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  • カテゴリ:一般
  • 発行年月:2008.2
  • 出版社: 新潮社
  • レーベル: 新潮文庫
  • サイズ:16cm/362p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:978-4-10-124706-9

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神隠し 改版 (新潮文庫)

著者 藤沢 周平 (著)

神隠し 改版 (新潮文庫)

税込 693 6pt

神隠し

税込 616 5pt

神隠し

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拐し 7−33
夜の雷雨 281−310
神隠し 311−352

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評価内訳

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紙の本

ある出来事で起こる人の変化を鋭く繊細に描いた11編

2010/01/22 18:55

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る

収録されている作品はどれも、ある出来事で起こる人間の変化を描いている。
神隠しから戻ってきたら別人のようだったという、古来からの伝承的なものから、少女が愛情によって女に変わるもの、かぐや姫を材にしたものなど、多彩で緻密な物語が読者を飽きさせない作品集。

『拐し』
辰平は娘お高を拐した男又次郎に、五日に一度、二分の身代金を払っているが、娘はいまだ帰してもらえず、すでに二十日が経っていた。
又次郎の跡をつけたお高の婚約者勝蔵は、見つかって伸されたが、又次郎が去っていく先にお高の顔を見た。

勝蔵がお高の顔を見たところから話は進展を始めるが、だんだん様子が変わってきて、淡いユーモアが漂いだす。
最後に辰平が死んだ女房を思い出すところが、物語を引き締めている。

『昔の仲間』
医者にあと半年の命と宣告を受けた紙屋を営む宇兵衛は、やらなければならない事の少なさに淋しさを覚えた。
そして宇兵衛の頭には、昔の仲間で三十年前に別れた男の顔が浮かんできた。

昔の仲間の行方を探し出した宇兵衛の顛末が非常に気になる作品。
思いも寄らない結末が、宇兵衛と読者を襲う。

『疫病神』
妹のおくにが見つかったと言ってきた父の鹿十は、飲む打つ買うの三道楽と女房への暴力の果てに行方を眩まし、十八年が経っていた。
おくにが生まれる前までの優しかった父を知る信蔵は、しょぼくれた哀れな年寄りとなった父を引き取ることにした。

身を持ち崩した家族は、血や情でつながっている分だけ、縁の切れない厄介な疫病神なのかもしれない。
そんな疫病神の恐ろしさを描いた作品。

『告白』
娘の婚礼が終わった夜、善右衛門はある出来事を思い出した。
妻のおたみが一度だけ、朝出ていったきり帰らず、町木戸が閉まる直前に、朝と同じ風呂敷包みを抱えて帰ってきた。
その事を改めて聞いた善右衛門に、おたかは戸惑いながらも話し始めた。

女の持つ得体の知れない気味悪さが、三十年連れ添った夫婦の揺るがない関係の中にあった、たった一つの違和感によって描き出されている。

『三年目』
行きずりの男が約束した三年が経った。
しかし男は現れず、おはるは諦めの気持ちに傾いていたが、薄暗くなった店の前で、もう少しだけ待ってみようと思った。

少女の頃の約束を信じる一途で純粋な女の気持ちと、大胆な行動を描いている。

『鬼』
鬼を想像させるほど不器量なサチは、死にかけた武士を助けた。醜女の自分を受け入れてくれた武士。
サチは城に追われているという武士を匿った。

サチの、鬼っ子と言われてきた不器量な自分を受け入れてくれた武士への、淡い少女の恋心と、深すぎる女の愛情を描いている。
「おら、やっぱり鬼だど」と呟くサチがとても印象に残る。

『桃の木の下で』
武家の斬り合いに遭遇した志穂は、一人は夫の同僚だったと夫に告げた数日後、墓参り先で何者かに命を狙われた。
助かった志穂は、昔から仲が良く夫婦になるのだと思いこんでいた親戚の亥八郎に、これまでの出来事を打ち明けた。

志穂を狙う者の正体と事件の真相に驚かされるサスペンス調の読み応えのある作品。
いくつかもの出来事が起こる「桃の木の下」が印象に残る。

『小鶴』
神名家には子がおらず、かいわいの名物である夫婦喧嘩が原因で、養子も来なかった。
ある時、夫の吉左衛門は、記憶のない一人の娘を連れてきた。

かぐや姫から材を得た展開と、名物の夫婦喧嘩の組み合わせが面白い。
もの悲しい結末を、ユーモアで締めくくっており、気に入っている作品。

『暗い渦』
筆屋の信蔵は、裏店の路地で昔別れた女を見かけた。
信蔵は、もっといい所へ嫁ぐはずだと思っていたその女との過去を思い出していた。

信蔵の、後悔と光を伴った青春が過去となり、自分を選び選んだ妻の真っ直ぐな愛情と暖かさに気づく様子を描いている。

『夜の雷雨』
おつねは、生活費をくれている松蔵の行為をありがたく思っていたが、孫の清太をこき下ろすのは許せなかった。
子供夫婦に先立たれたあと清太を育て上げたが、極道にできあがり、裸同然で放り出された後も、清太を信じているのであった。

悪党となった孫をいつまでも信じる老女の過ちを残酷に絶望的に描いている。

『神隠し』
伊沢屋のおかみが消えて二日になる。
岡っ引きの巳之助は、おかみを探すも行方は分からなかったが、失踪などなかったようにふらりと帰ってきた。

失踪から戻ってきて別人の様になったおかみの、行方不明となった秘密を探る巳之助の捕物帳。
おかみの様子が変わった原因と、それに起因する新たな事件は、人の情を鋭く描いている。

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紙の本

人生は色々ありますね。

2009/02/22 20:45

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:野棘かな - この投稿者のレビュー一覧を見る

読み終えると、何ともいえないが余情感が残った。
一つ一つがそれぞれ違ったパワーを持って迫ってくる面白さ、味わいのある作品ばかりだ。
作家は、
「人間なんてこんなものさ、たかがこんなもの、だけどしょうがない、仕方がないんだ、だからこれでいいんだと」
あの手、この手で、軽妙な呼吸で、手厳しく、あるいはしっとりと示してくれる。
とにかく、人情あふれそれでいて鋭くて人間の根幹をとらえている作品ばかりだった。

だけど、一つだけ女性として気になることがある。
作品の中に脈々と流れている作家の女性への視線が気になる。
「またそんな天邪鬼なことを言わないの」
といさめられそうだが、やっぱり言いたい。
「初めはおとなしく従っていても、そのうちとんでもなく図々しくなるのが女なんだと思っている限り、そういう女性しか目の前に現れませんよ」と。
それでも、作家はきっと幸せに生きて過ごしたのだと信じています。

もうこれ以上、このような珠玉の短編を読むことができないと思うとしみじみと才能の終焉が切なかった。

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2006/02/27 16:37

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2007/08/09 00:14

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2008/03/16 23:52

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