのに近い。「僕らのセンサーは鈍っていませんか」と問うてくる。
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内藤廣が自身の経験に基づいて建築設備・空気環境について語った本。
光・熱・水・風・音の「五輪」の観点から環境とデザインについて述べている。
彼自身の感覚について解説している本なので、一冊目「構造デザイン入門」よりも観念的な話が多くなっている。(もちろん実際の建築物によるデザインの具体例も多く収録されている。)
だからこそ自分が氏の主張について深い理解に至っていない感覚を持ってしまう。再読を試みたい。
構造に引き続き、風・空気とそのシミュレーションが将来の道を開くという主張がみられた。これは建築・都市・土木といった近代的な境界のあり方を根底から見直すべきだという思想にもとづくものであった。
また己の感覚を研ぎ澄ますことの重要性についてもことあるごとに触れられていた。
そのほか、近代のモノのとらえ方における離散性、こたつの可能性、生物学から得られたフィード・フォワードの思想、文化と地域の思想の関連性、脳は知覚器官から得られた情報を絞っているといった仮説など、新しい知見が多く得られた本であった。
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光、熱、水、風、音という5つの項目について、内藤さんが設計を通して得た最先端の科学的知識や経験、将来への展望などを語る講義録。情報としても十分興味深い。だが、一人の設計者のなかで科学的知識、自身の感覚と経験、詩的宗教的感性にいたるまでがどのように捉えられ、関連づけられているか、そんな見取り図としてとても参考になり、味わい深いもののように思った。
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★図書館だよりNo.58「一手指南」
丸田 誠 先生(建築学科)紹介図書
コラムを読む https://www.sist.ac.jp/media/20170602-174228-7612.pdf
【所在・貸出状況を見る】
http://sistlb.sist.ac.jp/opac/volume/201923
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熱の話が特に面白かったな
途中、内山節みたいだなと思っていたら案の定内山節が引用されていた。建築とか構造デザインとか(どこまでどうくくっていいのか分からないけど)って、人間にとっての環境を改善しようとして常に工学的に、デザインやら材料やらの観点からも進歩し続けているわけだけど、人工的な技術の効率には限界がある。システムを細分化していって、各部分での効率を最大化していく時代は終わりが近い。人間含む自然を総体としてとらえることが必要であり、そこに溶け込む私たちの文化もハードな技術からソフトな生活スタイルまで総合したデザインをしていくことになるのだろう。
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内藤廣の東大連続講義録。
光・熱・水・風・音の環境要因を踏まえた設計とグランドデザインの概論。都市設計から建物まで、環境が与える環境に与える要因を実経験を踏まえて伝えてくれる。
どうでもいいけど、オリンピックのために電通は汐留ビルを解体してくれないだろうか?それだけで気温が何度か下がるはず。