紙の本
著者の姿勢がにじみ出ている
2024/02/24 23:15
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投稿者:ichikawan - この投稿者のレビュー一覧を見る
経済学入門というよりは経済学史を通じて左右の臆見を批判していくものといった感じか。左派に対する冷笑的な姿勢で知られる著者の姿勢がにじみ出ているものでもある。
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マクロ的視点で見ると、
青信号が増えるということは、同時に赤信号が増えることでもある。
消費を減らすことは同時に収入を減らすことでもある。
一生の内に稼いだ金は、ほとんど全てを使いきる。つまりどんなに節税に苦心しても一生の内に払う消費税額は同じで、高い買い物を避けても、それは消費税支払いの猶予でしかない。
人はインセンティブに反応する。
アザラシは魚に対する食欲があるから訓練しやすい。
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第一部は「右派(保守・リバタリアン)の謬見」
第二部は「左派(革新・リベラル)の誤信」
どちらも、それぞれ間違いを犯しているという批判。
公平ですね。
じゃあ結局どっちなの?というときっとどっちでもなく
その間のどこかに落としどころをもっていく議論が
必要なんだけど、実際は両派ともそれを
受け容れられないので平行線。
議論の前提となる知識が共有されていないのです。
左派は経済(統計的データ)を学ばず、
右派は哲学(人間の不確実性)を軽んじる。
なんだか日本の原発問題の議論にも共通していますね。
筆者はおそらくその議論を成立させるための地ならしの役割を
この本に課したのではないかと想像するのです。
最終的にいいたいことは
「どっちももっと勉強しないと議論にならんよ」
ということだと思うのですが、
各章の事象に関しては僕自身の知識不足で
理解しきれないままでした。
勉強しなくちゃ、ですね。
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カナダの哲学者が、経済的右派(リバタリアン)と左派(リベラル)の両方の陥りがちな間違いに対して言及し、右派は人の不勉強に漬け込むな、左派はもっと勉強しろ、と説得している(気がする)本。
経済学に興味がある人ならおそらくとても面白いので必読。
興味が無い人でも得るものは多いはず。
プロローグとエピローグをさらっとでも見て、興味が沸いたなら読んでもらいたい。
特にプロローグは、
・「ブレードランナーが衝撃的だったのは、近未来に広告が大量にある背景を描写する事で、もしかしたら資本主義は無くなったりせずずっと残ってるんじゃないのか?」という示唆をした事
・当時のSF作家が揃いも揃って予測し損ねたのは「情報技術の主役はロボットではなくITであった事と、市場が消滅せずに残っていたこと」
なんて話で始まっていて、とっつきやすい。
エッセンスとして、ここだけでも読む価値アリ。
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世界には、温和な社会主義をとっている国もある。
そういった国は、行政システムが緩くて汚職も多い、という感じもあるけれど、それなりに利点もあるようで。
哲学者である著者だって、資本主義が絶対だとは思っていないはず。
思考を自由にするには、なんでも「これじゃないきゃいけない」と思うのを
やめる必要がある。
だから、まず始めるのは批判から。そもそも、右派も左派も、自分のかっこいいところばかりを強調していて、論理に無理があったり、現実をみていないことが非常に多いということを再確認。
そして本書で目指されているのは、やはり、読者が「覚めた」状態で資本主義を考えられるようになるレベルだと思う。
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これは面白い!やはり、経済読み物は、経済学者“以外”が書いたものの方が当たりが多いなぁ(笑)
特に、第7章公正価格という誤謬、第12章レベリング・ダウンなんかは、現在の日本の問題に直結しているので、経済学に興味のある人は是非読んでほしいです。
但し、翻訳がかなり読みにくいので注意。というか、おそらくは原文がかなり持って回ったような文章なんだろうと想像します。翻訳者の方も苦労されたのではないでしょうか?なので、経済学的基礎知識が無いと、読むのはちょっと苦労するかも。でも、飛ばし読みでも価値があると思います。
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経済学と資本主義というものが同一視されることに対してきちんと説明をしている本。書いたのは政治哲学者で、資本主義に対して疑問を持っている人物であるところがポイント。元の立ち位置がネガティブだからこその丁寧な説明がそこにはある。
ただ、資本主義が嫌いな人がこれを読んだら「ミイラ取りがミイラになった」と思うかもしれない。それは間違いで、感情を排した結果だということをわかってもらいたいし、仕組み上はそうだけれども現実は異なるということもわかってもらいたいと思う次第。
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経済学の本に取っつきにくかった僕にも読みやすい。
というのも、自分の理論をただ押しつけることや、つまらないお金の流れなどを述べるのではなく、右派、左派の両方の観点から客観性を持たせつつ述べているからだと思う。
経済としてだけではなく、人としてどういう手段で人を動かすかということにも通ずる気がする。
とても面白かった。ただ、日本語訳がおかしいところや、堅苦しい表現が見られたので☆みっつ。
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経済はゼロサムゲームじゃないという人もいます。でもこの本では、明快に、「青信号は、誰かにとっての赤信号」として、誰にでも青信号なんてありえないぞ、という点からスタート。
その信号は、数多くて単純なものではないし、さまざまな選択的行動からなっている。当たり前のことなんだろうけど、僕が理解できていない、ということがよくわかった。関係者全員が悪いなら、システムを壊すしかないって。そうかもね。
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左右両翼の経済観の謬見を解きほぐしていく「哲学者による」正統派的な解説書。
ほとんど完全な競争は、そうでない不完全な競争よりも効率がよい、と信ずる根拠はない。完全な競争が完全な効率をもたらすというテーゼはそれを擁護しない。
福祉の問題で、左派はモラルハザードが生じる可能性を否定すべきではない。それを認めたうえで、より広範なリスク共同管理の便益と費用をはかりにかけるべき。 などなど。
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正直、入門書ではないけど、読み応えあり。因みに筆者のジョゼフ・ヒースさんはトロント大学の哲学の教員。
http://www.nttpub.co.jp/search/books/detail/100002183
資本主義が嫌いな人こそ経済学を学ぼう!というのが本書の主題。資本主義批判者は不勉強、その怠慢につけ込む保守派の議論をメッタ切り。情緒や義憤でも欺瞞でもない。資本主義をよりよいものに変えていくことが課題と示唆。
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著者はカナダの哲学者。「世界に不正や苦難があるのは、利己的なやつが自分の利害にかなうよう仕組んだせいなのだ(P346)」と若かりし頃は思っていた人物。
経済学の正式な教育も受けてないが、本を読んで得た知見をカナダの身近な例(住宅政策やガス料金、保険と年金、先住民地区のことなど)とともに共有してくれる。
「右派(保守、リバタリアン)の謬見」をまとめた前半第1~6章と「左派(革新、リベラル)の誤信」の後半第7~12章。
特に左派向けに書かれた部分は「資本主義」や「市場経済」や「営利企業」が嫌いな人(いわゆるマルクス経済しか認めない経済オンチ)は読んでおくべきと思う(私もそうだった)。
「貧乏人の経済学」とも通じる。
「私たちの問題はたいがい問題を直す意志に欠けることではなく、直す方法を知らないことである。(P347)」
<対右派>
第1章 資本主義は自然――なぜ市場は実際には政府に依存しているか
第2章 インセンティブは重要だ……そうでないとき以外は
第3章 摩擦のない平面の誤謬――なぜ競争が激しいほどよいとは限らないのか?
第4章 税は高すぎる――消費者としての政府という神話
第5章 すべてにおいて競争力がない――なぜ国際競争力は重要ではないのか
第6章 自己責任――右派はどのようにモラルハザードを誤解しているか
<対左派>
第7章 公正価格という誤謬――価格操作の誘惑と、なぜその誘惑に抗うべきか
第8章 「サイコパス的」利潤追求――なぜ金儲けはそう悪くないことなのか
第9章 資本主義は消えゆく運命――なぜ「体制」は崩壊しなさそうなのか(しそうに見えるのに)
第10章 同一賃金――なぜあらゆる面で残念な仕事がなくてはいけないのか
第11章 富の共有――なぜ資本主義はごく少数の資本家しか生みださないか
第12章 レベリング・ダウン――平等の誤った促進法
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・生産性上昇の計算法は、経済成長率から明らかに説明できることを除外していくというもの。成長がいくらかでも労働者の増員や労働時間の増加によるなら、新しい設備や機械などの資本支出によるなら、それらを除外する。生産性はちょっとロールシャッハテストに似ている。ある人にとって、生産性の向上には教育と「技術革新」への莫大な政府支出が求められる。別の人にとって、産業の果敢な規制緩和とともに大幅減税が必要になる。
・アメリカで自動車を生産するには二つの方法がある。一つはデトロイトで生産する方法、もう一つはアイオワで栽培する方法だ。アイオワで自動車を栽培するには、小麦をトヨタ車に変える特殊技術を活用する。小麦を船に乗せて、太平洋に送り出すのだ。しばらくすると船はトヨタ車を積んで戻ってくる。小麦を太平洋沖で自動車に変えるこの技術は「日本」と呼ばれているが、それはハワイの沖合に浮かぶ先進的なバイオ工場だといってもいいだろう。いずれにせよ、デトロイトの自動車メーカーの労働者が直接競争しているのはアイオワの農民なのである。
・「フェアトレード運動が明らかに示したのは、良質の品を買いたいと言う消費者の意欲を損なわないで、生産者は今日の破壊的な安値の倍の報酬を得られるという事だ」。これはこれで結構なことだが、まったく的外れである。問題は、生産者がその産品の市場価格の二倍報酬を得られて、なおかつ生産を減らすことを納得させられるかどうかなのだ。2001年の全世界のコーヒー供給量1億1500万袋に対し、全需要量は1億500万袋前後だった。
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ひと通り読んでみて、経済学の方が道徳的な考え方してるんじゃないかと思い始めた。新しく生まれる経済的価値や経済的効率性を重視することで、最適な配分を考える、結果経済学的には一番満足できる方向に進んでいくのであるが、その際の「全体最適を考える」という視座の持ち方が道徳的なのではないかということ。モラルハザードなどまでも含めて議論できるのが経済的なのかなとか。
経済学をもう少し学んで見ようと思う。
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経済学を哲学者が一刀両断する本。右派には右派の左派には左派の考え方がある。しかしどちらも本質をついているといは言い難いという感じの内容でよろしいか?
経済を簡単にかたづけようとしたところで必ず行き詰まりを見ることだろう。結局そこにはいろいろな人間の行動パターンが埋め込まれるわけであり、それらすべてに都合の良い行為を与えることなどできないのだから。そこで人はどう対応するかそれにより経済の崩壊度が決まってくるのだろう。
作者が外国人ということもあり中に出てくる事例は外国のものばかりであるので少しわかりにくい。日本の事例で書かれたこのような本はないものだろうか?。